アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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今年のアイ転は放クラ編から!


Lesson476 わたしたちはみんなヒーロー!

 

 

 

 今回のお話を始める前に、まずはこの世界における『スタント俳優』という存在について説明させて欲しい。

 

 前世の記憶的にパッと思いつくのはジャッキーさんやブルースさん辺りのアクションも出来る俳優だが、この世界の現在では『スタントが出来る俳優』という存在は割と一般的になりつつある。文字通り本当にスタントをこなし時にはスーツアクターとしても活動しつつ演技も出来る俳優だ。

 

 その代表格として名前が挙がるのが、先駆け的存在であり『電光刑事バン』で主演兼スタントを務めた風鳴弦十郎さん。彼が立ち上げた209プロダクションや、去年覆面ライダーの主演を務めてくれた緑屋や爆轟が所属しているUAプロダクションなど、アクションに強い芸能事務所の数も増えている。

 

 かくいう俺も、覆面ライダーに出演していたときは素顔のままアクションシーンを撮影し、マスク割れ演出のために実際にスーツを着て撮影をしたこともあった。流石に本業の動きには劣るが、それでもアイドルらしからぬアクションだと当時は話題になったものである。

 

 さて、では何故いきなりこんなことを話し始めたのかというと、つまり『俺もスーツアクターとしての経験がある』ということを言いたいのである。マスクを着けた状態の狭い視界の中でも動くコツのようなものを把握しているので、慣れていない人がスーツを着るよりも余程安全に動くことが出来るのだ。

 

 で、その結果何がどうなったのかというと。

 

 

 

『我が名はモリサゲール! 吾輩がこの会場を盛り下げるでサゲ! サーゲサゲサゲ!』

 

 

 

 そこには、困っている可愛い後輩アイドルのために正体を隠して『悪役のスーツアクター』としてステージの上に登場する俺の姿があった。

 

(いや想像以上にめっちゃノリノリぃ!?)

(本当に周藤良太郎さんにこんなことさせてよかったのぉ!?)

(と、トップアイドルって、本当に凄いのね……!?)

(なんとも……心優しきお方……)

(わ~っ! 凄いです! すっごい悪役です!)

 

 

 

 どうしてこんな状況になったのか。その説明をするために時間を数日前へ戻そう。

 

 

 

 

 

 

「良。買い物。荷物持ち」

「御意」

 

 とある昼下がり、自宅にいたところ義姉上様からの招集に応じて買い物へと同行することになった。我が家における俺のヒエラルキーは志希と共に最下位争いをしている状況なので断るという選択肢は存在しない。おかしいなぁ……世界トップレベルのアイドルなんだけどなぁ……。

 

「なに言ってんのよ。普段からその辺フラフラしてるくせに」

「そういう言い方やめてくれないかな。確かになんか最近『意外と会えるトップアイドル』みたいなこと言われるんだから」

「じゃあ間違ってないじゃない。ねぇ?」

「?」

「おいやめてくれ、まだ無垢で将来俺の味方になってくれそうな甥っ子に変な先入観を与えようとしないでくれ」

 

 早苗ねーちゃんと手を繋いで歩く我が甥っ子で一歳七ヶ月となる梓真(あずま)の散歩を兼ねているため、車ではなく電車と徒歩。全然描写していなかったせいでいきなり大きくなったみたいになっているが、もう一歳と七ヶ月なのである。

 

「時間が経つのって早いなぁ」

「現実時間十二年かけて五年しか経ってないこの世界でそれ言う?」

「よしこの話題は止めよう」

 

 和やかに会話をしながら繁華街に到着。

 

「最近電子レンジの調子が良くなくてね~新しいのを見繕いたいのよ」

「えっ。ちょっと待って荷物持ちって電子レンジ持たせるつもり?」

「りょう、レンジもてる?」

「持てるわよ~、良は凄いんだから」

「おいやめろ拒否したら俺が失望されるだろ。……え、本気じゃないよね?」

 

 ということで三人で電化製品の店へと足を向けるのだが……。

 

 

 

「「「「「マンダデンキ、創業記念セール福引会場はこちらでーす!」」」」」

 

