アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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久しぶりのトンチキだぁぁぁ!


番外編91 帰ってきた志希ちゃんのオクスリパニック!

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

 思えば、それは完全に俺の油断だったのかもしれない。

 

 アイドルとしては信用してもいいぐらいの実力にまで成長していたとしても、()()が本来持ち合わせている危険性に関しては一切信用するべきではなかったのだ。

 

 だからこれは俺にとっても戒めとして忘れるべきではない記憶であり記録である。

 

 ……あれ? ぬ~べ~クラスのときと比べればまだマシなのか?(感覚麻痺)

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ……」

 

 朝、あくびを噛み殺しつつリビングへと顔を出す。

 

「おはよー」

 

「あぁ、おはようさん」

 

 珍しく先に起きていた志希に挨拶をしつつ、寝起きのコーヒーを淹れるためにキッチンへ向かう。時間があるときはしっかりとコーヒー豆を挽くところから始めるものの、流石に今日はインスタントでいいかな。

 

「リョータローにしては珍しく朝遅いね?」

 

「逆だ逆。お前が珍しく早いんだろうが」

 

「実はそもそも寝てないって言ったら?」

 

「寝ろ」

 

 しかし少しだけ朝が遅いというのは事実でもあった。

 

 本日の俺の仕事の予定は表に出ない仕事ばかりな上に数も少なく、さらに夕方からは殆どプライベート。なので少しぐらい寝不足でも一切問題がないため、思わず夜遅くまでゲームにうつつを抜かしてしまったのだ。

 

 おかげで先ほどから欠伸が止まらん。PPは10しかないからこのままではわるあがきになってしまう。

 

「はい粉状コーヒーフレッシュ」

 

「商品名を言わない配慮は今必要か?」

 

 志希から受け取った粉ミルクをマグカップに入れて掻き混ぜ、一口。

 

「あ、リョータロー、ちょっとマグカップ置いてソファーに座ってもらっていい?」

 

「ん? なんだその要求は」

 

「いいからいいから~」

 

 全くもって意味が分からないが、志希の言われるがままにマグカップを置いてソファーに座る。

 

「……うんうん、ちょっとラグがあるのは逆に都合がよかったね~。()()()準備が出来る」

 

「……は?」

 

 おいお前今なんて……。

 

 

 

 ドクンッ

 

 

 

「がっ!?」

 

 突然、誰かに心臓を強く握られたような痛みが走った。まるで火に炙られているように身体が熱くなり、息を吸うだけで肺に激痛が走る。ギシギシと全身の骨も軋んでいる。何故か身体からシューシューと白い煙のようなものも上がっている気がする。

 

「うーん、ちょっと副作用が強すぎる感じかー」

 

「しき……てめぇ……ついにマジもんの毒を盛りやがったなっ……!?」

 

 さっき手渡された粉ミルクか……! 完全に油断してた……!

 

「いやいや、ちゃんとしたオクスリだから。しかも今回に関して言えばしっかりと世のため人のためになるタイプの奴」

 

「だとしても、何も言わずに、盛る奴がいるかっ……!」

 

 

 

「その方が面白い、とガンダム(さくしゃ)が言っている」

 

 じゃあ……しゃーない……!

 

 

 

「ぐあああぁぁぁっ!?」

 

 

 

 

 

 

 俺はトップアイドルの周藤良太郎! 次の日の仕事が緩い内容だったことから、思わずポケポケのランクマッチに集中してしまった! シルパルド対策に夢中になっていた俺は、夜更かししてしまい志希の悪だくみに気付けなかった! 俺は志希に怪しげな薬を飲まされ、目が覚めたら……!

 

 

 

 身体が縮んでしまっていた!

