アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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今更言うまでもなく起承転結の承の部分。


Lesson468 古城の焔に陰は踊る 2

 

 

 

「それでは今から作戦会議をします!」

「「「「わーっ」」」」

 

 事務所の一室に集まった私たちアンティーカ。ホワイトボードの前に立った私がそれを宣言すると他の四人は拍手をしてしっかりと乗ってくれた。

 

「と、ところでこのクロワッサンとカフェオレは……?」

「きりりん、作戦会議にはこの二つがセットになるのが最近のトレンドなんだよ」

「そうなん?」

「少なくとも私は聞いたことないな」

「三峰ー、魂がミアレから帰ってきてないよー」

 

 だって面白すぎるんだもん……ZA……。

 

 それはさておき、作戦会議の議題は『L’Antica(えむぜっとだん)』のMVをどのようなものにするか、ということ。

 

 MV制作の話をした二日後には撮影してくれる監督との交渉を済ませてくるという仕事出来(しごでき)を見せ付けてくれたPたんは、私たちに『どういうMVを撮影したいのか考えてくれ』という課題を出したのである。

 

「こがたんはずっと『カッコいいやつ』って言い続けてて、三峰たちもそれには概ね同意しているわけなんだけど……いかんせん具体的な着地点が何も見えていないわけなのよ」

「つまりコンセプトを決めよう、ということだね」

「そゆこと」

 

 幸い私たちアンティーカはクール系という方向性が存在するので、どういう感じにすればいいのかは想像しやすい。

 

「うちはやっぱりジュピターのミュージックビデオみたいなのがよかとね~」

「ちなみに恋鐘、同じ事務所の『周藤良太郎』はどうなんだい? 彼のミュージックビデオにもカッコいいものは多いと思うけど」

 

 相変わらずのジュピター推しのこがたんは、そんなさくやんからの提案に「うーん」と首を捻った。

 

「確かに『周藤良太郎』もカッコよかよ? ばってん、『周藤良太郎』は一人故のカッコよさって感じがするばい」

「なるほど……」

「意外とー、その辺りはちゃんと考えてたんだー」

「むっ、摩美々今なんか失礼なこと言わんと?」

「褒めてまーす」

「ならよか!」

「本当によかかなぁ……?」

 

 

 

 

 

 

「お疲れ様。みんな、話し合いはどうなって……」

 

 

 

『『『Brand new field キミを今』』』

 

「「「In mind!」」」

 

『『『連れてゆくよ』』』

 

『駆け抜けて』

 

『その先にある』

 

『運命だって掴んで』

 

「「「Let’s go!」」」

 

 

 

「……えっと、ライブ鑑賞会かな?」

「あープロデューサーお疲れー」

「お、お疲れ様です……」

 

 

 

「なるほど、改めてジュピターのMVを観て参考にしようとして……」

「いやぁ普通に盛り上がっちゃったよね」

 

 コールに夢中になっている間にPたんが来ていた。

 

「やっぱりジュピターはカッコよかとねぇ」

「自然と声が出てしまうよね」

「結華や恋鐘はともかく、まさか咲耶までそっち側だとは思わなかったぞ」

 

 Pたんは意外そうにしているが、さくやんは意外とこっち側のノリが良かったりする。なんでも「高校の頃、全校生徒が揃ってアイドルのライブを観る機会が多かったからね」とのこと。ますますどんな高校に通っていたのか気になる。

 

「それで、何か案は出たのか?」

「とりあえず『Brand new field(こういうの)』ではないと思う」

「……うん、まぁそうだな」

 

 やっぱり雰囲気的にしっくりくるのは『Alice or Guilty』だと思う。

 

「なんというかこう、ダークな感じで」

「あ……」

「ええね! ダークな感じ! うちらにピッタリたい!」

「あ、あの……」

「一番ダークとは程遠い人が一番賛同してるー」

「み、みんな……」

「ちょっと待ってみんな! きりりんが何か言おうとしてる!」

「ひぅ……!?」

 

