アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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別に深い意味は特にないサブタイトル。


Lesson467 古城の焔に陰は踊る

 

 

 

 ――アンティーカもMV(ミュージックビデオ)を作るばい!

 

 

 

「……ん?」

 

 レッスン終わりに更衣室で着替えていると、そんな元気のいい声が聞こえてきた。この声は先に着替え終わってレッスン場の建物内に設けられたラウンジにいるはずのこがたんのものである。

 

「何事だと思う?」

「さぁー」

「ふふっ、なんだろうね」

 

 同じく更衣室で着替えていたまみみんとさくやんに尋ねてみるが、当然答えは返ってこない。さっさと着替えを終えて直接本人に聞いた方が早いだろう。

 

 というわけで着替えを終えて三人でラウンジに出ていくと、こがたんは何故か目をキラキラと輝かせながら仁王立ちしていた。腰に手を当てて胸を張っているため、大きな胸が更にドーンと大きく見える。そんな彼女を見ながらきりりんが苦笑していた。

 

「どうしたんだい?」

「今、かっこよかMVがやっとーと! ね! 霧子!」

「う、うん」

 

 さくやんに尋ねられたこがたんが指差す先。

 

 

 

『『『声の届かない迷路を超えて』』』

 

 

 

 テレビに映し出されていたのは『Jupiter』の『Alice or Guilty(アリギル)』のMVだった。どうやらとある音楽番組でジュピターの特集をやっていたらしく、彼らの様々なMVが流れているようだ。

 

「昔のアリギルもカッコよかったけど、123に来てからのアリギルもいいよね~」

「ほぇ? ジュピターって123の前にどっかおったと?」

「……なるほど、既に世間一般のイメージではそうなってるのかぁ」

 

 確かに言われてみれば、ジュピターが123プロに所属して早四年。既に961プロで活動していた時期よりも長く123プロで活動していることになる。彼らも今では『周藤良太郎』と並ぶ123プロの看板となっているため、そう認識されていてもおかしくなかった。

 

「実は彼ら、昔は961プロっていう別の事務所に所属していたんだ」

「え!? そーなん!?」

 

 さくやんから説明を受けて驚いているこがたんを尻目に、意識をテレビに移す。

 

 確かにアリギルのMVは凄くカッコいいし、雰囲気的には私たちアンティーカに似ている気もする。当然向こうの方が存在的に完全上位互換であり、男女の違いがあったとしても色気という点で北斗さんに負ける可能性もあるので完敗である。

 

「それで、こがたんはどうしてMVを作りたいと?」

「かっこよか!」

「うん」

 

 まぁ、カッコいいよねMV、と同意の意味で頷くも「むふーっ」と目を輝かせるこがたんから続く言葉がない。

 

「……え、まさか『カッコいいから』っていう理由なの?」

「勿論たい!」

 

 マジかよリーダー。

 

「でも悪くはない発想だと思うよ」

 

 流石に思い付きの発言すぎるのではと思ったが、意外にもさくやんはそれを肯定した。

 

「今の私たち『L’Antica』に足りていないものは、なんだと思う?」

「えっ」

「んー……」

 

 さくやんからの問いかけに首を捻るきりりんとまみみん。

 

「はいっ」

「はい恋鐘、答えをどうぞ」

「地位と名誉!」

「うーん、△かなぁ」

 

 元気よくちょっとズレた解答をするこがたんに対してさくやんは全く動じることなく採点する。なんでも「ちょっと凄い高校に通っていたから、余程のことじゃ動じなくなった」らしいのだが、果たしてどんな高校に通っていたのやら。

 

「えっと、『知名度』ですよね……?」

「そうだ。ではその『知名度』を手に入れるために必要なものは何かな?」

「えっ……」

 

 解答に詰まるきりりんに代わって、私が「はい」と手を上げる。

 

「『話題性』だよね」

「あぁ、その通りだよ」

「んー? 地位も名誉も知名度も話題性もー、結局言ってること同じじゃなーい?」

「いい疑問だね、摩美々」

 

 さくやんはソファーに座るとその長い足を組んだ。それまで立ちっぱなしだった私とこがたんとまみみんも着席する。

 

「『地位』と『名誉』と『知名度』と『話題性』はどれもほぼ意味は同じだ。だけど、それらは()()()()()()()()が違うんだよ」

 

 『地位』というのは社会的な立場。事務所や現場だけでなく、業界そのものに対する発言権の有無という話になってくる。これが求められるアイドルとなると、それこそ『周藤良太郎』や『東豪寺麗華』レベルの数人の上澄みだけである。

 

 『名誉』は所謂称号。賞やコンテストで与えられる一種のトロフィーであり、アイドルとしての価値を示す箔となる。これは『Jupiter』や『天海春香』レベルの、既に存在が知られているという前提での話になってくる。

 

 『知名度』は一番分かりやすい人気の指標でありバロメーター。まるで観察者効果のように名前を知っているアイドルと知らないアイドルでは見え方も変わってくるし認識も変わる。トップアイドルを目指すためには、まずは名前を知ってもらわなければいけないのである。

 

 そして『話題性』というものが、その知名度をあげるために必要なもの。名前は知らなくても「なんかこういうアイドルがいるらしい」「なんかそういうアイドルがいるって聞いたことがある」と、話題に上がるきっかけとなるものが必要なのだ。

 

「メディアへの露出が増えてきたおかげさまで『L’Antica』の知名度は上がっているけれど、それはどの事務所のどの新人アイドルでも言えることだからね」

「要するに、ここで『これがアンティーカだ!』ってSNSで強くバズるような要素が欲しいってこと」

「はえ~……二人とも、よぉそんなこと知っとぉと」

 

