アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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※合法です。


Lesson422 月の揺らめき VS 星の瞬き 3

 

 

 

 

『『『『『HEY HEY HEY! ロマンティック MUSIC!』』』』』

 

『『『『『HEY HEY HEY! 解放してゆく』』』』』

 

『『『『『SHY SHY SHY! 近いね TO SHY SHY!』』』』』

 

 

 

『まさに奪わせてもらおう』

 

『月夜のせいにして』

 

 

 

『『『『『MOON NIGHT MAGIC ご用心!』』』』』

 

 

 

 

 

 

 ステージ上の『LiPPS』に向けられて怒号を通り越してただただ純然たる爆音と化した歓声が送られる。俺も一般人としてライブに参加していたのであれば、きっと彼らと同じように歓声を上げていたことだろう。

 

 しかし今は現場責任者としての立場がそれを許さない。そうじゃなかったとしても()()()()()()()()()()()のだ。

 

「良太郎と麗華ちゃんは?」

 

『……まだ』

 

 一縷の望みをかけた留美への問いかけの返事は芳しくない。

 

 『周藤良太郎』と『東豪寺麗華』の行方が分からなくなり、そろそろ十分が経過しようとしていた。

 

「………………」

 

『先輩……』

 

 二人がなんの理由もなく、そして俺に一言も相談することなくこんなことをするとは思えない。良太郎がどれほど一つ一つのステージを大事にしているのかは俺が一番よく分かっている。分かっているからこそ、二人が揃って行方不明になっている今の状況がどれだけ深刻なものなのかを十分に理解している。

 

「……次の曲が終わるまでに二人の安否が確認できなかった場合――」

 

 

 

 ――ライブを中断する。

 

 

 

『っ、先輩、それは……』

 

 留美が悲痛な声を上げるが、これは現場責任者として正しい判断であると自信を持って言える。演者が行方不明のままライブを続行できるわけがない。

 

「だから全力で探してくれ」

 

 それでも、二人のステージが、『周藤良太郎』のステージを見たいのは俺だって同じなんだ。『周藤良太郎』のステージを望む気持ちならばここに集まってくれたどのファンよりも、『朝比奈りん』にだって負けるつもりはない。

 

 諦められるわけがない。自分の役割が無ければ俺自身が探し回りたいところだけど、責任がそれを許さない。

 

「頼んだ、留美」

 

『……はいっ!』

 

 

 

 

 

 

「いやもうホンマあかんて……」

 

「なんて?」

 

 顔を抑えながら蹲るありさの声は周りの爆音のような歓声によってかき消されたが、これまでの付き合いによりなんとなく何を言っているのか分かってしまった。

 

「………………」

 

 ちなみに隣のニコも同じようなリアクションをしていた。

 

 だが気持ちは分からないでもない。あの『LiPPS』があの『MOON NIGHTのせいにして』を歌ったのだ。きっと今頃配信を見ていた人たちによってSNSが大騒ぎになっていることだろう。間違いなくトレンド入りもしている。

 

「はぁ……これを超える衝撃なんてきっとありませんね……あとは消化試合みたいなもんですよ……」

 

「どう考えてもそれは死亡フラグでしょう……」

 

 もしかしてまだ『周藤良太郎』や『魔王エンジェル』のステージが終わっていないことを忘れているのでは?

 

(それにしてもムンナイをリップスが歌ったということは、ドラスタは何を……)

 

 そこまで考えて、ふと頭を『それ』が過る。

 

(え、まさか……そ、そういうことですの!?)

 

 これはマズい! 場合によってはリップスのムンナイ以上の被害が出る可能性がある! 少なくとも亜利沙は耐えられるはずがない! 

 

 そんな私の危惧は――。

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 ――無情にも的中してしまった。

 

 

 

「えっ、えっ、えっ」

 

「こ、このイントロは……!?」

 

「亜利沙! ニコ! 心を強く持ちなさい!」

 

 一瞬目を閉じて耳を塞いで口を開いて対ショック用意をさせるべきか悩んだが、いくらなんでもそれはライブとして勿体なさ過ぎると思い直す。それにこれを見逃したとしたら口惜しさで命を落としてしまう可能性があることを考えると、せめて前のめりに倒れさせてあげるのが優しさだろう。

 

「「ま、まさか……!」」

 

「来ますわっ!」

 

 

 

Tulip

 

 『DRAMATIC STARS』

 天道 輝/桜庭 薫/柏木 翼

 

 

 

ぴぎゃあああぁぁぁあああぁぁぁ!

 

 

 

 会場が悲鳴に包まれた。

 

 

 

 

 

 

「絵理さん、あたしコレ何かの教科書で見たことある気がする。集団ヒステリーってやつだよね?」

 

「多分違うよ?」

 

「いや確かに『大勢の人たちが奇声を発しながらその場に崩れ落ちる』光景はもう集団ヒステリーでもいい気がする……」

 

 愛ちゃんと絵理ちゃんと共にモニターを見ていた僕は、会場に広がる惨状としか呼べない光景に乾いた笑いしか出てこなかった。

 

 先ほどの赤組『LiPPS』の『MOON NIGHTのせいにして』に対抗するように、今度は白組の『DRAMATIC STARS』の『Tulip』。会場のファンたちは先ほどと同等以上の衝撃に襲われていることに違いない。寧ろ一撃目を喰らって意識が遠のいているところに放たれる二撃目にノックアウトされていることだろう。

