アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

614 / 664
殿、これまだ続くんですか?


Lesson453 なんどでも笑おう 4

 

 

 

『迷いと不安の先に 見つけたタカラモノ』

 

 

 

『そこにある全部 全部』

 

 

 

『愛おし過ぎる笑顔』

 

 

 

 

 

 

「殿、次のお客人がお見えです……」

 

「うむ、くるしゅうない。通すがよい」

 

「はっ……」

 

 流石に五組目ともなると美優さんもノリノリである。さっきからお茶くみばかりお願いしているので大変心苦しいので、また今度何かしらの褒美を取らせることにしよう。……イカン、思考が丁髷に流されている。

 

「リョーさん、あけましておめでとうございます!」

 

「くっ……! このままでは、いずれ俺は丁髷に乗っ取られてしまう……!」

 

「何があった!?」

 

 

 

 というわけで五組目のお客様は315プロから輝さんと薫さんと翼さん、ドラスタの三人である。

 

「ようこそお越しくださいました」

 

「さっきから見た目と言動がかみ合ってないなぁ!? 一体どうした!?」

 

「ちょっとマンネリ化してきたかなって」

 

「やめたらどうだ!?」

 

 いやここまで来たら最後まで続けるべきだよなと思って。

 

「ったく、色々と情報が渋滞して『どうして丁髷なんだ』とか『なんで畳なんだ』とか、そういう初歩的なツッコミをする余力もないぜ……」

 

「どうでしょう薫さん、代わりに」

 

「やらない」

 

「な、なんでやねーん!」

 

 翼さん、そうじゃないけどありがとうございます。

 

「では改めまして」

 

 そんなやり取りをしつつ、三人も律儀に俺の前に正座で並んでくれた。

 

「「「あけましておめでとうございます」」」

 

「あけましておめでとうございます」

 

 芸能界的にはそれなりの地位にいるので、こうして年上の人から畏まって頭を下げられる機会は多い。割と慣れたものであり、そしてコレも年上だろうが関係ない。

 

「ご足労いただいたお礼というわけではないですが、三人にお年玉です」

 

「「「……………」」」

 

 スッと三つのポチ袋を差し出すと、三人は揃って固まった。

 

「……は、話には聞いてたんだけど」

 

「やっぱり、年下の子からお年玉を貰うのはちょっと……」

 

「……………」

 

 輝さんと翼さんが顔を見合わせて苦笑し、薫さんは無言のまま眼鏡クイッ。うんうん、受け取りづらいですよね、分かります分かります。

 

「そんなお三方のためにこんな動画をご用意しております」

 

「「「えっ」」」

 

 タブレット端末を取り出して再生する。

 

 

 

『いえーい! 315プロのみんなー! 見てるー!?』

 

『やぁ、こんにちは』

 

『今からー! 硲道夫さんにー! お年玉を渡しちゃいまーす!』

 

『ぴーす』

 

 

「「「「ぶっ」」」」

 

 三人同時に噴き出した。と思ったら三人のお茶を持ってきてくれた腰元(みゆ)さんも一緒になって噴き出していた。うん、ノリノリなのに二人とも無表情な絵面が面白いですもんね。

 

「少しだけ時間があったので、あらかじめ315プロ最年長の道夫さん他セムのお二人にもお年玉を渡しておきました。これで『年下だから』という理由でお年玉を拒否することは出来ない!」

 

「だからなんで君はそんなにも変な方向に全力なんだよ!?」

 

 今までずっとそういう生き方をしていたので……。

 

「ちなみに他のアイドルでいうと、高垣楓さんや三浦あずささんといった方々にもお年玉は配っております」

 

「そのレベルのメンバーが受け取っている以上、受け取らない方が逆に失礼になるんじゃないか!?」

 

「いやまぁ、そもそも先輩からのお年玉を受け取らない方が失礼かもしれないけど……」

 

「……………」

 

 どうやら勝負あったようだ。

 

「では改めて、お年玉です」

 

「「「……ありがとうございます」」」

 