 きりりんの発言のチャンスを上げようとしたら、全員からの注目をいきなり浴びることになって逆効果になってしまった。ゴメン。

 

「霧子、何か思いついたことがあるのかい?」

「う、うん……」

 

 さくやんに促されたきりりんが、私たちに見えるように私たちのCDのジャケットを掲げた。

 

「あ、あの……私たちで、この曲の物語を演じる……っていうのは、どうかな……?」

 

「……ふむ」

「演じる……」

「そればい!」

「うわビックリしたー」

 

 こがたんほどのオーバーリアクションはなかったが、私たち全員きりりんの言葉に一理あった。

 

 私たちのデビュー曲にして現在の代表曲でもある『バベルシティ・グレイス』は、歌詞に世界観がある。バベルシティは言葉を失った街であり、そこには想いを伝える(すべ)が存在しない。だから私たちは歌という手段を用いて世界を変える……そんな世界観だった。

 

「そうすると、ダークファンタジーみたいな雰囲気かな?」

「歌詞に蒸気ってあるしー、どちらかというとスチームパンクー?」

「なんかカッコいいお城で撮影してみたか~!」

「え、えっと、私、意見まとめますね……」

「あ、ゴメンきりりん、それ三峰の役目だったね」

 

 折角用意したのだからホワイトボードを利用しないのは勿体無い。

 

「とりあえずさくやんは、なんか執事か騎士みたいな感じの役が良いと思うんだよね」

「イメージから配役を決めるのかい?」

「結華! うちは!? うちは!?」

「こがたんは、そうだなぁ……性格的に主人公っぽい配役がいいよね。世界に抗って言葉を取り戻そうとするレジスタンスとか?」

「カッコよかぁ~!」

「でもそのおっぱいでレジスタンスは無理か」

「胸の大きさは関係なかと!?」

「ま、摩美々ちゃんは、どんな役がいいと思う……?」

「あんまり動かなくていいやつー」

 

 キュッキュッと音を立てながらホワイトボードにみんなの言葉を無秩序に書き殴る。

 

「ふふっ、いいMVになりそうだな」

 

 こうして様々な意見を頑張ってA4用紙一枚分ぐらいに圧縮してPたんに提出。Pたんはそれを私たちのMV撮影を引き受けてくれた監督さんへと話を持っていき、そのままスムーズに撮影が決まるのだった。

 

 

 

 

 

 

『というわけで、明日撮影なんだー』

「何か決まるたびにこれやるの?」

 

 テレビ局の楽屋で次の撮影まで待機をしているところにやってきた結華ちゃんからの『今大丈夫ー?』というメッセージに、既視感を覚えつつ承諾したところ通話がかかって来た。

 

「もしかして結華ちゃん、俺以外に気軽に話せる友だちがいない……?」

『だから前に言ったじゃんこういうのを気軽に話せるのがリョーさんだけなんだって! 変な誤解しないで欲しいんだけど!?』

「そもそもそういうことを気軽に話すのを控えればよいのでは?」

 

 多分アイドルになれたことでまだ浮足立ってる状況なんだろうなぁと勝手に推測する。駆け出しアイドルの中では大分軽快にスタートダッシュが決まったみたいだから気持ちは分かるけど。

 

「それにしても高宮(たかみや)監督かぁ」

『有名な人だし、流石に知ってるよね。もしかして一緒に仕事してたりする?』

「映画の撮影で一度。CMの現場だと数回かな」

『おぉ、流石。やっぱり撮影中は厳しかったりするタイプの人?』

「いや結構気さくな人だよ」

 

 一見気難しい人でこだわりも強めの人ではあるけれど、頭が固いわけじゃない。

 

「『分かるな?』っていうのが口癖で、こちらの意見や認識を確認しながら撮影を進めてくれるんだけどさ」

『ふんふん』

「前に川島瑞樹さんも一緒の現場になって……いやこのエピソードは別の機会にしよう」

『それもうほぼオチまで言ってるよね!? その二人にどんな会話があったか想像が出来るんだけど!?』

 

