アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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※アイドルマスターです。


Lesson486 星を冠する者たち 2

 

 

 

 突然だが、話は二週間ほど前に遡る。

 

 

 

「は、初めまして! 中島スバルです! アイドル志望の十四歳です! 歌もダンスも、映画のアクションも何でも頑張ります! よろしくお願いします!」

 

「……ティアナ・ランスター、十五です。……兄のような俳優志望ですが、やれというのであればアイドルでも何でもやります。ですが決して手を抜くつもりはありません」

 

「きゃ、キャロ・ル・ルシエ、十歳です。アイドル志望ですが、歌もダンスもまだまだ未熟な身で……これから、一生懸命頑張ります。……よ、よろしくお願いします!」

 

「エリオ・モンディアル! 十歳です! スタント俳優志望です! 夢は覆面ライダーに出演することです! よろしくお願いします!」

 

「よろしく、みんな。改めて自己紹介するけど、俺は周藤良太郎、アイドルだ。覆面ライダーとしてのスタント俳優の経験もある。直接指導する機会は少ないかもしれないけれど、その僅かな時間だけでも君たちに可能な限り俺が持ち得る知識と技術を――」

 

 

 

「ちょっと待てぃ!」

 

 

 

 何処からか取り出した大きな赤いボタンに、はやてちゃんの拳が叩き込まれる。

 

「なんで良太郎さんがおんねん!?」

 

 ここは310プロの事務所。はやてちゃんのツッコミはご尤もである。

 

「今年の春から新しい子たちが入所したって聞いたから、顔を見ようと思ったんだよ。310プロは妹がお世話になってる事務所だからね」

「……なのはちゃん、コレ、アンタの妹ちゃうやろってツッコんでも大丈夫?」

「ゴメンはやてちゃん……」

「へ?」

「私、今日遅刻しそうなところを良太郎さんに送ってもらった身だから、良太郎さんがここにいることに対して何も言えないの……!」

「ホンマもんの妹やないかい!」

 

 というのが俺がここにいる理由である。たまたま俺に時間があり、たまたま遅刻しそうななのはちゃんと遭遇したため、車でなのはちゃんをここまで送ってあげたのである。

 

「でもここで『W.I.N.G』の審査委員長になる予定の『周藤良太郎』に、出場予定の子たちのことを知ってもらえるのはいいことじゃない?」

「社長ぉ……」

 

 そう言ってニコニコと笑う310プロ社長のリンディさん。相変わらず若くてスタイルが良くて、とても俺と同い年の息子がいるとは思えない。やはりこの人も我が家のリトルマミーや桃子さんと同種の人間である。

 

「それより、はやてさんもなのはさんも、そろそろお仕事の時間よ。さっきからフェイトさんが向こうで待ってるわ」

「せやった!」

「ゴメンねフェイトちゃん!」

 

 部屋の入り口からちょこんと顔だけ出して可愛らしくこちらの様子を窺っていたフェイトちゃん。一番女性らしい体つきになったというのに相変わらず行動が小動物っぽくて可愛い。

 

「もう遅刻しちゃダメだよ」

「わ、分かってるの!」

「あとツッコミ過ぎると疲れちゃうからほどほどにね」

「ツッコミどころを量産する人に言われたないねん!」

「リョウさんだけに?」

「やかましいわ!」

 

 騒々しくトライエースの三人が去って行った。彼女たちもすっかりトップアイドルの一員であり、現在の310プロを代表するアイドルである。

 

「月日が流れるのは早いなぁ……ちょっと前まで初々しく魔法少女役をやってたなのはちゃんたちが、今では人気アイドルなんだから」

「あっ! あたし! その映画がきっかけでアイドルを目指しました!」

「お、そうなんだ」

「はいっ!」

 

 ビシッと手を挙げてから発言したのはスバルちゃん。短い青髪でボーイッシュな印象を受けるが、将来有望そうな体つきをしている。アクションも出来ると豪語しているだけあって、何やら格闘技をしていそうな筋肉の付き方もしてるかな。

 

「それで、三人は『W.I.N.G』に出場するつもりなの?」

「はい! あたしとティアとキャロの三人で『ライトニングスターズ』っていうユニットを組んで出場するつもりです! ね!?」

「は、はい……!」

 

 体育会系のスバルちゃんが拳を突き上げるのを真似するように、ピンク髪で小柄なキャロちゃんも「むんっ」と小さく拳を握った。先ほどから小さな白いぬいぐるみを抱えているが……なんだろう、ドラゴン? 何かのキャラクターかな?