 めちゃくちゃ苦い顔ではあったものの、三人にもしっかりお年玉を渡すことが出来た。

 

 

 

「凉から聞きましたよ。二人ほど新しく入ってきた人がいるって」

 

「あぁ! これも年末の合同ライブのおかげだぜ!」

 

「お二人以外にも、話を聞きに来てくれた人や考えてくれている人が何人かいるらしくて、社長とプロデューサーさんが色々と忙しいみたいです」

 

 123(ウチ)は男女混合アイドル事務所のため、これでついに『大手』男性アイドル事務所としての地位を確立したと言っても過言ではないだろう。

 

「ただまぁ、チラッと聞いた過去の経歴がやっぱり色物揃いらしいんだけど……」

 

「というと?」

 

「忍者とか」

 

「剣士の知り合いがいるので、まぁそういうのもありでしょうね」

 

「驚かれなかったことに驚きなんだが!?」

 

 昔から日常的に鍔鳴りの音を耳にしている身なので、現代に忍者がいたとしても今更俺が動じることはない。

 

「ま、まぁ過去のことを言えば、俺たちも人のこと言えないんですけどね……」

 

「元弁護士に、元パイロットに、元医者だもんな」

 

「……今更経歴なんて関係ないだろ」

 

 薫さんはそう言うが、実際彼らのことを知ってアイドルの道に興味を示す人が多いという話は聞いている。

 

 人に話したい過去、話したくない過去、話すことが出来ない過去、色々なことがあるということを俺も知っている。そんな人たちがアイドルという新たな道に希望を見出してくれるのであれば……。

 

「……『春』ですね」

 

 

 

 315プロダクション。

 

 遠くない未来。『日本で一番有名な男性アイドル事務所は何処か』という問いに対して、彼らは123プロを抑えて真っ先に名前が挙がることになる。様々な過去を持つ人々がいて、その過去と向き合うためにこの道を選んだ彼らは、胸を張って『理由(わけ)あってアイドル』なのだと口にする。

 

 

 

「えっ、リョーさん今『春は不審者が多い』的なこと言った?」

 

「確かに忍者とは言いましたけど!」

 

「周藤君、それは流石に言葉が過ぎないか」

 

「普段の言動的に自業自得だとは思うんですけど誤解なんです!」

 

 

 

 

 

 

「良太郎さん、遅ればせながら新年あけましておめでとうございます」

 

「あけましておめでとうございます」

 

「あけましておめでとーございます! なの!」

 

 

 

 次にやって来たのは……今や『123』と『1054』に肩を並べ、日本の三大アイドル事務所として名を馳せる765プロダクション。そんな765プロを代表するアイドルであり……『765プロ世代』で()()()()()()()()()()と称されるトップアイドル、春香ちゃん、千早ちゃん、美希ちゃんだった。

 

 

 

「あけましておめでとぉ……三人とも、よぉ来たねぇ……」

 

「見た目とセットがバカ殿なのになんでそんなジジ臭いんですか!?」

 

 ちょっと疲れてきて……。

 

 

 

「君たちが来るまでに、五組十五人のアイドルが代わる代わる挨拶に来てくれてね」

 

「流石良太郎さん……松の内(一月七日)を過ぎてもまだそんなに挨拶周りが来るんですね」

 

「君たちもその一組だよ……はい、お年玉」

 

「わぁ! 今年もありがとうございます!」

 

「ありがとうございます。大事に使わせていただきます」

 

「ありがとーございます! なの!」

 

 春香ちゃんたちにお年玉を渡すのも既に五回目。アイドルとしてはそれなりの芸歴になる765プロの面々ではあるが、あの伊織ちゃんですら当然のように受け取ってくれるのだから彼女たちもすっかり慣れたものである。

 

「挨拶に来てくれたみんなは年末のライブ以降忙しくなったっていう話だったけど、春香ちゃんたちは今更変わらないかな?」

 

「「「……………」」」

 

「……?」

 

 

 

「「「……あっ! 合同ライブ!」」」

 

「だよね! やっぱりそうなるよね!」

 

 

 

 やった! 六組目にしてようやく俺の感覚を理解してくれる子たちが来てくれた!

