アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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殿、寧ろ暇人では?


Lesson452 なんどでも笑おう 3

 

 

 

『きっかけは何だったかな?』

 

 

 

『あの日見た輝き』

 

 

 

『精一杯走り続け 見た景色』

 

 

 

 

 

 

あけまして

 

おめでとう

 

ございます!

 

 

 

「うんおめでとう」

 

 なのはちゃんたちと入れ違うようにやって来たのは、765プロのシアター組の子たちだった。ラウンジに入ってくるなり開口一番コレである。今日も未来ちゃんは元気一杯だ。

 

「静香ちゃんと翼ちゃん、大丈夫?」

 

 恐らく俺以上に未来ちゃんの両隣に立っている彼女たちの方がダメージが多いだろう。現に二人ともしかめ面で両耳を抑えている。

 

「え? なんですか?」

 

「うん、もう大丈夫だから手を離そうか」

 

 聞こえていなかったのは耳を抑えていたからだよね? 聴覚器官にダメージが入ったわけじゃないよね?

 

「とりあえず三人とも、座って座って。改めて新年の挨拶をしようか」

 

「あ、はい。失礼します」

 

「わー畳だー!」

 

 立ったままにしておくのも忍びないため、三人に座るように勧める。勢いよく靴を脱いでちょこんと正座する未来ちゃん、そんな未来ちゃんの靴を自分の靴と共に揃えてから正座する静香ちゃん、渋々といった様子で正座する翼ちゃん。畳に上がるだけでもしっかりと個性が出るなぁ。

 

「……って、なんで畳なんですか!? あとその丁髷はなんですか!?」

 

「あ、ようやくツッコミが来た」

 

 てっきりこのままスルーされるのかと思ってた。

 

「未来の挨拶でそれどころじゃなかったんですよ……」

 

「まぁこれは気にしなくていいよ。新年の仕様みたいなものだから」

 

「そんな仕様があってたまりますか!」

 

 

 

 そんなやり取りを一通り終えてから、改めて新年のご挨拶。

 

「あけましておめでとう。わざわざ挨拶に来てくれてありがとうね」

 

「いえ、普段からお世話になっている身として当然です」

 

「わたしは別にお世話になってないですけどー」

 

「ちょっと翼……」

 

 両手を振って謙遜する静香ちゃんに対し、翼ちゃんは今日も平常運転。こちらとしてはこうしてわざわざ事務所に来てくれただけでも十分である。

 

「挨拶に来てくれた三人には……はい、お年玉」

 

「えっ!?」

 

「やったー! ありがとうリョーさん!」

 

「えっ……」

 

 勿論三人にもお年玉を用意してあるので、ポチ袋を差し出す。未来ちゃんはなんの躊躇いもなくポチ袋を受け取り、逆に静香ちゃんと翼ちゃんは戸惑って手を出してこない。

 

「い、いいんですか……?」

 

「勿論。折角来てくれたんだから、遠慮せずに受け取ってほしい」

 

「……あ、ありがとうございます……」

 

 遅れて静香ちゃんも受け取り、俺の手に残されたポチ袋は残り一つ。

 

「はい、翼ちゃんも」

 

「……………」

 

 予想はしていたが、翼ちゃんはなかなか手を伸ばしてこない。躊躇っているというか、本当に受け取っていいのかどうか悩んでいる様子である。

 

「……翼、受け取るなら言わなくちゃいけないことがあるでしょ」

 

「わ、分かってるもん」

 

 静香ちゃんの言葉に決心がついたらしい翼ちゃんは、小さくペコリと頭を下げた。

 

「……あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

 

「あけましておめでとう、翼ちゃん。はいお年玉」

 

「ありがとう、ございます」

 

 ……なんだろう、なんというか『懐いてくれなかった猫が手から直接餌を食べてくれた』的な感動があった。

 

 あとペコリと頭下げたときに広めの首元から見えたお年玉二つ、こちらこそありがとうございます!

