アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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美琴編という名のシャニマス編エピソード0


Lesson434 傲慢 VS 渇望 2

 

 

 

 ――あぁ、そうか。

 

 ――この人が、私の。

 

 ――理想のアイドルなんだ。

 

 

 

 それが私が緋田美琴と初めて出会ったときに感じたことだった。

 

 

 

 

 

 

「好きなもの何でも頼んでいいからね~」

 

「………………」

 

「おすすめはシュークリームなんだけど、時間も時間だから食事でもいいかもね」

 

「あ、あの……」

 

「ん?」

 

 こちらを窺うような視線の少女は、控えめにオズオズとメニューを指差した。

 

「……ナポリタン」

 

「いいね、俺も久しぶりにそれにしようかな」

 

 士郎さんに手を上げて「ナポリタン二つ」と注文する。

 

 

 

 ずっと高町家の敷地の外でウロウロとしていた黒髪金メッシュの少女に声をかけると、彼女は「チッ」と舌打ちをしてその場を立ち去ろうとしたため、きっと美琴の関係者だろうと当たりを付けて俺は初手から切り札を切った。

 

 すなわち、伊達眼鏡と帽子を外しての正体明かしである。アイドルの関係者ならばこれを無視して立ち去ることは出来ないはずだ。

 

 ――っ!? す、周藤良太郎……!?

 

 そしてそれは予想通りの効果を発揮した。少女は足を止め、俺からの「少し話をさせてもらえないかな?」という提案を了承してくれた。

 

 

 

 そんな経緯があり、こうして俺は黒髪金メッシュの少女と翠屋の店内にて対面で座っているわけである。

 

「………………」

 

 目の前にいるこの黒髪金メッシュの少女。最初こそ舌打ちするような態度を見せたものの、俺が『周藤良太郎』だと分かった途端にやや気まずそうにしているのである程度の良識は持ち合わせているようである。

 

 さて、いつまでも『黒髪金メッシュの少女』呼びのままでは色々と面倒くさいので、そろそろ目の前の少女の正体を確定しておこう。

 

「一応確認させてもらうけど……961プロの『斑鳩(いかるが)ルカ』ちゃんだね?」

 

「……はい」

 

 最近、女子中高生の間でカルト的人気を誇るアイドルが961プロにいるという話は聞いていた。ついでに黒井社長らしくない攻め方のプロデュース方針であることも気になっていたため、その存在は認識していた。

 

 ライブ中の様子やファンに対する言動はやや強火ではあるが……今こうして少し居心地悪そうにしているところを見ると、悪い子ではなさそうである。

 

「それで? ルカちゃんはどうしてあそこに?」

 

「……あの」

 

「ん?」

 

「その呼び方は……なんか嫌だ。やめてほしい」

 

 おっと、こいつは失敬。

 

 

 

「ゴメンね、ルガルガンちゃん」

 

「誰が岩タイプの狼だ!」

 

 

 

 今のやり取りで確信した。この子、ツッコミ寄りの子だ。

 

「ちゃん付けを止めてもらいたかっただけだよ! 変なニックネーム付けろって言ってんじゃねえんだよ!」

 

「やっぱり『ちゃん付けNG』はちゃんこが食べたくなるから?」

 

「アニメ二期は始まったけどそうじゃねぇんだよ!」

 

 あーやっぱりツッコミ気質の子との会話は癒しだなぁ……。

 

「くっそ……! やっぱり逃げりゃよかった……!」

 

 頭を抱えてガシガシと髪をかき乱すルカちゃん……改めルカ。

 

「そうだぞルカ。961プロで教わらなかったか? 『周藤良太郎に声をかけられたら全力で距離を取れ』って」

 

「言われたよ! 黒井社長から直々に言われたよ! というかなんでそれを『周藤良太郎』本人が知ってんだよ!?」

 

 冬馬たちが教えてくれた。

 

 さていい感じに態度がほぐれてきたところで、そろそろ本題に戻ろう。

 

「それじゃ改めて……ルカ。あそこにいたのは()()()()()()()()からか?」

 

「……ちげーよ。たまたま美琴があの家に入ってくところが見えただけだよ」

 

「それなのに、あれだけ外をウロウロしてたのか?」

 

「………………」

 

