アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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襲来。


Lesson442 オトナ VS コドモ

 

 

 

「いよいよ次じゃないかな……!」

 

「順番的にはそうでしょうね……ドキドキしてきました……!」

 

「……………」

 

「恭也? どうしたの?」

 

 姫川と鷹富士がそんな楽しそうに会話をする中、俺は先ほどから周囲に意識を向けていた。忍に隣から声をかけられるも、俺はそれに対して「あぁ」と生返事を返す。

 

(一体何が起きているんだ……?)

 

 それは明確な『敵意』。誰かを傷つけようという『害意』や『悪意』は一切なく、ただ純粋な『敵意』を俺は感じ取っていた。

 

 可能性としては、馬鹿な目立ちたがり屋が曲中に乱入しようとしているのかもしれない。幸い、ここはステージ最前という好ポジションだ。万が一、客席からステージに上がろうとする不届き者がいたとしても、一足飛びに不審者を鎮圧することが出来る。

 

(しかし、客席からではない……)

 

 確信を持って『敵意』の出所が分かるわけではない。故に正体不明のこの感覚を無視することが出来なかった。

 

 

 

 次の瞬間、客席の照明が消えた。

 

 

 

「きゃっ!?」

 

「わっ、何!?」

 

 思わず()()そうになってしまった右手を左手で無理矢理抑え込む。しかしいつでも()()()ように手は添えたままだ。

 

「恭也、きっと演出だから」

 

「分かってる……」

 

 俺の性格をよく理解している忍からそんな忠告が飛んでくるが、()()()()()()なのでどうしても警戒してしまう。いや、これが『高町なのはと周藤良太郎にとって大切なライブ』だからこそ、警戒せざるを得ないのだ。

 

 元々薄暗い照明だったため、俺の目はすぐに暗闇に順応する。周りの観客も突然の暗転に動揺しているが、それ以外に不審な行動をする人物は見受けられない。しかし肌で感じられる『明確な敵意』は、暗転と同時に確実に増していた。

 

 何が起こる。誰が動く。周りの観客とは別の意味で身構えた俺は。

 

 

 

 その声を聞いた。

 

 

 

 

 

 

「え、何々!?」

 

「これは……?」

 

 突然照明が消えて観客席がどよめく中、舞台裏でも困惑が広がっていた。

 

「冬馬君、何か聞いてる!?」

 

「……聞いてねぇよ」

 

 何故なら『突然照明が消える予定なんてなかった』からだ。

 

「機材トラブルかな……?」

 

 北斗が呟いたように、真っ先に思い浮かべるのは機材トラブルである。どれだけ万全に準備を整えようとも、トラブルというものは起きるときには起きてしまうものなのだ。

 

「でも次が次だから判断が難しいんだよねぇ~……」

 

「次は『魔王エンジェル』と『周藤良太郎』の番だからね……」

 

 ()()()()()ならば、次のは紅組の大将である『魔王エンジェル』と白組の大将である『周藤良太郎』の出番になっている。だから俺たちは『これが急遽予定変更された演出である』という可能性を捨てきれないのだ。奴らならばやりかねない。殆どオオカミ少年状態である。

 

「冬馬さん……!」

 

「天海」

 

「良太郎さんから何か聞いてますか……!?」

 

「……いや」

 

「その様子からすると、765プロのみんなも聞いている様子はなさそうだね」

 

 ここまで来ると本当に機材トラブルの可能性が高くなってきた。その場合、俺たちがすべき行動は……。

 

 

 

「「「「っ……!?」」」」

 

 

 

 突然、悪寒が走った。俺だけではなく、北斗と翔太と天海も同じ様子だ。

 

 何かが起ころうとしている。誰かが何かをしようとしている。

 

 そんな奇妙な感覚に、一早く事態の把握をすべく和久井さんか社長のどちらかに話を聞こうと行動を始め……。

 

 

 

 その声を聞いた。

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

「うわ、麗華凄い嫌そうな顔してる」

 

「リョウが変なことを言い出したときぐらい嫌そうな顔してる」

 

「するに決まってんでしょ……」

 

 ()()()()()()()()()()私たち三人は、未だステージ袖の待機所にいた。今頃『演出の一環だと思っているであろう観客』よりも『予定にないことが起きていると分かっている演者や一部のスタッフ』の方が混乱していることだろう。

 

 現在ここにいるスタッフはその『一部のスタッフ』に含まれないため私たちと共に混乱することなく待機しているが、皆一様にその表情は固い。

 

「寧ろなんでアンタたち二人はそんなに平然としてるのよ」

 

「アタシたちに実害ないし」

 

「なるようにしかならないと思って」

 

 ホントこいつらは……。

 

(でも、なるようにしかならないのは本当ね……)

 

 正確には『もうどうしようもない』と言った方が正しいのかもしれないが、ここまで来ると諦めの方が強くなってくるのも事実である。

 

 あぁ、どうか。

 

(何事もなく……)

 

 ガラにもなく、私は天に祈る。

 

 

 

 

 

 

「……………」

 

「あの、周藤さん、大丈夫ですか?」

 

「……ん、あぁ、大丈夫。ありがとう」

 

 どうやら終始無言の俺を心配したらしい女性スタッフが声をかけてくれた。大丈夫とは言いつつ、それでも俺の意識は少しだけここにいない。

 

 

 

「……どうしたんだろう、周藤さん」

 

「えぇ……私が目の前で前かがみになっても全く反応しなかったわ」

 

「いや、お前のそれで周藤さんが反応するわけないだろ」

 

「表出ろ」

 

「え、寒いからヤダ」

 

「全く……アンタ次それ言ったら〝これ〟だからね」

 

「だからお前のそれで……おいモツに刺して手首を捻るジェスチャーやめろ」

 

「安心して、苦しませはしない」

 

「清々しいほどあからさまに嘘なのである」

 

 

 

 なんだかスタッフ同士の愉快なやり取りが聞こえたような気もするが、今の俺はそれどころじゃない。……でもちょっと楽しそうだから後で仲間に入れてね?

