『ねぇキャンディーを貰ったの 三人でほら分けちゃおう』
『仲良く同じ数だけ』
『ってひとつだけ残ったぞ……』
丁度三時のおやつ時だったということもあったので、愛ちゃんのコイバナの前に各々ドリンクバー以外の軽食を注文する。
「俺は
「それ、なんかトラプリのファンの方々を中心に流行ってますよね」
凛ちゃんと奈緒ちゃんが事あるごとに「加蓮とファーストフード」というコメントと共にフライドポテトの写真を挙げていることが原因なのは間違いない。
「でも、そういうイメージを持つキャラクターっていうのはアイドルとしてはプラスなんだよね。ほら、絵理ちゃんもネットに強いアイドルとして定着してるわけだし」
「良太郎さんの場合は明白だよね」
「いやいや、俺のシュークリーム好きなんてまだまだ……」
「そんなイメージ全然ないですけど!?」
「まぁ……確かに良太郎君の現場への差し入れって言えばシュークリームっていうところはありますけど……」
あ、今通った店員さん中々の大乳をお持ちで……。
「ちなみにその加蓮ちゃん、フライドポテト好きが高じてコラボ案件が来たみたいだよ」
「へぇ、ファーストフードとかですか?」
「お蕎麦屋さん」
「なんで!?」
さて改めて。
「本日はみんなに愛ちゃんのとっておきの恋バナを聞かせてあげちゃわれようかな」
「どういう日本語ですか……?」
「やよいさんが歌ってそう」
「う、うぅ~……」
普段元気娘な愛ちゃんが真っ赤になって恥ずかしがっている姿だけで正直お腹一杯みたいなところあるけど、コイバナは別腹である。
「あ、待って、コイバナするなら女子会っぽくしないと」
「いきなり何を言い出してるんですか?」
「ん、んんっ、はい、これでよし」
「うわビックリした!?」
「か、完全に女の人の声……」
「このメンバーの中で誰よりも可愛らしい甘い声出すのやめてもらっていいですか?」
「やだぁ、そんな可愛いだなんて……照れちゃうなぁ(CV高木社長)」
三人のツボに入ったらしくて同時に倒れ伏した。どうやら俺たちの会話を聞いていたらしい隣の席のカップル二人も飲み物を噴き出していたので、キルスコアは5といったところか。イロモネアならば一発クリアである。
「度々話の腰を折っちゃってごめんね。続きをどうぞ」
「ホントですよ」
「え、えっとですね……」
『私のよ』
『私のです!』
『私のかな?』
『どうすんの』
『どうなんの』
『どう誰が決めますか?』
『誰なんだ』
『誰だろう』
『誰にしよう』
『『『あっ! そうだ!』』』
きっかけは、本当に単純なことだった。
「今日は本当にありがとうございました!」
「色々と楽しませてもらっちゃった?」
「あはは……結局いつものお出かけみたいになっちゃったけど、うん、僕も楽しかった」
『涼さんが知らない女の子と遊んでいる』と誤解したあの日、りょーおにーさんと亜美さんと別れた後、あたしと絵理さんと涼さんと咲さんの四人で沢山遊んだ。あたしや絵理さんへのプレゼントを一緒に探すという名目で色々なお店を見て回り、途中ゲームセンターに寄ってクレーンゲームでぬいぐるみを取ったりダンスゲームで競ったり、本当に沢山遊んだ。
日が暮れて晩御飯も一緒に食べて、そこで四人で楽しくお喋りもした。初めて会ったばかりの咲さんともとても仲良くなれた。
そしてすっかり日も落ちて、別の路線で帰るという咲さんと別れ、あたしと絵理さんが利用する路線の駅へと涼さんが見送りに来てくれた。
「涼さん、今日はごめんなさい」
「絵理ちゃん!? ごめんなさい!? なんで!?」
「いや、最初は尾行してたから……」
「……はっ!? そういえばそうでした!?」
「愛ちゃんはすっかり忘れたのね……」
最初の目的が頭から抜け落ちてしまうぐらい、今日は楽しい出来事ばかりだった。
……しいて不満点を挙げるとするならば、結局涼さんはずっと『甲斐性アリm@s』と書かれたTシャツを着続けていたことぐらいか。変なTシャツなので注目を集めてしまったが、逆に変な恰好過ぎたせいか誰からも声をかけられることは無かったけど……。
「結局脱ぎませんでしたね、それ……」
「あぁ、これ?」
「まさか涼さんまでそれがカッコいいと思ってる?」
「流石にそこまでは思ってないけど……」
絵理さんからも突っ込まれて涼さんは苦笑する。
「……今の僕には、これが必要だと思ったんだよ」
「……今度ネットで変なTシャツ探しておいてあげようか?」
「そっちじゃなくて」
Tシャツそのものじゃないとすると……甲斐性?
