アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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りょーくんのちょっといいとこ見てみたいー!


Lesson390 先行き不安なリハーサル 4

 

 

 

『『『飯だぁぁぁ!』』』

 

 

 

 育ち盛り食い盛りな男子高校生たちが歓喜の声を上げた。

 

 雪のせいで到着が遅れていたケータリング業者が到着し、ようやく食事の用意が整ったのである。元々はリハーサル中に各々食事を済ませる予定だったのだが、麗華が突っかかってきてリハーサルが長引いてしまっているので一旦食事休憩となった。

 

「あ゛? アンタが私の演出にケチ付けたのが原因でしょうが」

 

「あ゛ぁ? なんだよ俺のせいだって言いてぇのか?」

 

 許さねぇぞ……よくも俺をここまでコケにしてくれたな。今度こそしっかりと叩きのめしてやる……。

 

「お前ら本当にいい加減にしろよ」

 

「叩きのめしてやるぞ冬馬」

 

「俺っ!?」

 

 再び一触即発の空気となる俺と麗華と冬馬の間に、りんとともみが割って入って来た。

 

「ほらほらりょーくん! そんなことよりご飯食べようご飯! 朝ご飯まだだもんね!」

 

「……りんに免じて許してやろう」

 

「麗華も。腹が減っては胸は育たぬ」

 

「アンタは二度と食事が必要のない体にしてやろうか? あ゛?」

 

 仕方がないので一時休戦の食事タイムとなった。ふん、胸の大きなりんに感謝するんだな。

 

 

 

 さて、今回のライブは出演アイドルが多くそのうちの大半が育ち盛り食べ盛りばかりで、当然用意される食事の量も多くなる。その結果、食事スペースには観光ホテルのディナービュッフェ以上に大量の料理が所狭しと並べられていた。

 

「いくら余ったらスタッフにも回されるからって、この量はやりすぎじゃない?」

 

 麗華の疑問も尤もだが、現在進行形で「うっひょー! 飯っす飯っす!」「おっしゃ食べるぞー!」「カレーあるぞカレー!」「俺チキンライスー!」と主に315プロの高校生組を中心にお腹を空かせたアイドルたちが食事に群がっている光景を見ると、多分問題ないような気もする。

 

「というかお前ら、いくら本番まで時間があるからって食いすぎるなよ」

 

「分かってるっすよリョーさんっち!」

 

「良太郎さんたちの分はちゃんととっておくぜ!」

 

「そうじゃねぇんだよ」

 

 まぁ、あいつらのことは旬に任せておいて、俺も飯にするとしよう。腹が減った。

 

「………………」

 

「ん? 奏、お前は食べないのか?」

 

「私たちは女子寮の五十嵐響子ちゃんが作ってくれたお弁当を朝ご飯に食べてきたのよ」

 

「現役女子高生アイドルの手作りお弁当……だと?」

 

「貴方の周りだとそれも別に珍しいことじゃないんじゃない?」

 

「いやいやそんなこと……」

 

 ……割とあるかもしれない。現に昨日の晩御飯は現役トップアイドルが作った味噌汁を飲んだわけだし。

 

「そんなことより先輩、貴方本当に隠す気あるの?」

 

「あるわけないだろ。俺は自分の大乳好きを誇りとして生きている」

 

「そんな誇り捨ててしまいなさい。そんなこと話題にしないわよ」

 

 それじゃあなんのことかと思っていると、ちょいちょいと奏が指差す先には俺の横にぴっとりとくっつきながら何を食べようかと悩んでいるりんの姿が。

 

「……やっぱり大乳好きのことでは?」

 

「引っ叩くわよ」

 

 どうやらりんとの交際のことを言っているらしい。

 

「お前を含めて半数以上は知ってるし、別にいいだろ」

 

「そーそー。それに付き合ってるってことを知らなくても、アタシがりょーくんのこと大好きだってのは周知の事実なんだしさ」

 

「………………」

 

 どうやら奏は自分の考える常識と世間一般の考え方など色々なことを考えて混乱してしまったらしい。うんうん、芸能界は色々あるからな。

 

