アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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今までちょっと真面目な主人公ばかり書いてたから今の主人公書くのが楽しすぎて困る。

ただちょっと今回は微シリアス。日本語が不自由かもしれないけど許してほしい。


Lesson06 765プロ 4

 

 

 

 りっちゃんの愛が痛いなー。愛とは痛みを伴うものだって誰の言葉だっけ。

 

「それにしてもビックリしたぞ。てっきりケーキ屋の兄ちゃんなんだとばかり思ってたから」

 

 フォークをくわえながら響ちゃんが寄ってきた。

 

「そっちの方が面白いかと思ってね。ごめんごめん」

 

「まぁ、別にいいんだけどさー」

 

「響は良太郎殿をケーキ屋さんだと思っていたのですか?」

 

「だって貴音ー」

 

 ん、この銀髪の美人さんは……。

 

「ご挨拶が遅れました。四条(しじょう)貴音(たかね)と申します。以後お見知りおきを」

 

「これはこれはご丁寧に。周藤良太郎です」

 

 ふむ、これまた見事な大乳……。

 

「? あの、わたくしの胸に何か?」

 

「あ、いや、大きいおっぱいだなって思ってただけ」

 

「バカ正直に何言ってるんだ!?」

 

「そうでしたか」

 

「貴音も普通にスルーするなよ!?」

 

「どうしたの、響ちゃん」

 

「響、突然大きな声を出してはいけませんよ」

 

「自分がおかしいのか!?」

 

 貴音ちゃんと普通に会話してただけなのに何故か響ちゃんが凄い困惑していた。

 

「律子助けて! 自分じゃどうにもなんないぞ!?」

 

 響ちゃんはそう言いながら振り返るが、りっちゃんはソファーにぐったりと座り込んでいた。

 

「律子ー!?」

 

「私一人じゃ無理よ……麗華……せめてともみでもいいから……」

 

 連日のプロデューサー業の疲れが出たのだろう。今はそっとしておいてあげよう。

 

 クイクイッ

 

「ん?」

 

 服の裾を控えめに引っ張られ、振り返るとそこにはツインテールの少女が。

 

「えっと、高槻(たかつき)やよいちゃんだね」

 

「は、はい。今日はケーキを買ってきていただきありがとうございます!」

 

 頭を下げる勢いで両腕を振り上げるダイナミックなお辞儀をするやよいちゃん。うむ、元気があって大変よろしい。愛ちゃんと似たタイプだな。

 

「えっと、それでお願いがあるんですけど……私の分のケーキを持ち帰っていいですかー?」

 

「ん? そりゃもちろん構わないけど」

 

 うちに帰ってからゆっくり食べたいのかな? 体細いし、お腹いっぱいで食べきれないとか?

 

「こんなおいしいケーキは初めて食べたので、弟達にも食べさせてあげようかなーって思いまして!」

 

「………………」

 

「えっと、やっぱりダメですか……?」

 

「……ちょっと待って、お土産用に用意するから」

 

 弟達のためとか、何この天使。よーしお兄ちゃん、ポケットマネーで奮発しちゃうぞー! 支払いなら任せろー!(バリバリ)

 

「ええ!? そ、そんな、悪いですよー!?」

 

「いいからいいから。流石に同じところのは直ぐに用意出来ないけど」

 

 てなわけで知り合いのケーキ屋に頼んでケーキを用意してもらうことになった。持つべきは友人である。

 

「ほ、本当にありがとうございます!」

 

「先輩だしこれぐらいはね」

 

 お仕事沢山貰えるから貯金も結構貯まってるし。男の貯金は女の子のためにばら蒔くもんだってじいちゃんが言ってた。

 

 

 

 

 

 

「あの、少しいいでしょうか」

 

「ん?」

 

 双子にせがまれたのでりっちゃんの昔話をしていると、今度は青髪の少女が声をかけてくる。この薄いむ……線は。

 

如月(きさらぎ)千早(ちはや)ちゃんかな」

 

「はい。不躾ではあるのですが、周藤さんにお願いがあります」

 

「ふむ」

 

 俺にお願いねぇ。テレビ局やレコード会社のお偉いさんから独占契約の話とか色々あったけど、まぁいくら何でも彼女は違うだろう。

 

「とりあえず聞こうか」

 

「はい。私達のレッスンを見ていただきたいんです」

 

「……見るだけ?」

 

「見ていただいた上で、是非ご指導をいただけたらと」

 

 ご指導ね。真面目な子だなぁ。向上心があることは大変いいことだ。

 

「ごめん無理」

 

 まぁ無理なんだけど。

 

「っ……それは、私達が評価するに値しない、ということですか?」

 

 おっと、悪意的に捉えられちゃったかな。睨まれちった。

 

