アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

621 / 664
主人公以外のアイドルが登場しない作者の自己満足番外編第二弾!


番外編96 良太郎の華麗なる混沌とした日常 その2

 

 

 

 それはとある休日、街中で事務所お抱えのファッションデザイナーが幼い少女に声をかけている事案を目撃して通報しようとしたときのことだった。

 

「導入でそんな雑に通報する人がありますか!?」

 

「お鶴さん、安心してください。事務所で優秀な弁護士を雇いますし、何があろうとも貴女の籍はウチの事務所にありますから」

 

「そこまで手厚く面倒を見てくれる予定ならばそもそも通報しないでくださいまし!」

 

 血相を変えて俺の腕に縋りついてくるお鶴さんの姿があまりにも憐れだったので通報は勘弁してあげよう。

 

「あははっ、大丈夫だよ。別に変なことされてたわけじゃないから」

 

 お鶴さんと一緒にいたピンク色の髪の少女が笑いながら話しかけてきた。話し方から察するに、どうやら俺が想像していたよりも歳は上のようである。

 

「僕はお鶴さんとは長い付き合いでね。()()()()()()では『ハベトロット』っていう名前で活動させてもらってるよ」

 

 それはお鶴さんから聞いたことがある名前だった。確かに可愛らしい見た目をした同業者がいるという話だったが……なるほど、我が家のリトルマミーと同種の女性だったか。胸は全然違うけど。

 

「初めまして、周藤良太郎です」

 

「っ!? よ、予想以上に大物の名前が出てきたねぇ……」

 

 関係者ならば明かしても問題ないだろうと判断して身バレしつつ握手する。いずれお仕事を頼むことがあるだろうし、こういう繋がりというものはいくらあってもいいものだ。

 

「それで、お二人とも()()()()()()()()()()()?」

 

「いえ、寧ろ良太郎さんこそ()()()()()()()()()()()?」

 

 そりゃあ『コスプレ会場』なんだから目的は一つである。

 

「可愛い女の子のコスプレが見れるかなって」

 

「よくもまぁそんな欲望丸出しで人のことを通報出来ましたね……」

 

 そんなわけで、ここは『コスプレストリーム』という名のコスプレイベントの会場である。企業ブースも出店している大きめのイベントで、なんでも『コスプレ四天王』なんて呼ばれる有名コスプレイヤーの内の二人が同時に参加するらしく、会場の入り口から既にかなりの賑わいを見せていた。

 

 ちなみにその『コスプレ四天王』の内の一人が、たまに仕事で顔を合わせる程度の知り合いだったりする。

 

「私はハベさんに誘われてきたんです」

 

「実はこのイベントに……僕の『弟子』が来てるみたいでね」

 

 お鶴さんの言葉にハベトロットさんに視線を向けると、彼女は懐かしむように微笑みつつもバツが悪そうに頬を掻いていた。

 

「いや『弟子』なんて言い方悪いかな。被服の基礎の基礎を少し教えた程度だから、向こうは僕のことなんて忘れてるかもしれないし」

 

「なんて言ってますけど、『ハベトロット』からの教えを受けれるなんて業界では凄いことなんですよ」

 

「だからそんなんじゃないって」

 

 そんなことを話しつつ屋外の広場へと足を進める。

 

「……なんか、凄い盛り上がりですね?」

 

 そこは想定していたよりも数倍の熱気に包まれていた。やたらと大きな囲みが二つほど出来ている。

 

「こっちの世界は門外漢なので知らなかったですけど、噂の『コスプレ四天王』っていうのはこんなに大きな囲みが出来るんですねぇ」

 

 すげぇな753(なごみ)ちゃん。まさかここまでとは。

 

「……いや、多分片方は違うよ」

 

「え?」

 

「二つの大きな囲みの内、一つが()()()()()()()()()の囲みだ」

 

 あ、二人が同時に参加ってそういう意味? 753ちゃんがもう一人の四天王と一緒にコスプレしてるっていうことか。

 

「それじゃあ、その『コスプレ四天王』二人に匹敵するような有名人が来てるってことですか?」

 

「……うん」

 

「そちらが、ハベさんのお弟子さんの囲みですね」

 

 囲みは厚いものの、偶然人々の隙間から中心にいる人物の姿が見えた。

 

 そこにいたのは、金髪のツインテールにめちゃくちゃ短いミニスカートの、真っ白な天使のコスプレ。

 

「あれは確か……」

 

 

 

「うっひゃあああぁぁぁ!? 『あのリリエル』!? 実物初めて見た! めちゃかわぁぁぁ!」

 