 

「……………」

 

 一方で、オレンジ色の髪をツインテールにしたティアナちゃんは無言のままこちらを見ていた。なんというか、胡散臭いものを見るような目というか、イマイチこちらのことを信用してないというか、そんな感じの視線に何故か既視感を覚える。

 

(……あ、分かった、初期志保ちゃんだ)

 

 偽名として恭也の名前を使ったときの志保ちゃんの視線にそっくりである。あの頃の懐かない猫のような志保ちゃんも今では懐かしい。

 

 しかし、逆になんでそんな目で見られてるんだろうかという疑問も湧いてきた。なんとなく(こんな人がトップアイドル……?)的な視線とも少し違うようだし、何か別の事情があるのだろうか。

 

(ランスター……あれ?)

 

 もしかして。

 

「ティアナちゃんもアイドルやるんだね?」

「……はい。社長と相談して、演技の道へ進むために、まずはアイドルとして地盤を固めるという方針になりましたので」

「そっか。夢は()()()()()()()()役者?」

「勿論です。……えっ!?」

「その反応、やっぱり」

 

 視線を逸らしながら返事をしたティアナちゃんだったが、何かに気付き驚いて視線をこちらに向けた。

 

「お兄ちゃ……兄さんを知ってるんですか?」

「そりゃあね。俺は友だちだって思ってる」

 

 ティーダ・ランスター。僅かな駆け出しアイドル時代に同じ舞台に出演して仲良くなった役者だが、そのとき連絡先を交換し損ねてなんとなく疎遠になってしまっていた。

 

「そのときに『目に入れても痛くない可愛い妹がいる』って散々惚気られたよ」

 

 確かに見せてもらった写真に写っていた少女の面影はある気がするが、随分とまぁ美人さんに成長して……。

 

「ティーダから俺の話聞いてないの?」

「……『今更俺のような小物俳優のことなんて覚えてないだろう』と」

「逆にそっちの方が酷くない?」

 

 だが連絡先を交換しなかった俺にも問題があると言えばあるのかもしれない。

 

「ティーダは元気?」

「……元気です」

 

 あれ、なんだか歯切れが悪いような。

 

「……これ、俺のプライベートの連絡先だから、ティーダに渡してもらっていい?」

「えっ」

 

 最近持ち歩くようになった123副社長としての名刺の裏に連絡先を書いてティアナちゃんに渡す。何か向こうにも事情がありそうな雰囲気がしたので、ティーダやティアナちゃんの判断に任せることにする。

 

「俺が連絡取りたがっていたって伝えてもらっていいかな?」

「……分かりました」

 

 一瞬躊躇しつつも受け取ってくれたティアナちゃん。こっちは一先ずこれでいいかな。

 

「すっごーい、ティアのお兄さん、周藤良太郎さんと知り合いだったんだ!」

 

 俺たちのやり取りを見てスバルちゃんは目を輝かせた。

 

「キャロとエリオもフェイトさんと親戚だったみたいだし、なんかあたしだけ疎外感ー」

「へぇ、そうなんだ」

「は、はい」

「僕もキャロも、フェイトさんやプレシア副社長の遠縁の親戚に当たるんです」

 

 そんな会話をしていると何やらリンディさんから意味深なアイコンタクト。何となく、この二人にはこれ以上踏み込んではいけないような気がしたため、へぇそうなんだと能天気なふりをしてその話題を終わらせた。

 

 ……はやてちゃんといい、なんというか、こう、複雑な事情の子が多いなぁ、この事務所は……。

 