 

 

 

「年末年始はどうだった?」

 

 新年の挨拶を一通り終え、改めてシアターのみんなの様子を尋ねてみた。

 

「みんなでお餅をつきました!」

 

「ほう、誰の?」

 

「そこは『誰と?』と聞くべきところでは……いやそれだったとしてもよく分からないんですけど」

 

 未来ちゃんも()()()()()()()だからそっちの意味かと思ったら、ちゃんと言葉通りの意味での餅つきだったらしい。ツッコミ役の静香ちゃんには気付かれなかったようだが、ジト目の翼ちゃんには気付かれていたらしい。ワンアウトってところかな。

 

「シアターの新春公演では、ファンの皆さんと餅つき大会をするのが恒例なんです」

 

「私たちがお餅をついて、ファンのみんながお餅を返してくれるんです!」

 

「ただ今年は合同ライブの影響でだいぶお客さんが増えて、整理券を配布することになっちゃいまして……」

 

「だろうねぇ……」

 

 正直去年のお正月でも、クリスマスライブの影響で色々とギリギリだったはずなのに、今回の合同ライブでさらに知名度を上げた状況で『ファン参加型イベント』は結構厳しいだろう。

 

 しかし、彼女たちはそれを良しとしなかった。

 

「それでも私たちは」

 

「『765シアター劇場』ですから!」

 

「遠くになんて行きません」

 

 それは765プロダクション社長である高木順二朗が掲げ、劇場のアイドル全ての心にあり続ける『アイドルを身近な存在に』という考え。

 

 すぐそこにいて、すぐに会えて、だからこそ『憧れる』ことが出来る、そんなアイドルたちのステージが『765シアター劇場』なのだ。

 

「プロデューサーさんも律子さんも、みんな言ってました! 『自分たちの仕事はここからだ』って!」

 

「誰もがアイドルに憧れることが出来る『アイドル春の時代』だからこそ、私たちは()()()()()()()のすぐそばにいなくちゃいけませんから」

 

「……あぁ、任せたよ、みんな」

 

「「「言われなくてもっ!」」」

 

 

 

 765シアター劇場。

 

 『アイドル春の時代』を迎えて良くも悪くも環境が変化する中、彼女たちは変わらずすぐそこにいた。アイドルに興味を持った人が、アイドルになりたいと願った人が、自分たちがどんなアイドルになれるのか、そんな未来を見つけに行く場所として。今日も劇場の幕は上がる。

 

 

 

「ときに殿、こちら『風花さんの餅つき動画』となっております……」

 

「春日屋……お主も悪よのぉ……」

 

「あ、コラ! 未来!」

 

 

 

 

 

 

あけまして

 

おめでとう

 

ございます!

 

 

 

「うんおめでとう」

 

 うーん再放送。まさかこんな短期間に二度もビリビリと空気が振動するような新年の挨拶をされるとは思わなかった。……いや、続けて彼女たちが来るって連絡をもらったときから何となく察してた。今日も愛ちゃんは元気一杯だ。

 

「愛ちゃん、ウチの事務所でも怒られるんだから他事務所ではもっとダメだよ……」

 

「もう少しこう何というか手心というか……?」

 

 付き合いの長さ的になんか慣れてるっぽい凉と絵理ちゃんの反応がちょっと面白い。というかそうか、やっぱり事務所でも怒られてるんだな……。

 

 

 

 というわけで、本日四組目のお客さんは876プロ御一行様です。

 

「くるしゅうないぞ、ちこうよれ」

 

「はーい!」

 

「この程度なら動じなくなってしまった自分がいる……」

 

「殿、白粉が足りておらぬようですが?」

 

「ごめんね絵理ちゃん、もっと早くに来てくれてたら塗ってたんだけど」

 

「そんなぁ」

 

「白粉塗ってたんですか!?」

 

 これまでと同じようにラウンジに持ってきた畳に座ってもらう。別にこちらから何も要求していないのに全員ちゃんと正座で座ってくれるので、みんなとてもよく分かっている。

 

「はい、まずはコレ、お年玉」

 

