アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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劇場アイドルのターン!


番外編94 帰ってきた志希ちゃんのオクスリパニック! 4

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

「346は強敵だった……」

 

「もしかしてこのやり取り毎回やるのか?」

 

「時と場合による……」

 

 混迷を極めたダンスレッスンを終えて命からがらスタジオから脱出した俺は、護衛の恭也と公演を観るために765プロ劇場へとやって来た。

 

「一応聞くが、これも体調不良を理由に欠席してもよかったんじゃないか?」

 

「いや……別に体調は悪くないし」

 

「体調不良では到底済まされないような事態がその身に起きているという自覚がないのか、お前には」

 

 そんなやり取りをしつつ劇場の裏口へ向かう。

 

 普段は変装をして通常客として正面から入場するのだが、今回は以前から「開演前に挨拶に行く」と宣言してあった。

 

「それで良太郎、今度こそ自分の状況は伝えているんだろうな?」

 

「え? そりゃ勿論――」

 

「あら、恭也君じゃない。その子はどちら様?」

 

「――伝えてない」

 

「たわけ」

 

 裏口へと向かう途中、偶然このみさんと遭遇した。裏口なので関係者が利用するのは当然ではあるが、随分とタイミングが良いことである。

 

「んん~? なんだか見覚えのあるような子ね~?」

 

 膝に手を付いて俺と視線を合わせつつ、首を傾げるこのみさん。普段は見下ろす側なので随分とレアな姿である。

 

「……はっ!? ま、まさか……!?」

 

 俺に気付くかどうか黙って事の成り行きを見守っていると、どうやら気付いたらしいこのみさんが目を見開いた。

 

「きょ、恭也君……!? まさか、そういうことなのね……!?」

 

「はい」

 

「なんてこと……!? いつかはやるんじゃないかと思ってたけど、既にこんなことになっていたなんて……!?」

 

 あれ、なんだか違和感が。

 

 

 

「まさか良太郎君とりんちゃんにこんな大きな子どもがいたなんて……!」

 

「「違う、そうじゃない」」

 

 すげぇ誤解されてた。

 

 

 

 

 

 

「へぇ~『一ノ瀬志希ちゃんが作った薬を飲んで幼児化してしまった』ねぇ」

 

「そうなんですよ」

 

「……いや、二人の隠し子だっていう方がまだ納得出来るわよ。なにそのトンデモ薬物」

 

「それはそう」

 

 俺もその二択を提示されたら隠し子の方を信じると思う。

 

 さて、どうしたものか……。

 

「……そういえば、今度美奈子ちゃんが海の家のイベントに参加することになって、そこで期間限定で水着で接客することになったらしいんだけど」

 

「なんでそういうことはもっと早く教えてくれないんですか!?」

 

「あぁうんこれは間違いなく良太郎君だわ」

 

「俺のことはどうでもいいんですよ!」

 

 イベントの詳細をもっと詳しく!

 

「嘘よ」

 

「なん……だと……!?」

 

「なんでこんな嘘でそこまで傷付いてるのよ……」

 

「……ぐすっ」

 

「ホントなんでそんなに傷ついてるわけ!? 泣くほど!?」 

 

「あれ!?」

 

 え、なんか知らんけど涙出てる。いくら俺でも流石にこの程度では泣かないけど。

 

「……良太郎、俺はお前ほど漫画やアニメに精通しているわけではないんだが」

 

「急にどうした恭也」

 

「これは俗にいう『精神が身体に引っ張られている』っていうやつじゃないのか?」

 

「……え゛」

 

 これは『そんなバカな!?』というリアクションではなく『そういえばそういうのもあったなぁ!?』というリアクションである。

 

 皆さんご存じ、周藤良太郎は転生者である。つまり人生で一度でもある方が珍しい『若返る』という状況の二度目を体験しているわけである。そしてこの『精神が身体に引っ張られている』という状況にも身に覚えがあるわけである。

 

「さっきまでも色々あったはずなのに、なんで今になって急に……」

 

「精神の方も徐々に退行しているのだろう」

 

 ヤバい。ただのトンチキイベントかと思ったら割と深刻な状況になって来てないか。いずれはこのまま記憶が無くなっていったり……。

 

「……………」

 

「このみさん、どうしました?」

 

