アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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※ご覧の作品はアイドルマスターの二次創作です。


Lesson488 星を冠する者たち 4

 

 

 

『ピヨピヨピヨ~! ぴえヨンチャンネルうううぅぅぅ!』

 

 

 

『ハイ今回はネ! 超大物コラボ回デス!』テテレテッテテー

 

『実はぴえヨン、以前は振り付けのお仕事やってたんだけど、そっち方面の知り合いとコラボしないかっていうお話を社長が持って来たわけ!』

 

『いやまぁぴえヨンもすっかり人気者になっちゃってさ~どーしてもって言うんならコラボしてあげなくもないよって企画書を見せてもらったの!』

 

『載ってた名前が予想以上に大物すぎて思わずその場で正座しちゃったよね』

 

『というわけで今回の企画うううぅぅぅ!』

 

 

 

『ぴえヨンブートダンス! 一時間ついてこれなかったらノーギャラ&名前と素顔出し無し! With B小町!』

『なぁんでよ!?』

 

『おや何か不満かい有馬(ありま)かなちゃん。デビュー前に僕のチャンネルに出演させてあげた有馬かなちゃん。今も『W.I.N.G』出場のために少しでも露出しないといけない有馬かなちゃん』

『露出っつってんのに何よこのマスクは!? 何でまたこんなの被らなきゃいけないのよ!?』

『正装だから……』

『正装!?』

『私も動画見たけど、まさか実際にやることになるなんてなぁ……』

『アハハ、コレ懐かし~!』

『ほら頑張るピヨ。頑張ったらボクの知名度に乗っかれるよ?』

『なんでぴえヨンと同じ声なのよ腹立つわねぇ! いいわよ! アンタが誰だか知んないけど、本当に大物だって言うんなら存分に利用させてもらうんだから!』

 

 

 

 

 

 

「なめたクチ利いてスンマセンでした」

 

 一時間後、そこにはそれなりにキツいトレーニングを無事に終わらせてぴえヨンマスクを外した俺に向かって息も絶え絶えに土下座する汗だくの少女の姿があった。

 

「まさか……あの『周藤良太郎』がこんなチャンネルに出演するなんて……」

「むっ、こんなチャンネルだなんて失礼な。これでも本当にリアルで知り合いなんだからネ」

「そうなの!?」

 

 彼女のユニットメンバー二人が驚いているが、実はそうなのである。

 

 プロダンサーから振付師を経て動画投稿者に転向したという経歴を持つ覆面筋トレ系動画投稿者『ぴえヨン』とは、彼が覆面で顔を隠す以前からの知り合い。ただ正直な感想を言わせてもらうと、ブーメランパンツ一丁でヒヨコの覆面を被ったマッチョが小中学生に大人気なのだから、こちらの界隈というものは不思議なものだ。

 

 ちなみに俺もぴえヨンマスクは被ったが服装は普通にジャージである。トップアイドルのブーメランパンツ一丁の姿は流石に美味しすぎるので他事務所の動画で晒すのはあまりにも勿体ないという理由で企画段階であらかじめこちらから断っておいた。しかし逆に「いや、そりゃそんなことさせるわけないじゃないですか……」と15プロの美魔女社長にドン引きされてしまった。何故だ。

 

「というか息切れ一つしてないとか……」

「トップアイドルって凄い……」

「さて、撮影自体はこれで終わりだから……あとは『W.I.N.G』審査委員長様に存分に自己アピールするといいヨ」

「え、いいんですか!?」

「寧ろ周藤君もそのためにこっちの事務所にまで来たんでしょ?」

「まぁ、理由の一つではありますね」

 

 今回、このコラボを依頼したのはウチの事務所のチャンネルに投稿する個人企画シリーズの撮影のためでもあった。ぴえヨンチャンネルでの動画公開の一週間後にウチのチャンネルでもこちら視点の動画が公開されることになっている。

 

 そしてぴえヨンが言っていたように、この事務所に所属する『W.I.N.G』出場予定の新人アイドルの様子を見ることも目的の一つである。

 

()()15プロが約十年ぶりにアイドル部門を復活させたっていうんだから、そりゃ業界の人間としては注目せざるを得ないですよ」

「……ま、そりゃそうか」

 

 俺の発言に納得したように首を竦めたぴえヨンは「それじゃあ僕は動画編集があるから、あとはアイドル同士でごゆっくり~」と撮影の部屋から出て行き、俺は汗だくの美少女三人と共に部屋に残されることとなった。うーん、何となくいい匂いがするようなしないような。

 

