アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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ヒーローにアクシデントは付き物。


Lesson478 わたしたちはみんなヒーロー! 3

 

 

 

「そういえば、さっき貰ったヒーローショーのチラシなんだけど、あんまり聞いたことないヒーローよね? アンタは知ってるの?」

 

 放クラの面々を別れ、家電量販店で買い物を再開。電子レンジを見に行く途中で、梓真と手を繋いで歩く早苗ねーちゃんがそんなことを尋ねてきた。さっき貰ったチラシとは、先ほど「もし時間が合えば見に来てください!」と果穂ちゃんが手渡してくれた彼女たちが共演するヒーローショーのチラシである。

 

「まぁローカルヒーローってほどじゃないけどテレビとかにはあんまり出てないからな。とはいえ一部ではしっかりと子ども人気あるんだよ」

「ふーん、全然聞いたことなかったわ、この『ユウエイジャー』って」

 

 説明しよう! 『英雄戦隊ユウエイジャー』とは!

 

 スタント俳優が多く所属する『UAプロダクション』が、新人スタント俳優の育成を目的として様々な場面で活動させているローカルヒーロー企画である。ハイパー戦隊のように人数や色が決まっているわけではなく、スタント俳優それぞれの特色を生かしながら経験を積ませるための実地訓練のような活動だ。

 

 昨年の『覆面ライダーデク』に出演した緑屋出久や爆豪勝己も、それぞれユウエイジャーの『頑張りヒーロー・デクグリーン』『爆発ヒーロー・ダイナマレッド』として活動していて、そこから覆面ライダーへと抜擢されたという経歴になっている。

 

「ユウエイジャーは大勢いるけど、今回のショーで来るのは『男気ヒーロー・ライオットレッド』『甘味ヒーロー・シュガーイエロー』『電撃ヒーロー・チャージオレンジ』の三人だな」

「レッドとイエローとオレンジって凄い組み合わせね……あ、このシュガーイエローってヒーローは見たことあるかも。動画サイトのおススメにお菓子作り動画流れてきてたわ」

 

 各々のヒーローがそれぞれの特色を生かした活動をすることで、次の仕事への経験と知名度を獲得していく。これがUAプロダクションのヒーロー活動『英雄戦隊ユウエイジャー』なのである!

 

「……ママ」

「ん? どうしたの?」

 

 梓真がクイクイと早苗ねーちゃんの手を引きながら顔を見上げる。

 

「いってみたい」

「「え?」」

「ヒーローとアイドル、みてみたい」

 

 それは梓真にしては珍しいおねだりだった。一体誰に似たのか分からないが、普段の梓真はとてもいい子である。お腹が空いたとか眠いとか疲れたとか、そういう場面においては勿論泣いたり怒ったりするのだが、それ以外で梓真が我がままを言うことが殆どなかった。なんなら我が家で一番聞き分けがいいのが梓真である。果たして誰に似たんだか。

 

 そんな梓真が、ヒーローショーとアイドルのライブに行ってみたいと、そんなおねだりをしているのである。当然息子が可愛くて仕方がない早苗ねーちゃんがそれを無下にするようなことをするはずがなかった。

 

「勿論連れて行ってあげるわよ! 例えそれが仕事を休むことになろうとも!」

「流石にそこは仕事に行こうぜ」

 

 しかし残念ながら去年から育休も明けて職場復帰している早苗ねーちゃん。チラシに記載されている日付は幸い日曜日ではあるのだが……。

 

「……出勤日……!」

「お仕事頑張ってるママは偉いねぇいい子だねぇ」

「うん、ママえらい。いいこいいこ」

 

 愕然とする早苗ねーちゃんのメンタルを回復させるため、梓真を抱き上げてママの頭を撫でさせる。

 

「母さんにお願いしたら?」

 

 現在梓真は保育園に行かず、両親不在の間は家で母さんと二人で過ごしている。母さんも孫との二人きりの時間を楽しんでいる様子。

 

「流石にお義母さん一人にお願いするのは憚られるわよ……というわけで、良」

「ん?」

 

「頼んだ」

「えっ」

 

 

 

 

 

 

「以上が、俺が今ここにいる理由だよ」

「な、なるほど……」

 

 日曜日。ヒーローショーと放クラのライブが行われるショッピングモールへ母さんと梓真の二人を連れてやって来た俺は、偶然知り合いのアイドルと顔を合わせることになった。どうやら()()()()もヒーローショーを目当てにやって来たらしい。