「「「ありがとうございます!」」」

 

 待っていましたとばかりに笑顔で受け取る三人。彼らは既に()()()側の人間である。

 

 さて876プロの近況を聞きたいところだが、実は小耳に挟んでいることがあったので直接尋ねてみた。

 

「凉は春から正式に315プロとの同時所属になるんだって?」

 

「はい。ウチの社長と向こうの社長……そして愛ちゃんと絵理ちゃんと夢子ちゃんとしっかりと話し合って決めました」

 

 去年の合同ライブではほぼ315プロの男性アイドルとして出演した涼だったが、これを機に315プロ所属のアイドルとしても活動していくことを決めたらしい。

 

「あたしたちとの時間が減っちゃうーって言ったのに」

 

「ついに泣き落としが通用しなくなっちゃった」

 

「逆に最近までは通用してたのか」

 

「女性に対してどうしても強く出れなくて……」

 

 涼の視線が泳いだ先、きっと宙に眼鏡をかけたパイナップル頭の姿が浮かんでいることだろう。うんうん、分かるぞ、従姉だろうと義姉だろうと、姉という存在である以上逆らえないんだ。俺にも心当たりがあるぞ。

 

「それでも、315プロでやりたいことが出来たんです」

 

「やりたいこと?」

 

「はい。……実は、合同ライブの僕の姿を見て、アイドルになりたいって人が315プロに入ってくれたんです!」

 

「おぉ! ……え、そっちに入っちゃったの?」

 

「僕が315プロ所属だと勘違いしてしまったらしく……」

 

 涼に憧れて315プロの門戸を叩いた男性が、なんと二人もいたらしい。

 

「まだユニットを組むとか、そういう話まではいってないんですけど……」

 

「そうか……」

 

「はい」

 

「咲ちゃんは既に過去の(オンナ)なんだな」

 

「言い方ぁ!?」

 

 変化があったのは、なんと315プロだけじゃなかったようで。

 

「実は! 876プロにもアイドル候補生が三人も来てくれたんです!」

 

「試験段階の採用で、結果を出たら本採用の新しい試み?」

 

 なんでも最近流行のⅤ系ってやつらしい。

 

「となるとアレか、なんだっけ、サイゼリアちゃんの後輩ってことになるのか?」

 

「良太郎さん、サイゼリアじゃなくてサイゼリヤです」

 

「訂正するところ間違ってるよ!?」

 

 きっとこれも『アイドル春の時代』としての、新しい風なのだろう。

 

 

 

 876プロダクション。

 

 業界唯一の『男性アイドル兼女性アイドル』『バーチャル配信者系アイドル』の所属事務所として、数多く存在するアイドル事務所の中でも特色が強いことでこの事務所の名前は度々話題に上がる。……そしてそんな事務所に()()()()()()()()が頻繁に出入りしていることを知る人は多くなく、そして皆「知らない方がいい」と口を揃えるのだった。

 

 

 

「あ、ママがまた時間が出来たら『ご飯でも食べに来なさい』って言ってました!」

 

「しょうがないなぁ、愛ちゃんに免じて顔出してやるか」

 

(良太郎さんと舞さん、なんだかんだ言って仲良いよね?)

 

(直接言ったら二人とも怒りそうだけど、割と親子っぽいところあるからね)

 

 

 




・第三客人いちぽむ
ホントにアイ転の翼は原作とはかけ離れてるなぁ……。

・広めの首元から見えたお年玉二つ
伊吹翼14歳でB85!?(テンプレ

・『風花さんの餅つき動画』
わっふるわっふる。

・第四客人ディアリースターズ
ある意味一番現実世界での注目株!

・涼に憧れて315プロの門戸を叩いた男性
アイ転世界でもしっかりと『旗』は立つことになりました。

・876プロにもアイドル候補生が三人も
未来に繋がる新しい可能性を創るプロジェクト。

・(割と親子っぽいところあるからね)
日高良太郎ルートも面白かったかも。



(あ、これ多分次週まだ最終回にはならない感じだ)
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