……あ、ついでにメリークリスマス!
「うぅ……これが終わったら、ついに……」
「おいおいどうした、顔色が悪いぞ。変なものでも食べた?」
「そんなアニメみたいな台詞を実際に言われることになるとは思わなかった……」
「俺も言うことになるとは思わなかったよ。……いやマジで大丈夫か?」
「……大丈夫じゃない、とは言わない。言わないけど……」
「安心しろ。俺はお前の苦労をずっと見てたぞ」
「えっ」
「本当によく頑張ったな」
「そのトラのお面は何!?」
「遂に我慢が報われ莫大な富を得る」
「今この場に限っては別に富は要らないんだよなぁ!?」
「冗談はさておき」
「どうしてこんな小ネタをするためだけにそんなトラのお面を用意できるんだ……」
「お前の苦労や努力をしっかりと見てきたことは本当だ。自信持て」
「………………」
「それに今回のステージでは俺が
「……いえ、アナタの言葉を信じられない奴はいないですよ」
「……出番だ。行くぜ、相棒」
「……あぁ! 相棒!」
「ありさは今、感涙で前が見えません」
「亜利沙さん、どのタイミングだったら前が見えてるんでしょうね」
「さぁ……」
ニコにそんなことを言われるほど泣きじゃくっている亜利沙ではあるが、実は私も少し涙ぐんでいる。
未来と静香と翼、そして紬と歌織さんの五人による、私たちシアター組の曲『Rat A Tat』。未来をセンターとしたステージに……私は、彼女たちの周りに立つ
春日未来はいずれシアターで一番のトップアイドルになるという、そんな確信が。
(っと、そろそろ次の曲が……)
意識を白組のステージに向けようとして――。
『Follow me,Break it Down』
『ここからさ』
「っ!?」
わあああぁぁぁ!!!???
――驚愕に頭を殴られた。
……私は今回のライブにおいて、一つ疑問に思っていたことがある。
それは『白組と赤組でユニット数が違う』ということだ。
赤組は10ユニットであるのに対し、白組は8ユニットしか参加していない。紅白戦という形式を取るのであれば、赤組と白組のユニット数は同数であるべきなのだ。
だから何処かのユニットが二曲披露することになるのだろう。恐らくそのユニットは『周藤良太郎』と『Jupiter』辺りだろうと……そんなことを考えていた。
そして聞こえてきたバンドの音に(二曲披露するユニットは『High×Joker』だったのか)と納得しかけて……しかし、ステージ上に姿を現したアイドルの姿に目を剥いた。
ステージ上で先ほどと同じようにバンド演奏を披露する『High×Joker』。ドラムの若里春名、キーボードの冬美旬、ベースの榊夏来。そしてステージ中央でギターを携える――。
――秋山隼人と
HEAT BEAT"Identity"
秋山 隼人/周藤 良太郎
『真っ白なキャンパスを 目の前にして』
『何を描く“べき”かを』
『考えるよりもさ 鳴らしてみなよ』
『自分のメロディを』
『Wow wow oh』
『出し切った言葉が』
『Wow wow oh』
『存在証明になって!』
秋山隼人さんと並んで、良太郎さんが一緒にギターをかき鳴らしている。二人が並んでボーカルをしている。
『Follow me,Break it Down』
『ここからは』
『Follow me,Break it Down』
『誰よりも熱くなれ』
きっと観客の大半は、未だに脳の理解が追い付かないまま歓声を上げてペンライトを振っていることだろう。一番最初に決定版のセットリストを見たとき、私も思わず目を疑ってしまったほどである。
「あぁ……ステージを終えて戻ってきた私に、こんなご褒美が待っているなんて……」
先ほどまでステージ上でカッコよく『スマイル・エンゲージ』を歌っていたまゆさんが、戻ってきて早々に骨抜きにされていた。
まゆさん曰く『ギターを持った良太郎さんはそれだけでSR』らしい。ギターを弾けることは公言しているものの、自身のライブでは滅多に披露することがないらしい。
そんなまゆさんの介護をする恵美さんという光景は私たち123プロでは割と見慣れたものではあるのだが、今回はそれと似たような光景がすぐ傍で繰り広げられていた。
「隼人君がカッコ良すぎてつらい……マジむり……」
先ほどまでステージ上でカッコよく『MOON NIGHTのせいにして』を歌っていたリップスの周子さんが、メイク直しから戻ってきて早々に骨抜きにされていた。
「ちょっと周子ちゃんってばしっかりして!?」
「本当に今日は周子に意外な一面ばかり見ることになるわね……」
こちらもリップスの美嘉さんと奏さんに介護されているので、なんともまぁ既視感しか湧かない光景である。
(でも、確かに凄いですね……)
あの『周藤良太郎』と肩を並べてボーカルをするという、想像しただけで身震いしてしまいそうな状況で堂々している秋山さんの姿に感心する。
きっと、そこに至るまでに大変なことがあったのだろう。
「あ、そうだ隼人」
「なんですか?」
Beitの花嫁体験会が終わり、三人が化粧を落とし始め俺たち五人もそろそろ放置してきた課題に取り掛かろうかという空気になったタイミングで、良太郎さんが俺の名前を呼んだ。
「俺とお前でダブルギターのユニット組むことになったから」
「あ、はい、分かりました」
さっさと課題終わらせてギターに触りたいなぁなんてことを考えながら部屋を出ようとして……。
『………………』
「え、なに」
なんか全員からすっごい目で見られていることに気付いた。無表情の良太郎さんといつも通りニコニコとしているピエールを除いて、ナツキまでもが『お前マジか』みたいな目で俺のことを見ている。
「……もしかしてハヤト、良太郎さんに何を言われたのか気付いてないんですか?」
「何をって……」
口元を引き攣らせるジュンに問われ、俺は首を捻る。
「俺と良太郎さんがユニット組むって話だろ」
……ん?