 

 

 

 時間はほんの少しだけ遡る。

 

「それで? 俺と麗華を呼んでるのは誰なんですか?」

 

「……………」

 

「このスタッフさん、俺にだけ見えてる幻影とかじゃないよな?」

 

「一応私にも見えてるわよ」

 

 『S.E.M』の三人のステージの最中、俺と麗華はスタッフに呼び出されて何処かへと連れていかれていた。一体誰が何の用事で俺たち二人を呼び出したのか疑問に思ったのだが、何故かスタッフは何を尋ねても応えてくれない。ウイングガンダムゼロカスタムかよってぐらい何も言ってくれない。

 

(俺と麗華の共通の知り合いで、それでいて他のアイドルに知らせることなく秘密裏に会わなくちゃいけない人物……?)

 

 はてそんな人物がいるだろうかと考え、可能性としてはお忍びでやってきた有名人も候補に挙がる。

 

(華琳か、エヴァンジェリンか……アルカ夫妻って可能性もあるな)

 

 やがてスタッフはとある空き部屋の前に辿り着いた。ただし、その空き部屋の前には歩哨のようにスタッフが立っており、あからさまに『中に誰かいますよ』と言っているようなものだった。

 

「「……………」」

 

 スタッフ同士言葉を交わさずにアイコンタクトで頷き合うと、俺と麗華を促すようにドアを手で示しつつ両脇へと逸れた。なんか動きが無駄に凝ってるなぁ……流石我が運営スタッフ。変なところで変な力を入れる変態揃いである。

 

「……麗華さん、どうぞ」

 

「どう考えてもアンタよ」

 

 どうやらドアを開けたくないのは俺も麗華も同じだった。気が合うね。

 

 じゃーんけーん。

 

「あ、りんの新しいグラビアの没写真あげるわ」

 

「え、マジ? ありがと」

 

 麗華は左手で俺が広げた手に写真を乗せると同時に、チョキにした右手を出した。

 

「……ありがとうな!」

 

「こちらこそ」

 

 大人しく敗者(おれ)はドアノブに手をかけ、念のため三回ほどノックをしてから「失礼しまーす」とドアを開けた。

 

 ガチャ(ドアを開ける)

 

 

 

 バンッ(ドアを叩きつけるように閉める)

 

 

 

「……………」

 

「……りょ、良太郎?」

 

 思わず麗華が困惑してほど、今の俺は変な空気を出しているらしい。

 

「……麗華、この写真返すからマジでお前が先に入ってくれない……?」

 

「そこまで……!?」

 

 本気で心が折れそうになったため、麗華に本気のお願いをして先陣を変わってもらう。情けないと笑えばいいさ。俺はそれぐらいこの部屋に入るのが嫌なのだ。

 

「って、アンタがそこまで嫌がるってまさか……!?」

 

「……………」

 

 無言で頷く俺に、事態の深刻さを把握した麗華は顔を青褪めた。

 

「嘘でしょ……!?」

 

「あぁ嘘だから早くドアを開けてくれ」

 

「ごめんって、悪かったって」

 

 グイグイと麗華の背中を押して入室を促すが、ついに麗華も本気で嫌がり始めた。

 

「腹を括るか……」

 

 ここまで覚悟を決めたのは、恐らくIEの最終決戦のとき以来か、もしくはりんの両親にご挨拶へ行ったとき以来か。

 

 意を決して、俺は再びドアを開けた。

 

 

 

 

 

 

 その声は突然聞こえてきた。

 

 

 

『なーんか、私たち抜きで楽しそうなことしてるじゃない』

 

 

 

「えっ……えぇっ!?」

 

「ちょっと、この声って……!?」

 

 

 

『ねぇ、アタシたちも混ぜてよ』

 

 

 

「まさか……!?」

 

「嘘だろ……!?」

 

 

 

 動揺が広がっていく。

 

 そんなわけがない。

 

 いるわけがない。

 

 しかしそんな現実逃避が許されることはなく。

 

 曲が流れ始める。

 

 これは。

 

 この曲は。

 

 

 

『『もっと楽しませてあげるから!』』

 

 

 

NECK/LESS

 

 日高 舞/玲音

 

 

 

 『周藤良太郎』と『魔王エンジェル』が四人で歌うはずだった曲だ。

 

 

 




・恭也@臨戦態勢
もしここに不審者がいたら瞬きをする間に斬られます。

・「アンタ次それ言ったら〝これ〟だからね」
最近のXでの流行におっぱい星人も大満足。

・ウイングガンダムゼロカスタムかよってぐらい何も言ってくれない。
五飛「俺だって知らん」

・(華琳か、エヴァンジェリンか……アルカ夫妻って可能性もあるな)
世界中のお知り合い。

・『『もっと楽しませてあげるから!』』
厄 災 顕 現

・NECK/LESS
オリジナル楽曲。
意味1 首飾り → 首級
意味2 首(neck)無し → 亡霊
意味3 弱点(neck)無し → 無敵
真ん中の/はフレ/ンダ的なアレ。



 ここからが本番。八事務所合同ライブで一番書きたかったところ&第九章の主題です。対戦よろしくお願いします。
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