アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

645 / 664
今年は久しぶりのこの二人で、あけましておめでとうございます!


番外編99 もし○○と恋仲だったら new year

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

『社長を殺害した犯人は……硲道夫さん、アンタだ!』

 

 

 

「あー、犯人こっちかぁ」

「ほらー、あたし言ったじゃんこの人が絶対犯人だって」

「いやお前『この人何考えてるのか分かりづらい』って言ってたじゃん」

「甘いなぁ、良太郎の無表情に慣れてるあたしだからこそ分かることがあるんだって」

 

 炬燵に入ってアイドルの特番を見る年末。()()()()()()()()世界だとは理解しつつ、俺と同い年のはずなのに色々と大変だなぁと完全に他人事のように考えつつ湯飲みの茶を啜る。

 

「お二人とも、そろそろ煮えますよー」

「「わーい!」」

 

 先ほどから炬燵の真ん中でグツグツと音を立てていた鍋の準備が整ったようである。

 

「ビール持ってくるねー! 良太郎もビールでいいー?」

「おーう」

「あ、私は梅酒でお願いしまーす」

「オッケー!」

 

 いそいそと食事の準備を進め、三人揃ったところで手を合わせる。

 

「「「いただきます」」」

 

 俺と姫川友紀と鷹富士茄子の三人の同棲生活、初めての大晦日だった。

 

 

 

「おい友紀、つみれ取りすぎじゃないか」

「そーゆー良太郎は厚揚げ取りすぎなんじゃない?」

「まだありますから、喧嘩しちゃダメですよー」

 

 三人で炬燵に入りながら鍋を囲み、お酒を楽しむ。()()()()()()としてはこの上なく最高の冬休みの一幕である。

 

「あと三時間で今年も終わりか」

「今年は色々あったねー」

 

 ふと時計を見上げつつそんなことを口にすると、友紀はビールの缶を揺らしながらニヤリと笑った。

 

「それこそ、人生が変わった一年でしたね」

「そうだな、まさか『二人から同時に告白される』とは思いもしなかったよ」

 

 友紀と茄子の言葉に同意したつもりだったが、二人は不服そうな反応を見せた。

 

「良太郎君、本当に私たちからの告白が意外だったんですか?」

「これでも結構アピールしてたつもりなんだけどねー?」

「ねー」

「いやそっちじゃなくて『二人同時に』ってところに決まってるだろ」

 

 なんとなく。なんとなくではあるが、俺は友紀からも茄子からも好意を向けられていることには気付いていた。

 

 友紀からは頻繁に野球観戦に誘われ、キャッツが勝っても負けても酔っている彼女を部屋まで送り届けたことは数知れず。そのまま友紀のベッドに背中を預けたまま眠ってしまい朝を迎えてしまったことも何回かあった。流石にそんなことを許してくれる相手が自分に好意を持っていないと考えるほど鈍感ではなかった。

 

 一方の茄子はもっと直球で、二人きりになったタイミングで度々「私、良太郎君のこと好きですよー」と軽い感じで何度も言われ続けた。あまりにもさらっと何でもないように言うのでこちらも「あぁ、俺も茄子のこと好きだぞ」と軽い感じで返していたのだが、流石にこんなやり取りを週に何度もしていれば気付くに決まっている。

 

 そして彼女たちも『俺が二人の本気の好意に気が付いた』ことに気が付いたタイミングで俺を呼び出して、俺は二人同時に告白をされたのだった。

 

「男なら夢見るシチュエーションではあるんだろうけど、いざ当事者になってみるとマジで血の気が引いたのを感じたよ」

「完璧にフリーズしてたもんね」

 

 焦点が合わずグルグルと頭の中が混乱し、立っていることも出来ずに俺は夜の公園のベンチに座り込んでしまった。地面を見つめて言葉を発することも出来ない俺を、友紀と茄子は黙って俺の両隣に座って返事を待ってくれた。

 

 

 

 そして一時間以上考えに考えて、俺はついに『最低な返事』に辿り着いてしまった。

 

