前回から引き続きファミレスでお送りする見た目だけ美少女たちの女子会。ここまでドリンクバーだけだったが、小腹も好いたので各々が軽食を注文することになった。
「それじゃあ……あたしは
「え? 加蓮ちゃん?」
「あ、ごめん咲ちゃん、その流れ昨日もやったんだ」
「どういうこと!?」
そうして俺たちのテーブルに並ぶ、フライドポテトとイチゴパフェとチーズケーキ。うーん、女子会。
「いや真面目にお前は俺にどうして欲しいんだよ。本当に決意表明聞いてほしいだけだったのか?」
パフェをスプーンで突きながら改めて涼に尋ねると、涼はチーズケーキを口に運んだフォークを咥えたまま「うっ」と目を逸らした。
「そ、それは勿論、人生でもアイドルでも先輩である良太郎さんにお伺いを立てることが礼儀かなと思いまして……」
「本当に背中を押してもらいたかっただけならいいけど、流石にそれだけじゃないだろ」
誰かに宣言することで自分を追い込むという考えも分からなくもないが、それにしたってわざわざ呼び出してまで話すことじゃないはずだ。
「こんなことを話しておいて、今更話しづらいこともないだろ。いいから全部話してみろ」
涼自身も言ったことであるが、俺は人生としてもアイドルとしても先輩であり、そしてなにより数少ない弟分だとも思っている。あまり口に出して言うことは無いが、これでも俺なりに可愛がってきてやったつもりである。
「……え、えっとですね」
そんな可愛い弟分は、女装をしていない男性の姿だというのに可愛らしく顔を赤らめると、恥ずかしそうに苦笑した。
「二人をどうやって説得しようかな、と」
「咲ちゃん、ちょっとここからだと手が届かないから俺の代わりに涼のこと殴ってくれない?」
「パーで?」
「グーで」
「ちょっとぉ!?」
ええい、確かにどんな相談にでも乗ってやるつもりではいたが『そんなこと自分で考えろ』案件筆頭が飛び出してくるとは思わないんだよ。
咲ちゃん自身も涼の発言で割とイラッとしていたらしく、結構強めのグーで肩を殴られている涼の姿に思わずため息が零れ出てしまった。
「言えるわけないじゃないですか!? そんな二人同時にどころか三人同時になんて提案!」
「知ったこっちゃねぇよ! 非常識なことしようとしてる奴が中途半端に常識的な考え方するんじゃねぇよ!」
そもそもそんな心配しなくても、愛ちゃんと絵理ちゃん側はとっくに……。
(……あ、そうか)
愛ちゃんと絵理ちゃんも同じ決意をしていることを涼は知らない。というかお互いがお互いのことを知らない状況なのだ。
「………………」
「えっと、良太郎さん……?」
「ちょっと失礼」
スマホを取り出してメッセージアプリを起動。愛ちゃんと絵理ちゃん二人とのメッセージグループから音声通話を選択してそのままコール。
今時間があるといいんだけど……あ、同時に出た。
「もしもし」
『もしもーし!』
『こんにちは』
「はいこんにちは。愛ちゃんも音調調節しっかり出来てて偉いね」
そんなやり取りをしつつ、スピーカーモードにしてテーブルの真ん中にスマホを置く。
「もしかして二人でお出かけ中だった?」
『いいえ! 二人で事務所にいます!』
『愛ちゃんの課題を見てあげてました』
「えっ、ちょっ、りょっ……!?」
「りょうちん、しーっ」
画面に映し出された名前と聞こえてきた声に驚いて大声を出そうとした涼の口を、咲ちゃんが横から手で押さえてくれた。涼の声が聞こえてしまってもそれはそれでよかったのだが、折角咲ちゃんが気を利かせてくれたのでこのまま『涼が不在』という前提で話を進める。
「課題中か……それなら今時間ない? 後にした方がいい?」
『大丈夫です! 丁度終わったところです!』
『朝の八時から頑張った甲斐があったね……』
え、今三時だから……うん、滅茶苦茶頑張ったんだね……。
「なら良かった。実は昨日のことで少し二人に確認したいことがあるんだけど、昨日と同じファミレスに来れるかな?」
「えっ……!?」
『確認したいことですか?』
『分かりました! すぐに向かいます! あと頭使い過ぎてお昼ご飯だけじゃ全然足りなかったので何か食べさせてくれると嬉しいです!』
「いいよいいよ、なんでも奢るよー」
『あと今日の良太郎さん、なんか声が女の人みたいじゃないですか!? 何かあったんですか!?』
「それはね……君の眼で確かみてみろ!」
『Ⅴジャンプなのかリュウなのかハッキリして?』
「とにかく、急がなくてもいいからよろしくねー」
『了解です!』
『良太郎さん、愛ちゃんの声大丈夫でした? 色々と貫通してそちらに迷惑かけてません?』
「大丈夫」
色々と注目は浴びているが、他の席のお客さんと目線が合うたびに小さく手を振って受け流し、注意に来た店員さんには声を掛けられる前に小さく手を合わせて謝罪している。大事にはなってないしここで終わるのであれば多分セーフ。
(女性としてのムーブが強すぎる……)
(あたしやりょうちんよりも性別詐称がひどい……)
通話終了。876の事務所からここまで……大体一時間弱ぐらいかな?
