『ねぇ 笑って 未来まで照らすほど』
『ぼくらならできるさ』
『We all smile!』
まず初めに事務所へ来てくれたのは凛ちゃんと卯月ちゃんと未央ちゃん。今や346プロを代表するアイドルユニットとして名を馳せる『new generations』の三人である。
「やぁ三人とも、あけましておめでとう」
「待って普通に挨拶しないで!?」
「そのベタ塗りの白粉はなんですか!?」
「丁髷まで付けて……あっ!? バカ殿様!?」
「くるしゅうない、ちこうよれ」
「このまま会話を続けること以上に苦しいことなんてないよ!?」
「あと間違いなく私たちの心の距離は離れてますからね!?」
「私たちじゃ処理しきれません助けて冬馬さん!」
不評だったので白粉を拭う。
「丁髷はそのままなんですね……」
「バカ殿感は出しておきたくて」
「それは丁髷無くても普段からしっかり出てるから安心していいよ」
はははコヤツめ、ぬかしおる。
「まったく、折角時間かけてバカ殿メイク頑張ったのになぁ」
「多分時間がかかってる部分が他にあると思うんだけど」
「どこからこんな畳を持ち込んだんですか」
などと言いつつしっかりと畳に正座してくれるので三人ともいい子だ。
そんないい子たちへ、新年に渡すものと言えばコレである。
「わざわざ来てくれてありがとうね。はいコレ、お年玉」
「「「ありがとうございます!」」」
三人にポチ袋を渡す。先輩から後輩へお年玉を渡すのは、どの業界でも恒例だろう。
「って、今年も凄いですね……」
「ポチ袋に重さを感じるって相当ですよ……」
「「そう?」」
「しぶりんまで……」
未だに常識的な反応の卯月ちゃんと未央ちゃんに対して、凛ちゃんはいい感じに感覚がマヒしているらしい。くっくっく、君たち二人もいずれこうなる……。
「三人も年末年始は大忙しだったね」
「うん、お蔭様で」
「いやぁ未央ちゃんたちもすっかりトップアイドルって感じになっちゃいまして!」
「じ、自分たちで言うのは、まだちょっと抵抗がありますけど」
「分かるー」
「良太郎さんがトップアイドル名乗るのに抵抗があるのであればもう誰も名乗れなくなっちゃうんだけど」
自称はともかく、彼女たちも今は間違いなくトップアイドルの一員だ。彼女たちを始めとした『シンデレラプロジェクト』の面々と交流をするようになってから、今年の春で三年になるという。本当に月日というものはアッという間に流れて行ってしまうものである。……三年? ホントに?
「それはそうと、私たち良太郎さんにずっと言いたかったことがあるんです!」
月日の流れに対する自分の中での認識のズレに一人首を傾げていると、畳に正座した状態で未央ちゃんが手を前に付いてズズッと身を乗り出してきた。
「言いたいこと?」
「はい! 私が代表して言わせてもらいますね!」
そう言って両脇の凛ちゃんと卯月ちゃんに目配せをしてから、未央ちゃんはギュッと両手を握りしめた。
「
「……………」
「「「……?」」」
「……あ、もしかして合同ライブ?」
「「「えええぇぇぇ!?」」」
ポンッと手を叩いた音は三人の驚愕の声にかき消された。
「なにその温度差!?」
「結構万感の想いを込めたんですけど!?」
「わわわ私たち何かしちゃいましたか……!?」
「いやゴメン、そうじゃなくて」
だから前回も言ったんだけど、年末年始が激務過ぎて合同ライブの余韻に浸る暇もなくて、その間に色々なことがあり過ぎたんだって。
「今年の紅白歌合戦で俺がオオトリになった経緯とか聞きたくない? 実はちょっとした事件があってさぁ」
「何それ詳しく」
「しぶりん目的を忘れちゃダメだよ!?」
「今日はちゃんとあの日の感動を口にして伝えようって言いましたよね!?」
凛ちゃんは釣られかかったが未央ちゃんと卯月ちゃんが彼女の興味をインターセプト。
「え、えっと、それじゃあ改めて」
コホンとわざとらしく咳払いをした未央ちゃんが仕切り直す。
「良太郎さん、年末の合同ライブ、本当に凄かったです」
「私たち、あんなに『ライブが楽しい』って思ったの初めてです!」
「……そして、それ以上に『私たちもこんなライブがしたい』って思った」
思い出に浸るように未央ちゃんが、目を輝かせて卯月ちゃんが、そして闘志に瞳をギラつかせながら凛ちゃんが、それぞれ合同ライブへの想いを口にする。
「しぶりん、そうじゃないでしょ?」
「はい、そうじゃないですよ、凛ちゃん」
「……うん、そうだったね。『絶対にこんなライブをする』んだったね」
「……期待してるよ」
大丈夫、出来るよ。君たちになら。
「あ、そういえばりあむんから言伝があったんだった」
「りあむちゃん?」
「言伝というか……私たちが今日良太郎さんに挨拶に行くって話をしたら、この画像を見せてくれって」
そんなことを言いながらスマホを操作する未央ちゃん。
りあむちゃんと言えば、合同ライブのときに『周藤良太郎』としても随分と打ち解けることが出来たような気がする。未だに『りょーさん』だとは明かしていないものの、一緒に『チュパカブラ』を歌って踊った縁で打ち上げの際に仲良くなり、余興としてみのりさんを含めた三人で『OTAHENアンセム(with High×Joker)』を披露したりした。
既にりあむちゃんも成人済みのため、アルコールが入っていてそれはもう大盛り上がりに……。
「あっ、これこれ」
「どれどれ」
未央ちゃんがこちらに向けてきたスマホの画面を覗き込む。
そこには、画面に向かって土下座をするりあむちゃんと、その背後に立って刀のようなものを構えるあきらちゃんの姿が。
