アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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今回から二次選考回!


Lesson493 開催!W.I.N.Gフェス!

 

 

 

 その日は、何でもない平日だった。学生は学校へ、社会人は会社へ、そしてアイドルたちは現場へ。普段通りの生活を送るだけの何でもない日常だった。

 

 しかし、一部の人間にとってはとても意味のある一日だった。

 

 それぞれの日常を過ごしながら、ただ静かにその時が来るのを待つ。

 

 約束のときは十二時。

 

 そして、やがてその時はやって来る。

 

 

 

 『W.I.N.G』第一次選考結果発表

 

 

 

「っ!」

「やった!」

「通った! 私たち通ったよ!」

 

 その日、華が咲くような笑顔で仲間たちと喜び合うアイドルがいた。

 

 

 

「………………」

「ダメだったかぁ……」

「そんな……」

 

 その日、悔しさに涙を流すアイドルがいた。

 

 

 

 けれどその日は誰にでも平等な、なんでもない一日であった。

 

 

 

 

 

 

「というわけで、無事に一次選考通りましたっ」

「おめでとー!」

 

 いつものようにお昼休みに机を迎え合わせにした真乃ちゃんからの笑顔の報告に、私も思わず笑顔になりながら小さく拍手をする。私たちがアイドルだということを知りつつ、それでいて適切な距離感を保ってくれている周りのクラスメイトたちからも「おめでとー!」「私も投票したよー!」という祝福の言葉が投げかけられ、真乃ちゃんはテレテレと笑っていた。

 

「283プロは出場ユニット全員通過したんだよね」

「うん。310プロも、スバルちゃんたち通ったんだよね?」

「うん、さっきからスバルが凄い勢いでグループにメッセージを連投してる」

 

 流石にキリがなかったので通知をオフにしているが、それだけ嬉しかったということだけは伝わってくる。きっと今頃ティアナ辺りに怒られているだろうけれど。

 

「でも本当に凄いよ、真乃ちゃん。だってデビューしてまだ一ヶ月も経ってないんだよ」

「偶然……とまでは言わないけど、良い縁に恵まれたんじゃないかなって思ってるよ」

 

 投票数こそ公表されていないものの、出場アイドルのプロフィールは確認することが出来る。そんな出場アイドルのプロフィールをまとめた有志の情報によると、真乃ちゃんたち『イルミネーションスターズ』が一番最近デビューしたアイドルという話だった。

 

「逆にそれが、他にない宣伝材料になったのかもね」

 

 怪我の功名……いや、人間万事塞翁が馬と言った方が聞こえはいいかもしれない。

 

「それで、()()()()()()()()()()なんだよね?」

「うん、一次選考参加時にあらかじめ知らされてはいたけど……」

 

 『W.I.N.G』の二次選考。それは今回の一次選考を無事に通過した約三十組のアイドルユニットたちによる合同フェスという名目で行われる()()()()()()()()()。その名も『W.I.N.Gフェス』である。

 

 果たしてこんな無茶なスケジュールを誰が組んだというのか。一瞬良太郎さんの顔が脳裏を過ったが、流石にアイドル側の彼がわざわざそんなことしないはずだ。きっと会場やスポンサーや放送権や、そういった利権が関係しているのだろう。

 

「だから浮かれてばっかりじゃいられないから、今日も授業後はスタジオでレッスン」

 

 フンスと意気込む真乃ちゃん。

 

「本当は私も真乃ちゃんやスバルたちを応援に行きたかったんだけどなぁ~……」

 

 開催日は日曜日だが、その日は当然のようにお仕事だった。

 

 項垂れる私に周りのクラスメイトたちから「私は行くよ~」「勿論私も~」「高町さんの代わりに応援してくるからね~」という心暖かい言葉が。……なんとなく煽りに聞こえてしまった自分がなんか嫌だ。

 

「高町さんは大人しく録画されたものを後で見るといいよ!」

「やっぱり煽りじゃない!?」

 

