アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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たまには頭の悪いお話を。


Lesson421 月の揺らめき VS 星の瞬き 2

 

 

 

「……今更聞く必要もないことだと思うんだけど、一応聞いてもいいかしら」

 

「勿論だ奏。俺はお前の大乳はとても素晴らしいと思ってるぞ」

 

「それは聞く必要『も』ないことじゃなくて聞く必要『が』ないことよ」

 

「ふっ、俺のことを分かってくれてるんだな……ありがとう奏」

 

「ちげぇよアホ」

 

「奏ちゃん口調!?」

 

 

 

 引き続き『LiPPS』との打ち合わせの模様をお送りしているわけなのだが、冒頭でいきなり奏がキレ始めた。

 

「落ち着けって奏。ほーらストリングプレイスパイダーベイビーだぞー」

 

「怒りが冷めやらない内にツッコミどころを増やすのやめてもらえない!?」

 

「わー! 良太郎さん、それなにー!? ヨーヨー!?」

 

「ほーらストリングプレイアトミックファイアー!」

 

「意味わかんなーい! 面白ーい!」

 

 フレちゃんと志希には受けたけど他の三人にはやや受けだった。みのりさんとかには受けたんだけどなぁ。

 

「それで奏、何が聞きたいんだ?」

 

「……え?」

 

 あからさまに不機嫌だった奏がポカンとした表情に変わる。話を脱線させた俺が言うのもなんだけど話題を忘れないでほしい。

 

「……今更聞く必要もないことだと思うんだけど、一応聞いてもいいかしら」

 

 どうやら思い出したようなのでテイクツー。

 

「どうした?」

 

「私たちが他の事務所のアイドルの曲を歌うこと、勿論上は通しているのよね?」

 

「逆に聞くけど、お前たちの上が通さないと思うか?」

 

「「「「「………………」」」」」

 

 五人の視線が上を向く。

 

 

 

 ――何? 我が『LiPPS』の五人が男性アイドルの曲を?

 

 ――しかも、あの『MOON NIGHTのせいにして』だと?

 

 ――……最高過ぎひん? 君よく天才って言われへん?

 

 

 

「多分こんな感じだったんでしょうね……」

 

「あり得る……」

 

「お前たち自分の事務所のトップのことをどう思ってるんだよ」

 

「実際どうだったの?」

 

「もうちょっと酷かった」

 

「酷かったんだ……」

 

 本当にあの人、なんで根っこの部分があれだけ限界オタクなのに常日頃からクールな外面を保てているのかが謎である。多分俺より取り繕うの上手だぞ。

 

 

 

「ねーねー、この曲ってさ、あれだよね、なんか二番のサビのところですっごい盛り上がるやつ」

 

 一人大人しくペラペラと企画書を捲っていた志希が珍しくそんなことを尋ねてきた。

 

「ん? なんだ知ってるのか?」

 

「これでも業界最高峰の事務所に所属するトップアイドルなんですけどー」

 

「業界最高峰の事務所に所属するトップアイドルは失踪なんてしないと思わないか?」

 

「業界最高峰の事務所に所属するトップアイドルは女性の胸をガン見しないと思わない?」

 

「なにこの人たち、ブーメランで殴り合ってる」

 

 せめて投げ合ってると言ってくれないかな周子ちゃん。

 

 ちなみに志希の言う『凄い盛り上がる二番のサビ』というのは、メンバー全員でファンに向かって『おいで』と言うところである。

 

「そこがこの曲で一番盛り上がるところと言っても過言ではない。何せファンの間では『突然(コロ)すな』とか『推しの元医者が(コロ)しに来た』とか『どうして俺たちを(コロ)そうとするんだ!』とか大絶賛されてるからな」

 

「文面が物騒過ぎません?」

 

 天道輝の大人の余裕のある笑み、柏木翼の照れが混ざる笑み、桜庭薫の無愛想さから漏れ出る笑み、それぞれ異なる色気から繰り出される『おいで』の破壊力は凄まじく、女性ファンどころか男性ファンからも黄色い歓声が上がるほどである。実際に初めて聞いたみのりさんは奇声を上げながら真後ろにぶっ倒れたとピエールが教えてくれた。