喜多川(きたがわ)さん、知ってるキャラなんですか?」

 

「逆にごじょー君知らないの!? ジャンプで連載してた『アシュフォード戦記』のリリエル! かつて誰もが一度は恋をしたとも呼ばれる天使リリエル! 知らないの!?」

 

「ふ、不勉強ですみません……」

 

「ううん! 全然大丈夫! 今リリエルが主人公の外伝がアニメやってるから今度一緒に見よーね!」

 

「それで喜多川さん、()()とは?」

 

「そのリリエルのコスプレでめっちゃ有名なレイヤーさんがいるんだけど、誰も名前知らないしSNSもやってないの。だからみんな『あのリリエル』って呼んでるんだ」

 

「へぇ……」

 

「あ、ちなみになんだけど、一緒にいる赤い髪の天使いるじゃん?」

 

「いますね」

 

「『アリエル』っていうキャラのコスプレなんだけど、あれウチの高校の先輩だよ」

 

「そうなんですか!?」

 

 

 

 近くにいた黒髪和装メイドのコスをした少女と作務衣コスした少年の会話が詳しい解説になっていた。誰だか知らないけどありがとう。手間が省けたよ。

 

「あの囲みの中心にいるリリエルが、ハベトロットさんのお弟子さんなんですね」

 

「だから弟子じゃないって。……でも、うん。一目見て分かったよ。あの子らしい優しい縫い方だって」

 

(……縫い方、見えるんですか? この距離で?)

 

(少なくとも私には無理です。ハベさんは業界では『糸紡ぎの妖精』と呼ばれるほど凄い人なので……)

 

 ひそひそと話し合う俺とお鶴さんを余所に、ハベトロットさんはとても優しそうな表情をしていた。

 

「……二人とも、付き合ってくれてありがとう。僕は見つからない内に会場を出ることにするよ」

 

「え、会っていかないんですか?」

 

「折角の再会なわけですし……」

 

「今更僕なんかが師匠面して出てきても、あの子も困っちゃうよ。僕は元気な彼女の姿と、今の彼女の作品を見れただけで満足さ」

 

 俺とお鶴さんが引き留めようとするが、ハベトロットさんは首を横に振るばかり。

 

 さてどうしたものかと思っていると……タイミングの神様というものはなかなか粋なようで、何故か囲みが開くと中心で写真を撮られていたリリエルたちがこちらに向かって歩いてきた。どうやら今から休憩に入るらしい。なんというジャストタイミング。

 

「ほらハベさん、こっちに来ますよ」

 

「声かけましょうよ」

 

「だから僕は……」

 

 ええい、このままでは行ってしまう。何とかして彼女たちの意識をこちらに向けることが出来れば……せや。

 

「……ん、んんっ、あー、あー」

 

 喉の調子を整える。えっと、確かアニメのリリエルの声優は声山花子(ほりえゆい)さんで……元クラスメイトの羽川翼に似てたっけな。

 

「あー、あー、うん、確かこんな声でしたね」

 

「「っ!?」」

 

 突然俺の声が女性に変ったことでギョッと目を剝く二人を余所に、俺はすぅっと息を吸った。

 

 

 

「見てください、アシュフォード様! 私がいます! 天使空挺隊のみんなも!」

 

 

 

『『『!?!?!?』』』

 

 

 

 その場にいた全員の視線がギョッとこちらに向いた。そして俺はよく分からないフリをして首を傾げる。これで誰も俺がリリエルの声を出したなんて思わないだろう。

 

(なんて危険な力技を……貴方の正体がバレたらどうするんですか……!?)

 

(この程度でバレるようなら今まで何度もバレてますよ)

 

 とにかく『あのリリエル』の視線をこちらに向けることには成功した。

 

 そしてこちらに視線を向けることが出来れば……。

 

 

 

「っ!? お、()()()()っ!」

 

 

 

 向こうもハベトロットさんに気付けるだろう。

 

「え? お師匠様? そんなキャラいたっけ?」

 

「確か黒天使ユリエルって師匠キャラがいたはずだけど……」

 

「違います! 私の衣装作りの師匠なんです!」

 

 若干目に涙を浮かべつつ満面の笑顔のリリエルがこちらに向かって走って来た。下乳すげぇめっちゃ揺れてる。

 

「お久しぶりです! お師匠様!」

 

「……やぁ、元気そうで何よりだよ。この場では『リリエル』って呼んだらいいのかな」

 

 二人が会話を始めたタイミングで、俺とお鶴さんは静かに後ろに下がる。

 

