アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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さぁて本格的にキャラが多くなってきたぞ……。


Lesson386 始まりの朝(夜中) 4

 

 

 

「「おはようございます!」」

 

 

 

「相乗効果で二倍?」

 

「テキストサイズ的には三倍……」

 

 愛ちゃんと未来ちゃんが挨拶を交わす光景を見つつ朝から元気だなぁと苦笑する。

 

「そういえば愛ちゃん」

 

「はいっ、涼さんなんですか?」

 

「……今日、お母さんは?」

 

 僕たち876プロ三人の懸念事項。それは『日高舞の動向』であった。愛ちゃんからの「お母さんが何かしているみたいなんです」という情報を聞いてからずっと気になっていて、しかし舞さんの『誰にも喋るな』という言葉が怖くて結局良太郎さんにそれを伝えることが出来ないまま今日を迎えてしまった。

 

「……朝出るときは『後で私も行くからね~』としか」

 

「それは……」

 

「まだ関係者席の可能性を否定できない?」

 

 出演者の親族なのだから、当然のように舞さんは関係者チケットを持っている。彼女の言葉を額面通りに受け取れば『ただの観客として会場に来る』という意味になるのだが……。

 

「……ママが何を考えているのか、本当に分かりません……」

 

「実の娘が分からないなら誰にも分からないよ……」

 

「ワンチャン、良太郎さん?」

 

 確かに、ある意味では『周藤良太郎』と『日高舞』は同類と呼んでも差し支えない存在である。良太郎さんならば舞さんが何をしようとしているのか分かるかもしれない。

 

「……当日なんですし、そろそろ喋ってもいいんじゃないですかね」

 

「……そうだね、流石に言っておこうか」

 

 『なんでこんな大事なことを当日まで黙ってたんだ』と良太郎さんや麗華さんから怒られるのが怖いけど、何かあったときに言わなかった方が問題である。

 

「『ミスを報告せずに隠す』っていう社会人が失敗したときにやっちゃダメなパターンみたいなアレ?」

 

「ミスではないから! 僕たちのミスではないから!」

 

 敢えて何がミスだったかといえばどちらかというと愛ちゃんが舞さんの謎の行動に気が付いちゃったことがミスなのかもしれないけど、流石にそれを一人に背負わせるのは可哀想である。

 

「それじゃあ、全体ミーティングが終わったら良太郎さんに伝える……で、いいね?」

 

 僕が尋ねると、愛ちゃんと絵理ちゃんはコクリと頷いた。

 

「……あ、良太郎さん来たみたい」

 

 

 

 

 

 

「うわ泣き顔汚っ」

 

 

 

 会議室に入った途端にりあむちゃんの泣き顔が視界に入ってきたため、思わず口からそんな感想が零れ出た。

 

「リョーさんはちょっとぐらい情けをかけてくれてもいいんじゃないかな!?」

 

「え」

 

「……あっ!? 間違えた!? 良太郎さんごめんなさい! 知り合いと間違えました!?」

 

「あ、いや、こっちこそゴメン」

 

 ビックリした、いつの間にかりあむちゃんに俺がリョーさんだってことがバレていたのかと思った。しかし今のは俺も思わずいつもの反応をしてしまったことが原因だろうし、気を付けねば。

 

「それで、りあむちゃんはどうしてこんな有様になってるんです?」

 

「それがね……」

 

 近くにいたみのりさんに事情を聞いてみると、どうやら今回の合同ライブに参加できることで亜利沙ちゃんを煽ってしまったらしい。なんて馬鹿なことを……まぁいいや。これはこれでりあむちゃんらしいし、彼女はちょっと凹んでるぐらいが可愛いからもうしばらくこのままでいてもらおう。

 

 ……ちなみにではあるが、この会議室には至る所にカメラが設置してある。目的は今回のライブの円盤特典としてのバックステージ映像の撮影であり、現在も絶賛撮影中。何処に何台設置されているのかは俺も知らないが、当然りあむちゃんのこの醜態もバッチリと録画されていることだろう。今から映像を見るのが楽しみである。

 

