アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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舞台裏のディアリースターズさ~ん!


Lesson391 ここで舞台裏を覗いてみよう

 

 

 

 ステージでは良太郎さんと麗華さん監修の下でリハーサルが行われているのだが、その一方の舞台裏ではとある一つの企画が進行していた。

 

 時間はほんの少しだけ遡る。

 

 

 

「「「舞台裏の撮影?」」」

 

「えぇ」

 

 そう言って123プロのプロデューサーである和久井さんは、僕たち876プロトリオにビデオカメラを手渡した。

 

「今回のライブ、円盤化することが決定しているのだけど、その映像特典として舞台裏の様子を撮影してきてほしいの」

 

「わっ! なんだかすっごく楽しそうですね!」

 

「それはいいんですけど……」

 

「どうして私たち?」

 

 無邪気に笑いながらビデオカメラを受け取った愛ちゃんだが、僕と絵理ちゃんはこの人選の理由が分からず首を傾げる。

 

「それは貴方たちが分かりやすい男女の組み合わせだからよ。貴方たちなら男性アイドルにも女性アイドルにも話しかけやすいでしょ?」

 

「あぁ、そういう」

 

「確かに涼さんは一時期女性アイドルでしたもんね!」

 

「愛ちゃん、多分そういう意味じゃないと思うんだよ」

 

「………………」

 

 え、そういう意味じゃないですよね? なんで目を逸らしたんですか和久井さん?

 

「ともあれ、頼んだわよ三人とも」

 

「任されました」

 

「恵美さんとまゆさんの代わりに頑張ります!」

 

「……愛ちゃん、どうして今恵美さんとまゆさんの名前が出てきたの?」

 

「なんとなくそんな気がしました!」

 

「「「?」」」

 

 何故か自信満々にそう言い切った愛ちゃんに三人揃って首を傾げるのだった。

 

 

 

 とまぁそんなわけで、僕たち三人による舞台裏撮影が始まったわけである。

 

「皆さん、おはようございます! 876プロ所属! 日高愛です!」

 

「同じく876プロ所属、水谷絵理です」

 

「同じく876プロの秋月涼です」

 

 まずは自分たちにカメラを向けて自己紹介。後に編集はされるので何時撮ってもいいとは思うんだが、やっぱり最初の映像は最初に撮っておきたかった。

 

「えっと……なんて言うんだっけ?」

 

「ちょっと愛ちゃん?」

 

「まぁ確かに何言うのか決めずにカメラ回し始めちゃったもんね」

 

 思わず顔を見合わせてクスクスと笑う僕たち。周りの人たちからも笑い声が聞こえてくる。

 

「えっと……あっ、そうだ! こういうときは『貴方たちがこれを見ている頃には』みたいな始まり方をすればいいんだっけ!」

 

「それ言った奴がお亡くなりになる奴だね」

 

「『ファンのみんな、いいかい、よく聞いてくれ』」

 

「それはミンチになるやつ!」

 

 嘘だと言ってよ絵理ちゃん!

 

 テイクツーと言いたいところだけど、多分この辺りも使われるんだろうなぁ……良太郎さんと幸太郎さんだったら間違いなく使うんだろうなぁ……。

 

 では改めて。

 

「今から私たち三人で、八事務所合同ライブの裏側をご案内しまーす!」

 

「八つの異なる事務所のアイドルが一堂に介する現場なんて本当に貴重だよ?」

 

「色々なアイドルからお話を聞いていこうと思いますので、皆さんよろしくお願いします」

 

 ということで無難なオープニングカットを撮影した僕たちは、舞台裏を歩き回ることにした。

 

「お? どうしたんだ涼、カメラなんて回して」

 

「あ、第一村人発見です!」

 

「村人!?」

 

 カメラを構えている僕たちを発見した春名くんたちが声をかけてきたことにより、愛ちゃんによって最初のインタビュー相手が決定した。

 

「上の人たちから舞台裏を撮影してくるように頼まれたんです」

 