 周りのスタッフを含めて笑いを堪えるのに必死だった。表情が動かない恩恵を存分に受けることが出来たエピソードの一つである。

 

「これで明日の撮影のとき、監督が『分かるな?』って言うたびに結華ちゃんは笑ってしまう呪いにかかった」

『やってくれたなぁリョーさん!? 本当に笑っちゃったらどーすんの!?』

「笑えばいいと思うよ」

『笑いたくないって話をしてんの!』

 

 これは実際にどうなったのか、あとでしっかりと後日談を聞かねばならぬ。

 

「出来ることなら直接この目で結華ちゃんが腹を抱えて悶絶しているところを確かめたかったけど、残念ながら明日は俺も撮影だからなぁ」

『リョーさんは何の撮影なの?』

「この業界には守秘義務というものがありましてね」

『それリョーさんが言うの?』

「誰が言ったっていいだろ!」

 

 大事なのはそれを守ろうとする意志なのだよ。

 

『教えてくれてもいーじゃん? リョーさんだって三峰の予定聞いたわけだしさー』

「おっとこいつぁ可愛い当たり屋だなぁ」

 

 まぁ別に話してもいい案件だけどさ。

 

「俺はチャンネルに投稿する動画の撮影だよ」

『チャンネルに動画……あ、個人企画シリーズ!?』

「正解」

 

 昨今の流行に漏れなく、我が123プロダクションも動画サイトに『123ちゃんねる』という何の捻りもない名前のチャンネルを開設している。基本的にはイベントや新曲の告知の生放送をしたりMVを投稿したりしているのだが、その中でも定期的に更新しているのが『個別企画シリーズ』だ。

 

 その名の通り、所属アイドルが思い思いの企画を動画にして投稿するもので、例えば志保ちゃんの絵本読み聞かせだったり、恵美ちゃんがお気に入りのコスメやファッションを紹介したり、北斗さんがピアノやヴァイオリンを弾いたり、アイドルによって様々。当然まゆちゃんは『佐久間流周藤良太郎学』講座だ。

 

 そしてそんな個別企画シリーズの順番が俺に回って来たということである。

 

「今回はぶらり旅風に俺が出演した覆面ライダーの撮影現場を回ろうって企画」

『へー、最近リョーさん、ライダー系の仕事しなくなっちゃったから、ファンは嬉しいんじゃないかな』

「結華ちゃんは嬉しくない?」

『覆面ライダーはあんまり……でも、他のユニットに特撮ヒーロー好きな子がいるから、そっちは喜んでくれるかも』

「喜んでくれる子がいるならいいな」

 

 なお結華ちゃんが言っている子は覆面ライダーよりもハイパー戦隊の方が好きらしいということを知るのは、もう少し先のお話である。

 

 そんな話をしている間にもうそろそろリハーサルの時間だ。

 

「ごめんね結華ちゃん。時間だ」

『んーん。話聞いてくれてありがと、リョーさん』

「MVの撮影頑張ってね」

『リョーさんも撮影頑張って!』

 

 通話終了。

 

 スタジオに行く準備をしつつ、視線を明日撮影へ行くスタジオのチラシに向ける。

 

「それにしても久しぶりだなぁ……この()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

「明日のMV撮影楽しみだなー……どんなところだろ、この()()()()()()()って」

 

 

 




・クロワッサンとカフェオレ
・えむぜっとだん
ミアレでの生活楽しすぎる。

・咲耶までそっち側
卒業生のライブを全員で鑑賞する全校集会。

・「でもそのおっぱいでレジスタンスは無理か」
逆に何ならこのおっぱいでも大丈夫なのだろうか。

・高宮監督
・川島瑞樹さんの一緒の現場
多分アニメ見た人全員の脳裏に過ったやつ。

・古城風スタジオ
アニメ見てて「これ特撮でよく見る場所だ」ってなった。



 毎回毎回どうやって良太郎を介入させるか考えるの大変なんですよね(自然に出来ているとは言っていない)
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