「あっ、良太郎さん! おはようございます!」

 

『おはようございます!』

 

「うん、おはよう」

 

 そんなことをしている内に俺の入室に気付いたらしいアイドルたちから一斉に挨拶をされたので、ヒラヒラと手を振り返す。

 

「良太郎さん、おはようございます」

 

「「おはようございます!」」

 

「やぁ志保ちゃん、それに蒼井兄弟も。おはよう」

 

 この三人は、確か陸君繋がりの同い年トリオだったな。

 

「志保ちゃん、今朝は災難だったみたいだね」

 

「いえ、それほど大事にはならなかったので。……それより、ちゃんと連れてきてくれたんですよね?」

 

 誰とは言わなかったが、志保ちゃんがそんなことを言う人物なんて一人である。

 

「うん、既に今日のユニットメンバーに引き渡してあるから」

 

 ちょいちょいと指を差した先では、首輪に繋がれた志希がフレデリカちゃんと周子ちゃんにスティックタイプのお菓子を食べさせてもらっていた。

 

「うん、大丈夫そうですね」

 

「「あの人の扱いアレでいいの!?」」

 

 俺たちのやり取りを聞いていた蒼井兄弟が驚いていた。確かに扱いが完全にペットであるが、本人が楽しそうなので問題はないのである。

 

「寧ろ俺としては美琴の方が心配なんだが……」

 

 個人的には志希の次に私生活の信頼性が低いのが美琴である。

 

「美琴さんは寝坊や遅刻をするタイプじゃないと思いますけど?」

 

 そっちじゃなくて。

 

「アイツは『前日から泊まり込んじゃえば移動時間もレッスンに当てられるよね』とか言い出しかねねぇから……」

 

「「そんなこと言う人いるんですか……!?」」

 

「確かに言いそうですね……」

 

「「言いそうなんだ……!?」」

 

 それほどの危機感を覚えさせる強敵なのだ。

 

 というわけでその辺のスタッフさんを捕まえて「まさか美琴、昨日から来てたりしてませんよね?」と冗談交じりに聞いてみる。

 

「……は? 本当に前日入りしてた?」

 

「「「えぇっ!?」」」

 

 あの馬鹿マジでやりやがった……!

 

「……え、既に話を聞いてたから、スタッフ総出で仮眠室に閉じ込めて軟禁した?」

 

「「「有能っ!」」」

 

 これはマジで有能なスタッフたちである。後でなんかいい差し入れを俺のポケットマネーで手配しよう。

 

 というわけで、スタッフに頼んでその囚われの姫を連れてきてもらった。

 

「酷いよ良太郎」

 

 そして不満顔のまま開口一番恨み言である。

 

「何が酷いんだよ何が」

 

「無理矢理ベッドのある部屋に一晩中閉じ込めるなんて……」

 

「わざと人聞きの悪い言い方しないでいただけますぅ!?」

 

 お前の自業自得なんだよぉ!

 

「もう、先日アレだけ言ったじゃないですか。前日はしっかりと身体を休めてくださいって」

 

 今回のライブでユニットメンバーとなる志保ちゃんが美琴に対して苦言を呈する。

 

「美琴、流石に六つも年下の少女にお説教をされるのはどうかと思うぞ」

 

「それ良太郎が言う?」

 

「良太郎さん、こんなところでブーメランを投げて遊ばないでください」

 

 ドームでブーメランはしちゃいけませんってことか……。

 

 

 

 集合時間である五時が近付くにつれて会議室にはゾロゾロとアイドルが集合してくる。

 

 俺や志希と一緒に会場入りしたりんも、一応時間をズラして麗華たちと共に入室。よくよく考えたら半分以上俺とりんのことを知っているアイドルばかりになってしまっているが、スタッフは殆ど知らないはずなので念のため。

 

 ジュピターの三人や春香ちゃんたちやなのはちゃんたちも無事に到着し、本日出演予定のアイドル総勢五十四人が無事に会場入りすることが出来た。うんうん、どうやらフラグもしっかり折れたらしい。

 

