ちょっとサブタイ変更しました。
「……ってことがあったんだー」
(なにしてんのリョーさん)
いやマジで。
夕方に事務所で顔を合わせた『アルストロメリア』のなーちゃんから「実は今朝こんなことがあってねー」と聞かされた話に、私は思わず呆れた溜息が出てしまった。
一体どんなミラクルが発生すれば他事務所のアイドルの女子寮訪問イベントが発生するのだろうか。ぶっちゃけ私ですら未だに女子寮へ遊びに行けていないというのに。
「良太郎さんや冬馬さんと、フレンド交換、しちゃった……」
「よかったねー、甜花ちゃん」
同事務所所属の私ですら仲良くなるのに少々時間がかかったあのてんちゃんとすらあっさり仲良くなってるし。というか『周藤良太郎』と『天ヶ瀬冬馬』の二人とフレンドになるなんて、しれっと凄いことしてるなこの子。
「でもその代わり、良太郎さんから課題を出されちゃってさー」
「課題?」
「ただでさえプロデューサーさんからの課題でも悩んでるっていうのに」
「確かプロデューサーからの課題は『どんなアイドルになりたいのか』だったっけ」
「うん。……あっ! 結華ちゃんの考えは言わないでね! カンニングになっちゃうから!」
「事情は聞いてるけど、これをカンニングって言っていいのかな……?」
ちなみに『私がどんなアイドルになりたいのか』という答えは『私自身が全力で推せるようなアイドル』である。自分で自分をちゃんと好きになれる……そんなアイドルになりたい。
「ちなみに周藤良太郎からはどんな課題を出されたの?」
「えっと――」
「――っていう課題」
「……なるほどねー」
確かに『周藤良太郎からの課題』という意味ではピッタリの内容であり、なんとなく彼がこの課題をなーちゃんに出した理由も察することが出来た。
「でも、ライブとかステージとかそういうお仕事が増えればいずれは達成出来そうな課題ではあるんじゃない?」
「甜花は、そういうの、あんまり後回しにはしたくないタイプ……!」
「え、てんちゃんどうしたの」
「良太郎さんが課題のことをミッションとかサブクエストってゲームみたいな言い方をしたから、甜花ちゃんが燃えちゃってて……」
「ダンジョンはマップを埋めて全部の宝箱を開けたいタイプ……!」
「なるほどね」
ちなみに私は時と場合によるタイプ。
「でもそれなら、おあつらえ向きのイベントがあるみたいだし、そこで課題達成出来るんじゃない?」
双子とともに事務所の壁にかけられているホワイトボードに目を向ける。所属アイドルの直近の予定が全て把握出来るようになっているそこには、彼女たちの次の仕事が『春のフラワーフェスティバル』だと書かれていた。
「トークとフラワーアレンジメントのワークショップだけじゃなくて、ライブのステージも用意してくれるんだって~」
「頑張る……!」
「頑張ってね。このワークショップは、誰か講師を呼んで教えてもらう感じ?」
「うん。千雪さんも昔やってたことがあるらしいんだけど、やっぱり詳しい人に教えてもらった方がいいよねってことになったの」
「雑貨屋さんで働いてたっていう話は聞いてたけど、やってる内容まで雑多だったとは」
とはいえ、あのふわふわ美人お姉様はお花がよく似合うと思う。あとオシャレなカフェでのお茶とか。
「でも千雪さん、牛丼とか好きみたいだよ」
「え、意外な組み合わせ」
「プロデューサーさんと二人で帰るとき、プロデューサーさんが『夕飯は牛丼で済ませる』って言ったら千雪さんが『わぁ! 牛丼!』って嬉しそうについてきたって話を聞いてねー」
「丼ものが好きだとは、思わなかった……」
「……いやそれって……」
多分Pたん的には『ここで解散』的な意味合いで言ったんだろうし、それに対して千雪さんがついてきたってことは……。
(いや邪推はするまい)
現状、私の目線から見てPたんにそういう視線を向けているアイドルは千雪さんを含めて二・三人といったところか。Pたんのビジュアルかなり強めな上に結構スパダリ入ってるところがあるから、事務所内での刃傷沙汰さえなければ当人同士でご自由に頑張ってもらいたい。
「……………」
「あれ? 甜花ちゃん、どうかしたの?」
「えっ」
それはほんの一瞬の空白だったが、突然なーちゃんがてんちゃんの顔を覗き込みながら首を傾げた。私視点からは何かあったようにはまるで見えなかったのに、一体なーちゃんはどうして気付いたのだろうか。
「それは勿論、甘奈が甜花ちゃんのこと大好きだから!」
「えへへ……甜花も、なーちゃん好き」
相変わらず姉妹仲はよろしいようで。
「それで、何かあったの?」
「う、うん……千雪さん、雑貨屋さんでお仕事のこと話すとき、すっごく楽しそうだったから……もしかして、本当は、雑貨屋さんでのお仕事、続けたかったのかなって……」
「……それは」
「うーん……どうなんだろ」
なーちゃんと二人で首を傾げる。
「アイドルのお仕事に専念するために雑貨屋さんやめちゃったって話は聞いたけど」