「俺と良太郎さんがユニット!?」
「うわ、びっくりした……」
「反応おっそ」
「言われてから256文字経ってるっすよ」
「あまりにも衝撃的すぎる内容を受け止めるための脳の空き容量がなかったんでしょうね」
ユニットメンバー四人がなんか言ってるけどそんなことを気にする余裕を今持ち合わせていない。
「りょりょりょ良太郎さんまままマジで言ってるんすか……!?」
「もしここで俺が『ドッキリでーす』とか言ったらタチ悪すぎだろ」
「本当だったとしてもタチ悪いんですよぉ!?」
何を考えているのだろうかこの人は。この俺が、平凡で普通の高校二年生であるこの俺が、あの『世界一のトップアイドル』である『周藤良太郎』とユニットを組むだなんて、一体何がどうしたらそんなことになるというのだろうか。
「ちなみに春名と夏来と旬の三人にはバックで演奏してもらいたいんだけど、頼めるか?」
「えっ!? オレたちも!?」
「りょ、良太郎さんの後ろで演奏するの……!?」
「後ろが嫌なら前でもいいけど、その場合観客席の中で演奏することになるぞ」
「なんでそんな昔のトーキー映画みたいなスタイルになるんですか」
どうやら他のみんなもステージに立つらしく、三人は困惑しつつも少しだけ楽しそうである。確かにバンドマンとしては、超ビッグネームの後ろで演奏することに対して胸躍るのだろう。俺だって三人と同じ立場だったならば素直に喜んでいたことだろう。
しかし……。
「お、俺と良太郎さんのユニットってことは……ももも勿論、歌うのは……」
「俺とお前に決まってるだろ」
まだだ、まだ一縷の望みが残っている。
「メインは勿論良太郎さんですよね!?」
「いや寧ろお前メインだ」
望みが絶たれた。
「というわけで、明日から早速そっちの練習にも入るぞ。安心しろ、歌うのはお前のソロ曲だからやりやすいだろ」
「それなら安心……とはならないんですよぉ!」
逆にプレッシャーが増したよぉ! 俺のソロ曲を『周藤良太郎』が歌うってどういうことだよぉ!? 一体何を考えてこんな展開にしたんだよ
「……あれ?」
「どうした四季」
「リョーさんっち、オレは?」
「ん?」
「いや、ハヤトっちとダブルギターやって、ジュンっちとナツキっちとハルナっちがバンド隊やって……オレは?」
「………………」
「……えっ!? ハブっすか!? マジっすか!? あんまりじゃないっすか!?」
・「俺はお前の苦労をずっと見てたぞ」
元ネタ調べてみたら予想以上にヤベェやつだった。
・彼女たちの周りに立つ私たちを幻視した。
ミリアニ第二話のアレ。
・HEAT BEAT"Identity"
秋山隼人のソロ曲。二人で歌うにはうってつけの曲だと思ったんすよ……。
サプラーイズ(主に隼人に対しての)
白組と赤組のユニット数が違う問題、どうしたもんかと悩んだんですよ。
その結果爆誕した良太郎と隼人のユニットによる歌唱です。名前はまだない。
とはいえ、どんな形であれ久しぶりに主人公の歌唱パートですよアイドルの二次創作のくせしてどんだけ歌わないんだこの主人公っつってね。
……一年ぶりになるってマジ???