「先輩先輩! チャンスチャンス! あの『周藤良太郎』さんに顔と名前を覚えてもらうチャンスだよ!」

「ちょっと待ちなさいルビー、私は今自己嫌悪でそれどころじゃないのよ……」

「わー! わー! 『周藤良太郎』だ! 本物だ! あの、一緒に写真とか……!」

「勿論。こっちこそ『MEM(メム)ちょ』と写真が撮れるなら大歓迎」

「きゃー! 『周藤良太郎』に認知されてるー!?」

「あー! MEMちょズルーい! 私も『周藤良太郎』に認知されたい!」

 

 『女三人寄れば姦しい』という言葉を様々な事務所で実感してきたが、この事務所でも例外ではないらしい。女の子たちの戯れは何回観てもいいものだなぁ……。

 

 

 

「改めまして!」

 

 一人ヘコんでいた子が復活し、ついでに乙女の嗜みとしてシャワーで汗を流してきた三人が俺の前に並んだ。

 

「15プロダクション! 『B小町』の星野瑠美衣です!」

「お、同じく『B小町』の有馬かなです」

「同じく『B小町』のMEMちょです!」

「123プロダクションでアイドルをさせていただいております周藤良太郎と申します。この度はご挨拶の機会をいただき誠に――」

「「「逆ぅ!」」」

 

 こちらこそ改めまして。

 

「123の周藤良太郎だ。三人ともよろしく」

「よろしくお願いします!」

「それじゃあ、さっき言ってた写真を……!」

「勿論。さぁどこからでも撮ってくれ」

「小顔ポーズ!」

「取られ慣れてる!」

 

 他事務所の三人組ユニットの例に漏れず『B小町』の三人もそれぞれ別々の特色が見えた。

 

 未だにこちらに対して恐れ多いといった様子で踏み込んでこない有馬かなちゃん。彼女は三歳の頃から役者として活動をしているため昔から知っている。寧ろ芸歴という点で言えば俺よりもずっと先輩である。後でサイン貰っておこう。

 

 多少遠慮する姿勢を見せつつも絶妙なタイミングでグイグイとこちらに対して踏み込んでくるMEMちょ。超人気動画配信者として彼女も以前から活動していることを知っている。というか以前346の菜々ちゃんが「実は私、MEMちょちゃんと昔から仲良くって!」という話を聞いていた。この子にも後でサイン貰っておこう。

 

 そして……。

 

「きゃー! 後でママとお兄ちゃんに自慢しなきゃー!」

 

 星野瑠美衣ちゃん。彼女は他の二人に対して何の経歴もない。それは別にいい。それを言うのであれば俺だってアイドルになる前は何も持っていなかった。ただちょっと前世があって小学生の頃に妖怪や怪異との遭遇経験があるぐらいのどこにでもいる普通の人間だった。

 

 けれど、この子の瞳は()()()()()()()()瞳だ。

 

 俺はこの輝きを、何処かで――。

 

 

 

「あれー? お客さん来てるのって今日だっけー?」

 

 

 

「っ」

「あ、ママ!」

 

 振り返る。ルビーちゃんが笑顔でブンブンと手を振りながら部屋の中に入って来た車椅子の女性の下へ駆け寄ると、女性の前で膝を付きながら彼女のお腹へと抱き着いた。甘えるようにグリグリと動かすルビーちゃんの頭を、女性はニコニコしながら撫でている。

 

「あの人は……」

「あ、えっと……る、ルビーの母親で……」

「わ、私たちのマネージャーさんみたいな……サポーターさん……みたいな!?」

 

 かなちゃんとMEMちょちゃんはまるで何かを誤魔化すように慌てている。だが申し訳ないけれどそれは無意味になってしまった。

 

 ルビーちゃんのときには漠然としか感じなかった()()を、俺は彼女の中に見た。

 

 それは……初めて『日高舞』を目の前にしたときと、同じ感覚。

 

「初めまして」

 

 歩み寄る俺に、女性はニッコリと微笑んだ。

 

「舞先輩から、話は聞いてるよー」

「ご挨拶が遅れてしまい、申し訳ありません」

「そんなにかしこまらないでよー。今の私はただめちゃくちゃ可愛いだけのお母さんなんだから」

「そうですね、めちゃくちゃ可愛いです」

「でしょー!? 周藤さんも分かってくれますか!?」

 

 彼女は既に()()()()退()()()身であることは重々承知している。

 

 けれど俺はずっと、彼女に敬意を示したかった。

 

 今日本の頂点(このばしょ)に立っているからこそ。

 

「かつて()()()()()()()()()()貴女に」

「……もしかして高度な嫌味言われてる? 私、そこ立ったことないよ?」

「いいえ、間違いなく貴女は立っていました」

 

 九十度頭を下げる。

 

「改めまして。123プロダクションに所属しています。周藤良太郎と申します」

 

 かつて『日高舞』の次に最も輝いた『一番星の生まれ変わり』。

 

 

 

 初代『B小町』センター『アイ』。

 

 

 