「おっとりした印象に反して覚悟の決まり方が凄いなぁ……」
アイドルという職業について安定した収入を得ることが出来るのは、ごく一部の人間だけである。『周藤良太郎』や『東豪寺麗華』の働きかけによって多少改善しているものの、それでも安定した職業と呼ぶには程遠かった。
「でも確かに言われてみれば。315プロの人たちも、前職を離れてアイドルをやってる人たちばっかりだもんね」
「あの人たちはあの人たちでちょっと事情が違うような気もするけどね」
流石に弁護士や医者や教師を辞めてまでアイドルになった人たちは特殊事例すぎるような気がする。
「……まぁ、そういう複雑そうな事情は部外者があれこれ想像してもしょうがないだろうし、そーゆーフォローをするのがPたんの仕事だよ」
「うん、甘奈も気になるけど、今は自分たちの課題を集中しよう」
「課題もそうだけど、イベントも、だよね……!」
「課題クリアを意識しすぎてイベントが疎かにならないようにね。リョーさんもそれは望んでないだろうし」
「それは勿論……あれ、今リョーさんって言った!?」
「もしかして、三峰さん、良太郎さんと知り合い……!?」
「……あ、そうか二人にはまだ言ってないんだっけ」
というかアンティーカ以外のアイドルにはまだ誰にも教えていなかったかもしれない。
キラキラした目で迫ってくる双子を押し留めながら、アンティーカのみんなにもした説明をするのだった。
「リョーくん、アタシはちょっと怒ってます」
「はい」
「アタシは今更リョーくんが他の女の子と遊ぶことに文句は言いません」
「はい」
「でも流石に最近蔑ろにされている気がします」
「はい」
「アタシはもっとリョーくんとイチャイチャしたいです」
「はい」
「だからデートします」
「はい」
というわけで。
「へ~ここが『春のフラワーフェスティバル』の会場か。テーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるなぁ~」
様々な花の販売をメインに、ステージでの催しなどが企画されている地域のお祭りのようなイベントである。花だけではなく飲食物の屋台も多く出店しているので、結構賑やかだった。
そんなイベントに、午前中の仕事を終えた俺とりんがデートするためにやって来た。確かに最近りんとの
俺の左腕には絡みつくように抱き着いてくるりんの姿。ツインテールを解いた上で伊達眼鏡をかけて身バレ対策はバッチリだが、それでも大乳美人であることは隠せていないので注目度はそれなりに高かった。
「でも珍しいな、りんがこういうイベントに来たがるなんて」
「うん。前までは花とかそーゆーのは興味なかったんだけどさ、ほら、リョーくんの家ってよく花が飾ってあるじゃん? だから最近気になってるの」
母さんが元来の花好きな上に昔から馴染みの生花店があるため、我が家は食卓の花瓶に四季折々の花が飾られるタイプの家庭だったりする。
「まぁそれ以上にお父祭壇の方が華やかなわけだけど」
「その単語凄い久しぶりに聞いた気がする」
現在も変わらず部屋の一角に鎮座する我が家の大黒柱を奉る謎の祭壇。実は他ならぬ父上が何故か気に入っており、たまに帰ってくるたびに飾る写真を更新するほど楽しんでいたりする。我が父親ながら謎の感性である。
「たまには母さんじゃなくてりんが食卓に飾る花を選んでみるか?」
「やだリョーくんってば『りんは俺の食卓を彩る華だよ』だなんて……」
「言ってない言ってない」
りんはたまに唐突な
より一層むぎゅむぎゅと抱き着いてくるりんに若干物理的に押されつつ、近くのお店を覗いてみることにする。
「ほら、こういうの」
「リョーくんはどーゆーの好きなの?」
「俺は結構ピンクの可愛い系が好きかな」
「アタシみたいな?」
「今日めっちゃグイグイ来るね」
「良太郎さん、店先でイチャつくのやめて欲しいんだけど」
「出来れば俺じゃなくてりんに言って欲しいかな」
「言っても無駄そうだから良太郎さんに言ってんの」
「言われてるぞ、りん」
「アタシもリョーくんに言って欲しいな」
「なんでその要望がりん側から出てくるんだよ。……ん?」
顔を上げて、気付く。
「なんでいるの?」
「清々しいぐらいこっちのセリフだよ」
胸元に『渋谷生花店』と書かれたエプロンを着けた黒髪の少女が溜息を吐いた。
・良太郎からの課題
詳細は次回持越し。
・『わぁ! 牛丼!』
シャニは基本的に優等生だからこそ、たまに破壊力が高い迷言が混ざるんだよなぁ……。
・千雪さんを含めて二・三人
だーれだ?
・「テーマパークに来たみたいだぜ。テンション上がるなぁ~」
このヒット全て狙っていたとしたら作者さん天才ですよ……。
大分ルート外れてそうですが、基本的にアニメ準拠のストーリーは変わらずです。
※色々と考えた結果大分追記修正しました。
『どうでもいい小話』
MOIW2025が良かったという話を書くにはあとがきのスペースはあまりにも狭すぎる。
(訳:合同ライブ神だった)