 

「丁度時間もあったことだし、ヒーローショーを見るのもアイドルのステージを見るのも構わないんだけどさ、なんかこう……なんとなく釈然としないんだよ」

「家族サービスも大変ですね」

「世間一般的に言う家族サービスの対象とはちょっと違うけどね」

 

 そんな会話をしていると、後ろからクイクイと袖を引かれた。

 

「リョウくーん、そろそろお母さんにもこちらの可愛い子たちを紹介してほしいなー」

「あぁ、うん」

 

 母さんに促されて紹介しようとすると、そのやり取りを聞いていた少女たちは自分から「「初めまして!」」と挨拶をしてくれた。

 

「アタシは南条光です。良太郎さんとはお仕事の現場でご一緒させていただいたことがありまして……」

「あら、それならやっぱりアイドルの子だったのねー。可愛いと思ったのよー」

 

 一人目は南条光ちゃん。346プロ所属のアイドルであり、かつて覆面ライダー天馬のファンでもあると俺の握手会に来てくれた女の子。先日彼女のことを思い返したばかりだというのに、こうしてすぐに顔を合わせることになるとは思わなかった。

 

「はーい! たまきは大神(おおがみ)(たまき)だぞ! 765プロでアイドルしてて、今日は友だちの光と一緒にヒーローショーを見に来たんだ!」

「そうなのねー、元気いっぱいで見ているこっちも元気になっちゃうわー」

 

 もう一人は大神環ちゃん。765プロ劇場シアター組の一人であり、なんと俺が高校時代に何度もお世話になった大神さくら先輩の従妹とのこと。劇場で初めて会ってそれを知ったときは「同じ血が流れている……!?」と戦慄したものである。

 

 彼女もまたヒーローが好きという話は聞いていたけど……。

 

「まさか二人が仲が良いとは知らなかったよ」

「実は仕事の現場で話してて意気投合しちゃって……」

「二人でお休みの日にヒーローショーを見に行こーって話になったんだよねー!」

 

 嬉しそうに光ちゃんに抱き着く環ちゃん。とても仲良しだということはこうして一目で分かるのだが……。

 

「……えっと、光ちゃんと環ちゃんって同い年だっけ」

「いや、アタシが今年十七になりまして……」

「たまきはこの間、十四になったぞ!」

 

 身長体格その他諸々、殆ど同い年に見える二人。()()()()()()とは言わないが、混乱しないためにあらかじめ聞いておく。うん、他意はないよ他意は。ここにさらに果穂ちゃんを並べてみたいとか、全然そんなこと考えてない。

 

「っと、こっちの紹介が遅れたね。改めて、俺の母親と甥っ子」

「周藤良子でーす。二人とも、初めましてー」

「初めましてだぞ!」

「は、初めまして……あの、えっと……」

 

 光ちゃんの視線が俺と母さんの間を何度も行ったり来たりしている。彼女が何を考えているのか手に取るように分かるが、残念ながら俺はこう言うしかないのである。

 

「光ちゃん、ヒトっていうのはいつだって無限の可能性を秘めているんだよ」

「なにも……分からない……!」

 

 年齢不詳(かあさん)の紹介を終えて、次は彼女と手を繋いで大人しくぽんやりと俺たちのことを見上げていた梓真を紹介する。

 

「こっちは梓真。俺の兄貴の息子で、俺の甥っ子」

「あずま、です」

「よろしくなー! たまきは環だぞー!」

「アタシは光。よろしくな、梓真君!」

 

 目線を合わせるようにしゃがみ込んだ二人が梓真と握手する。

 

「……甥ということは、つまり良子さんの孫……ってこと……」

「深く考えるんじゃない、光ちゃん」

 

 宇宙猫になってしまった光ちゃんの肩を叩いて正気に戻す。世の中には深く考えない方がいいことっていうのがあるんだよ。

 

 

 

 そんなやり取りを経て、俺たちはヒーローショーが行われるステージへと足を向ける。

 

「とは言ってもまだショーまで二時間以上あるんだけどねぇ」

 

 ヒーローショーは十四時からで、現在時刻は十一時半。折角だからのんびりお昼でも食べようということで早めにやって来たのだが、流石に早すぎたかもしれない。

 

「二人はお昼の予定何か決めてる? もしよかったら一緒にどう?」

「え、いいんですか……?」

「お母さんは大歓迎ー! アズくんも、お姉ちゃんたちと一緒にご飯食べたいよねー」

「みんなでごはん、すき」

 

 これっぽっちも人見知りしない梓真はこの歳にしてみんなで一緒にご飯を食べるという楽しさを知っている。なんでもみんながワイワイ話しているところを見るのが好きらしい。……いや本当に誰に似たんだ? 兄貴と早苗ねーちゃんの息子にしては良い子が過ぎるんだが?

