アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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現状説明回ラストです!

※前話の初星学園辺りの設定を書き直してあります。


Lesson458 アイドル春の時代 4

 

 

 

「お疲れ様でした」

「おう、お疲れ」

 

 無事に収録を終え、俺と美琴はそれぞれにあてがわれた控室に向かう。

 

「この後、飯でもどうだ? 時間あるか?」

「そういう誘いは断るように事務所でハラスメント講習受けてて」

「危機管理を徹底してて偉いなぁ!?」

 

 いや確かに昨今のコンプラ的なものを考えるとこれもハラスメントの一種なのかもしれないが、同期だよ!? 普通に仲が良いと思ってんだけど、俺の一方通行!?

 

 地味にショックを受けていると、俺ほどではないもののそれなりに表情が薄い美琴は両手でピースサインを作った。

 

「うそぴょん」

「……………」

 

 可愛いんだけど腹が立つ方が先に来るな。

 

「それ絶対ともみの仕込みだろ」

「ううん、れーちゃん」

「あ゛?」

「って答えるところまでがともみの仕込み」

 

 マジでアイツ覚えてろよ……。

 

「食事の誘いは嬉しいんだけど、先約があるんだ」

「それは残念」

 

 しかしちゃんと食事が出来てるんなら安心である。どうしてもこいつは志希と同じように放っておくとちゃんとした固形物を食べないイメージが付いて離れないのだ。

 

 それを正直そのまま伝えると、美琴は不服そうにこちらを睨んできた。

 

「私のことなんだと思ってるのさ」

「冷蔵庫開けたら水だけで固形物がなかったっていうのは誰のエピソードだったかな?」

「マーガリンなら入ってたよ」

「逆に何でマーガリンが入ってたんだよ」

 

 殆どアスリートのお前がマーガリンなんて絶対食うわけないじゃん。いやアスリートならもっとちゃんと食事に気を遣うから違うか。

 

「……まぁ、昔の私が食に対して殆ど興味がなかったことは認めるよ」

 

 照れているのか拗ねているのか。ぷいっと美琴はそっぽを向いた。

 

「だから今日も高町さんちで一緒に食事をする約束になってるの」

「なるほどなぁ」

 

 ……ん? 今、高町さんちって言った?

 

 

 

 

 

 

「普段から美琴ちゃんの食生活が気になっていてね。時々こうしてウチでの食事に招待してるんだよ」

「そういやそんなこと言ってましたね」

 

 というわけでここは高町家。翠屋でも道場でもなく、正真正銘高町さんちである。

 

「すみません、いきなりお邪魔しちゃって」

「ううん! メッセージで良太郎君も来るって聞いたから、桃子さんいつも以上に張り切っちゃった!」

「今更遠慮なんてしないでくれ。君と俺たちの仲じゃないか」

「ありがとうございます」

 

 美琴から話を聞き、少々図々しいかと思いつつも士郎さんと桃子さんに『ご一緒させてもらっていいですか?』と聞いてみたところ逆にこちらが一歩引いてしまうレベルで大歓迎されてしまった。

 

「なのはちゃんはまだ仕事ですか?」

「ちょうど今恭也が迎えに行ってるよ。お陰様で今や人気アイドルだ。これも合同ライブに参加させてもらったおかげだね、ありがとう」

「いえ、なのはちゃんには元々素質がありましたから」

 

 道理で恭也の姿も見えないと思った。

 

「私! 私はいますよ!」

「分かってるからそんなに自己主張しなくても大丈夫だよ」

 

 美由希ちゃんからのアピールが必死すぎてちょっと悲しくなる。一体何が彼女をこんな風にしてしまったというのか……。

 

「フィアッセさんは里帰り中でしたっけ」

「のんびりしてくるって言ってたよ」

「しばらくボーカルレッスン見てもらえないのが残念」

「……え、お前フィアッセさんにボーカルレッスンも見てもらってるの?」

 

 合同ライブ以前からずっと高町家で基礎体力作りのトレーニングを見てもらっていることは知っていたが、まさかフィアッセさんからも指導を受けているとは思わなかった。

 