 

 

 

「そうはならんでしょ」

 

「なっとるやろがい!」

 

 早苗ねーちゃんに対してツッコミ返す俺の声が、まるで()()()()()()()のように高い。

 

 そう。とんでもないことに現在の俺の身長は百センチちょっと。大体小学生ぐらいの身体になってしまったのである。番外編だからといってファンタジーに振り切れ過ぎではなかろうか。質量保存の法則何処へ行った。

 

 騒ぎを聞きつけた家の住人全員がリビングへと集まって来たところで、ようやく志希から事情聴取開始。

 

「えっと、簡単に話をまとめると『とある製薬会社の会長と仲良くなって、再生医療の研究の手伝いをしていて、その結果若返りの薬が出来た』と……?」

 

「若返る方は殆ど副作用みたいなものなんだけど、この研究が進めば再生医療は格段に進歩するよ」

 

「そりゃするだろうよ……」

 

 正座をして首から「私はまた怪しい薬を盛りました」というプラカードを下げながらも悪びれる様子がない志希に、思わず頭が痛くなる。

 

 一体どこなんだよその製薬会社……こんな怪しげな薬作りやがって……カラスのマークの製薬会社とか聞いたことないんだが……?

 

「でも実際これが普及すると大勢の命が救えるから、本物の大発明じゃないか?」

 

「兄貴、今はそういう真面目な感想求めてない」

 

 いや確かにガチで革命が起きるレベルの偉業ではあるんだけど、今は未来の人命よりも現在の俺に目を向けてもらいたい。

 

 ちなみに服だが、当然のようにサイズが合わなくなって情けない状態になっていたのだが、何故か母さんが大事にしまっていた昔の服を引っ張り出してきてくれた。

 

「あぁ~ん! 昔のリョウ君だ~! 可愛いよぉ~!」

 

「母さん、重い」

 

 一人だけやけにハイテンションな母さんが満面の笑顔で抱き着いてくるが、いくら我が家が誇るリトルマミーとはいえ体重をかけられると小学生の体躯で支えるのは辛い。あと大きなお胸の圧迫感が凄い。

 

「で? 解毒薬は?」

 

「だから毒じゃないって」

 

「こんなもん殆ど毒だっつーの!」

 

 チクショウ! 我ながら自分の声がなんか可愛らしい! 罵声に迫力が出ない!

 

「安心していいよー。ちゃんと薬の効果を打ち消すオクスリの開発にも成功してるから」

 

「寧ろそれを成功させずに投与されてたらグーでビンタするところだったぞ」

 

 ……ん? なんか今の志希のセリフに違和感があるんだが?

 

「……志希、その言い方だとまるで『今は手元に打ち消す薬がない』って言ってるみたいじゃないか?」

 

「……………」

 

 兄貴からの質問に、志希は露骨に視線を逸らした。

 

「お前えええぇぇぇ!?」

 

「だってオクスリの原材料がちょうど品切れでー」

 

 なんでも打ち消す薬はとある中国のお酒を原材料にしているらしく、取り寄せたそれが届いたのが昨日のことらしい。

 

「せめて打ち消す薬作ってから試さんかい!」

 

「以後気を付けます!」

 

「ヨシッ!」

 

「何も良くないわよ」

 

「良太郎、お前も落ち着け」

 

 原材料は全て手元にあるため、明日の朝までには薬は完成するとのこと。とりあえずずっとこのままの姿という最悪の事態は避けられたようである。なんとなく三十年以上子どもの姿のまま過ごさなければいけないような気がしてたから、本当に良かった。

 

「今日は表に出るような仕事は一切ないのが不幸中の幸いだったぜ……」

 

「えっ、アンタそんな状況になっても仕事するつもりなの?」

 

「アイドルの仕事に関しては常に真摯でいたいんだよ俺は」

 

「まるでそれ以外には真摯じゃないみたいな言い方ね」

 

「おっぱい!」

 

「四文字の勢いで納得させるな」

 

 納得してくれる早苗ねーちゃんの理解力も流石である。

 

「そもそも、普通こういうときって極力正体を隠そうとするもんじゃないの?」

 

「いや、別に怪しい組織に命を狙われてるとか言うわけでもないし、隠す理由ないでしょ」

 

 流石に公の場に出るのは問題があるだろうけど、今日の予定は基本的に身内ばかり。言いふらすような人はいないので、その点に関しては安心している。

 

「不幸中の幸いという点で言えば」

 