 

 

 そんな元気な声が聞こえてきて、自然と視線がそちらに向いた。

 

 ビルの前に紅白のテントが立てられており、のぼりには『創業記念セール』の文字。そしてそんなテントの前に鎮座する巨大な八角形の箱。

 

「おぉ、随分と大きな新井式回転抽選器」

「ガラガラくじの正式名称初めて聞いたわ」

 

 どうやら店内で抽選くじが貰えるらしく、お客さんが帰りにくじを引いていくらしい。

 

 今も主婦らしき女性がハンドルを手にしてくじを回している。結構な重量があるようで、ゆっくりと回転する箱から青色の球が転がり落ちた。

 

「おめでとうございま~す!」

 

 するとテントの下で受付をしていた少女が元気な声でベルを鳴らした。もしかして良いアタリが出たのかな?

 

「こちら、六等のオリジナルボールペンになります……」

 

「「いや六等かい」」

 

 黒髪の儚げな少女が主婦にボールペンを手渡している光景を見て、思わず早苗ねーちゃんと共にツッコんでしまった。

 

 しかし何だろうか、店員さんにしては随分と若いというか、華がある子たちだけどどこかで見たことがあるような……。

 

「って、放クラじゃん」

「ん? アンタが知ってるってことはアイドル?」

「その言い方だとアイドル以外は知らないみたいに聞こえるから止めて欲しい」

 

 283プロダクションに所属する最後のデビュー済みユニット『放課後クライマックスガールズ』。まだ直接お目にかかる機会に恵まれなかったが、まさかこんなタイミングで見かけることになるとは。

 

「あら、商店街の」

「あっ! おばちゃんこんにちわー!」

「はいこんにちは」

 

 元気よくベルを鳴らしていた赤毛の子に別の主婦らしき女性が声をかけていた。どうやらここだけではなく、様々なところでこうした活動をしているらしい。地味ではあるがこういう活動も『W.I.N.G』の第一審査を通過するためには重要になってくるので、是非頑張ってもらいたい。

 

「声かけるの?」

「今の俺はただの荷物持ち叔父さんだから」

 

 今は向こうもお仕事中なので、声をかけてもそれを邪魔するだけである。

 

「今荷物で両手が塞がってて……代わりに回してもらっていい?」

「はいっ!」

「それじゃあ、私がやりまーす!」

「頑張ってください! ちょこ先輩!」

 

 とはいえ買い物をして福引を引けるようになったら帰りに声をかけてみてもいいかなー、なんてことを考えつつ、梓真の手を引く早苗ねーちゃんと共に店内へ……。

 

「目指せ一等! 温泉旅行~! って、うわぁ!?」

 

 ん? 今なんかバキッて嫌な音が聞こえたけど。

 

 思わず立ち止まって振り返る。

 

 

 

 なんか新井式回転抽選器がこっちに向かって転がって来た。

 

 

 

「何事だよ!?」

「お兄さん避けてくださーい!」

 

 言われるまでもなく咄嗟に避けようとするが、すぐ傍に早苗ねーちゃんと梓真がいることに気付く。脳内のセルが『避ければ義姉と甥が吹っ飛ぶ!』と高らかに叫んでいたので、俺は二人を庇うような位置で腰を低く落とした。

 

「Don’t 来い超常現象(とんでもじたい)!」

「来て欲しいのか欲しくないのかどっちよ!?」

 

 そりゃあ本音を言えば来てほしくない……ふんぬらばっ!

