アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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こんなに純粋な子をアイ転に出していいのだろうか……?


Lesson477 わたしたちはみんなヒーロー! 2

 

 

 

「仕事中の事故で周藤良太郎を怪我させたって本当か!?」

 

 

 

「人聞きわりぃ!?」

「でも一応事実ではあるわね……」

 

 とんでもない誤解をされていたのでそれを解いていると、慌てた形相のプロデューサーさんが事務所の部屋に飛び込んできた。どうやらこちらはこちらで相当悪い方向に報告を捉えてしまったようである。

 

 改めてプロデューサーさんにも事情を説明する。

 

「なるほど……どちらにせよ、一般のお客さんとして来店した良太郎さんたちに迷惑をかけてしまったことには変わりないです。本当に申し訳ありませんでした」

「それは散々……」

「あのっ!」

 

 謝罪の言葉はお腹いっぱいだとプロデューサーさんを制止しようとすると、一番元気な赤毛の子……小宮(こみや)果穂(かほ)ちゃんが大きく声を上げた。

 

「あたし、ヒーローが好きで、誰かに助けてもらったとき、こう言うのがいいって教えてもらいましたっ」

 

 ぎゅっと両手を握りしめながら、彼女はバッと勢いよく頭を下げた。

 

「助けてくれて、ありがとうございました!」

 

「……どういたしまして。こういうハプニングもあって大変だろうけど、これからも頑張ってね」

「はいっ!」

 

 頭を挙げた果穂ちゃんは、ニパーッと太陽のような笑顔を見せてくれた。

 

 

 

「さっきの良太郎さん、すっごいヒーローでした!」

 

 全員から謝罪ではなく感謝の言葉をいただいたところで、改めて果穂ちゃんを前のめりになりながら目を輝かせた。

 

「転がってくるガラガラを確認して、チラッと背後の女性と子どもに視線を送ってから、スッと腰を落として……その全部がすっごいヒーローでした! 本当にカッコよかったです!」

 

 当初はシュンと落ち込んだ様子の果穂ちゃんだったが、一連のやり取りを終えたところで堰を切ったようにテンションが上がり始めた。どうやら彼女が、以前結華ちゃんが話していた『特撮ヒーロー好きな子』のようである。

 

「これでも一応本当にヒーローやってたことあるからね」

 

 そうじゃなくても流石に義姉と甥の盾になろうと思えるぐらいの覚悟ぐらいは持ち合わせている。

 

「はい! 『覆面ライダー竜』の覆面ライダー天馬ですよね! 最後の変身シーンがすっごくカッコよかったです!」

「ありがとう。もう八年も前になるけど、そう言ってもらえるのはやっぱり嬉しいな」

 

 自分で言っておいてなんだけど、そうか俺が初出演した『覆面ライダー竜』はもう八年も前の作品になるんだよなぁ。

 

 なんてことをしみじみ考えていると、果穂ちゃんのセリフに金髪のイケメンな子……西城(さいじょう)樹里(じゅり)ちゃんが「ってことは」と思案顔になっていた。

 

「八年前ってことは果穂、お前四歳の頃からヒーロー好きだったんだな」

「はい! 覆面ライダーもハイパー戦隊も、ずっと見てました!」

 

 ん? 八年前に四歳?

 

「えっ、果穂ちゃん、今十二歳なの?」

「はい! 小学六年生です!」

 

 果穂ちゃんはニパーッと再び太陽のような笑顔を浮かべるが、一方で俺はそんな彼女の姿を改めて見て驚愕する。

 

「その大きさで十二歳かぁ……」

「良、それは何処を見ての発言?」

「勿論身長ですよ、お義姉様」

 

 早苗ねーちゃんに後頭部をガシッと鷲掴みにされる。きっと今彼女が握っているのは俺の頭ではなく(たま)なのだろう。

 

 いや実際身長も大きいので普通に驚いている。若干言動と見た目が一致しなくて違和感を覚えていたのだが、そうかこんなに大人っぽい見た目をしているけどまだランドセルを背負っている年齢……つまり。

 

「桃子パイセンより年下かぁ……」

 

 

 

 

 

 

「今なんか無性にイラっとした」

「えっ、べべべ別にありさは何も撮ってませんよ!?」

「……………」

「……………」

「今撮った写真、出して」

「わ、わかんないっピ……」

 

 

 

 

 

 

 まぁ成長の仕方は人それぞれだよね!