 

「ありがたいことですが、年末年始は年々忙しくなる一方で……」

 

「同じ歌番組に出演するのに、収録時間がズレて結局一度も顔を合わせないなんてこともありましたね」

 

「りょーたろーさんとニアミスしたときは本気で全てを終わらせかけたの」

 

 すっかりと123と1054(おれたち)レベルで多忙になった765のみんなも、それはもう過酷な一ヶ月を過ごしたようである。

 

「でも……私は、なんだか嬉しかったです」

 

「春香ちゃんは随分とTOUGH(タフ)だね」

 

「タフって言葉は春香の為にあるのね」

 

「良太郎さんはともかく千早ちゃん!?」

 

「激務なくして休息のカタルシスはありえないの……」

 

「それは刃牙ッッ」

 

 この辺りのノリにしっかりと付いてくることが出来るのも長い付き合いの賜物である。

 

「そうじゃなくて! ……良太郎さんと麗華さんの、悲願だったんですよね?」

 

「え?」

 

「『春』」

 

 ふふっと春香ちゃんは微笑んだ。

 

「私は、お二人ほど長い付き合いではありませんし、お二人ほどアイドル業界のことを考えていたわけじゃありません。……それでも()()()()()()()()()()が、ずっとずっと願い叶えようとしていたことがついに実現したんだって思うと……私、本当に嬉しかったんです」

 

「……………」

 

 ……そうか。春香ちゃんは、春香ちゃんも、()()()のことを見てくれてたんだね。

 

「ようやくやってきた『アイドル春の時代』が長く続くように……私も頑張ります!」

 

「春香ちゃん……」

 

 

 

「は、春! 香! だけに!」

 

 

 

「「「……………」」」

 

「……え、えっと……その……」

 

 どうやらそれが春香ちゃん的に渾身の冗談だったらしく、小さくダブルピースを掲げたポーズのままドンドンと顔が赤くなっていった。

 

「春香、今の凄く可愛かったからもう一回やって」

 

「やらないよ!?」

 

「千早さん、ミキたちだけで見るのは勿体ないから動画撮ってみんなに見てもらうの」

 

「いえ、それなら直接やってもらった方がいいわ。この可愛さは直接摂取しないと」

 

「そんな自分で自分を処刑するようなこと絶対にしないからね!?」

 

「つまり今のは高度な自○だったという自覚があると?」

 

「そうじゃなくてぇ!」

 

 

 

 765プロダクション。

 

 後のアイドル史を研究する者たちの間では『アイドル春の時代のきっかけは彼女たちだったのでは』という説が囁かれるほど、彼女たちのデビューは一つの転換点とて強く注目されることとなる。いつの日か、人々は気付く日が来るかもしれない。彼と彼女たちの出会いが『物語』の始まりとなったことを。

 

 

 

「あ、全員既読付いたの」

 

「春香、後には引けなくなったわよ」

 

「確実に息の根を止めるような追い込み方しないでくれるかな!?」

 

「この子たち、俺が何もしなくても勝手にオチつけるんだから凄いよなぁ……」

 

 

 




・美優さん@腰元
実はずっとお茶くみしてくれてた美優さんが多分一番のMVP。

・第五客人ドラスタ
ついに年上が登場。なお容赦なくお年玉を渡す模様。

・『いえーい! 315プロのみんなー! 見てるー!?』
無表情ダブルピース。

・「忍者とか」
え? そんなアイドルいないって?
実は『いた』らしいんですよ……。

・第六客人初代信号機トリオ
書いててめちゃくちゃ懐かしかった……この三人から始まった……。

・TOUGH
・「タフって言葉は春香の為にあるのね」
しゃあっ 実はまだ未履修っ

・「激務なくして休息のカタルシスはありえないの……」
ネタではあるけど割と普通に名言だと思うんすよ勇次郎さん。



 久々の五話目に突入!

 そして次こそ正真正銘、第九章最終話!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。