アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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続けるつもりなかったのに続きました!


番外編89 Another Lesson02 初星学園大学プロデューサー科

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

 

 

 

「えっ!? りょーくん、大学行くの!?」

 

 

 

「……そんなに驚かれるのは流石に心外なんだが」

 

 いじけちゃおっかなートップアイドルだけど友人からの些細な発言に傷付いていじけちゃおっかなー。

 

「えっ!? えっ!? そ、そんなつもりないよ、りょーくん! ごめんね! ぎゅーってしてあげるからこっちおいで!」

 

「わーい!」

 

「わーいじゃない」

 

 両手を広げてウェルカム状態になったりんの胸に飛び込もうとしたら麗華に丸めた雑誌で顔面を引っ叩かれた。普通に痛い。

 

「で? どうなのよ? 本気なの?」

 

「俺は本気だぞ。拗ねたフリをしてでもりんの胸に飛び込んでやる」

 

「はぁー……」

 

 麗華が拳に息を吐きかけるという古典的な『今から暴力を振るいますよ』ムーブを始めたので今日の所は諦めておいてやろう。

 

「アタシは全然構わないのにー」

 

 諦めた心が凄いグラつくのでやめていただきたい。あぁ、身体が勝手にりんの方に傾いていく~。

 

 殴られた。

 

 

 

 

 

 

 とりあえず楽屋に遊びに来てくれたりんと麗華に改めてお茶を出して歓迎の態度を示す。

 

「ほら、活動縮小するって言ったじゃん?」

 

「言ったわね」

 

「凄い悲しい」

 

 まるで動じることのない麗華に対して分かりやすく不満を示すりん。対照的な二人に事情説明を続ける。

 

「アイドルとして活動を続ける上で、ちょっと勉強したいことが出来たんだよ。だから丁度いい機会だし、しっかりと大学で勉強しようかなって思って」

 

「……まぁ心がけとしては悪くないわね」

 

 麗華は「アンタの口からそんな真面目な発言が出るとは思わなかったけど」と棘を含ませることは忘れなかったが、それでも珍しく俺の意見に対して肯定の姿勢を見せた。

 

「麗華は行かないのか? どうせ将来的には財閥の経営に回るんだろ?」

 

「それは昔からしてるから、今更大学に行ってまで学ぶことなんてないわよ」

 

 そういえばコイツ高校にすら行ってなかったな。

 

「りんは? 進学するのか?」

 

「実はアタシもりょーくんと同じ大学を受験する予定でぇ~」

 

「俺まだ何処受験するのか言ってないぞ」

 

「というかアンタは1054の契約でそのまま事務所所属よ諦めなさい」

 

 へぇ、『魔王エンジェル』ってそういう契約になってたのか。

 

「それでいい加減に吐きなさいよ。何処行くつもりなのか」

 

「そうそう。りょーくんのことだから普通の大学に普通の講義を受けに行くってわけじゃないんでしょ?」

 

 何故かハードルが上がっているような気がするが、確かに今更普通の大学に普通の講義を受けに行くつもりはない。これからも『トップアイドル』として活動する上で身になることを学ぶために大学受験を選んだのだから。

 

 

 

初星(はつぼし)学園だ」

 

100(じゅうおう)プロじゃない!?」

 

 

 

 流石麗華、反応が早い。

 

「初星学園って……確かアイドルの学校だよね? なるほど、りょーくんはそこでアイドルについて勉強がしたいわけだ」

 

「だったら自分の事務所(ところ)の学園に行きなさいよ!? 961プロにだって極月(ごくげつ)学園あるじゃない!? なんでわざわざ他事務所の学園に行くのよ!?」

 

「そーだよりょーくん! 他事務所に行くんだったらウチでもいいじゃん!」

 

「アンタは黙ってて!」

 

「いや今更自分の事務所のアイドル理論を学んでどうするんだよ。そもそも俺は黒井社長の方針好きじゃないし」

 

「……本当に今更だけどアンタなんで961にいるのよ」

 

「本当に今更だな」

 

 その疑問を抱くには三年遅い。

 

「そもそも俺が入りたいのは『アイドル科』じゃなくて『プロデューサー科』なんだよ」

 

「プロデューサー科?」

 

