それは、あり得るかもしれない可能性の話。
今日はお祭りである。それはもう盛大なお祭りである。
今や『一つの時代を代表するアイドル事務所』『ジュピターと肩を並べるのは彼女たちしかいない』と称されるほどのトップアイドルとなった765プロダクションオールスターズ。そんな彼女たちが全員出演という感謝祭ライブの当日なのである。
これを祭りと呼ばずして何を祭りと呼ぼうか。我々ドルヲタにとってはもはや古来より伝わる神事としての意味の祭りと言っても過言ではないだろう。自分でも何を言っているのかちょっとよく分からなくなってきたが、それだけ興奮しているということである。
そんなドルオタのお祭り当日に、ちょっとしたトラブルは起こった。
「え!? ありりん来れないの!?」
オチ要因としてりあむんかリョーさん辺りが一人だけ落選するオチかと思ったが、奇跡的にチケット争奪戦に勝利した私たちドルヲタ集会メンバー。しかし当日になって突然ありりんからそんな連絡が入ったのである。
『いえ、正確には行くんですけど、皆さんとは合流出来なくなったという意味です』
「なんだ、ビックリした……でもそうだよね、もし来れないなんてことになったら」
『多分今こうして落ち着いて連絡なんてしてないですね』
「だよね」
『そんな事態、想像しただけで』
「想像しちゃダメ!」
詳しく話を聞いてみると、なんでも765プロは765プロで全員関係者席で応援しようということになったらしい。
「……ふと思ったんだけど、今765プロに所属しているアイドルって何人だっけ」
『今回ライブに出演されるオールスターズの方々を除けば三十七人ですね』
「全員入れる関係者席ってあるの?」
『とある一区画をあれやこれやするらしいです』
いくらドーム公演とはいえ、一体どこにそんな区画があるのやら。
『ともあれ、今日のライブ参戦はありさ抜きでよろしくお願いします! 急な連絡になるためグループメッセージではなく結華ちゃん個人への連絡とさせていただきました!』
「オッケー。他のメンバーには三峰の方から伝えとくね」
『よろしくお願いします! 今日はお互いに全力を尽くしましょうね!』
「勿論って言いたいところなんだけど、ありりんは今回関係者としての参加になるんだから少しは自重した方がいいんじゃない?」
『そいつは出来ない相談ですね!』
通話終了。果たしてありりんは関係者らしく落ち着いたライブ鑑賞をすることが出来るのだろうか。いや出来ない(反語)(断定)。
とまぁ、それはいいのだけれど。
「まさか
実は先ほど、ふゆゆとりあむんからも『今日は合流できなくなった』という旨の連絡を受けているのである。二人とも
これであっという間に六人の集会メンバーの半数が欠席となった。いや正確に言うと欠席ではないのだけれど。
「これで女性陣は三峯だけになったわけだけど……」
残りの男性陣の到着はまだだろうかと、私は公園のベンチに座ったままスマホから顔を上げて周りをグルリと見渡す。
ここは会場近辺で一番大きな公園のため、私と同じようにライブ前にファンが多く集まっており、至る所でファン同士の交流が行われていた。人数が多いため人探しは難しいが、それでもリョーさんやみのりさんらしき姿は見つからなかった。
「っと、噂をすれば」
リョーさんから着信である。メッセージではなく通話だったので一瞬(まさかリョーさんも……?)と少しドキドキしながら通話をオンにする。
「もしもーし」
『会話はマキマに聞かれている』
「じゃあ口に出した時点でアウトだねぇ」
そんなくだらないやり取りから始まった通話だが、その後リョーさんの口から発せられた内容はビックリするようなものだった。
「え!? みのりさんも合流できない!?」
『さっき俺の方に連絡があってね。開演には間に合うけどギリギリになりそうだから合流は諦めるって』
「もしかして、みのりさんも仕事の関係だったり……?」
『だいたいそんな感じかな』
『Beit』も人気だしなぁ。もしくはピエール君が何か無茶ぶりをしたかなぁ。
『大きなお祭りだから朱雀と玄武の二人と一緒に街の治安を良くしておくんだって』
「三峰の認識にある仕事っていう行為とのズレがあるなぁ!?」
