「お゛お゛お゛ぉぉぉ……!」
「到底アイドルが出す声とは思えませんわね……」
「……もしかして千鶴さんの周りって、変な人ばかり集まったりします?」
「それならば貴女もその対象ですわよ、にこ」
ここまでの五曲で既に見るも無残な状態になってしまった亜利沙に、思わず隣に座るにこと共に哀れみの視線を向けてしまった。
しかし亜利沙の気持ちもほんの少しだけ分かる気もする。というか亜利沙が隣にいることで冷静になれているが、もし家で一人でライブ配信を見ていたらきっと今の亜利沙と同じ状況になっていた可能性が高い。
「亜利沙、気持ちは分かりますがもうちょっと落ち着いてステージを見れませんの?」
「無理です……今のありさは無条件に涙と鼻水を垂れ流しながらペンライトと歓声を発する舞台装置に成り果てています……」
「せめて鼻水はやめなさいな」
「もうちょっとマシな機能とかないんですか……?」
「見た光景と聞いた歌を心のメモリーに焼き付ける機能が……」
「多分その機能壊れてますわよ」
大体ライブ終了後記憶喪失になる定期。
そんなやり取りをしている内に次の曲が始まる雰囲気になる。
きっと次の曲でも初手亜利沙の
「……あっ」
――そんな呆気に取られるような亜利沙の表情に、釣られて私も呆気に取られてしまった。
流れてきたこのイントロは、確か……。
『初めましての人は初めましてー!』
『知ってる人はお待たせしました』
『こっからはボクたちのステージ!』
『『『聞いてください! 私たちの歌!』』』
Brand new!
『#ユニット名募集中』
辻野 あかり/砂塚 あきら/夢見 りあむ
『『『Stay tuned!』』』
「………………」
あの亜利沙が、アイドルが歌っているステージを目の前にした亜利沙が、呆けていた。それが私にとって衝撃的な光景だった。
(夢見りあむさん……でしたっけ)
今ステージ上で踊っている青のメッシュが入ったピンク入りの髪のアイドルが、亜利沙や良太郎と同じ『集会』のメンバーだということは話には聞いていた。
かつてアイドルになる以前から交流がある少女が、こうしてステージの上に立っていることに対して、やはり思うところがあるのだろう。
それは淡い嫉妬か。それとも感動に似た熱い感情か。その答えはきっと、うっすらと彼女の目元に光るものが教えてくれて……。
(よ、よかった~……『UNIQU3 VOICES!!!』じゃなかったぁ~……!)
……あれ、何故か安堵してませんこと?
「今回の合同ライブで……皆さんにはユニットデビュー曲である『Brand new!』を歌っていただきます」
「「「セーフ!」」」
Pサンの口から告げられた曲名に、固唾を飲んで待っていた自分たちは思わず声を揃えながら手を横に広げて『セーフ』のジェスチャーをしてしまった。
「……私としては、最新曲である『UNIQU3 VOICES!!!』でも良いのではないかと思ったのですが……」
「ないって! Pサマそれだけは絶対にないって!」
「そうですよ! それだけはダメですって!」
「飛び火で自分とあかりチャンまで燃えるのだけは勘弁デスよ」
「あきらちゃんそれボクが燃える前提じゃない!?」
「燃えないとでも?」
「………………」
りあむサンは口を噤んだ。
……別に自分も『UNIQU3 VOICES!!!』のことが嫌いなわけじゃない。というか自分たちの歌を嫌うアイドルがいるとも思えない。少なくとも自分たちは違う。
ならば何を懸念していたのかというと……包み隠さず言うならば『身内のノリが過ぎる』のである。一番はまだいい。あかりチャンと自分とりあむサンの個性を包み隠さず歌っているので、寧ろ自己紹介曲としては最適なのかもしれない。しれないが……。
「うん、ボクも流石に他事務所アイドルのファンがいる前で『人生ってやっぱりチョロいわ』は流石に……」
「……そうですね、無用なリスクは避けましょう」
「そもそもそういう意味での冒険だったら『ボクたちが出演する』という事実だけで達成していると言っても過言ではないしね」
「『周藤良太郎』と『魔王エンジェル』と『Jupiter』と『765プロ』が出演するライブですもんね……」
「……未だに実感が湧かないんご……」
果たしてこのやり取りも何回目になるのだろうか。初めて八事務所合同ライブに参加させてもらうと知った日から、一体何度『ワンチャンこれ夢じゃね?』とお互いの頬を抓り合ったことか。
「あぁ懐かしいなぁ……出演が決まった直後のこと……」
「先輩たちからめっちゃ睨まれて怖かった……」
「人聞き悪いですよりあむサン、そんな怖い先輩なんて……」
――三人とも、合同ライブ出演おめでとう!