「勘違いしないでくれ。俺は評価できるほど君達をまだ知らない」

 

 今日訪れるにあたってある程度の予習はしてきているが、あくまでプロフィールを読んだ程度だ。

 

「それに、俺は自分の技術を他人に教えることが出来ない」

 

「どういうことですか?」

 

「そのままの意味。俺はほとんど頭で考えない。感覚だけで歌って踊るから、これを言葉にして伝えることが出来ないんだ」

 

「そう……ですか」

 

 俺がそう言うと、千早ちゃんはずいぶんと暗い表情になった。

 

「……教えることは出来ないけど、一緒のレッスンを受けさせてあげることなら出来る。そこから勝手に何かを盗めるなら……別にいいよ」

 

「! 受けます!」

 

 おおう、食い付き凄いな。

 

 じゃあ私も私もと再び群がってきた少女達相手に、今度一緒にレッスンを行う約束をする。また兄貴にスケジュール合わせて貰わないとなぁ。

 

 ……ただ、一つだけ気になることが。

 

 如月千早。なんというか……薄い。いや、胸とか体つきとかそういう物理的な意味じゃなくて。

 

 誰よりも上を目指そうとする意志は強い。想いも強い。

 

 

 

 けれど、薄い。

 

 

 

 彼女からは向上心は感じられるがその先が感じられない。彼女のように薄く『敗れて』しまった少女達は何人も見てきた。

 

「………………」

 

 はぁ、見て見ぬフリとか出来たら楽だったんだけどなぁ。

 

 気付いてしまった以上、それとなく気にかけておこう。りっちゃんの後輩なんだしね。

 

 

 

 

 

 

 あっという間に夕方となった。

 

「それじゃ、俺はそろそろ帰ります」

 

「うむ。今日は本当にありがとう。アイドルの諸君にもいい刺激になった」

 

「お土産もありがとうございます!」

 

 みんなと一緒に仕事が出来る日を楽しみにしてるよ、と言い残し、周藤良太郎君は帰っていった。

 

「いやー、ホント今日は凄かった!」

 

「まさかあの周藤良太郎と知り合いになれるなんてね!」

 

「これだけでアイドルになった価値があったね!」

 

 アイドルのみんなも随分と満足そうだ。モチベーションも上がり、本当にありがたいことだ。

 

 しかし頭の中では、別のことを考えていた。

 

 周藤良太郎。誰もが納得するトップアイドルで、アイドルを目指す全ての少年少女達の憧れ。業界人としても自分よりも大先輩。

 

 果たして、彼は一体何者なのだろうか。

 

 律子や真美達と話している時は、無表情故に分かりづらいが高校生らしい年相応の態度や喋り口調だった。しかし、時折見せる視線や雰囲気は到底高校生とは思えないようなものだった。

 

 

 

 まるで自分と同い年、いや、それ以上の大人のような。

 

 

 

「どうだったかね、良太郎君は」

 

「社長……」

 

「彼は昔から大人びた子でね……いや、子供っぽい大人だった、といった方があっているのかも知れないね」

 

「それは……」

 

 社長が言ったその両者は、似ているようで決定的に違う。大人びた子供ならそれは間違いなく子供なのだ。しかし子供っぽい大人ならば、それは『彼自身は最初から大人だった』という意味になってしまう。

 

 その言葉を選んだ意味を聞こうとして、けれど聞けずに口を閉じてしまった。

 

「他の人には見えない何かを、彼は昔から見ていたのかも知れないね」

 

「見えない何か……」

 

「これから彼と会う機会は増えていくことだろう。彼からは、我々も教わることが多い。しっかりと学んでくれたまえ」

 

 社長は、周藤良太郎に何を見たのだろうか。あの誰よりも明るく気さくで、それでいて心の内が全く見えない鉄の仮面を被った不思議な少年に。

 

「……はい」

 

 俺は、765プロのプロデューサーだ。目標は、アイドルのみんなを彼のようなトップアイドルにすること。

 

 これからも頑張ろう。

 

 

 

 

 

 

おまけ1『知り合いのケーキ屋さん』

 

 

 

「ご注文のケーキと、おまけのシュークリームだ」

 

「悪いな恭也、わざわざ持ってきてもらっちまって。桃子さんにもお礼言っといてくれ」

 

「そのこと何だが、母さんから伝言だ」

 

「ん?」

 

「『どうして最初からうちのケーキを選んでくれなかったの?』だそうだ」

 

「………………」

 

「………………」

 

「……どう弁解したらいいと思う?」

 

「知らん。自分で考えろ」

 

「ちょー翠屋に行きづらい……」

 

「たまには来い。なのはが会いたがってたぞ」

 