 

「えっと……ご迷惑じゃないのであれば」

「わーい! みんなでご飯だー! ……あれ?」

 

 諸手を挙げて喜びを表現する環ちゃんが、何かを見つけた様子でキョトンとした表情になった。

 

「どうしたの?」

「……なんか貼ってあるぞ」

「なに? 手配書?」

「そんなもの街中に貼ってないと思いますけど……」

「最近三十一億になったんだって?」

「しかもなんで千両道化の方なんですか……」

 

 環ちゃんが指差す先を見ると、そこには今日行われるヒーローショーの案内の立て看板が……。

 

「……『放課後クライマックスガールズ ヒーローショー&ライブ!』……?」

 

 あれ? ユウエイジャー何処に行った?

 

 

 

 

 

 

「は? ユウエイジャーの三人が事故に巻き込まれて来れない?」

「はい……」

 

 ちょうど何かバタバタと慌てた様子の283プロのプロデューサーさんを捕まえることに成功したので事情聴取してみると、案の定トラブルが発生していた。

 

 なんでもこちらの会場に向かう途中に立ち寄ったコンビニの店内に、アクセルとブレーキを踏み間違えた車が突っ込んで来たらしい。三人は咄嗟に近くにいた他のお客さんを庇い……。

 

「そ、それって大丈夫だったんですか……!?」

「命に別状はないらしいけど、病院に運ばれていったらしい……」

 

 咄嗟に人助けを出来るとは、彼らは間違いなく名実ともにヒーローだろう。

 

 とはいえそれはそれ、これはこれである。

 

「こういうのもアレですけど、最近オタクの事務所なにかしらのトラブルに見舞われがちじゃないですか?」

「返す言葉もございません……」

 

 アンティーカのときは停電、アルストロメリアのときは講師の急病、そして今回がショーに出演するヒーローの事故と……。

 

「それで急遽放クラの五人でヒーローショーをすることになって、その準備をしているところなんです」

「さっき向こうで走ってる智代子ちゃんと樹里ちゃんの姿が見えたと思ったけど、そういうことだったんですね」

 

 さて、ここまで事情を聞いておいて「それじゃあ頑張ってくださいね」なんて言うつもりは毛頭ない。

 

「協力します。何か俺に出来ることはありますか?」

「アタシも手伝います!」

「たまきも手伝うぞ!」

 

 俺だけじゃなく、光ちゃんと環ちゃんも手を挙げた。きっと彼女たちも困っている人がいると身体を動かさずにはいられないタイプの子たちのなのだろう。

 

「それは……」

 

 一瞬言い淀むプロデューサーさん。他事務所の何の関係もないアイドルへ助力を求めることに対しての葛藤があるのだろうが、それでも彼は意を決したように逸らした視線を真っ直ぐに俺へ向けた。

 

「それでは良太郎さん、お願いしたいことがあります」

「なんですか?」

 

 

 

「悪役をお願いしたいです」

「そうきたかぁ……」

 

 

 




・英雄戦隊ユウエイジャー
ヒロアカ組を全員ここにぶち込むという暴挙。
何人かどうなってるのか気になる子がいる? みんな各々好きに想像してね!

・南条光
番外編40以来の登場になるのでリアルで八年ぶりの再登場!
原作では14歳だが現在の時間軸では既に17歳の高校生。多分背は伸びていない。

・大神環
アイドルマスターミリオンライブから登場の犬系元気っ娘。
原作では12歳だが現在の時間軸では既に14歳。多分胸も背も成長してる。

・大神さくら先輩の従妹
苗字が同じだと血縁にしたがる悪い癖。

・「最近三十一億になったんだって?」
ワンピースは本当に着地点が分からない……。

・「悪役をお願いしたいです」
一応彼の名誉のために言っておくと「悪役の代わりを紹介してください」的なニュアンスであって、決して「悪役やって」という意味ではないのである。



 ヒーロー好きアイドルとして光&環が参戦! ヒーローパワーでお助けだ!

 てんどうてるくん(28)はお休み。



『どうでもいい小話』

 千早単独公演まだ観れてません……アーカイブ買います……。
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