「反論するならもうちょっと言い訳を考えてからの方がいいぞ」

 

 睨まれる。強めのアイシャドウも相まって人を射殺しそうな鋭さではあるものの、この世界に長く生きていればこれぐらいは慣れたものだ。

 

「もしかして、君が美琴の言っていた『昔一緒にレッスンを受けていた子』か?」

 

「……私が勝手に、美琴の隣でレッスン受けてただけだよ」

 

「そうか……勝手に隣でレッスンを受けて」

 

「あぁ、だから変な勘違いを――」

 

「勝手に隣で色々なものを吐き出してたわけだ」

 

「――してたのは私だったなぁ! そうだよ美琴のバカみたいな量のレッスンに無理矢理付いていってたんだよ!」

 

 ゴチンと音を立てて再び机に突っ伏したルカ。流石に無関係で勝手にゲロる存在にはなりたくなかったか。

 

「……でも、無理だった」

 

 突っ伏したままの状態で、ルカは後頭部でこちらに語りかけてきた。

 

「私は美琴に付いていけなかった。求めるレベルになれなかった。……あぁそうだよ、私は美琴に付いていけなかったんだ」

 

 ルカはバリバリと頭を掻き毟る。

 

「立ち止まって欲しかったわけじゃない。待ってて欲しかったわけじゃない。でも……でも! 美琴は!」

 

 

 

『ねぇ、美琴さん、こんなに無茶なレッスン続けてたら、いつか身体壊しちゃうよ? アイドルになる前に身体壊しちゃ、元も子もないよ……』

 

『……私は私の目指す理想があるの』

 

『で、でも……!』

 

 

 

 ――ルカには関係ないでしょ。

 

 

 

 

 

 

(あの馬鹿……!)

 

 慕ってくれてる子に何ってんだマジでよぉ! しかもそれの根本的な原因の一端が俺にもあるから色々と心が痛い!

 

「お待たせしました、ナポリタンです……って、良太郎さんまで何してんの?」

 

 二人揃って頭を抱えているところに、今日の店員さんである美由希ちゃんが注文したナポリタンをお盆に乗せて持ってきてくれた。

 

「ありがとう、大丈夫だから……」

 

「はぁ」

 

「あとゴメンね……」

 

「え? あぁ、まぁ声はちょっと大きいですけど、これぐらいなら……」

 

 

 

「久しぶりの出番がこれだけで本当にゴメンね……」

 

「それは本当にそうですよ!?」

 

 

 

 大声を出したため向こうで士郎さんに叱られている美由希ちゃんを尻目に、とりあえずナポリタンに手を付ける。

 

(……本当に久しぶりに食べるな、翠屋のナポリタン)

 

 昔、なのはちゃんの送り迎えを手伝っていた頃に食べさせてもらったっけ。

 

「それで結局のところ、ルカは何がしたかったんだ? 美琴ともう一度話したかったのか?」

 

「……だから、違えって言ってんだろ」

 

 ルカはうつ向いたまま、フォークを手にすることすらしなかった。

 

「私は――」

 

 

 

 ――文句を言うつもりだったんだよ。

 

 

 

「あぁ……言いたいことはいっぱいあるよ。ずっとここを動くつもりはないみたいな態度してたくせにいつの間にか事務所からいなくなってたことも、完璧を目指して完璧じゃないと隣に立つことすら許してくれなかったくせに()()()()()()()()()()()()が隣になってることも、めちゃくちゃ文句言いてぇ」

 

()()()()()()ねぇ)

 

 普段ならば『ウチの可愛いアイドル(しほちゃん)にケチ付けるとはいい度胸だな?』ぐらいのことは言っていたのだろうけれど、それは事実であると同時に――。

 

 

 

 ――『斑鳩ルカ』にはそれを口にするだけの実力があることは認めざるを得ない。

 

 

 

「今の私だったら美琴の隣に立てる、寧ろ私以外に立てる奴なんかいない……あぁ、そうだよ、ずっと961にいりゃよかったのに、よりにもよって()()()()の事務所に入ったことにも文句が言いたかったんだった……ははっ、マジでクソみてぇなことばっかり」

 

 先ほどまでとはまるで別人のような乾いた笑みに、泥のように暗い瞳。

 