 さてそんなやり取りをしつつ、しっかりと朝食。リハーサルが始まってからそれなりに経っているものの未だに九時前なのでまだまだブランチではなくブレックファーストの時間である。

 

「あ、あの、良太郎さん」

 

「ん?」

 

 ビュッフェの朝ご飯と言えばやっぱりカレーだよな! ということでカレーを食べていると、遠慮がちにおずおずと話しかけてくるおっきなおっぱいが二つ。

 

「やぁ、りあむちゃん」

 

「……あの、出来れば顔を見て判断していただけると……」

 

「良太郎サン、せめて顔を上に挙げるぐらいの努力はしませんか?」

 

 大丈夫、俺の心はいつだって未来(まえ)を向いているから。

 

 顔を上げると、そこにはあきらちゃんとあかりちゃんを伴ったりあむちゃんが立っていた。所在なさげな手をもじもじとさせつつ、何やら俺の顔色を窺っている様子である。

 

「それで、どうかした? さっきのリハーサルで何か分からないところでもあった?」

 

 彼女たち三人のユニットのリハーサルは既に終わっていた。彼女たちのときもまた麗華とバチバチにやり合っていたので、もしかしたらイマイチ納得出来なかったところがあったのかもしれない。

 

「分からないところはなかったんですけど……ほ、本当に()()でいいんですか?」

 

「そーですよ良太郎サン。りあむサンにあんなこと言うなんて」

 

「こ、後悔しますよ?」

 

 あきらちゃんもそうだが、あかりちゃんも結構言葉のチョイスに毒を感じる。

 

「……りょーくん、この子になんて言ったの?」

 

 どうやらそのタイミングで裏に引っ込んでいたらしく、りんは俺たちの会話内容が分からずに首を傾げた。

 

「えっとな……」

 

 

 

 

 

 

『はいストーップ』

 

「「「っ」」」

 

 良太郎サンからの停止がかかり、自分たちはステージ上で動きを止める。止めるというか、良太郎サンの声に反応して無意識に身体が止まってしまったという表現が正しいのかもしれない。きっとこれが俗に言う『蛇に睨まれた蛙』と言う奴か。

 

 あの『周藤良太郎』が自分たちのパフォーマンスに言及することがある。その事実だけで、思わず息が止まってしまいそうなほどのプレッシャーを感じてしまった。

 

『んーっと……りあむちゃん』

 

「ひっ!?」

 

『いやそんなに怯えないで怖がらないで、怒るわけじゃないから』

 

 良太郎サンから名指しされたりあむサンの表情が真っ青を通り越して真っ白になっていたが、無理もない。多分名前を呼ばれたのが自分だったら、きっと同じようなリアクションをしていたことだろう。

 

『さっきの煽り、だいぶ大人しかったけど多分事務所から何か言われてる?』

 

「は、はい……」

 

『まぁ普段のアンタの言動を見てれば当然の措置よね』

 

 あの東豪寺麗華サンですら周知の事実である彼女の炎上芸。りあむサンは調子に乗りやすい性格のため口を滑らせることが多いが、そうじゃなくても言葉の選び方が致命的に間違っているため、本人の意図していないところで炎上することが多い。

 

 そのため事務所からも散々上から「今回のライブではくれぐれも……くれぐれも気を付けてください……!」と注意を受けていた。唯一Pサンだけはりあむサンの自由を尊重しようとしていたようだが……それでも彼女の普段の炎上具合を思い出して最後は口を噤んでしまった。

 

『んー……よし』

 

 何かを考える仕草をする良太郎サンに、りあむサンは一体何を言われるのかと緊張で身体を強張らせる。

 

 

 

『りあむちゃん、今回のライブに限り()()()()()()()()()

 

 

 

「「「……えっ!?」」」

 

 言われたりあむサンだけじゃなくて、自分とあかりちゃんも一緒に驚愕の声をあげてしまった。

 

「りょ、良太郎サン!? 一体何をとち狂ったことを言ってるんデスか!?」

 

「そ、そうですよ! このライブが滅茶苦茶になっちゃいますよ!?」

 