 極月学園になくて初星学園にあるもの、それがアイドル事務所のプロデューサーとしての知識や理論を学ぶための学科である『プロデューサー科』だ。

 

「勿論アイドルとしての全てを知っているとは言わないが、それでもプロデューサー側からの目線で今後の活動を見直してみたかったんだよ」

 

「………………」

 

 黙り込んで思案顔になっているところを見ると、どうやら麗華も俺の考えに一理あると思っているらしい。

 

「ちなみに学園長である十王氏には既に話は通してある」

 

 爆笑された上で「歓迎しよう!」って親指を立てる十王氏の姿を思い出した。

 

「……黒井社長はなんて?」

 

「最初ごねたけど『産業スパイ』って言ったら長々と言い訳した後オッケー出してくれた」

 

「あの人はホントに……」

 

「というわけだ。りん、しばらくは大学生活との兼業で活動は自粛するけど……」

 

「……うん、大丈夫。ちょっと寂しいけど……アタシは待ってるから」

 

 デビュー当初から切磋琢磨し合ってきたライバル兼親友であるりんは、少し涙を浮かべながらも微笑んでくれた。

 

 

 

「アタシの胸は、いつでもりょーくんウェルカムだから!」

 

「マジ? 願書提出しよっかな」

 

 殴られた。

 

 

 

 

 

 

 ……なんてやり取りがあったのも既に一年以上前の話である。

 

 

 

「プロデューサー科楽しすぎワロタ」

 

 初星学園大学プロデューサー科二年、周藤良太郎。キャンパスライフ満喫中である。

 

 ちなみに学園長には話は通したが、流石に『周藤良太郎』の名前のまま通うと俺と学園側双方に不利益しか生まないため偽名で通っている。ここでの俺は『篠ノ之(しののの)良太郎』である。母さんの旧姓だ。

 

 さてそんなキャンパスライフ二年目の春を迎えたわけなのだが……。

 

 

 

「貴方にお願いがあります!」

 

 

 

 ……その日、とある転機を迎えることとなる。

 

 

 

「あたしのプロデューサーになってください!」

 

 

 

「……えーっと」

 

 学園の中庭のベンチに座って食後ののんびりタイムを謳歌しているところに現れたのは、まるで太陽のような輝きを放つ()()()()()()()少女だった。

 

「アイドル科の子?」

 

「はい! 高等部アイドル科一年二組! 花海(はなみ)佑芽(うめ)です! よろしくお願いします!」

 

 うーん元気は花丸。まるで大型犬のような耳と尻尾を幻視する。

 

「お兄さんのお名前を聞いてもいいですか!?」

 

「え、名前も知らない相手にプロデュースをお願いしようとしてるの?」

 

「はい! あたしの勘が『この人は凄い人だ!』って言ってるんです!」

 

 ……なるほど、野生の嗅覚は悪くないらしい。

 

「オイ佑芽! いきなり何やってんだよお前ぇ!?」

 

「ん?」

 

 何やら聞き覚えのある声が聞こえてきたかと思うと、どうやら目の前のこの少女を追いかけてきたらしい三つ編み金髪の少女の姿が。

 

「あ、ことねちゃんじゃん」

 

「え? ……げっ」

 

 名前を呼ぶと一瞬呆けた後に露骨に嫌そうに表情を歪めた彼女は藤田(ふじた)ことねちゃん。我が家行きつけの商店街の二階堂精肉店でアルバイトしている少女であり……ご覧の反応の通り『俺のことを知っている』人物である。

 

「そっか、初星に入ったって言ってたもんね」

 

「なんでリョウさんがここに……って、まさか入学した大学ってここのことだったのかよぉ!?」

 

「これで君も数少ない『知っている』側の人間だ。やったね!」

 

「……出来れば……関わりたくなかった……!」

 

 知り合い補正を加味してもすげぇ失礼なことを言うなこの子は。全然許すけど。

 

「もしかして、このお兄さん、ことねちゃんの知り合いなの?」

 

「い、一応……って、まさかお前、この人にプロデュース頼むつもりなのか!?」

 

「うん! 『お姉ちゃんに勝つため』にはこの人じゃないとダメだって、あたしの勘が言ってるの!」

 

「この子凄いね。まさか勘だけで俺を探し当てるなんて」

 

「マジかよコイツぅ……」

 