「それじゃあ涼、俺と咲ちゃんはこれで退席するから、あとは頑張れ」
「っ!?」
咄嗟に自分の口を手で塞いで大声を出すことを防いで偉いぞ、涼。
「ななな、何をしてくれてるんですか……!? こここ、この状況で何をしろと……!?」
「いや、だから直接話せって言ってるの」
「頑張ってね、りょうちん!」
「ぎゃおおおおん!?」
悲鳴を上げる涼を尻目に、俺と咲ちゃんはさっさと退散する。安心しろ、お前の分の伝票も持って行ってやるから。愛ちゃんと絵理ちゃんの追加注文分だけ頑張れ。
「もしかして良太郎さん、何か知ってるんですか?」
「んー?」
ファミレスを出て
「さっき『昨日のこと』『昨日と同じファミレス』って言ってましたよね。もしかして二人からも相談を受けてたとか。……例えば、りょうちんと同じ相談……だったり」
可愛らしく俺の顔を覗き込んでくる咲ちゃん。
「あれ、もしかして咲ちゃんも『愛ちゃんと絵理ちゃんの気持ち』を知ってた感じ?」
「知ってはいませんけど……あの三人だったら、なんとなくそうなんじゃないかなって思ったんです」
「やっぱり俺だけじゃなくて他の人から見てもそう見えるんだな、あの三人」
となると、やはりなるようにしかならないだろう。後は頑張れ、涼。
「りょうちんもそうだけど、愛ちゃんと絵理ちゃんも凄いなぁ。自分を貫いてるって感じで」
「凄いことは認めるけど、羨ましいとも真似しようとも思わないタイプの凄さだけどね」
少し離れたところから見ているのがちょうどいい感じである。
「三人……じゃなかった、夢子ちゃんも含めて四人で幸せになってくれるといいな」
「そういう咲ちゃんは? 何か心配事とか相談事とかない?」
「あたしはないですよ! ……悩むことがないわけじゃないし、将来を不安に思うこともありますけど」
そう言って咲ちゃんは晴れやかに笑った。
「あたしは――」
『いつでもレディライクに装わせて』
『出逢ってくれた仲間たちと』
『織り成す最高のティータイム』
『『パピっともっと素敵に出来るから』』
「……ふん、のーてんきにヘラヘラ笑っちゃってさ、こっちの気も知らないで。……って、もう知ってるんだっけ」
『………………』
「あーあー、自分で言い出したこととはいえ、本当になんであんな男のこと好きになったんだか」
『あのー』
「ほんっと、意味不明よねー、涼も、他の二人も。私がちゃんとしといてあげないと」
『通話しながら同時視聴しようって話なのに、急に惚気話始めるのヤメテくれまセンカ?』
「煩いわよデニーズ」
『せめてサイゼリヤって言い間違えてくれまセンカ!?』
『あたしがあたしでいられるように』
『魔法かけて……さぁドレスアップ』
『Making Myself』
『It’s My favorite things』
『服も夢も』
『Let’s Try Decoration』
『デザートも』
『It’s My favorite things』
『好きなだけで』
『Let’s Try Decoration』
『コーティング!』
「……さてと」
「そろそろね」
・「二人をどうやって説得しようかな、と」
これには思わず咲ちゃんもグーパン。
・「君の眼で確かみてみろ!」
『君の眼で確かめてみろ!』という攻略本の煽り文句と『確かみてみろ!』というリュウの誤植の合わせ技。
・『せめてサイゼリヤって言い間違えてくれまセンカ!?』
そういえばこの子も登場してなかったパート2。
今後登場するたびに「でもこいつハーレム王なんだよな」ということになってしまうアイ転の涼なのであった。これは果たして被害者なのか、はたまた役得なのか。
これでようやく良太郎と魔王エンジェル以外の全てのアイドルのステージが終わりました! 長かった! でもまだ続く! 本当に長い!