――ダンスや歌が不安だったら、いつでも相談してね!
――……ね?
「……ウン! 美波サンすっごく優しかったデスよね!」
「目が笑ってなかった……」
「あかりちゃん、シッ!」
これ以上思い出さないようにしよう。なんだかんだ言って普通に良いアドバイスをくれたしレッスンも見てくれた。間違いなく良い先輩だった、ウン。
「話が逸れてしまいましたね。……ということで、お三方にはこれからは通常の営業やレッスンの他に、合同ライブに向けてのレッスンを受けていただきます」
「はいっ!」
「勿論デス」
「うへぇやることが増える……いやナンデモナイデス」
口ではこう言っているが、実はりあむサンだってやる気満々なことぐらいそれなりにユニットとしてやって来ている自分には分かっていた。きっとあかりチャンも分かっていて、りあむサンを横目にしながらクスクスと笑っている。
「……合同ライブ、共に頑張りましょう」
「「「はい!」」」
「個人的にはいつもの『りあむちゃん節』を期待していた自分がいる」
「鬼かな?」
場所は変わらずメンバーは変わり、モニターの前には俺とみのりさんの二人。他のメンバーは準備だったりライブ中インタビューだったりで席を外してしまった。
「まぁ、『UNIQU3 VOICES!!!』は特に二番の歌詞がね」
「自分の曲に誇りを持つこととTPOを弁えることは別物だからね……」
「でも大丈夫、
「お願いだから手加減してあげてね……!?」
『まるで恋みたい、恋みたい』
『溢れるドキドキで、ねぇトキメキで』
『視界ごと世界ごとキラキラ』
『『『今 Changing!』』』
「……正直なことを言うと、俺も『りあむちゃんがアイドルになる』って聞いたときは疑っちゃったよね」
「りあむちゃんの頭を?」
「全否定はしないけど流石に自分の耳だよ」
あのみのりさんがしれっと毒を吐くぐらい、俺たちは気安い関係だということである。
「なんというかこう……承認欲求は強いけど自己肯定感は低い子だったじゃない?」
「そうですね……」
自他共にチヤホヤされるのは好きっていう認識ではあるが、そのために自分で何かを行動するのが苦手という印象。つまり
「心理学者でもカウンセラーでもないからその辺りは深く考えませんが……まぁきっかけがあるとするならば、あの子でしょうね」
「……あぁ、今頃涙と鼻水を流しながらペンライトを振ってるであろうあの子ね」
「それはそれとして可愛いですよりあむちゃあああぁぁぁん! 誰が何と言おうと貴女も可愛いですよおおおぉぉぉ!」
「復活しましたね」
「亜利沙はこうでなくちゃいけませんわ」
ワンチャンモニターに映ってるかと思ったけど、流石に探すのは難しかった。多分開演前の『周藤良太郎を探せ』よりも難易度は高いと思う。
「『いつも自分たちと一緒に遊んでいた同年代の女の子が突然アイドル』になって、その上で『自分も同じようにアイドルにスカウトされた』んだから」
きっと『今のままの自分でも誰かが必要としてくれる』という可能性を見出したのだろう。
「……いやホントりあむちゃんをスカウトしたプロデューサーの慧眼には恐れ入るね。よくもまぁあんな子をアイドルにしたいと思ったよ」
「みのりさん、今日ちょっと毒多くないですか?」
本番前で緊張しているのだろうか。
「……でも、そうですね。本当に良い目をしてましたよ」
俺の視線はりあむちゃんから……一人の少女に移る。
――私、頑張るのって好きじゃないんです。
「………………」
その少女……
・『Brand new!』
元はあかり・あきら・つかさ社長の三人の楽曲ですが、本作ではユニ募の楽曲とさせていただきました。
本来のユニット曲は……その……。
・『UNIQU3 VOICES!!!』
こちらが本来のユニット曲。
初めはこちらの曲を歌わせるつもりだったのですが、流石に色々なことを考えて自重しました。
勿論嫌いな曲ではないです、東京公演とか喉が掠れるぐらいコールしましたし(弁解)
・そういうチャンス
アイ転がこのまま綺麗なりあむで終わらせるとでも……?
・私、頑張るのって好きじゃないんです。
実はユニ募の三人の内『一番周藤良太郎と関係しそうな闇』を抱えている少女。
続いて赤組からユニボの登場です。ユニクスではありません『#ユニット名募集中』です。
流石の自分も他事務所のファンが大勢いる中で『オタクども!』と言わせる勇気はなかった。それぐらいの慈悲心があった。……まぁ言わせないとは言ってないけどね!
次回、久しぶりに良太郎にダメージ。
『どうでもいい小話』
アイマス19周年おめでとう!! そしてアイマスエキスポ開催決定!!!
絶対!!! 参加!!! するぞ!!!