 

「あっ!? そういえば良太郎さんって『W.I.N.G』の審査委員長なんですよね!?」

「正式な公表はしてないけど、そうだよ」

 

 放クラの中で一番の低身長にして一番の大乳という凄まじいポテンシャルを秘めているツインテールの少女……園田(そのだ)智代子(ちよこ)ちゃんがパチンと手を叩きながらそんなことを尋ねてきた。

 

 本当は一次選考の募集が始まったタイミングでする予定であり、現在出回っている情報は一応『噂』ということになっていて、業界関係者以外には基本的に漏れていない。

 

「それじゃあ今ここで直接良太郎さんにアピールしておけば、他のアイドルたちよりも有利になるんじゃない!?」

「そういうことを本人の目の前で口にしちゃうの、俺は嫌いじゃないよ」

 

 寧ろどんなアピールをしてくれるのか気になってワクワクしてくる。

 

「ですが、智代子さん……周藤さんも……今はプライベートのお時間では……」

「そうね。智代子の案も悪くはないと思うけど、これ以上引き留めておくわけにもいかないわ」

「ぐぬぬ……!」

 

 しかしそんな智代子ちゃんのアイディアも、儚げ和風黒髪の子……杜野(もりの)凛世(りんぜ)ちゃんと、溌溂とした赤髪美女……有栖川(ありすがわ)夏葉(なつは)ちゃん二人がかりの正論に危うく撃沈である。

 

「あの! あぴーる? の方法はよく分からないですけど、良太郎さんにもあたしたち『放課後クライマックスガールズ』のお仕事を観に来てもらいたいです!」

 

 しかしそんな中、果穂ちゃんが「はーい!」と元気よく手を挙げた。

 

「果穂、それはナイスアイディアね!」

「流石……果穂さんです……」

「嘘でしょ!? 発言内容的には私と殆ど同じだったよね!?」

「寧ろより無茶なお願いになってねぇか!?」

 

 まるで球体関節のようにスムーズな手首の回転を見せた夏葉ちゃんと凛世ちゃんに、ガビーンと言わんばかりの驚愕を見せる智代子ちゃんと樹里ちゃん。なるほど、このユニットメンバー内におけるボケとツッコミのポジションはこうなっているのか。

 

「え? ……だ、ダメでしたか……?」

「そんなことないよ!」

「あぁ! アタシもナイスアイディアだって思うぜ!」

 

 そして智代子ちゃんと樹里ちゃんの反応にシュンとしてしまった果穂ちゃんをフォローするために、この二人の手首も素早い回転を見せた。この五人の力関係と立ち位置を把握することが出来たので、十分ユニットアピールになっているような気がする。

 

「絶対に観に行くって約束は出来ないけど……どんな仕事をする予定なの?」

「っ! はいっ! 実はあたしたち、ヒーローショーのお仕事をするんです!」

「へぇ」

 

 それはなんとも、果穂ちゃんが喜びそうなチョイスである。プロデューサーさんも随分と頑張ったことだろう。

 

 何せ最近はアイドル界隈だけでなく特撮界隈も盛んになって来ている。アクションに強い芸能事務所も増えてきたことだし、ハイパー戦隊や覆面ライダー以外の特撮番組も増えてきていた。

 

「一緒のステージに立たせてもらって、ショーの後はステージで歌も歌わせてもらえるんです! アイドルのお仕事だけじゃなくて、ヒーローと同じステージにも立てるんです!」

「果穂ちゃんが喜びが凄い伝わってくるよ。良かったね」

「はい! 大好きな()()()()()()()()()()出来て、すっごい嬉しいです!」

 

 今日一番の笑顔見せる果穂ちゃんに、俺だけじゃなく放クラのメンバーどころか早苗ねーちゃんまで思わずほっこりしてしまう。本当に太陽のように明るい子である。

 

「……えっ」

 

 しかし、そんな中でただ一人、プロデューサーさんだけが表情を引き攣らせた。

 

「どうしたんですかプロデューサーさん?」

「い、いや?」

「すっごい汗かいてますよ? 具合悪いんですか?」

「べ、別に?」

 