「あ、今は『星野アイ』だからよろしくね~。新生『B小町』のアドバイザーをやらせてもらってます!」

「ママみたいなアイドルになれるように、頑張ってます!」

 

 きっとルビーちゃんも、文字通りトップアイドルになる()()()に生まれて……。

 

(……あれ? そういえばルビーちゃんって今十五歳って言ってたよな)

 

 確か『とある事件』に巻き込まれてアイさんがアイドルを引退したのが十一年前で、ついでに引退したのは二十歳になる前……。

 

(引退時には既にルビーちゃん産んでたってことか)

 

 驚きのリアクションの薄さである。ただアイさんの一代前のトップアイドル様が引退後とはいえ既に十六歳で出産しているし、何より我が家のリトルマミーも十代で兄貴を産んでいるのだから、取り立てて驚くようなことでもないと思ってしまった。

 

 我ながら何か常識が歪んでいるような気がしないでもない。

 

 

 

 

 

 

「へー『B小町』のルビーちゃん、お母さんがアイドルやってたんだ!」

「うん、凄く綺麗な人だったよ」

「うわ~誰だろ~気になる~調べれば出てくるかな~?」

「……『星野』で検索しても、それっぽいアイドルは出てこないみたい」

 

 先日の出来事を事務所でめぐるちゃんと灯織ちゃんに話す。

 

「私も気になって調べてみたんだけど……」

「誰だろー? 元祖『B小町』の中にいるのかなー?」

「でも『B小町』が解散したのは十二年前だし、計算が合わないと思う……」

 

(……みんな、色々な想いでアイドル、やってるんだなぁ)

 

 『ライトニングスターズ』のみんなも、『B小町』のみんなも、それぞれがそれぞれの想いを胸にアイドルとして活動し、そして『W.I.N.G』に向けて頑張っている。

 

 私たちの事務所の仲間たちだけじゃない。色々な事務所のアイドルが夢に向かって頑張っているんだ。

 

「私たちも頑張ろうね! めぐるちゃん! 灯織ちゃん!」

「もっちろん!」

「私たち三人なら、きっと大丈夫」

 

 

 

 

 

 

 ちなみに。

 

 

 

「スクールアイドルランキングを上げることに難儀しているようだね、お嬢さん方」

「えっと……ど、どなたですか?」

「なぁんであんたがここにいるのよおおおぉぉぉ!?」

「リョ、リョーさん!?」

 

 

 

 ついに謎の遊び人と音ノ木坂学園スクールアイドルの面々が顔を合わせることになったのだが。

 

 それはまた、別のお話。

 

 

 

 

 

 

「悪い、遅れた」

「別に。……今更だけど、いいの?」

「何がだ」

「こうして怪しげに女と密会してて、彼女さんは怒らないの?」

「アイツは俺がやろうとしてること全部知ってるから、今更怒ったりしないさ」

「うわ、最低ね」

「ならこの話から降りるか? ランスター」

「それこそ最低な提案ね、星野」

 

 

 

「私たちは、復讐を成し遂げるためにここにいる」

 

 

 




・ぴえヨン
推しの子に登場するヒヨコのマスクを被ったブーメランパンツ一丁のマッチョ。
見た目は変態なのに作中きっての常識人枠っていうね……。

・有馬かな
推しの子に登場する主要人物。『B小町』のメンバーでシャニマスにも登場。
Lesson368にひっそり登場していましたがようやく合流です。
多分桃子パイセンと知り合いだけど仲悪いと思う。

・15プロの美魔女社長
推しの子最推しキャラなんすよ……。

・MEMちょ
推しの子に登場する主要事物。『B小町』のメンバーでシャニマスにも登場。
人気動画配信者として知名度がある。多分あきらちゃんや絵理ちゃんも知ってる。
特に安部菜々ちゃんと仲が良いらしい。きっと二人ともJKだからだな!

・初代『B小町』センター『アイ』
推しの子における最重要人物。
今作では『日高舞』『周藤良太郎』と同格の怪物枠。
本家とは違い一命を取り留め、現在は陰ながら娘のアイドル活動を支援している。

・(引退時には既にルビーちゃん産んでたってことか)
良太郎@驚かない。
確かにアイドル現役で産んでることは驚くべきことだけど、出産年齢に関しては身近に前例がいすぎた。

・「でも『B小町』が解散したのは十二年前だし、計算が合わないと思う……」
真実に辿り着くには、イルミネは純粋すぎた……。

・ちなみに。
決して日の目を見ないところでもトップアイドル暴走中。

・ランスター
・星野
黒い『星』を冠する者たち。



 大分不穏な空気になりましたが、当初触れたように今回はライバル登場回です。『W.I.N.G』では事務所内だけではなく他事務所のアイドルとも戦っていただきます。

 なお未だに登場していないライバルユニットがいる模様……。

 次回はどうしようかな……。
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