「ぐぬぬ、なのはちゃんに言われたならば会いに行かない訳にはいかないか……」

 

「あとフィアッセが一緒にコンサートが出来る日を楽しみにしてる、と」

 

「おお、いいね。ならその時はゆうひさんも誘って盛大にやろう」

 

「……伝言を伝えた俺が言うのもあれだが、さらりと億単位の金が動くようなことを簡単に決めようとしないでくれ」

 

 

 

 

 

 

おまけ2『765プロその後』

 

 

 

「律子、大丈夫か?」

 

「……多分だけど響、これからはアンタもこの苦労を味わうことになるわよ……アンタどっちかと言うとこっち側の人間だから……」

 

「え、えぇ!?」

 

「よかったじゃない、あの周藤良太郎と親密になれるわよ……」

 

「律子の顔が土気色じゃなかったら素直に喜べたんだけど……」

 

 

 

「りょーにーちゃん次いつ来るのかなー?」

 

「来ると分かってるなら、今度はチョースペシャルなおもてなしをしないとねー!」

 

 

 

「……みんなのモチベーション的にもレッスン的にも、良太郎に来てもらわないという選択肢はほとんど無い……けど、その度に私の胃が……胃がっ……!」

 

「……えっと……」

 

「お願いだから響……少しでもいいから肩代わりして……!」

 

「ひぃ!? り、律子が怖い! た、助けてくれ貴音ー!」

 

 

 

 

 

 

おまけ3『魔王三人娘に激励報告』

 

 

 

「てな感じで、りっちゃん頑張ってるみたいだった」

 

「へー」

 

「わたし達も今度行こうかな」

 

(……何か胃に優しいものを差し入れた方がいいかもしれないわね……)

 

「あ、りっちゃん麗華に凄い会いたがってたぜ」

 

「そ、そう」

 

「麗華、律子と仲いいもんね」

 

「それより、結局あんたの評価はどうだったのよ?」

 

「ん? サイズが大きい娘はたくさんいたけど、やっぱり中学生の娘達は小ぶりな……」

 

「誰が胸の評価をしろっつったか! アイドルの評価をしろアイドルの!」

 

「いやいや、スタイルだって立派なアイドルとしての評価の一つ……あ、ごめん」

 

「今お前は私の何処を見たぁぁぁぁぁ!? 何処を見てそんな申し訳なさそうな声を出したぁぁぁぁぁ!?」

 

「落ち着けって。怒りすぎると体によくないぞ? だからその手に持った灰皿(控え室に備え付けてあった)をそっと机の上に置こう。な?」

 

「………………」

 

「大丈夫、りんの胸は確実に大きい部類に入るから」

 

「だ、だよね! 大丈夫だよね!」

 

「うん、大丈夫大丈夫」

 

「うお! 危ない! そんなもの振り回しちゃいけません! で、殿中でござる! 殿中でござる!」

 

 

 




・愛とは痛みを伴うものだって誰の言葉だっけ。
「愛することとは、いつでも痛みを伴うところまでいくのです」
マザー・テレサの言葉です。

・「大きいおっぱいだなって思ってただけ」
クソ真面目な顔でこれを言い切る主人公が果たして何人いることやら。

・「そうでしたか」
何があってもお姫ちんだけは絶対に揺るがないと思う。

・今はそっとしておいてあげよう。
もしかして:お前のせい

・頭を下げる勢いで両腕を振り上げるダイナミックなお辞儀
通称「ガルウイング」

・「弟達にも食べさせてあげようかなーって」
(なんだ天使か)

・けれど、薄い。
ちょっと真面目な主人公。何度も言うけど胸のことじゃありません。

・プロデューサー視点
アニメ順守のプロデューサー。通称「赤羽根P」。元々は中の人からついた名前だが、この小説ではそのまま本名として採用させていただく形。

・『知り合いのケーキ屋さん』
とらハ3とのクロスオーバー。リリカルなのはの元ネタとなったギャルゲ。
どの辺の時期の話なのかは恭也が高校三年生という点から逆算していただきたい。
ただし士郎さん生存ルート。

・フィアッセとゆうひ
フィアッセ・クリステラと椎名ゆうひ。共にとらハシリーズにおける世界的に有名な歌手。
「舞さんとどっちが凄いのだろうか」と考えるのは「ルフィと承太郎どっちが強いんだろう」と考えるのと同じぐらい無粋なことなのでやめましょう。

・『765プロその後』
リッチャンハクロウニンデスヨ。

・『魔王三人娘に激励報告』
麗華さんご乱心。



 ようやく765プロ訪問編が終わった……。本編が短かったのでおまけを差し込む形で水増しさせてもらいました。

 次回からがようやくアニメストーリーに突入。ある意味ここからが本番です。

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