 あからさまに顔色が悪くなったプロデューサーさんを心配している果穂ちゃんに対して、その場にいた全員が「おいお前まさか」みたいな視線をプロデューサーさんに向ける。おいお前まさか。

 

「……じ、実は」

 

 

 

「……え……ジャスティスⅤとのお仕事じゃないんですか……?」

「本当にすまなかった……」

 

 誰も何も言っていないが、自然にその場で正座をしたプロデューサーさん。流石に土下座まではしないものの完全に謝罪スタイルである。

 

 どうやら果穂ちゃんはハイパー戦隊シリーズのジャスティスⅤが好きで、彼らと共演できると思い込んでいたらしいのだが、実際は別の特撮ヒーローとの仕事だったらしい。プロデューサーさんの連絡ミスとかそういうのではなく、純粋に果穂ちゃんの勘違いだったようだ。

 

「い、いえ、大丈夫です、勝手に勘違いしたのは私なので……」

 

 そうは言いつつも、誰の目から見てもシュンとしてしまった果穂ちゃん。しかもすぐに「私、ヒーローはみんな大好きなので、大丈夫です!」と笑顔になる健気さまで見せつけられてしまったプロデューサーさんの心情たるや。多分心の中で血ぃ吐いてると思う。

 

「……周藤良太郎さん、貴方にお願いがあるの」

「え? おぉ?」

 

 ゆらりと近づいてきた夏葉ちゃんにガシッと両肩に手を置かれる。そんな彼女の両脇から凛世ちゃんと智代子ちゃんと樹里ちゃんも距離を詰めてくる。

 

「貴方の力で、果穂にジャスティスⅤとの仕事をさせてあげて……!」

「いや俺もちょっと気の毒だなとは思ったけど……」

「そのためなら私たちはどんな苦難も乗り越えてみせる……!」

「そのテンションの上げ方、このタイミングで大丈夫?」

 

 大体そんな気はしていたけどこのユニットメンバー全員、果穂ちゃんのこと大好きだな?

 

「まぁ果穂ちゃんがヒーロー好きアイドルとして活動していけば、いずれはその機会は来ると思うよ」

 

 現に俺も元覆面ライダーとしてだけじゃなくて、特撮好きのアイドルとしての仕事も何度か経験済みである。ちなみにその際、覆面ライダー天馬で俺のファンになって握手会にも来てくれた女の子が、346プロのアイドルとなって俺と再会したなんてなんて一場面もあったりもした。

 

 

「みんな、分かってるわね!」

「勿論……です……!」

「『W.I.N.G』に優勝するぐらいのトップアイドルになって……!」

「果穂に、ジャスティスVと共演させる!」

 

「だから本当に君たちそのテンションの上げ方、このタイミングで大丈夫?」

 

 このアイドルユニット、小宮果穂ちゃんのことが大好きすぎる。

 

 

 




・小宮果穂
放課後クライマックスガールズのレッド担当。ヒーロー大好き12歳。
スタイルが美嘉ねぇとほぼ同じって知ってめちゃくちゃ驚いた。

・西城樹里
放課後クライマックスガールズのイエロー担当。やや不良型ボーイッシュ系な17歳。
え……こんなに重い過去持ちなのこの子……!?(wiki読んだ)

・「わ、わかんないっピ……」
ありぴーの原罪(オタクの業的な意味で)

・園田智代子
放課後クライマックスガールズのピンク担当。所謂普通系な17歳。
……いやそのスペックでクラスに一人はいる普通の少女名乗るのは無理あるって。

・杜野凛世
放課後クライマックスガールズのブルー担当。儚げ和風な16歳。
多分アイ転ではおもしれー女枠になると思うけど、恐らくそれは中の人のせい。

・有栖川夏葉
放課後クライマックスガールズのグリーン担当。パワー系お嬢様な20歳。
アイ転では何故か相対的に薄味になりそうな危険性が。がんばれ夏葉。

・このアイドルユニット、小宮果穂ちゃんのことが大好きすぎる。
アイ転世界における放クラの方向性が決まった瞬間である。



 対象『小宮果穂』過保護系アイドルユニット爆誕! アイ転世界ではこういう方向性で彼女たちには頑張ってもらいます! まぁ果穂ちゃん可愛いからちかたないよね!
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