「えっと……『物事をやり遂げようとする気力、根性。または経済的な生活能力』」
「ちゃんと言葉の意味をスマホで調べることが出来て偉いよ愛ちゃん!」
「成長したね……」
涼さんと絵理さんが褒めてくれるけど、これは流石に素直に喜べない。
「『男性アイドルとしても女性アイドルとしても、やり遂げてみせる』っていう意思表示、っていうことですか?」
「あとは、後半部分も」
涼さんのその言葉に、絵理さんはピクリと身体を震わせた。
「……それ、世間一般的には
「けっ……!? 絵理さんなにを……!?」
流石にそんなわけがない。あたしの口から咄嗟にそんな言葉が――。
「
――口から出る前に、涼さんはそれを肯定してしまった。
「流石に結婚なんてものに飛躍するつもりはないけどさ。……アイドルとしての僕の人生は、既に愛ちゃんと絵理ちゃんによって救われた。君たちだったから『秋月涼』はここにいる」
恥ずかしそうに照れながら、それでも涼さんは「だから」とハッキリと口にした。
「どんな形であれ……僕は二人を幸せにしてみせる」
【速報】秋月さんちの涼くん、女性二人相手に対してプロポーズをしていた。
「いやそんなん求婚じゃん」
「ですよね!?」
「これには流石のわたしも真っ赤になっちゃったよ」
「ひゃ、ひゃ~……!」
愛ちゃんと絵理ちゃんが暴走し始めたのかと思ってたけど、これは明確なプロポーズですよこれは。よかったな三人とも、この場面を週刊誌に抜かれてなくて。こんな会話が出回った日には876プロダクションは炎上を通り越して大爆発だよ。
「正直その後どうやって家に帰ったのか分からないんですよぉ……次の日にお母さんに『あたしどうやって帰ってきた?』って聞いてもニヤニヤ笑って教えてくれないし……」
ちょっと気になるからあとで舞さんに直接聞いてみよっと。
「その日以来、ずっとずっと涼さんのことばっかり考えちゃって……それで、絵理さんに相談したんです」
「わたしはまぁ、元々涼さんのこと好きだったし。愛ちゃんが涼さんのこと好きだってことも知ってから」
「ちなみに絵理ちゃんは涼のどんなところが?」
「顔」
「おい」
「勿論それ以外も全部好きですよ?」
しかしなるほど、そこから愛ちゃんと絵理ちゃんの話し合いの結果が『三人一緒』ってことになったわけだ。
……いや、言うほどなるほどか? そこから三人一緒っていう結論になるのは流石に飛躍してないか?
「だってあたし、絵理さんも大好きですもん!」
「わたしも愛ちゃん大好き」
「なるほどなぁ!」
むぎゅむぎゅと抱き着く二人の姿に全てを納得する。決して大きく実り始めた愛ちゃんの胸が眼福だなんて思っているわけではないのである。
「愛ちゃんも絵理ちゃんも涼も、三人とも俺の可愛い後輩だ。お前たちがそれでいいっていうのであれば勿論俺も協力するが……それは問題は多い選択だぞ?」
「分かってます!」
「わたしたち三人がずっと一緒なのは確定だから、きっと何とかなります」
……眩しいなぁ。つい最近まで人の好意が全然分からず、未だにりんから以外の好意にはイマイチ反応出来ない俺からしてみれば、色々と羨ましい限りである。
「ふふっ……」
「楽しそうに笑ってますけど、美優さんかなり他人事ですね」
いや実際他人事なんだろうけど、何故だろうか、余裕を感じる……?
しかし俺がそれを指摘すると、何故か美優さんはショックを受けた様子だった。
「……あの、ですね……最近、ですね……」
「はい」
「……仁奈ちゃんと一緒にいると、色々と満足してしまって……」
「ペットを飼う独身女性より不味い事態になってませんか……!?」
他人の家のお子さんですよぉ!?
『『『ハッピー! ハッピー!』』』
『『『幸せはきっと ひとりではなれないから』』』
『『『ハッピー! ハッピー!』』』
『『『みんなと分け合って お腹も胸もいっぱい!』』』
……ん? あれ?
何かを……というか、
・お蕎麦屋さん
フライドポテトそばというものがあるらしい。
まぁ揚げた芋を乗せているという点でいえばコロッケそばと同じようなものなのかな。
・「本日はみんなに愛ちゃんのとっておきの恋バナを聞かせてあげちゃわれようかな」
This is not a drill って「これは訓練ではありません」って言ってたのね……。
・「いやそんなん求婚じゃん」
アイ転のハーレム王はここにいた。
・誰かを忘れているような……?
ぶっちゃけマジで忘れてた()
良太郎が全然ラブコメしないから代わりに涼にラブコメしてもらった。ある意味バレたら良太郎以上に爆発するやつ。まぁアイ転だからそんなことしないけど……。
次回からは涼サイドのお話。