 先ほどから俺を見ながら何故か顔を赤くしている。

 

「ち、違うのよ……なんか、こう……今の良太郎君を見てると、胸の奥の方がギューッてなるのよ……!」

 

「更年期障害では?」

 

 頭頂部をぶん殴られた。

 

「いってぇぇぇ……!?」

 

「はっ!? しまったついいつものノリで……!」

 

 殴られることは承知の上だったのだが、想定していたものよりも痛くて思わず頭を押さえてしゃがみ込んでしまった。どうやら痛みに対する耐性までなくなっているらしい。いつものように腹パンされていたらワンチャン吐いていたかもしれん。

 

「ご、ごめ――」

 

 

 

「このみさん!?」

 

「なにしてるんですの!?」

 

 

 

「「げっ」」

 

「……また面倒なことになりそうだな」

 

 どうやらこのみさんが俺を殴った場面を目撃してしまったらしく、廊下の向こうから風花ちゃんと千鶴が駆け寄ってきた。

 

「こんな小さい子を殴るなんて!」

 

「事情は分かりませんが、手を挙げるのはいただけませんわね」

 

「あぁいやそうじゃなくて、いや事実ではあるんだけど……」

 

 二人に詰め寄られ、思わずしどろもどろになってしまうこのみさん。これはさっさと事情を説明した方がいいな。

 

「違うんだ、これは俺が悪くて……わぷっ」

 

「大丈夫? 何処が痛いの?」

 

 頭頂部を押さえながら事情を説明しようと開いた俺の口が、殴られたところを確認しようと俺の頭を抱き寄せた風花ちゃんによって塞がれてしまった。むぎゅ。

 

「それでこのみさん、一体何があったんですの?」

 

「……そういえば千鶴ちゃんって、良太郎君と幼馴染だったわよね」

 

「小学校低学年の頃からの付き合いだと聞いていますが」

 

「え? えぇ、そうですわね。急になんですの?」

 

「「……………」」

 

「え?」

 

 このみさんと恭也がちょいちょいと俺に向かって指を差し、それに釣られて千鶴が俺の顔をじっと見る。

 

「……もしかして貴方」

 

「ぷはっ。やっほーちづたん」

 

「やっぱり!? りょ、良太郎ですの!?」

 

「……え?」

 

「風花ちゃん、落ち着いてほしい、ちゃんと説明するから」

 

 あっ、ちょっ、至近距離で叫ぶのはやめっ。

 

 

 

 

 

 

「――というわけで、これは全部一ノ瀬志希っていうバカのせいなんだ」

 

「随分とまぁ、トンチキな事件に巻き込まれてますわねぇ」

 

「うぅ……」

 

 改めて事情説明。俺のせいじゃないというのに千鶴からは呆れたような目で見られ、風花ちゃんは恥ずかしそうに千鶴の影に隠れていた。うーん、身体の一部が完全に隠れられてないですねぇ。

 

「やっぱり一発殴られていた方が良かったんじゃないか?」

 

 今の状況でいい感じのラブコメビンタを食らったら本気で失神する気がする。

 

「解決策はもう分かってますの?」

 

「元に戻るための薬作らせてるから、一応明日には元に戻れる予定」

 

「それは信用して大丈夫ですの?」

 

「やめろよそういう怖いこと言うの……」

 

 今の俺にはそれを信じる以外の道はないんだから。藁にも縋る思いならぬ、猫の手に縋る思いである。とはいえ最近志希の抑止力として絶大な効果を認める我がリトルマミーが付きっきりで見張ってくれているはずなので、流石に大丈夫だろう。

 

「……なんというか、千鶴ちゃんも張本人の良太郎君も、やけに落ち着いてるわね」

 

「「え?」」

 

 このみさんに言われて千鶴と顔を見合わせる。

 

「……まぁ、昔色々とありまして」

 

「昔の良太郎を知っていると、いきなり変な状況になることはよくあることです」

 

「よくあること!? こんなことが!?」

 

 小学五年生の頃は、身体から悪霊の顔が浮き上がったり、クラスメイトの首がいきなり伸びたり、自分だけじゃなくてクラスメイトも含めて多種多様な出来事が起きたものである。

 

「あれにはギリギリ巻き込まれなかったけどな、クラスの男子全員がパン――」

 

「パン?」

 