「カメラを回し始めてから一番最初に出会ったアイドル?」

 

「おっと、そいつは光栄だな。是非インタビューしてもらうぜ!」

 

「インタビュー大歓迎っす! 包み隠さず何でも答えるっすよ! ハヤトっちが!」

 

「俺!?」

 

「三人とも、変なこと話さないでくださいよ」

 

「何を話せばいいんだろう……」

 

 では改めて、ステージ衣装に着替える前のラフな格好の男子高校生五人組にカメラを向ける。

 

「315プロダクション所属! 高校生バンドユニット『High×Joker』の五人です!」

 

「「「「「おはようございます!」」」」」

 

 さて、そこまで形式ばったことは聞かなくてもいいんだけど、何か舞台裏っぽいことを聞いた方がいいよね。

 

「皆さん、朝ご飯は何を食べましたか!?」

 

「愛ちゃん!?」

 

 初っ端の質問がそれぇ!?

 

「「「食べてないんだよぉ!」」」

 

「あ、うん、そうだったね……」

 

 愛ちゃんと絵理ちゃんは自宅で軽く食事を済ませてきたらしいのだが、生憎僕たち315プロ組は会場入りしてからケータリングで朝食にする予定だった。しかしこの大雪のせいで業者入りが遅れており、未だに朝食にありつけていなかった。

 

「まさかこんな大雪になるなんて思ってなかったからなぁ……」

 

「僕たち全員何事もなく現場入り出来たことだけでも幸運だと思わないと」

 

「そうは言うっすけどジュンっち、お腹ペコペコなのはなんともしがいっすよ~」

 

「あ、でもさっき何か業者が来てたみたいだから、そろそろ食事の準備が整うかも?」

 

「え、マジで!?」

 

 絵理ちゃん情報によると食事スペースになる予定の部屋に色々と運び込まれていたらしい。どうやら食事まで届かないなんて最悪な事態は避けられたようだ。

 

「こうしちゃいられないっす! 真っ先にご飯食べられるように待機してないと!」

 

「えっ、ちょっ」

 

 インタビューは!?

 

「あぁ! もたもたしてると翼さんに全部食われちまうからな!」

 

「翼さん?」

 

「えっと……あの子、そんなに食べるの?」

 

「いや、春名くんが言ってるのは765プロの伊吹翼ちゃんじゃなくて、315プロの柏木翼さん」

 

 あれは315プロのアイドル揃ってすぐのことだったか。親睦会ということで全員揃って焼肉に行ったことがあったのだが……。

 

「あれは……悲しい事件だったね」

 

 旬くんと夏来くんと共に当時のことに思いを馳せる。

 

「まさかあれほどとは……」

 

「店長さん泣いてたもんね……」

 

 とはいえ、あれはあれで「食べれるもんなら食い尽くしてみな!」って調子に乗ってしまった店長さんにも責任はあると思うんだ。

 

「い、一体何があったんでしょうか……!?」

 

「ってなわけで、オレたちは先に食事スペースに言ってるぜー!」

 

「舞台裏撮影も大事だろうけど、涼たちも食いっぱぐれないように気を付けろよ」

 

「って本当に行っちゃうの!?」

 

 話を聞く機会は後でもあるだろうけど、折角一番最初のアイドルなんだからせめてなにか一言ぐらい欲しかった。

 

「えっと……ファンのみんなに『これを見て欲しい』っていうものは何かある!?」

 

『………………』

 

 そんな僕の質問に、一瞬目を合わせた五人は揃って笑みを浮かべた。

 

 

 

「そりゃあ勿論!」

 

「僕たちの作り出す『音』ですよ」

 

「俺たちは唯一生演奏を披露するんだからな!」

 

「自信あるよ」

 

「ハイパーメガマックスに爆上げさせるっすよ!」

 

 

 

 最後は結構いい感じにまとめてくれたハイジョの五人を見送る。どうやら最初からグダグダに終わる展開だけは回避出来たようだ。

 