 

 

「でも私たちは『良太郎君ならきっと二人とも受け入れてくれる』って信じてましたよ」

「だから一緒に告白しようって示し合わせたんだもんねー」

 

 そんな『最低の返事』を二人はあっさりと受け入れてくれたのである。

 

 

 

「俺あんときマジで殺される覚悟で返事したんだからな」

「実際死にそうな顔色でしたもんね」

「その代わり、二人でギューッて慰めてあげたんだからさー」

 

 俺はそのときの彼女たちの温もりを、一生忘れることはないだろう。あとムギュムギュと押し付けられた柔らかさも。

 

「とはいえ世間の目っていうのもあるからな」

 

 いくらウチの両親が様々なことに対して寛容だとは言え、馬鹿正直に『恋人が二人いて、三人で同棲しています』とは告白出来ていない。なんとなく二人ならば『幸せならオッケーだよ!』『やったー! 一気に娘が二人も出来たー!』と喜んでくれる未来が見える気もするのだが、それでもやはり躊躇してしまう。

 

「二人だってまだ家族に話してないんだろ?」

「『同棲してる恋人がいる』とだけ話してる」

「ウチも同じですねー」

 

 しかし友紀は「でもさー」と頬杖を付きながらこちらに向かって手を伸ばし、人差し指で頬を突いてきた。

 

「あたしたちが幸せなら、それでいーじゃん」

「そうですよ、誰にも迷惑をかけずに暮らしていくぐらいの『収入』はあるんですから」

「いや、宝くじのことを『収入』って言うのお前だけだぞ」

「ゴメン茄子、それは流石にちょっと引く」

 

 ニコニコと女神のような笑みを浮かべる茄子。我が家の幸運の女神様は文字通りの豪運を発揮して定期的に宝くじを当てるというとんでもない方法で、ただの大学生の三人暮らしを実現してしまった。正直このマンションで慎ましやかに暮らしていくだけならば、きっと俺たち三人は働かなくても生きていくことが出来てしまうのだろう。

 

「もう、私がいつまでもそんな不定期収入に頼るわけないじゃないですか~」

「そ、そうだよな……」

「ゴメン茄子……」

 

「ちょっとマンションを建てただけです」

「「嘘だろ!?」」

 

 俺と友紀の知らないところで、なんか茄子が凄いことしてた。

 

「だから引っ越ししようとか言い出したのか……」

「サプライズで驚かせようと思ってたんですよ」

「今でも十分に驚いたよ……」

 

 まさかそんな現実的な収入源を確保しているとは思わなかった。

 

「だからお二人とも、存分に私の紐になってくれていいですからね~」

「「うっ」」

 

 もう少し先とはいえそろそろ真面目に卒業後の進路を考えなければいけない時期になって来た。茄子が見せていた謎の余裕が虚勢ではなかったことが分かった以上、俺と友紀は取り残された形になってしまった。

 

「まさか大晦日になってまでこんな話題になるとは思わなかった……」

「良太郎はいーじゃん。教職とってるってことは()()()の道を考えてるんでしょ?」

「……まぁ、一応な」

 

 小学生の頃(かつて)やさぐれていた俺は、今でも絶大な信頼を寄せる一人の教師によって救われた。あの先生とあのクラスメイトたちに囲まれていなければ、きっと俺はもっと腐った人生を送っていたことだろう。

 

「きっとこの世には、俺みたいに()()()()()()()()()奴がいると思うんだ」

 

 流石に前世の記憶を疑ったことはない。それでも『転生特典』なんてものを信じるのは止めた。そんなものがなくても『人生をやり直すことが出来たこと』そのものが、どんなものよりも素晴らしい特典だったのだと。

 

 

 

「バカにバカって言ってやれるのは、きっと同じバカだけだからさ」

 

 

 

「……え、なに、思ってたよりも結構しっかり考えてるじゃん」

 

 それまで黙って俺の話を聞いてくれていた友紀が、愕然とした表情になった。

 