「……さっきは逃げりゃよかったとか言ったけど、訂正する。ありがとよ、世界で一番アイドルが上手なトップアイドルさん、話聞いてくれて」

 

 そう言ってルカは席を立った。

 

 

 

「救われねぇ私は、精々光の当たらないところで呪い(おいわい)の言葉を吐き続けてるよ」

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

「誰も手を付けていないようなので、私がいただきますね」

 

「……どうぞ」

 

 ルカが退店してから数分後、彼女は空席になった俺の目の前に座り、しっかりと手を合わせて「いただきます」と言ってからフォークを手に取った。

 

「それで志保ちゃん、どの辺りから聞いてたの?」

 

「大体『私は美琴に付いていけなかった』辺りです」

 

「そうか、ルガルガンの辺りは聞いてなかったんだね」

 

「ポケモンの話題からあんなシリアスな会話になることあります……!?」

 

 それは本当にそう。

 

「……みんな『傲慢』ですよ」

 

 クルクルとナポリタンをフォークに巻き付けながら志保ちゃんは言った。

 

「『私以外美琴の隣に立てる奴なんていない』って言った斑鳩さんも『完璧なパフォーマンス以外認めようとしない』美琴さんも……そして『それら全てが自分の責任だって思っている』良太郎さんも」

 

「俺もなの?」

 

「試しにりんさんに話してみてはいかがですか?」

 

「間違いなくおっぱいビンタされるな」

 

「そういうプレイの話は聞いていません」

 

 俺もプレイの話はしたつもりないよ。

 

「志保ちゃんは、ルカに『完璧じゃない』って言われて悔しくないの?」

 

「事実ですから」

 

 そう言いながらこめかみにはしっかりと青筋が浮かんでいる辺り、結構気にしているらしい。

 

「私の答えは決まっています。私は現状持ちうる全てで『緋田美琴』と共に最高のステージに立つ。それから先は()()()()()考えます」

 

 

 

 ――獲物くらい自分で見つけます。

 

 ――甘く見ないでください。

 

 

 

 

 

 

『抗い続ける それがなんなのか』

 

『分からなかったとしても』

 

 

 

『間違いの先に正解があるの』

 

『だから大丈夫でしょ』

 

 

 

『しなやかに生きてくって決めたの』

 

 

 

 

 

 

『……お前らもホント頭おかしいよな』

 

『今頃、あの天下の123プロや1054プロがライブしてるっつーのに、こんなところに集まりやがって』

 

『あぁいいぜ、聞きたいなら聞いてけよ』

 

『クソったれの世界に生きるクソったれな私たちの歌を』

 

 

 

『……神様は死んだ、って』

 

 

 




・ナポリタン
きっとお母さんが作ってくれたのが大好き。

・斑鳩ルカ
アイドルマスターシャイニーカラーズの元ライバルキャラにして現所属アイドル。
ある意味シャニマスの真っ黒な部分を一身に背負ってる最大の功労者……だと作者は考えている。

・ルガルガン
作者は黄昏派。

・『ちゃん付けNG』はちゃんこが食べたくなるから
今期は作者一推しの美しすぎる先輩が出るぞー!
なお最推しは二十四人目のため、多分登場は五期()

・「久しぶりの出番がこれだけで本当にゴメンね……」
次の出番がいつかって? 仮面ライダーストロンガーにでも聞いてくれ。

・今の私だったら美琴の隣に立てる
斑鳩ルカ@アイ転魔改造済み

・『神様は死んだ、って』
斑鳩ルカのソロ曲。
ライブの映像見たのはつい最近ですが「あぁ……コレは間違いなくカミサマだ」って納得する迫力がありましたね……。



 美琴編≒ルカ編になるのは当然のことでして……。

 合同ライブ編の途中ではありますが、近い将来書く予定のシャニマス編の伏線撒き回でした。

 上でも少し触れましたが、アイ転のルカは美琴がトップアイドルへの渇望による魔改造を受けたことが影響してこちらも魔改造されております。何せアイドルキャリア的なことを言えば765レベルなので。

 Q ルカが強化されるとどうなりますか?

 A 頑張れ、まだ見ぬ七草家次女!



『どうでもいい小話』

 ハッチポッチ2の二日目に当選しました! 初のデレ以外のライブ参加です!

 現地の方々対戦よろしくお願いします!
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