 

 

 

 

 

 

「「「本当にすみませんでした!」」」

「申し訳ありませんでした……」

「ごめんなさい!」

 

「いいのいいの、大した怪我してないし」

「それ俺のセリフなんだよ」

「りょう、いたい?」

「痛くないよ~。心配してくれてありがとうな、梓真」

 

 残念ながら全くの無傷で転がってくる抽選器を受け止めることは出来ず、手のひらにちょっとした擦り傷が出来てしまった。逆に言えば手のひらの擦り傷程度の被害で、軸という束縛から解き放たれて自由に向かって駆け出した抽選器を止めることに成功した。

 

 とはいえ一般人が巻き込まれてしまった事故ということで慌てたスタッフたちによって事務所へと案内され、そこで手のひらの怪我の治療。そしてやってきた放クラの五人からも謝罪を受けて現在へと至る。

 

「お客様、本当に申し訳ございませんでした……」

「いえ。俺への謝罪はいいんで、その代わりこの子たちへの叱責とかそういうのは勘弁してあげてください。流石に事故でしょうし、それで怒られたらこの子たちが可哀そうだ」

「はい。どうやら抽選器も古くなっていたようなので……皆さんにもご迷惑をおかけしてしまったようで、申し訳ない」

「い、いえ!」

 

 お店のマネージャーさんはとても良い人で、俺だけではなく放クラの五人にも謝罪をしてくれた。この感じからすると五人への責任追及とかそういう事態には発展しなさそうなので安心する。

 

「大事にしないでいただいて、ありがとうございます」

 

 五人の中でも最年長と思われるオレンジ色の髪の子が代表するように一歩前に出て、改めて俺に対して頭を下げた。他の四人もそれに続くように頭を下げる。

 

「気にしないで。寧ろ大事にされたら俺の方が困っちゃうから」

「「「「「?」」」」」

 

 俺の言葉に疑問符を浮かべた表情をする五人。俺は自分の眼鏡をちょいちょいと触りながら早苗ねーちゃんに視線を向けると、彼女は「好きになさい」と肩を竦めた。

 

「君たちのことはプロデューサーさんや結華ちゃんから聞いてはいたけど、まさか初対面がこんな形になるとは思わなかったよ」

「え……?」

「改めて初めまして」

 

 眼鏡を外して自己紹介。

 

「123プロ所属、周藤良太郎です」

 

『えええぇぇぇ!?』

 

 放クラのみんなだけじゃなくてマネージャーさんも驚いていた。

 

「これだよ、これが正しい反応であって『意外と会えるトップアイドル』っていう認識の方が間違ってるんだよ」

「あたしに文句言ったところで世間の認識は変わらないわよ」

「いやだからこっちの方が世間的には正しい認識であって」

「りょうはすぐあえるよ?」

「そりゃあ一緒に住んでるからね……」

 

 そんな早苗ねーちゃんや梓真とのやり取りを見ていた放クラの一人が一言。

 

 

 

「周藤さんって結婚して子どももいたんですか!?」

「「違うそうじゃない!」」

 

 

 

 抽選器が転がって来たとき以上の緊急事態が発生しそうになったため、慌てて詳しい事情を説明する羽目になったのだった。

 

 

 




・覆面ライダー
アイ転世界におけるライダー系特撮の推移
覆面ライダー竜(ドラゴン) ~ 覆面ライダー双星(ジェミニ) → 覆面ライダーガングニール → 覆面ライダーデク → 覆面ライダー???(近日公開)

・マスク割れ
ただライダーは肉体変化型も多いのでどっちかというと戦隊系に多いよね。

・一歳七ヶ月となる梓真
ようやく登場する機会に恵まれた兄貴と早苗さんの息子です。名前の由来は勿論中の人。
正直年齢これであってたか不明ですが、自分が残していたメモに「四月で一歳七ヶ月」と書き残されていたので過去の自分を信じます()

・新井式回転抽選器
自分も調べて初めて知った。

・『放課後クライマックスガールズ』
283プロの切り込み隊長! MOIW2025でも大変お世話になりました!

・『避ければ義姉と甥が吹っ飛ぶ!』
元ネタは勿論DBだが、古いニコニコの民なので脳内で白い悪魔さんが金髪ツインテールちゃんに「避ければ地球が粉々なのー!」とピンクの閃光を……。

・「Don’t 来い超常現象!」
元ネタにごりり元ネタの元ネタトリック。

・ふんぬらばっ!
実は神龍寺戦までしか読んでません……。



 (番外編を除いて)今年のアイ転は放クラから!

 メンバー紹介はまた次回以降になりますが……ヒーロー系のお話と言えば、当然彼らの登場……?
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