 

「だからお前たちも、この曲を歌う以上は同程度の殺傷力を持った『おいで』を披露しなければいけない」

 

「歌唱に殺傷力を求められる日が来るとは思わなかった……」

 

 アイドルとしてまた一つ勉強になったな、美嘉ちゃん。

 

 

 

 というわけで。

 

「緊急開催! LiPPS『おいで』選手権ー!」

 

「唐突になに!?」

 

「待ってました~!」

 

「いやぁもうそんな時期なんだねぇ~」

 

「あたし、この選手権を大画面で観るためにテレビ買い替えたんだ」

 

「なんか三人は既に受け入れてるし!?」

 

 相変わらず置いてけぼりの奏と美嘉ちゃんだが、二人はいつまでも順応しないままでいて欲しい。『LiPPS』が全員ボケに回ったら消去法で俺がツッコミに回る羽目になるから。

 

 さてテンションはふざけているがやることは真面目である。実際この部分の練度でこの曲のパフォーマンスの良し悪しが決まると言っても過言ではないので、現状どの程度の『おいで』が出来るのかを見ておきたいのだ。

 

「ではまずエントリーナンバー一番の方からお願いします」

 

「は~い! エントリーナンバーワーン! わんわんわおーん!」

 

「これは元気なフランス犬ですね。素晴らしい毛並みです」

 

「そういえばフレちゃん猫やめてたんだっけ」

 

「フレちゃーん、お手!」

 

「皆さんお手を拝借!」

 

「「「よ~!」」」

 

 パンッ!

 

 

 

「やめて奏ちゃん行かないで私をこの部屋で一人にしないで!」

 

「放してちょうだい美嘉!」

 

 

 

 気を取り直して、エントリーナンバー一番、宮本フレデリカの場合。

 

「おいでぇ~?」

 

 あはーんとセクシーポーズ(笑)を決めながらバチコンとウインクをするフレちゃん。

 

「うーん、そういう色気じゃないんだよなぁ」

 

「……あれ意外と真面目なコメント」

 

「どうしたのよ良太郎先輩、行間で頭ぶつけた?」

 

 そうだな、原因があるとするならば行間で奏に「いい加減にしろ」って言いながら後頭部をぶん殴れたことだろうな

 

 

 

 エントリーナンバー二番、一ノ瀬志希の場合。

 

「おいで~?」

 

 猫のポーズで()()を作る志希。

 

「安直だな」

 

「志希の猫キャラは今更じゃない?」

 

「インパクトはないかなぁ」

 

「せめて猫耳付けないと」

 

「可愛いけど今じゃないかな~」

 

「なんで満場一致で不評なの!?」

 

 

 

 エントリーナンバー三番、塩見周子の場合。

 

「……おいで」

 

「お?」

 

 表情は薄く、やや低い声。これはなかなか女子受けしそうな『おいで』ではなかろうか。

 

「えっ、凄いじゃない周子」

 

「うん、思わずちょっとドキッとしちゃったもん」

 

 これには他のメンバーからも中々の高評価で、周子ちゃんもちょっとドヤ顔。

 

「ふっふっふ~ん、これはきっと参考にしたアイドルが良かったんだろうねぇ~」

 

「へぇ、誰を参考にしたの?」

 

「勿論! 『High×Joker』の榊夏来君! あの儚げな笑顔がいいんだよ!」

 

『……アッハイ』

 

「普段は控えめで四季君や春名君の影に隠れがちなんだけど、ライブ中に目が合うと小さく手を振ってくれるところが本当に可愛くてさぁ! それなのに自分の意思を主張するときのあの力強さがまたよくて――!」

 

「あぁ、周子ちゃんが語りだしちゃった……」

 

「これはしばらく止まらないわね」

 

「まゆちゃんタイプだったか……」

 

 まさか周子ちゃんが『LiPPS』面白枠の首位争いに躍り出てくることになるとは思わなかった。

 

 

 

 エントリーナンバー四番、城ヶ崎美嘉の場合。

 

「おいでっ」

 

「照れナシ」

 

「イケボヨシ」

 