 

 

 

 

 

「え~!? 『周藤良太郎』さんと知り合いなの!?」

「知り合いってほどじゃないけど、ご挨拶はさせてもらったんです。ねぇ、ティア、キャロ」

「……えぇ、そうね」

「は、はい。なのはさんたちと仲が良かったみたいで、その縁でお会いさせていただきました」

「ほわぁ……」

 

 楽屋に挨拶へ行くと、そのまま歓迎されてしまいミニライブまでの時間はまだまだあったため一緒にお喋りをすることに。特にめぐるちゃんとスバルちゃんのウマが合ったようでまるで数年来の友人のように楽し気に会話をしていた。

 

「いいな~! 周藤良太郎さん、うちの事務所のアイドルみんな会ったことあるって言うのに、わたしだけまだ直接会ったことな~い!」

「わ、私もまだ直接お会いしたことないから」

「うえ~ん灯織~! わたしたちだけ良太郎さんに会えてない同盟だよ~!」

 

 泣きつくめぐるちゃんの頭をヨシヨシと撫でる灯織ちゃん。微笑ましい光景のはずなのに、何故かその同盟は近い将来容易く破滅してしまうような、そんな予感がした。

 

「真乃さんのこともなのはさんから伺ってますよ。今年の春にアイドルになったばかりの同級生だって」

「そっか、真乃、クラスメイトって言ってたっけ」

「うん」

 

 灯織ちゃんの言葉に首肯する。

 

 先日の一件の後、私たち『イルミネーションスターズ』は沢山お喋りをした。レッスン前もレッスン後も、それでも時間が足りなくて私の家にお泊りをして、夜遅くまでお喋りをした。その途中、灯織ちゃんからのお手紙という決して小さくないイベントを挟んだりして、私たちはお互いのことを少なからず知ることが出来た。

 

 そんな中で、私は『高町なのは』とクラスメイトで友人だということを明かした。自慢をしたわけではなく「私がアイドルになるための後押しをしてくれた友人だ」ということを言いたかったのだ。

 

「なのはさんのお友だちとはいえ、アイドルとしてはほぼ同期。『W.I.N.G』優勝を目指す身としてはライバルと言えなくもないですけど、今日のライブも、そしてこれからも、一緒に頑張りましょうね!」

「うんっ」

「よろしくね~!」

「「よ、よろしくお願いします」」

 

 いずれ競う合うことは決まっていたとしても、今は共にミニライブを成功させるために。私たちは事務所の垣根を越えて手を取り合う。

 

 きっと、アイドルはみんな、ともに同じ夢を目指す仲間なのだと思うから。

 

 

 

「……………」

 

 

 




・中島スバル
魔法少女リリカルなのはシリーズより。前話を含めて表記を変更しております。
今作ではストライカーズの年齢(正確には一つ年下)と容姿、イノセントの設定の合わせ技。
勿論普通の人間。

・ティアナ・ランスター
魔法少女リリカルなのはシリーズより。
こちらもストライカーズの年齢と容姿、イノセントの設定の合わせ技になっております。
兄ティーダは健在ですが……。

・キャロ・ル・ルシエ
魔法少女リリカルなのはシリーズより。
ストライカーズの年齢と容姿ですが、イノセント未登場なのでそれっぽい感じに。
しかし何故か重い設定に……。

・エリオ・モンディアル
魔法少女リリカルなのはシリーズより。
こちらもストライカーズの年齢と容姿、勿論男の子です、TSなんてしません。
アイドルではなく覆面ライダーを夢見るスタント俳優の卵です。

・何処からか取り出した大きな赤いボタン
相席310プロ。

・『ライトニングスターズ』
ストライカーズのライトニング分隊とスターズ分隊の名前の合体。
ユニット名『機動六課』は当然却下された。

・良太郎さんに会えてない同盟
【悲報】めぐるさん、一人だけ良太郎との絡みなし



 気が付けばイルミネの三人よりも310の四人の方が深堀されていた。いや、イルミネの三人はこれからだから……(震え声)
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