 

 

 

『唇は喋るためじゃなく』

 

『『『キミのために キスするために』』』

 

『『『咲いている』』』

 

 

 

 サビに入り、会場はまた一段ボルテージが上がった。

 

「リハーサルのときもりあむさんが凄いことになってましたもんね」

 

「あの人、男性アイドルも女性アイドルもイケる口だから人生楽しそうだよね?」

 

 多分絵理ちゃん的には誉め言葉のつもりなんだろうけど、若干誤解を招きそうなワードチョイスである。

 

 

 

『『『Kiss me Chu Chu Chu Chu Chu Chu lip』』』

 

『『『Kiss me Chu Chu Chu Chu Chu lip』』』

 

『『『この後はもっと skip skip skip』』』

 

 

 

『……なんてね』

 

 

 

ぴぎゃあああぁぁぁあああぁぁぁ!

 

 

 

 

 

 

「というわけで今回『DRAMATIC STARS』に『LiPPS』の曲を歌ってもらうわけですが」

 

「初耳なんだが!?」

 

 うーん再放送。

 

 

 

 ここは315プロダクションの一室。今回のライブにおける歌唱楽曲は以下省略。

 

 続いては『DRAMATIC STARS』による『Tulip』の歌唱である。

 

「俺たちのムンナイをリップスの五人に歌ってもらうって話だけでも驚きだったのに……」

 

「ま、まさか俺たちがリップスの曲を歌うことになるなんてね……」

 

「………………」

 

 輝さんと翼さんは驚きの声を上げ、薫さんも声は出さなかったものの口元が引き攣っているし眉毛もピクピク動いているので相当驚いている様子である。

 

「リップスとドラスタの二組に登場してもらうタイミングのテーマは『大人っぽく』『妖艶な』感じなんですよ」

 

 イメージとしてはこう……雨に濡れてワイシャツが透けているイケメン的な。

 

「あ、ちなみに実際にステージ衣装をワイシャツにして適度に濡れてもらうっていう案もあるんですけど、どうですかね?」

 

「歌唱することを前提でステージ演出の話をしないでもらえませんか!?」

 

「いや依頼された以上は了承するんだけどさぁ!?」

 

「そうですよね、いくら室内とはいえ十二月の真冬にやるような演出じゃないですよね」

 

「そうだけどそうじゃなくてぇ……!」

 

「あ、温水とかどうでしょう」

 

「そろそろ会話の主導権をこっちにも回してもらえないか!?」

 

 ツッコミで叫び続けている輝さんや翼さんは勿論、黙ったまま頭を抱えている薫さんも限界そうなので一息入れることにする。

 

 

 

「……この際、歌唱すること自体はいいとしよう。だが一つ聞きたいことがある」

 

 暖かいお茶を口にして落ち着いたところで、薫さんが胡乱げな目で質問してきた。

 

「勿論歌詞は変えるんだよな?」

 

「弄るのはキーだけです。歌詞はそのまま歌っていただきます」

 

「っ!?」

 

「えっ!?」

 

「思いっきり女の子の歌詞だよ!?」

 

 薫さんの疑問に答えると、彼を含めて三人の目の色が変わった。

 

 三人の言いたいことは分かる。企画会議でも『歌詞はそのまま派』と『歌詞は変えるべき派』の二つに分かれてしまったほどだ。

 

 企画会議は熾烈を極め、埒が明かないと判断した俺は『スペシャルアドバイザー』に意見を求めることにしたのだ。

 

「す、スペシャルアドバイザー?」

 

「曲を作った人とか……346プロの偉い人とか?」

 

 あ、翼さんある意味近い。

 

「この人です」

 

「えっ!?」

 

「今日来てるの!?」

 

 部屋の向こうに「どうぞお入りください」と声をかけると、彼は厳かに入室した。

 

 

 

「どうも、スペシャルアドバイザーの渡辺みのりです」

 

「「なんでぇ!?」」

 

 

 

 伊達眼鏡をかけてクソ真面目な表情で部屋に入って来たみのりさんは、驚愕のあまり混乱状態になっている三人を尻目にホワイトボードの準備をし始めた。

 

「今回、周藤良太郎氏の依頼によりお三方へ『Tulipを歌うことの意味』を語らせていただきたいと思います。皆さん、中時間お付き合いいただきます」

 

「中時間やるのか……!?」

 

 未だに混乱から抜け出せていない三人を尻目に、みのりさんは淡々と説明を始めるのだった。

 

 

 

 はーい、みのりさんによる『Tulip』講座、はーじまーるよー!

 

 

 




・ライブを中断する。
※しません。

・『Tulip』@DRAMATIC STARS
デレステが誇る最強の夢女子(男も含む)製造楽曲。
ムンナイに引き続き当然歌わせた理由はMOIW2023。

・「スペシャルアドバイザーの渡辺みのりです」
元ネタは『渡辺みのりの中の人が歌唱メンバーを集めて「男の子がTulipを歌う理由」を語った』という逸話。流石顔と声が良い俺らことたかぴだぜ……。



 大方の人たちが予想していた通り、ドラスタの三人にチューリップを歌っていただきました。理由は作者が聞きたいからです。お願いですMOIW2025で実現してください妹が病気なんです()
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