「『色々と申し訳ありませんでした。夢見りあむと冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します』だって」
「冨岡さんも血相を変えて二度見するレベルの巻き込まれ事故過ぎる」
あのときのりあむちゃん、相当羽目を外しまくってたからなぁ。俺とみのりさんがこっそりと防波堤になって麗華たちに粗相しないように気を使ってあげたのだが……やはりゲ○シャワーの記憶は残っていたらしい。可哀そうに。
「別に俺は気にしてないけど……」
それは逆に気を使わせることになるということを知っているので、ここはこちらから謝罪を受け入れる条件を提示してあげることが優しさだろう。
「未央ちゃん、俺からもりあむちゃんに言伝を頼んでいいかな?」
「いいですけど」
「メッセージ送った方が早くない?」
もし俺に謝罪の意思を見せたいというのであれば……。
「膝に手をついて胸を寄せたビキニ姿での謝罪動画を――!」
次の瞬間、俺の視界は凛ちゃんが至近距離で投げつけた彼女のカバンによって埋め尽くされた。
346プロダクション。
二百人近いアイドルを抱える老舗芸能事務所であり、毎年のように新たなアイドルやプロジェクトを発足し、アイドルの可能性と多様性の最先端を走り続ける。特に『シンデレラプロジェクト』と『Project:Krone』は事務所を代表する二大プロジェクトとして、後世にも語り継がれることとなる。
「それで紅白歌合戦の裏話ってなんですか?」
「あ、私も聞きたいです!」
「わ、私も……!」
「えっとねぇ」
「「「新年あけましておめでとうございます」」」
「はい、あけましておめでとうございます」
次に挨拶に来てくれたのは、なのはちゃんとはやてちゃんとフェイトちゃん。310プロの『Tri-Ace』である。
「と言っても、流石になのはちゃんとは既に元旦の挨拶済んでるけどね」
「にゃはは……忙しいのに、わざわざウチに来てくれてありがとうございます」
どれだけ忙しかろうと、家族ぐるみでの付き合いが長い高町家への新年の挨拶は毎年家族全員で済ませるのが恒例である。まぁ挨拶が済み次第、早々に俺と兄貴は仕事へと戻ることになったのだが。桃子さんのおせち料理、食べたかったなぁ……。
「ということを見越したお母さんが、改めておせち第二弾を作ったので持ってきました」
どうやら女神は翠屋にいたらしい。みんな知ってるって? 確かに。
翠屋の方角に向かって深々と頭を下げてから、はやてちゃんとフェイトちゃんにポチ袋を渡す。なのはちゃんには既にプライベートでの挨拶時に渡し済み。
「はい、お年玉」
「ありがとうございますぅ……って分厚!?」
「あ、ありがとうございます……こ、こんなに……!」
「うんうん、ビックリするよね……分かるよ……」
実はあまり機会がなく今回アイドルとしての初お年玉となるため、はやてちゃんとフェイトちゃんは受け取ったポチ袋に目を丸くしていた。若干冷や汗を浮かべている二人に対し、なのはちゃんは同情するような視線を向けた。
「三人とも年末年始はお疲れ様。合同ライブの直後からだったけど、大変だったでしょ」
「はい、それはもう……」
「私たちの場合、合同ライブでさらに知名度が上がった組なので、凄かったですわ」
中でも、圧倒的な歌唱力を見せたフェイトちゃんの反響が凄かったようで。
「まさか、新年の特番で
「おめでとう、フェイトちゃん」
「エラいカッコよかったで」
赤くなった頬を抑えながら恐縮するフェイトちゃんに労いの言葉をかけるなのはちゃんとはやてちゃん。
将来的には女優志望であるフェイトちゃんではあるが、このまま順当に行けばきっと将来の『歌姫』と呼ばれる日も遠くないだろう。
「……負けてられないね、なのはちゃん」
「勿論です! 私の目標は、フィアッセさんみたいな歌手で!」
「私の目標は、おじさんみたいな映画監督」
「わ、私はプレシア母さんみたいな女優になりたくて……」
「「「……それと同時に、トップアイドルも目指してるんですから!」」」
310プロダクション。
当初アイドル三人のみで始まったこの小さな芸能事務所は、やがて彼女たちに憧れた年若き少年少女たちがその門戸を叩くことになる。そして将来、なのはちゃんとフェイトちゃんとはやてちゃんをそれぞれリーダーに据えた三つのユニットを結成するアイドルプロジェクト『StrikerS』が発足することになり、彼女たちの活躍はより一層輝かしいものとなっていく。
「そ、それで、あの……良太郎さんに、お伺いしたいことがありまして……」
「ん? どうしたのフェイトちゃん、改まって」
「……あ、足を……崩して……いいですか……!?」
「フェイトちゃん!?」
「アカン小鹿みたいに震えとる!?」
「無理して正座しなくてもいいんだよ!?」
・良太郎@バカ殿スタイル
ネタには全力投球するのがこの男。
・第一客人ニュージェネ
この三人が揃ってるところを書くの凄い久しぶりな気がする。
・『OTAHENアンセム(with High×Joker)』
未成年故アルコールは入っていないものの、高校生特有のノリの良さでハイジョが演奏を引き受けてくれた結果、バックダンサーに良太郎とみのりを引き連れてトンデモない豪華仕様に。後にりあむは胃液を吐くことになる。
・『夢見りあむと冨岡義勇が腹を切ってお詫び致します』
また冨岡さんが腹を切らされてる……。
・第二客人トライエース
いずれ彼女たちも隊長格に……。
・『歌姫』
多分金色の歌姫とかそんな感じ。
ファイアーエムブレム的なエピローグ(完結するとは言っていない)。