何してるのあの人。自分がアイドルだという自覚を持ってほしいというツッコミ以前に本当に何をしているんだあの人。
『ともあれ、もうすぐ俺も合流するから続きは直接』
「あ、うん、りょーかい」
通話終了。
(……あれ? ということは)
一拍置いてから気が付いた。
「今日、リョーさんと二人きり……?」
……いや。
(いやいや)
いやいやいや。だからなんだというのか。
確かに、つい先日私とリョーさんは
それに今日のメインイベントは765プロオールスターズのライブである。そんな浮ついた態度で観に行っては彼女たちに失礼というもの。
そもそもリョーさんだって私のことを『気心知れたパートナー』程度の認識でしかないはずだ。何故ならリョーさんは自他ともに認めるおっぱい星人だから。そんな彼がこの私をそういう目で見ているわけがないのである。
……なんか自分で言ってて物悲しくなってきた。つい先日もこがたんの「こげなもん大きくても何も得することなか。結華みたいなサイズに育ちたかったと~」という発言に対して笑顔のまま心で泣いてしまったほどだ。
所詮私は、周りのみんなとは違い地味な人生を……。
「あの、すみません」
「はい?」
内心で心の涙を拭っていると声をかけられた。リョーさんが到着したのかとも思ったが、顔を上げてもそこに立っていたのは全くの別人だった。
「お一人ですか? もしよかったら……」
「あー……」
ふゆゆのようにライブへ参加する際に着飾る女性ファンが多い中、基本的に私は地味な恰好をすることが多い。今日も765プロのファンTシャツにスカートといったシンプルな服装。足は少し出ているものの、他の女性ファンと比べると華がないことは一目瞭然である。
(今はテンション下がってるし、上手にあしらえるかなー)
相手を下手に刺激しないように断るのは意外と神経を使う。なので相手の顔色を見つつ、最適な断り文句を口にしようとして。
「申し訳ないけど、コイツ俺のなんだ」
そんな声と共に背後から抱きしめられた。
「ちゃんと弁えてくれるタイプで良かったー」
「というわけでお待たせ。他のみんなはまだ来てない感じ?」
「……………」
「……結華ちゃん?」
「……………」
「おーい、結華ちゃんやーい」
所謂あすなろ抱きという状態のまま結華ちゃんの顔を覗き込んでいるのだが、反応が薄い。というか無い。
「……ゴ、ゴメンネ!?」
十秒ほど経ってようやく再起動した結華ちゃんに何故か上擦った声で謝罪された。
「別に他の男に声かけられたぐらいじゃ怒らないけど」
「イヤ、ソウジャナクテ! ……こ、こーんな絶好の体勢だっていうのに、手が胸に当たらないことが申し訳なくてね!?」
「いきなり何言ってんの?」
どうやら再起動しても直らないタイプのバグが発生しているらしい。
「そもそもホラ、三峰はリョーさんの好みの体形をしてないっていうか……」
「まさか、告白の言葉を忘れたなんて言うつもりないよな?」
「……………」
問い詰めると結華ちゃんは真っ赤な顔で黙ったままコクリと頷いた。
――俺はいずれアイドルという立場から離れる人間だ。
――そんな俺だけど。
――アイドルじゃなくなった人生を想像したとき。
――隣にいて欲しい女性は。
――結華、キミなんだ。
「心配になるんなら何度でも言うから」
「……ううん、大丈夫。ありがとう……
「静香ちゃん、なんか近くの公園で凄いイチャついてるカップルがいるんだって」
「全く……765プロの大事なライブ前だっていうのに一体誰がそんな浮ついたことをしてるのかしら」
(……いやまさか……)
「あれ、亜利沙さんが変な顔してる」
「本当ね。いつもの変な顔とは違う変な顔だわ」
・今回の周藤良太郎
奇跡的にりんとくっ付かなくても未来に辿り着くことが出来た特異個体。
おっぱい星人であることには変わらない。
・結華@恋仲
自分が一番選ばれたことに驚いている。
・ふゆゆと『あの子』
無事に事務所入りしてる時間軸。さて本編ではいつになるやら。
・『会話はマキマに聞かれている』
いつかデンジと仲良くおっぱい談義させたい。
自分でもビックリしてますが、なんと去年の四月以来となる個別恋仲○○シリーズです。
シャニマス編第一弾は結華ちゃん。気心知れてるっていうのが一番いいんですよ。
次回は恐らくそんな彼女のユニット回。