「お鶴さんにはいないんですか? お弟子さん」

 

「姪っ子に少し教えた程度で……私もハベさんのこと言えませんね」

 

 苦笑したお鶴さんは「そういう良太郎さんこそ」とこちらに視線を向けた。

 

()()()()()()()()()()玉座への後継者……見つかりましたか?」

 

「……それを選ぶのは、俺じゃなくて時代ですよ」

 

 俺は今まで出会ったアイドル全てに、俺のアイドルとしてのノウハウは教えてきたつもりだ。だから後継者とかそういうことを言うつもりはない。

 

「それでも……そうですね」

 

 一人ぐらい、この子が『周藤良太郎の弟子』だと胸を張れるような子が、いてもいいのかもしれない。

 

 ……でもそれは、もう少しだけ先の話かな。

 

「それより今の俺はコスプレの方にちょっと興味が出てきたところです」

 

「何故!?」

 

「いや、実は今度撮影でコスプレすることになってまして……」

 

 『このコスプレをしている芸能人は誰だ!?』みたいなテレビの企画があって俺にもオファーがかかっていた。こんな面白そうな企画俺が飛びつかないわけがないのだ。流石に番組プロデューサーも俺という人物がよくわかっている。

 

 ちなみにこの番組でも753ちゃんと共演することになっていてそちらも楽しみ。

 

「なんのコスをするかはこれから決めるんですけど……やはりウケを狙うのであれば女装コスの方がいいと思うんですよ」

 

「前々から思っていましたけど、どうして貴方はそんなにも女装に対して前傾姿勢なんですか……?」

 

 だって女装した俺可愛いし……。

 

「そういうことなら、僕に良太郎君のコスを仕立てさせてもらえないかな?」

 

「おっと?」

 

 お弟子さんとの感動の再会を一通り終えたらしいハベトロットさんの視線がこちらに向いた。

 

「ちょっと弟子にいいところを見せたくなってね」

 

「お師匠様の作るコスプレ衣装だなんて……! 是非拝見させていただきたいです!」

 

 トントン拍子に話が決まっていく。口に出して見るもんだね。

 

「それで? どんなコスをしてみたいんだい?」

 

 俺の希望はただ一つ。

 

 

 

「おっぱいおっきなキャラでお願いします!」

 

 

 

「うっさ」

 

 

 

 

 

 

「……っていう経緯があって、私は今こんな格好をしてるんだよ、冬馬君」

 

「趣味全開の恰好をしてる経緯をまぁ長々と……あとその声ヤメロ」

 

「ちなみにそのとき中学の同級生と再会したんだけど、今は教鞭を執ってて、しかしその正体は『魔乳』と呼ばれるコスプレ四天王の一人で……」

 

「よく分からん情報を増やすな!」

 

 

 




・ハベトロット
FGOから登場。スコットランドの伝承に登場する糸紡ぎをする者たちの守護者。
アイ転世界ではリトルマミーと同種の標準的な小柄な女性。

・コスプレストリーム
『2.5次元の誘惑』作中内のコスプレイベント。通称春大会。

・『コスプレ四天王』753
『2.5次元の誘惑』に登場する公式レイヤー。むっちり夢女子。
原作でもテレビ出演してるので良太郎とは顔見知り。

・喜多川さん
・ごじょー君
アニメ『その着せ替え人形は恋をする』二期絶賛放映中!
(実はLesson336でチラ登場済み)

・あのリリエル
『2.5次元の誘惑』の主人公のコスプレした姿。コスネームがないから色々と面倒くさい。
平常時の姿がマシュにそっくりだったことから、ハベにゃんの弟子という発想が生まれた。

・アリエル@ごじょーくんたちの先輩
喜多川海夢と喜咲アリアで画像検索してもらいたいんですけど、制服くっそ似てるんですよ。
というわけで先輩後輩という設定が生えました。

・声山花子
作中での声優さん。現実ではほっしゃん。

・姪っ子
多分いずれ登場する。



 クロスオーバーの番外編という名のにごリリ編でした。知らない人は置いてけぼりですみません。

 今後、この混沌とした日常シリーズは『本編でやるにはアイマスキャラがいなさすぎる』お話を取り扱う番外編として、恋仲○○シリーズのように扱っていきます。

 ……よし、これで『名探偵コナン×推しの子』編とか『地獄先生ぬ~べ~』編とか『メダリスト』編とか書く下地が出来たな!

 次回の更新はどうなるか……八雲なみ関係の時系列と人物関係と感情の相関図がしっかりと煮詰めることが出来た場合、本編再開します。果たして。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。