「どうしますか? 私たちもご飯食べに行きますか?」

 

「愛ちゃん、一応撮影中なんだから……」

 

「それに私たちはご飯食べてるでしょ?」

 

「ちょっとお腹空いてきちゃって……」

 

 声が大きいからなのかは定かではないが、愛ちゃんも割と燃費が悪いタイプ。それに朝ご飯も家を出る前に食べているならば、なんだかんだ言って五時間ぐらいは経っているわけだ。

 

「もうちょっとだけ他の所の撮影をしてから、僕たちも食べに行こうか」

 

「愛ちゃん、もうちょっと頑張れる?」

 

「頑張ります!」

 

 ……愛ちゃんももう十七歳だというのに、僕たちとの関係性が初めてあった頃と全然変わってないなぁ……相変わらず絵理ちゃんと二人で妹の面倒を見ているような感覚になる。

 

「……娘でもいいよ?」

 

「えっ」

 

 突然、絵理ちゃんから上目遣いでそんなことを言われてドキッとしてしまう。

 

「そ、それってつまり……」

 

 

 

「涼さんがお母さんですね!」

 

「母親役なの!?」

 

 

 

(……絵理さん、私をダシにして何を言うつもりだったんですか……!?)

 

(ふふっ、何を言うつもりだったと思う?)

 

 

 

 

 

 

「えーっと、ここからステージに上がることが出来ます!」

 

 カメラを回したまま僕たちはステージのすぐ裏にまでやって来た。

 

「今は現在進行形でリハーサル中だから、愛ちゃん静かにね?」

 

「分かりました!」

 

「静かに」

 

 さてステージの袖から邪魔にならないようにこっそりとカメラのレンズを外に向ける。

 

「皆さん、客席側に周藤良太郎さんと東豪寺麗華さんが座っているのが見えますか?」

 

「なんと実は今回のライブ、あのお二人が演出として参加しているんです」

 

 まるで『最初からその予定でした』というテイで話しているが当然そんなことはないが、あまりJANGO先生の事故について話さない方が良いと判断したためこういう言い方をさせてもらった。

 

「きっとこの映像を見ている皆さんは既に今回のライブを観終わっていると思いますが、実はトップアイドル二人による演出も含まれていたライブだったわけです」

 

「もう一度映像を見返して『あ、もしかしてこの演出は周藤良太郎?』『いやいや東豪寺麗華?』なんて予想をしてみてくださいね~」

 

 ちなみに僕たちは既にリハーサルの順番を終えていた。

 

「……あっ、良太郎さんがストップをかけました!」

 

「何か演出指導が入る?」

 

 ビデオカメラのマイクで良太郎さんの声拾えるかな……。

 

 

 

『美嘉ちゃん、今の投げキッスもう一回やってみようか』

 

「五回目なんですけどぉ!?」

 

『俺は妥協しないぞ! 君ならばもっとカリスマな投げキッスが出来る!』

 

「カリスマな投げキッスって何ですか!?」

 

 

 

「「「………………」」」

 

 ……本当に真面目な……真面目な演出指導のはずなんだけどなぁ……。

 

「ふざけて見えちゃうのは……私たちのせい?」

 

「いや……多分良太郎さんの自業自得だと思う」

 

 

 

『そう! 最後にペロって唇を舐める感じで!』

 

「ひ、ひぃぃぃん!?」

 

 

 




・舞台裏の撮影
・「恵美さんとまゆさんの代わりに頑張ります!」
デジャヴですか? いいえ天丼です。
だってこれぐらいしかやること(ry

・『ファンのみんな、いいかい、よく聞いてくれ』
・嘘だと言ってよ絵理ちゃん!
え、これも言ってない台詞なの?

・『美嘉ちゃん、今の投げキッスもう一回やってみようか』
三人目の被害者。



 感謝祭ライブ編のときとやってることが同じですが、開き直って続けていきます。前回と違って演者が多いからいっぱいかけるよ!
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