「さて、全員揃ったところで打ち合わせをする前に……まずは良太郎から一言」

 

「え、俺?」

 

 兄貴からポンとマイクを渡された。

 

「アンタ以外誰がいるのよ」

 

「麗華だって今回のライブは立場上は俺と同条件だろ?」

 

「いいからさっさとしなさい」

 

 麗華に背中を押されたのでしょうがなく前に出ると、全員の視線が俺に集中する。アイドルだけでなくスタッフからの視線も集まり、全員で俺の話を静聴する状態になってしまった。

 

『……あーっと、とりあえず皆さん、おはようございます。ついに今日を迎えました』

 

 ありきたりな文句ではあるが、しっかりと言葉にしなければいけない。何せ俺は、俺たちは、今日と言う日を待ちわびたのだ。

 

 

 

『そう、機動戦士ガンダムSEED FREEDOMの公開日です!』

 

「もう四日前なんだよなぁ!?」

 

 

 

『いやもう本当にさぁ……待ちわびて待ちわびて……』

 

「そうだけどそうじゃねぇんだよ! 気持ちは分かるけどそうじゃねぇんだよ! なんだったら俺も語りたいし後で付き合ってやるから! 今はライブのこと話せや!」

 

『しっかり反応してくれてありがとうな冬馬』

 

「どういたしまして!」

 

 ちょっと魂がコズミックイラから帰ってきていなかったため、情熱が口から溢れ出てしまった。正直今でもちょっと泣きそう。

 

 さて気を取り直して。

 

『今日はついに迎えた八事務所合同ライブ、本番当日です』

 

 俺と冬馬のやり取りで弛緩していた空気がキュッと引き締まるのを肌で感じる。

 

『今、アイドル業界はアイドル冬の時代を乗り越えて最盛期を迎えています。学校の部活としてアイドルをする、なんていうスクールアイドルが登場するなど、かつての日高舞の時代の熱をようやく取り戻したと言っても過言ではありません』

 

 日高舞が去り、一度は冬を迎え、そして周藤良太郎の登場と共に春が訪れ、雪解けと共に若葉が芽吹き、ようやく新緑の時期を迎えた。

 

 アイドルは今、もっとも光り輝く時代となった。

 

『このライブはそれを証明するためのもの。誰もが夢を見ていいと、夢見た先を、輝きの向こう側を指し示すためのライブ』

 

 だけどそれ以上に。

 

 

 

『俺たち自身が、このお祭りを楽しむぞ!』

 

『『『はいっ!』』』

 

 

 

 

 

 

「……はい。はい……えっ、えぇ!?」

 

「ん?」

 

「分かりました……はい、はい……」

 

「兄貴、どうかした?」

 

「……良太郎、麗華ちゃん、落ち着いてよく聞いてくれ」

 

「え、なにその滅茶苦茶怖いフリ」

 

「な、なにがあったんですか?」

 

 

 

「……演出家の先生が、事故って来れなくなった」

 

「「……は?」」

 

 

 

 八事務所合同ライブRTA『演出家不在チャート』はーじまーるよー。

 

 

 

「あとついでにケータリングの業者も遅れるらしい」

 

『俺たちの朝飯が!?』

 

 

 




・暗躍するオーガ
い、一体何をする気なんだ……?

・カメラが設置
大丈夫、ちゃんと検閲入るから!(なお良太郎も参加する模様)

・ドームでブーメランはしちゃいけません
まさかそんな野球をしちゃいけないドームがあるわけ……。

・機動戦士ガンダムSEED FREEDOM
いやホントまじで神というか十八年前から彷徨い続けた亡霊がようやく成仏したというか……映画観てからⅩでもこのことしか呟いてないんですわ……本当によかったよ……。

・演出家不在チャート
アイドル『は』全員揃いましたね!()



 ただでさえ忙しい良太郎と麗華と兄貴が更に忙殺される状況になってしまったが、果たして彼らはこのピンチを乗り越えることが出来るのか!

 次回! 『頼れる彼らはみんな目が死んでる!(仮)』

 それではみなさん、山形公演後にお会いしましょう!
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