 感心するこがたんに、私はさくやんと視線を合わせる。

 

「三峰は長年アイドルオタクやってるけど、さくやんがこういうことに詳しいのがちょっと意外だったなぁ」

「少しは勉強してるからね。それに私が通っていた高校は()()()()()()()アイドル事情に詳しい人が多かったことも関係するかもしれないね」

「ふーん……」

 

 そう語るさくやんはいつもと変わらぬ余裕そうな微笑みを浮かべているのだが、何故か目の奥が死んでいるような気がした。本当に一体どんな高校に通っていたのやら。

 

「少し話が逸れたけど、つまり私も恋鐘の言うようにMVを作ることに賛成、ということだよ」

「……はっ! そういえばそういう話やったね」

「ちょいちょい、発案者さーん」

 

 ちなみにきっかけとなった音楽番組はいつの間にかCMになっていた。

 

「よーし! それじゃあ、みんなでカッコいいMVを作るばーい!」

 

 我らがアンティーカのムードメーカーにして力強く私たちを引っ張ってくれるリーダーの一声により、MV作成計画が始まったのであった。

 

「それじゃあプロデューサーに連絡しないとね」

「三峰たちだけで勝手に作れるもんじゃないもんね」

 

 

 

 

 

 

『っていうのが、大体二週間前の話』

「急に過去語りが始まったから何事かと思ったよ」

 

 事務所のラウンジで次のファンクラブの会報に載せるコラムを書いているところにやってきた結華ちゃんからの『今大丈夫ー?』というメッセージに、緊急性は感じなかったもののこちらも急ぎの用事ではないため承諾したところ通話がかかって来た。

 

 キーボードを叩きながらスタンドに立てたスマホから聞こえてくる結華ちゃんの話を耳を傾けていたのだが、どうやら先日のライブハウスでのライブの少し前の出来事らしい。

 

『それで、今度そのミュージックビデオの撮影が決まったんだー!』

「そっか、まだ結華ちゃんたちは撮ってなかったんだ」

 

 確かに見た記憶ないなぁ、とマグカップのコーヒーを飲み干す。

 

 それはそれとして、一つ疑問。

 

「それで? わざわざ俺に通話してきたってことは何かあったの?」

『何も』

「え?」

『こういうことがあったんだよーっていう、それだけの話』

「えぇ……?」

 

 俺の呆れた声に結華ちゃんは『だってー』と悪びれる様子もない。

 

『こういうことって外部の人間には無闇に話せないじゃん? でもリョーさんなら絶対に口外しないし、ただ適当に喋りたいときにうってつけの相手だなーって』

「自分で言うのもあれだけど、ちょっと『周藤良太郎』の無駄遣いが過ぎない?」

 

 アイドル界のトップだよ? ぶっちゃけ俺個人への連絡先を知ってるって凄いことなんだよ?

 

『それに、未来の審査委員長様に対するこういう風に頑張ってるんだよーっていうアピールにもなるしねー』

「……俺は身内贔屓なんかしてあげないよ」

『それでも心の片隅には絶対残るでしょ?』

「全く……」

 

 心の中で苦笑する。以前までの『ただのアイドルオタク仲間』として接していたことよりも随分と砕けた態度になってくれて嬉しい反面、何で『周藤良太郎』として身バレしてからの方が扱いが雑なのか若干疑問でもあった。

 

「それじゃあ、これは『周藤良太郎』としてじゃなくて『遊び人のリョーさん』としての言葉なんだけど」

『おっ、なになに?』

 

 わざとらしい前振りに結華ちゃんは何かを期待しているようであるが、多分結華ちゃんが想像しているようなことではない。

 

「時期的には水着になっても寒くないと思うんだよね」

『オツカレッシター』

 

 あっ、切りやがった! それとなく俺の要望を伝えようとしただけなのに!

 

「本当に言いたいことだけ言ってったなぁ……」

 

 いや友人であることには変わりないから別にいいんだけどさ。

 

「さてコラムの続き書くか……」

 

 スマホを操作してToDoリストを確認する。今日中にコラムと()()()()()の案を出さなければならない。

 

 チラリと先ほど空になったマグカップに視線を向けると、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 ということは()()()()()らしい。

 

 

 

「来週の企画の案、なにかいいのありますかねー。……ん?」

 

 虚空に話しかけると、ひらりと一枚のチラシが降って来た。

 

 それはとある古城風スタジオの案内であり、そこは俺にとってとある事情で所縁のあるスタジオだった。

 

「……なるほど。コーヒーのおかわりともども、ありがとうございます」

 

 文字通り天からのアドバイスにお礼を言うのだが……それはそれとして。

 

「確かにいかにもそれっぽいですけど、事務所にいるときぐらい普通にしません?」

 

 何処にいるのか分からないのでとりあえず天井に向かって話しかけるが、返事はない。

 

 別に困ってはいないのだが……。

 

 

 

 最近()()()()()()()()()()()()()()()()()が、少し『忍者』過ぎる気がする。

 

 

 




・ジュピターが123プロに所属して早四年。
つまりまだ本編は五年しか経ってないという恐怖の事実。

・新しく事務所の仲間入りしたスタッフ
・『忍者』
勿論あやめ殿ではない。
いたんですよ、アイマスにはもう一人忍者が。



 ほぼ説明回というか導入回。なんというかシャニアニを元にお話し考えるのハードル高い……。
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