「目つきヨシ」

 

「少々のギャル感アリ」

 

「乳ヨシ」

 

「ここまでまともだったのにアタシのタイミングでボケに走らないで貰えますかぁ!?」

 

 いやだってコメントを最後に回されたってことはそういうことを期待されてるのかと思って。

 

「それに俺が落とさなかったらこのまま無難に流されて終わったけど、逆に美嘉ちゃんはそれでよかった?」

 

「………………」

 

 無言で頭を抱えてる時点で美嘉ちゃんも既に引き返せないところに行ってしまったんだと思う。お労わしや美嘉上。

 

 

 

 エントリーナンバー五番、速水奏の場合。

 

「……その前にお手本を見せてもらいたいところね」

 

「ん? お手本?」

 

 大トリという大役を前にして奏がそんなことを言い出した。

 

「ほら、なんのために貴方がいるのかしら?」

 

「一応ライブの責任者としてステージの話を持って来たからここにいるんだけど」

 

 確かに大喜利大会が始まったきっかけは俺だけどさ。

 

「けどまぁ、お手本が見たいって言うんなら見せてやってもいいぞ」

 

 実はこう見えて『周藤良太郎』は演技派アイドルなんですよ。

 

「イケてる大人の男性のフリをするのなんて目じゃないぜ!」

 

「つまり自分はそうじゃないという自覚はあると」

 

 自己分析は得意です。

 

「あと誰かに向けて言う感じにするといいんじゃないかしら」

 

「ふむ、面白そうだな」

 

(ふふっ、乗ってきたわね。それじゃあ美嘉辺りを真っ赤にしてもらって……)

 

「それじゃあ奏」

 

「……え」

 

 立案者だし、こいつ相手でいいか。

 

「ちょっ、まっ!?」

 

 

 

 

 

 

 後に城ヶ崎美嘉はこう語る。

 

 

 

 ――えぇ、凄かったですよ。

 

 ――奏ちゃんの顎に触れるか触れないか辺りに手を添えて。

 

 ――目を覗き込むように真っすぐ見つめて。

 

 ――す~っごい甘え声で。

 

 

 

 ――あんなに真っ赤になった奏ちゃん、初めて見ました。

 

 

 

 

 

 

『『『『『DO WAH! DO WAH!』』』』

 

『望むならば』

 

 

 

『『『『DO IT! DO IT!』』』』

 

『この夜空も』

 

 

 

『『『『『DO WAH! DO WAH!』』』』』

 

『ジュエルにして』

 

 

 

『銀河までSPECIAL SHOW!』

 

 

 

『『『『『おいで』』』』』

 

 

 

ぴぎゃあああぁぁぁあああぁぁぁ!

 

 

 

 

 

 

「うわ歓声エグッ」

 

「でも気持ち分かるなぁ……俺もちょっとドキッとしちゃったもん」

 

「へぇ? ハヤトっちは誰にドキッとしちゃったんすか?」

 

「いやそういうのじゃなくて……」

 

 

 

「た、大変! トラブル発生!」

 

 

 

「!?」

 

「ど、どうしました!?」

 

 

 

「みのりさんが息してないの!」

 

「「「……いやまぁ確かに大変なトラブル!」」」

 

 

 




・ストリングプレイスパイダーベイビー
・ストリングプレイアトミックファイアー
ハイパーヨーヨーのブームが再来してまた過ぎていった。

・お前たちの上
合同ライブの関係者席で滅茶苦茶ハッスルしてる美人のお姉様がいるらしい。

・『おいで』
リアルで喰らうと男女関係なく黄色い声が出る。

・『どうして俺たちを(コロ)そうとするんだ!』
昏き星が六年前ってマジ???

・周藤良太郎の『おいで』
持ち前の演技力と声遣いであらゆる防御を貫いて特効が入る。相手は〇ぬ。



 最近真面目な話ばっかり書いてたから、たまには頭の悪いオチを書きたかった。

 番外編が書きたいよぉ……でもライブ中に番外編挟むとテンポが悪くなるから……。



 Q 『LiPPS』がムンナイを歌ったということから考えられる、次の曲は?
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