 トップアイドル『周藤良太郎』の基礎を作り上げた基礎トレーニングと世界最高峰の歌姫『フィアッセ・クリステラ』によるボーカルレッスンを同時に受けるなんて、恐らく全アイドルが羨む環境なんではなかろうか。

 

「はいどーぞ」

「そしてお前は当たり前のようにいるのな」

「そりゃあ当然、未来の嫁なんだから」

 

 最近はすっかり月村呼びすることもなくなった忍から出されたお茶を飲む。

 

「嫁ってお前、結局月村家はどうするんだよ」

 

 両親が不在ということは知っている。月村家の当主は現在忍なので、このままではお家の存続がマズイことになるのではないだろうか。

 

「すずかに任せるわ」

「しれっと妹に丸投げするな」

 

 なのはちゃんたちと同様、すずかちゃんも今年の春から女子高生になる。確かに忍もその頃には既に当主としての役割を全うしていたとはいえ、流石に酷じゃないだろうか。

 

「大丈夫、どうせ月村家はバニングス家と一緒になるんだし、すずかが路頭に迷うようなことにはならないわ」

「俺は家名のことを言っているのであってだな……」

 

 ……ん? 今なんか気になる発言があったぞ。

 

「おい忍待て。どういうことだ? 月村家とバニングス家が一緒になるってどういうことだ? 何があった?」

「あ、恭也となのはちゃん帰って来たみたいね」

 

 話を逸らすな! 本当にどういうことだ!? そういうことか!? すずかちゃんとアリサちゃん、()()()()()()()()()!?

 

 おい忍! 若奥様みたいにエプロン姿でパタパタと玄関に走っていくんじゃない! せめて俺の疑問に答えろ!? すぐ下が空白スペースになっているからもうすぐ場面転換が挟まるし、多分ここで場面転換したらこの話題は有耶無耶なままで終わる気がする! 時間がない! 忍、忍行くな! 私を置いて行くなアアアア!

 

 

 

 

 

 

『いただきまーす!』

 

 高町家の五人プラス三人の合計八人で手を合わせて夕飯が始まる。

 

「美琴さんが来ることは知ってましたけど、良太郎さんもいるなんてビックリしました」

「俺も帰ったら良太郎がいたからビックリしたぞ」

「俺が連絡をしたときは既に迎えに行っていたタイミングだったのか」

 

 リビングに入って来たときのなのはちゃんの「あっれぇ!? なんでぇ!?」というリアクションはきっとバラエティーでも通用するほど見事なものだった。

 

 ついに今年の春から女子高生になるなのはちゃん。アイドルとして仕事をしていることも相まって、早くも大人の女性としての雰囲気を醸し出している。

 

「初めて出会ったときは、なのはちゃんもこんなに小さかったのになぁ」

「普通そういうボケをするときは米粒サイズとかじゃないですか!? なんでそんなペットボトルぐらいの中途半端な大きさなんですか!?」

「当時のなのはちゃんのツインテールの長さ」

「誰が分かるんですか!」

 

 幼稚園の片隅でベショベショ泣いていたツインテールの少女も、今では立派な人気アイドルだ。

 

「ホント、月日が流れるのは早いですね」

「そうねぇ……」

「あのなのはが、もう高校生になるんだもんな……」

「あのちっちゃいなのはがね……」

「感慨深いな」

「良太郎さんも家族側(そっち)なんですね!?」

 

 高町家一同でなのはちゃんの成長を噛み占める。

 

「……あ、それで思い出した」

 

 キラキラと子どものように目を輝かせながらハンバーグをモグモグしていた美琴がゴックンしてから口を開いた。

 

 

 

「良太郎、恭也、忍、遅くなったけど大学卒業おめでとう」

 

 

 

「おぉ、ありがと」

「ありがとう」

「ありがとうね、美琴ちゃん」

 

 そう。ようやく。本当にようやく。俺たちは無事に大学を卒業することが出来た。

 

 いや本当に長かった。体感的に十年ぐらい大学生活を送っていたような気がする。

 