 

 

「……なるほどね、今年の高等部入学試験主席である自分の姉に勝つために、最高のアイドルになりたいと」

 

「はい! 大体そんな感じです!」

 

 一応空いているベンチに座ってもらって事情聴取。()()()()()()であり早速友人になったらしいことねちゃんと共に歩いていたところ、たまたま俺を見つけて直感で『この人がプロデューサーになってくれば姉に勝てる』と感じて、こちらまで走ってきたと。

 

「あたし、何が何でもお姉ちゃんに勝ちたいんです。でも今のままじゃ、また負けちゃうんです。だから、プロデューサーさんに一緒にお姉ちゃんに勝つ方法を考えて欲しいんです!」

 

 確かにこの初星学園には『プロデューサー科の学生がアイドル科の生徒を実際にプロデュースする』という制度が存在するが……。

 

「いやそんなこと言ってもあれだぞ、プロデューサー科の学生全員がアイドル科の生徒をプロデューサー出来るってわけじゃないんだぞ」

 

「……え、そうなの!?」

 

「それすら知らないのに突撃したのかよお前ぇ……」

 

 ことねちゃんの言う通り、アイドル科の生徒をプロデュースするためには様々な試験と条件をクリアしなければいけない。

 

「まぁ俺は『プロデュース権』貰ってるんだけどね」

 

「貰ってんの!?」

 

「これでも学年主席なんだよ」

 

 本当ならばそれだけではプロデュース権を得ることは出来ないのだが、なんか学園長がノリノリでくれた。多分あの人、765プロの高木社長とかと同類だぞ。

 

「それじゃあ、あたしをプロデュースしてくれるんですか!?」

 

「いや権利があるってだけで、まだ『君をプロデュースする』とは言ってないよ」

 

「えっ……」

 

 確かにこの子には才能を感じる。彼女が自分の勘で俺を探し当てたように、俺の勘も『花海佑芽は最高のアイドルになる』と告げているのだ。

 

 しかし()()()()ならば、この世界にはいくらでもいる。

 

 俺はまだ『この子ならば』と思わされていない。

 

「さぁ花海佑芽、君のアイドルとしての価値を俺に示してくれ」

 

「え、えっと……えっと……!」

 

 困ったように視線を泳がせる花海佑芽。数分間オロオロと言葉に迷い……やがて一つの結論に至ったらしい。

 

「あ、あたし……!」

 

 意を決したように、彼女は宣言した。

 

 

 

「おっぱいおっきいです!」

 

「合格ぅ!」

 

「この馬鹿どもがよぉ!?」

 

 

 

 後に『Dent de lion(ダンディライオン)』呼ばれる花海佑芽と藤田ことねによるアイドルユニットと、そのプロデューサー篠ノ之良太郎の始まりである。

 

 

 




・初星学園
『学園アイドルマスター』の舞台となる学園。アイドル科とプロデューサー科の他に普通かも一応あるらしい。

・「アンタは1054の契約でそのまま事務所所属よ」
残念りんのラブラブキャンパスライフ計画ならず。

・『篠ノ之良太郎』
急遽決まったリトルマミーの旧姓。ISの束がイメージモデルなので……。

・花海佑芽
ある意味『学園アイドルマスター』という物語の主人公ポジとなりうる少女。
身体能力お化け。多分Mマス入れてもアイマス最強の可能性あり。

・藤田ことね
学マス信号機トリオの黄色。色はパッションだけどくっそキュート。
おい誰だきり丸って言った奴。

・佑芽ちゃんとクラスメイト
この世界のことねは二組。

・プロデュース権
一応試験とかそういうのあるらしい。じゃないと奨学金とか特別措置とか使いたい放題になっちゃうもんね。

・「おっぱいおっきいです!」
え!? 15歳以下ならば全アイマスブランドで一番大きなB91!?



 11/29を持ちましてアイ転は連載11周年となりました! まだまだ続いていきますのでどうぞよろしくお願いします!

 というわけで以前書いたIFストーリーを学マス編に繋がる形で書いてみました。佑芽ちゃんとことねがピックアップされた理由は完全に作者の趣味です。

 果たして本編での学マス編はどうなることやら……。



『どうでもいい小話』

 ……行くか……沖縄……!(デレステ10thツアー)
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