「それなのに『紐になりたくない』とかそんなこと言ってたわけ!?」

「いや、それとこれとは別の話だろ」

「うわー!? ってことはやっぱりあたしだけ取り残されてるじゃん!?」

「私たち二人で友紀ちゃんを養っていきましょうね、アナタ」

「あぁ、そうだな、茄子」

「いやだあああ! 本当に紐になるぅぅぅ!?」

「主婦でいいじゃん」

「言い方の問題じゃないの!」

 

 

 

 

 

 

 鍋も片づけ終わり、お風呂にも入り終わり、あとは年を越す瞬間を待つばかりとなった俺たちは、三人並んで炬燵に入っていた。少し大きめの炬燵ではあるものの、一辺に三人で入ると流石に狭い。少しでもスペースを確保するため、真ん中の俺は両脇の二人の腰に手を回して抱き寄せるような形になっていた。

 

「「はい、あーん」」

「あーん」

 

 当然手は使えないので両隣から交互に剥いたミカンを食べさせてもらう。

 

「……改めて、本当に人生が変わった年になったな」

「そうですね」

「いつも三人でいたから、その点で言えばあんまり変わんないけどね」

 

 優しく微笑む茄子と、ニヒヒと笑う友紀。こんな素晴らしい女性二人に好意を抱かれて、俺は間違いなく幸せ者だ。

 

「……こういうことはまた改めて言うけどさ」

 

 少しだけ、二人を抱き寄せる腕に力を入れる。

 

「ちゃんと、二人のこと、幸せにしてみせるから」

 

 それは二人に対する宣言であると同時に、自分に対する宣言でもあった。

 

 『俺に一人を選ばせない』という修羅の道をともに歩む覚悟を決めてくれたこの二人を幸せにすることこそが、俺の――。

 

「ねぇ、茄子、良太郎勘違いしてるよ」

「そうねぇ、友紀ちゃん。勘違いしてますね」

「……え?」

 

 今凄い覚悟を口にしようとしていたのに、何故か俺の腕の中の二人はキョトンとした様子だった。え、俺何か外した? タイミング今じゃなかった?

 

「あのね、良太郎」

「私たちは()()()()()()()()んですよ」

 

 そんなことを言いながら、二人はコテンと頭をこちらに預けてきた。

 

「こうやって炬燵に入って、良太郎君の腕の中にいて、それでもう幸せなんです」

「だから良太郎も存分に()()()()()()()()()()()()よ」

「……そんなの……いや、うん、そうだな」

 

 二人を抱きしめる力をより一層強くする。

 

 

 

 今、間違いなく俺たちは幸せなのだ。

 

 

 

 

 

 

「……………」

「ふわぁ……リョーくん、今年の初夢はどうだった……?」

 

「……子どもじゃなかった!」

「どゆこと?」

 

 

 

 今年もよろしくお願いします。

 

 

 




・周藤良太郎(20)
数年ぶりに大人の姿で新年特別恋仲○○への登場。
アイドルにはならず、順当に大学生となった。

・姫川友紀(20)
こちらもアイドルにはならず順当に大学生へ。
真面目のこの子はアイドルにならなかったらどうなっていたのだろうか……。

・鷹富士茄子(20)
こちらもアイドルにはならず(ry
愛のために自分の才能を全開放した結果、三人で裕福に暮らせるだけの財力を持つ。

・『社長を殺害した犯人は……硲道夫さん、アンタだ!』
前話の答え合わせ。冒頭の「」の頭文字を繋げると『はんにんははざまみちお』になっています。

・『最低な返事』
いつもの杉崎総理は不在。

・教職
この世界の良太郎は鵺野先生に影響されて教師ルート。



 四年ぶりにショタじゃない状態での恋仲○○新年特別編でした。今年は久しぶりの同級生コンビで、アイドルじゃない世界線のお話。茄子の恋仲○○はこういう世界線多いなぁ。

 こんな感じで今年もよろしくお願いします。来週からは本編!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。