「本当に卒研と卒試が大変だった」

「俺と忍はともかく、お前はよく卒研なんて準備する時間があったな」

「基本的にアイドル関係のアレコレをまとめるだけだったから、データだけは揃ってたんだよ」

 

 そうでもしなければ合同ライブと卒研の準備を並行してなんて出来るわけがないのである。実はライブのために色々とやっていた裏ではこんなことをしていたのである。

 

 余談だが俺の卒研発表の際に「素人質問で恐縮なのですが」って言って美城さんが挙手したことが一番のハイライト。いくらあの美城の常務だからとはいえ、基本的には部外者不参加の場にしれっと紛れ込まないでいただきたい。

 

「良太郎の卒研、ちょっと興味あるんだけど」

「今度USBに入れてスライドのデータ渡してやるよ」

「うちパソコンないんだけど」

「振り付けとかの確認どうしてるんだよ」

「タブレット」

 

 そういえば最近は一周回ってパソコン持ってない人が増えたっていう話聞いたなぁ。そうでなくても美琴の家にパソコンがないことは容易に想像出来た。コイツの家に生活必需品以外の家電があるわけがなかった。

 

「……ちなみに変なことを聞くが美琴、勿論掃除機ぐらいあるよな?」

「箒と塵取りなら」

「嘘だろ!?」

「美琴ちゃん、ウチにあるあまり使ってないハンディタイプの掃除機あげるわね?」

 

 思わず桃子さんがそんな提案をするほど美琴の生活レベルが想像以下だった。歌以外に興味なかった千早ちゃんですらもうちょっとマシな生活してたと思うぞ。

 

「卒業ということは、ついに良太郎さんも123プロに就職ってことになるんですか?」

「元々副社長みたいなもんだから、今更感はあるけどね」

 

 正直『大卒』という肩書を手に入れた程度で、あまり何かが変わるということはないだろう。

 

「美由希ちゃんも来年卒業だよね。どう? 123(ウチ)で働かない?」

「えっ!?」

「やめておけ。コイツに務まるのは用心棒ぐらいだ」

「それを恭ちゃんには言われたくないなぁ!?」

「そっち方面としても働いてもらえるのであればお給金は勉強するよ」

「良太郎さんまで!?」

「二人とも何言ってるのよ。美由希ちゃんにはまだまだ翠屋(うち)にいてもらわないと」

「いずれ兄夫婦の店になる実家に居続けるのはそれはそれでイヤァ!」

 

 久しぶりに高町家の輪の中に混ぜてもらいつつ、楽しい食事を堪能することが出来た。

 

 

 

 

 

 

 春は、色々なものが変わる。

 

 環境や生活や、そして人間関係も。

 

 別れの季節であり、出会いの季節。

 

 新年度の始まりを告げるそんな暖かな季節に――。

 

 

 

 ――俺は公園で、一人の少女と出会った。

 

 

 




・「うそぴょん」
魔王エンジェルたちとの交流が増えたため、なかなか愉快な性格になりつつある美琴さん。

・高町家での夕食
……あれ、高町さんちの自宅って、もしかして初……?

・「私! 私はいますよ!」
過去一美由希ちゃんが喋ってる回な気がする。

・すずかちゃんとアリサちゃん
のワの

・私を置いて行くなアアアア!
劇場公開中!

・大学卒業
今になって思えば無駄な設定だったなぁ……()

・「素人質問で恐縮なのですが」
類語として「その文献の執筆者は私なのですが」などが存在する。



 四話かけてアイ転の現状を説明させていただきました。長々とお付き合いいただきありがとうございました。

 ようやく次回からは本格的にシャニマス編の開始です! 原作のポエミーな感じを出すのはなかなか難しいと思うので、その辺りはアイ転ナイズドしつつやっていきます!

 それでは皆さん、改めて対戦よろしくお願いします!



『どうでもいい小話』

 初シャニマスのアーカイブ視聴しました。

 ……俺に……この空気感は……無理だ……(ライブ冒頭を見つつ
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