「君たちにその反応にぼくの心が真っ先にとち狂いそうだし滅茶苦茶になりそうだよぉ!」

 

 りあむサンが情けない声を出すが今はそれどころではない。良太郎サンの凶行を止めることが最優先なのだ。

 

『良太郎、アンタ何言い出すのよ。アンタも知ってるでしょ、あの子の普段の言動』

 

『よーく知ってる。いつも笑わせてもらってるよ』

 

『対岸の火事を笑ってんじゃないわよ外道』

 

 東豪寺サンも苦言を呈しているが、良太郎サンはそんなこと知ったこっちゃないと言った態度だった。

 

『俺は今回のライブ、お行儀のいい発表会にするつもりはない。今の日本には「こんなアイドルがいるんだ」っていう知らしめるライブにしたいんだ。だからそんな()()()()のことでりあむちゃんの個性を押し殺すことはしてほしくない』

 

「……いや、ぼくも炎上芸を個性にしてるつもりはないんだけど……」

 

『アイドルたちが何の制限もなく全力で輝くところを、俺は見せて欲しいんだ』

 

 りあむサンはごにょごにょと口ごもるが、多分良太郎サンの耳には届いていない。

 

『だから今回のライブ中でのりあむちゃんの言葉は全部「周藤良太郎が言わせた」ってことにしていいよ』

 

「「「えぇ!?」」」

 

『ちょっと良太郎、アンタ本気?』

 

 隣の東豪寺サンが呆れていたが、それでも良太郎サンは自信満々に頷いた。

 

『本気。俺が許す』

 

 

 

 

 

 

「とまぁこんなやりとりが」

 

「へー」

 

「……朝比奈サン、リアクション薄いですね」

 

 多分りんは内心だと(まぁこの子が何しようとアタシには関係ないし)とか思っているのだろう。口にしないのは偉いぞ。

 

「その、良太郎さんがそう言ってくれるのは嬉しいんだけど……やっぱり迷惑かけちゃうし、ほら、自重してもぼくらしさは出せるし」

 

 何故か普段よりも五割増しぐらいでしおらしくなっているりあむちゃんの態度が若干気になったが、俺は「大丈夫」と改めて念を押す。

 

「勿論、炎上すること自体は褒められたことじゃないし、普段の態度も一部反省した方がいいところもある」

 

「うぐっ」

 

 

 

「でも、俺はそんなりあむちゃん、結構好きだよ」

 

 

 

「「「……は?」」」

 

「ん?」

 

 りんちゃん、お声が怖いよ……。

 

「ほら、俺も普段はこんなんなんだから。りあむちゃんもそういうの一切気にせずに全力を出してほしいんだ」

 

「………………」

 

「だから……えっと、どうした?」

 

「なんでもないですありがとうございますしつれいしいました」

 

 え、なんでいきなり走り去ったの。

 

「りあむさん!?」

 

「え、えっと失礼しました!」

 

 そんなりあむちゃんを追ってあかりちゃんとあきらちゃんもフェードアウト。とりあえず俺の演出方針に納得してくれたってことでいいのかな?

 

「………………」

 

「りんさん、なんでいきなり無言で俺のカレーにタバスコかけ始めたの?」

 

 辛いの好きだからいいんだけど。

 

 

 

 

 

 

「……社長、今の良太郎さんと夢見さんのやり取りを見て一言」

 

「……やっぱり良太郎に演出を任せて正解だったな!」

 

「うわすっごい笑顔」

 

 

 




・ケータリング
他の人のお食事模様は次回。

・よくも俺をここまでコケにしてくれたな。
でも冬馬なら躊躇なく良太郎に「さらにもう一発!」出来ると思う。

・『何を言ってもいいよ』
良太郎「構わん。俺が許す」

・「うわすっごい笑顔」
愉悦民族周藤家。



 リハーサルそのものは終わっていませんがリハーサル編はここまで。……リハーサル編ってなんだ?

 次回は舞台裏の様子をちょこちょこ。そろそろ演者以外も書いてかないとなぁ。
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