 子どもの視点だと早苗ねーちゃんの大乳の迫力がすごいなーなんてことを考えていると、兄貴がポツリと呟いた。

 

 

 

「……りんちゃん、いなくて良かったな」

 

「あの子がいたら色々な意味で発狂してたでしょうね」

 

 

 

 現在りんは魔王エンジェルとして遠征中である。俺としてもりんに変な心配をかける必要がなかったから、そういう意味でも幸いだったかもしれないが……何故兄貴と早苗ねーちゃんは揃って冷や汗を流しているのだろうか。

 

「それで? 今日の予定は何なのよ?」

 

「えっと――」

 

 

 

『123で打ち合わせ』

 

『スタジオでダンスレッスン』

 

『765プロ劇場に公演を見に行く』

 

『集会メンバーとカラオケ』

 

 

 

「――って感じかな」

 

「半分プライベートじゃない」

 

 だから今日は緩いって言ってるじゃん。

 

「……少し考えただけで、りんちゃんレベルで狂いそうな人が何人かいそうだな」

 

 兄貴が神妙な面持ちでなんか言っているが、俺が小学生ぐらい小さくなったところでそんな狂う人なんていないでしょ。寧ろ爆笑される未来が見える。

 

「……どうする? 誰かを警護に付けた方がいいんじゃない?」

 

「俺も今日は別件で動けないし……」

 

 だからなんで早苗ねーちゃんも兄貴もそんな深刻そうなのだろうか。いや俺の身に起きている状況に関して言えば相当深刻なんだけど、何か別のことを心配してないか?

 

「よく分からないけど、そーゆーのはいつも恭也君にお願いしてるよね? 恭也君、今日は忙しいかな?」

 

「「それだ」」

 

 そんな母さんの提案により、今日一日恭也が俺と共に行動することになった。なんでも兄貴が状況を説明したところ、困惑しつつも二つ返事で了承してくれたらしい。

 

「確かに子どもの身体って結構不便だけど、別に車を運転するってわけじゃないからそこまで用心するようなことはないんじゃないか?」

 

「いい? リョウ、今日のアンタはか弱い子どもなの。それをちゃんと自覚しなさい」

 

「これ、防犯ブザー。身の危険を感じたら躊躇わずに鳴らすんだぞ」

 

 まさかこの歳になって防犯ブザーを携帯することになるとは思わなかった。二十三歳なんですけど。アイドルの……事務所? に所属してるんですけど!

 

 

 

 そんなわけで今日一日、俺は小学生の身体で行動する羽目になってしまったのである。

 

 

 

「リョウ君! 写真撮ろう写真! 昔のリョウ君と写りたい!」

 

「いいけど、絵面的にそれは俺が小学生の頃の写真と何も変わらないのでは……?」

 

「……お義母さん、昔からずっとコレだものね」

 

「昔の写真と並べて間違い探しとか出来そうだな」

 

「ママさんが喜んでくれてよかった~」

 

「「「お前はさっさと薬を作れ!」」」

 

 

 




・PPは10しかないからこのままではわるあがきになってしまう。
そろそろポケモン新作の時期かなぁ。

・「その方が面白い、とガンダムが言っている」
本当にあと二話で終わるんですか?

・ポケポケのランクマッチに集中してしまった!
真面目にランクマやってる人の動画見る限り、人生に支障をきたしそうで怖い。

・身体が縮んでしまっていた!
オクスリネタの定番。

・カラスのマークの製薬会社
とある大富豪が経営しているホワイト企業らしい。

・とある中国のお酒
これ実在するお酒だったのか……。

・三十年以上子どもの姿
なお経過日数は約数ヶ月。

・りんちゃん不在。
だって今の良太郎と会わせると監禁とかしちゃうし…。



 長い長い八事務所合同ライブ編を終え、一発目の番外編は約八年ぶりとなるオクスリパニックです! ……八年!?!?!?!

 散々色々な場所で擦りまくっていますが、作者おねショタ趣味なので書いててめちゃくちゃ楽しいです! しばらくお付き合いください!
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