「――いえこれを言うのは止めておきましょう」

 

「「「?」」」

 

「……………」

 

 不自然に言い淀んだ俺に、このみさんと風花ちゃんと恭也が揃って首を傾げる。一方で『あの大惨事』を知っている千鶴は顔を真っ青にして腕の鳥肌を必死に擦っていた。うん、ガチであれにだけは巻き込まれなくて良かった。本当に良かった。尊厳が死ぬところだった。

 

「っと、いつまでも話し込んでる場合じゃない」

 

 スマホを取り出して時間を確認すると、そろそろ開演時間が近付いてきていた。

 

「三人は今日出演予定じゃなかったですよね?」

 

「えぇ」

 

「というか、本当にそのままの姿で観覧していきますの?」

 

「そのために来たんだから」

 

 風花ちゃんと手を繋ぎつつ、今日の出演アイドルの楽屋へと向かう。

 

「でも、今の良太郎君の姿を見たら、本番直前のみんながビックリしちゃうんじゃないかな」

 

「でも何も知らされずに俺を見つけて、さっきのこのみさんみたいに『俺とりんの子ども』だとか勘違いして本番中にパニックを起こすよりはいいと思うんだよ」

 

「そっか、それもそうだね」

 

 風花ちゃんからの疑問にも答えたところで、そろそろ楽屋に……。

 

「「「「……………」」」」

 

「あら? どうしたんですか?」

 

 俺たちが足を止めると()()()()()()()()()風花ちゃんも一緒に足を止めた。

 

「……風花ちゃん!? 貴女どうしちゃったの!?」

 

「なんでごく自然に良太郎と手を繋いでいますの!?」

 

「えっ、だって迷子になるといけないと思って」

 

「なるわけないわよ!?」

 

「風花! 正気に戻りなさい!」

 

 いかん、完全に油断してたけど風花ちゃんが()()()()()いたらしい。先ほどの美波ちゃん同様お目目がグルグルしている。

 

 距離を離そうとしてもガッチリと手を握られているため離れることが出来ない。こういうときに剝がしをするのも護衛の役割じゃないのか恭也!

 

「すまん、今シュシュを付けていない」

 

「誰だお前にそんなくっそどうでもいいネタ仕込みんだ奴は……ふむぐっ」

 

 それは護衛の役割を放棄する理由にはならないと抗議したかったのだが、再び俺の頭を抱き寄せた風花ちゃんによって口が塞がれてしまった。むぎゅ。

 

「心配しないでください! この子は私が責任を持って育てます!」

 

「私たちが心配してるのは未来の貴女なのよ風花ちゃん!」

 

「そろそろ正気に戻っておかないと反動で後が大変なことになりますわよ!」

 

 

 

 へるぷみー!

 

 

 




・シアター組@三番手
と言いつつ三人のみの登板。
おねショタしやすいアイドル組とも言う。

・「まさか良太郎君とりんちゃんにこんな大きな子どもがいたなんて……!」
りんの要素がないので息子キャラとしては不適合。

・「……ぐすっ」
涙腺まで幼児化した模様。なおシリアスにはならない。

・むぎゅ
番外編の上に幼児化までしてるので、多少はね?

・身体から悪霊の顔が浮き上がったり
原作ではぬ~べ~の身体に取り付いていましたが、この世界では良太郎が被害にあった模様。なんかぁ、あの辺の祠にぃ、古びた刀? があるらしいっすよ。

・クラスメイトの首がいきなり伸びたり
なんであいつナチュラルに妖怪の力使いこなしてるんだよ。

・「クラスの男子全員がパン――」
ある意味ぬ~べ~世界における最大の災害。
果たして今回の新作ぬ~べ~では『あの鬼』は登場するのか? 出来るのか!?

・風花@お目目グルグル
多分大半の人の予想通りの人選()

・「今シュシュを付けていない」
アイドル系の話題はネタとして採用しやすい。



 母性枠ということで朋花様を登場させる案もありましたが、叫ぶことが出来るキャラの方が動かしやすいのであえなくボツに……。

 次がようやくラストです!



『どうでもいい小話』

 え!? なんだって!? 最近度々この小説内で話題に上がる『地獄先生ぬ~べ~』の原作漫画が、アマゾンの電子書籍だと一冊77円のセール中だって!?(2025/7/8現在)
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