 クラスメイトと戯れつつ、そういえば同じような理由で荒れそうなトップアイドルがいるなぁと、先ほど思い浮かべた顔がもう一度脳裏に過るのであった。

 

 

 

 

 

 

『えっ!? リョー君、フェス参加するの!?』

『新人アイドルでもないのに!?』

「出場者側なわけなかろうが」

 

 我らが結華ちゃんの第一次選考突破を勝手にお祝いするみのりさんと亜利沙ちゃんとのグループ通話中、二次選考の話題になって俺も参加することを伝えたところこんなリアクションが返って来た。

 

「なんで二人揃って俺の立場を忘れてるのさ」

『リョー君の立場というと……』

『……狂言回し?』

「せめて主人公って言ってほしい」

 

 そういうお空の上(メタ視点)からの話じゃなくて。

 

「『W.I.N.G』の運営側として参加するに決まってるでしょうが」

『そういえば審査委員長だったね』

『いよいよ本格的に審査のお仕事というわけですか』

「そういうこと」

 

 今までは殆どお飾りみたいなものだったが、ようやく今回から本格的に審査委員長として彼女たちを見なければいけない。

 

 例え彼女たちが涙を流す結果になろうとも……俺は私情を挟むことなく、公平な視点で見なければならないのだ。

 

『……そう考えると、ちょっとだけ辛いね』

『でもリョーさんならば、舞台裏から新人アイドルちゃんたちをしっかりと見守ってくれるという信頼感があります』

『そうだね。リョー君、俺が言えた立場じゃないけど、みんなをよろしくね』

「え? 全然客席側から応援するつもりだけど?」

『『楽しむ気満々だー!?』』

 

 審査委員長が楽しんで何が悪いというのだろうか。

 

『仕事の時間中に客席側からステージを見てる時点で公私混同じゃないの!?』

「失敬な。アイドルのステージをしっかりと講評するために必要なことです。いやーアイドルのステージを仕事目線で見ないといけないの辛いなー大変だなー」

『そう言いつつこの人絶対しっかりとバルログ持ちしますよ……』

 

 そんな会話をしていると、グループ通話に新たな参加者が。

 

『やっほー! りあむちゃんが来てやったぞー!』

「――だから俺はそのとき思ったんだよ、りあむちゃんを甘やかしすぎてるって」

『そうは言ってもリョー君、しっかりと飴と鞭を使い分ける方針って決めただろ?』

『りあむちゃんは少し凹んでるときが一番可愛いのは分かりますが……』

『三人揃ってなんの話してたんだよぉ!?』

 

 スマホの画面の向こうからピギャーというりあむちゃんの鳴き声が聞こえてくる。

 

「おやりあむちゃん、こんにちは」

『ちょっと待っててね、すぐに終わるから』

『安心してください、悪いようにはしません』

『せめて当事者を置いてけぼりにしない配慮が欲しいよぉ!』

 

 なんていつものやり取りを一通り終えてから、話題を『W.I.N.G』二次選考に戻す。

 

『えー!? リョーさんだけずっこい! ぼくも参加したかったー! 後輩の応援に行きたかったー!』

 

 当然のようにりあむちゃんはブーブーと不満を漏らす。

 

「そうだった、遅くなったけど『ニューウェーブ』の三人、一次選考突破おめでとう」

『おめでとう。SNS見たけど、三人とも喜んでたみたいだね』

 

 346プロからも数組の新人アイドルユニットが参加したが、今回一次選考を突破できたのはシンデレラプロジェクト()()()の『ニューウェーブ』だけだった。

 

『うんうん、ぼくも自分のことのように鼻が高いよ』

「いや後輩の手柄を自分のことのように自慢するのはちょっと」

『あと喜ぶならともかく鼻が高くなるのはダメだと思うよ』

『ピノキオですか?』

『げふっ』

 

 こういう誤用とかをするから、りあむちゃんのSNSは簡単に炎上するのだろう。

 

『そ、それはそうと、今回のグループ通話の主役がまだ来ないね?』

『そろそろ参加出来そうってメッセージは来てたけど』

『まぁ通話ですから、落ち着いてからじゃないと出来ませんよね』

「いや寧ろ落ち着きながら通話するという手段もあるよ。例えばお風呂とか」

『婚約者持ちが何か言ってますよ』

『でも彼女さんも「それでこそりょーくん」って言ってるぐらいだしなぁ』

『えっ、みのりさん、リョーさんの婚約者会ったことあるの!?』

「『『あっ』』」

 

 そういえばりあむちゃんには俺の正体を隠している都合上『婚約者がいる』ということは伝えていても、りんのことは伝えられていないんだった。

 

『えーそっちもズルい! どんな人!? とりあえずおっぱいがおっきいって確証だけはあるんだけど、普通に気になる!』

「なんでそんな確証があるんだよ」

『胸に手を当てて考えたらいかがでしょうか』

「誰の?」

『ご自身の!』

『亜利沙ちゃん、これに関して言えば隙を見せた君が悪いと思うよ』

 

 そんな会話をしている内にグループ通話に新たな参加者(ニューチャレンジャー)が。

 

『みんなゴメーン遅くなっちゃった!』

「『『『結華ちゃん、一次選考突破おめでとー!』』』」

「うわビックリした!? でもありがとー! 凄く嬉しい!」

 

 今回のグループ通話の主役、『W.I.N.G』一次選考を突破した結華ちゃんは、顔は見えずとも満面の笑みだと確信出来るほど弾んだ声だった。

 

『でもまぁ別に!? ぼくは全然突破するだろうなって確信してたけどね!?』

「それを言っちゃうんなら俺だって余裕で突破するって思ってたし?」

『俺も思ってたし?』

『なんだったら二次選考も既に突破するって思ってますし?』

『急に謎のマウント取り合うの止めてね?』

 

 そのままりあむちゃんのときと同じ流れで「俺も二次選考を直接観に行く」という旨を伝えたところ、結華ちゃんは『いやそりゃそうでしょ……え、あ、そういうこと!?』と俺の言いたいことを理解してくれた。

 

『私は出演する側だからズルいとかそういうことは言えないんだけど……いややっぱりズルいな。ちゃんと仕事してよ?』

「するする」

『ん? どーゆーこと?』

「りあむちゃん、それを知るためにはまず前金として……」

『今ぼく堂々と特殊詐欺にかけられようとしてる!?』

 

 こういうりあみちゃんへの誤魔化し方は既に全員手慣れたものである。

 

『あー、でもリョーさん参加するなら、一応伝えておこうかなー?』

「ん?」

 

 結華ちゃんからの意味深な発言に首を傾げる。

 

『合同ライブのときに仲良くなった子がいるって話、覚えてる?』

「うん、ナンパされてたところを助けたんだったよね?」

『そうそう、その子その子』

 

 確か前に集会メンバーに会わせてみたいって話はしてたけど……。

 

 

 

『今回のライブに一人で参加するらしいし、リョーさん一足先に会ってみたら?』

 

 

 




・デビューしてまだ一ヶ月も経ってない
アニメでも大体こんな感じだった気がする。

・二次選考の開催が来週
夏ぐらいまでに本選を終わらせたくてぇ……(作者都合)

・『ニューウェーブ』
アイドルマスターシンデレラガールズに登場する信号機タイプの三人組ユニット。
感想『未登場のアイドルやユニットを、今回デビューしたことにしても良かったのでは』
作者『その手があったかぁ~!!!』
という経緯での登場となります。

・「ナンパされてたところを助けたんだったよね?」
Lesson398参照。



 一次選考終了と同時に即始まる二次選考。アイ転では合同ライブ形式の公開オーディションとなります。つまりここで最後のライバルユニット登場ということです。

 あとこれが一番重要なのですが……ついにあの子の本格参戦回でもあります!

 気合入れて書いてくぞ!
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