アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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二話も使ってまだライブが始まらない……。


Lesson494 開催!W.I.N.Gフェス! 2

 

 

 

 六月某日。梅雨入り前の晴れた空の下、私たち283プロに所属する四つの新人アイドルグループが勢揃いしていた。

 

「いやあっつい! 陽ぃめっちゃ強かぁ!?」

「うふふ……太陽さん、とても元気ですね……」

「きりりん、意外と平気そう……って目ぇグルグルしてるよ!?」

「スマン! もうちょっと日陰に移動しようか!?」

 

 アイドルだけでも総勢十六人の大所帯のため、全員で入れる日陰を探すのにも一苦労。数名は日傘に頼ることになったものの、ようやく全員が直射日光を避けることが出来た。

 

「では改めて……ついにこの日がやって来たな」

 

 ワイシャツの袖を捲って少しでも涼を得ようとしているプロデューサーさんが、私たちを見渡しながらそう告げる。

 

「一次選考の結果発表からまだ二週間と経っていない。普通ならば準備不足でもおかしくない短期間でのライブ開催だが……『絶対に通る』と信じていた俺たちは今日のためにしっかりと準備をしてきた」

 

 『W.I.N.G』二次選考。公開オーディションライブ『W.I.N.Gフェス』。

 

「ただそれは、きっと一次選考を通り抜けてきたアイドルたちにとっては()()()()()()()()だ。俺たちだけが自慢出来るようなことじゃない。……なら、俺たちは俺たちの全力を発揮すればいい。ただそれだけの簡単な話だ」

 

 この太陽の下、駆け付けた大勢のファンの人たちと審査員の人たちの前で、私たちの全力を見せて()()()

 

「二次選考も! 絶対に! 全員で合格するぞ!」

『はいっ!』

 

 世間よりも一足早く、私たち新人アイドルたちの熱い夏が始まる。

 

 

 

「あっ! 真乃さん! めぐるさん! 灯織さん! こんにちは!」

「こ、こんにちは」

「……どうも」

 

「わー! スバル! キャロ! ティアナ!」

「お久しぶりです!」

「……ど、どうも」

 

 楽屋として用意されたテントに移動する途中、310プロの三人に声をかけられた。満面の笑みでブンブンと手を振り合うめぐるちゃんとスバルちゃんが、なんだか仲良しの大型犬が尻尾を振り合っている姿に見えてしまって、思わずクスリと笑ってしまった。

 

「聞きましたか!? 今日のライブ、良太郎さんも観に来るそうですよ!」

「えー!? ホント!? ってことは何処かで会えるのかな!?」

 

 そういえばここにいる中で唯一良太郎さんに会ったことがないのは、めぐるちゃんだけだった。日本が世界に誇るトップアイドルなのだから、普通はそう簡単に会えるようなものじゃないとは思うのだけれど……なのはちゃん曰く『ビックリするぐらいいきなり湧いて出てくる』とのことらしいので、本当にもしかしたら会えるかもしれない。

 

「盛り上がってるところ悪いんだけど……多分難しいと思うよ~」

 

 しかし、そんな私たちの会話を聞いていたらしい結華さんが苦笑しながら小さく手を挙げた。結華さんはアイドルになる以前からプライベートで良太郎さんと仲が良いらしいので、何か知っているのだろう。

 

「公式発表は無いけど本人が秘密にしてなかったから言っちゃうんだけど、良太郎さん今日は観客席側で私たちのこと観るつもりなんだって」

『えーっ!?』

 

 全員から驚きの声が上がる。あの『周藤良太郎』が観客席に紛れ込んでいるという事実に驚かないアイドルはいないだろう。

 

「……あっ。でもそういえば去年の合同ライブのときも、実は開演前に『周藤良太郎』が客席を歩き回ってたってSNSで言ってたっけ」

 

 頬に人差し指を当てながら甘奈ちゃんがそんなことを思い出していた。

 

 それは去年の暮れに行われた八事務合同ライブ後に更新された良太郎さんのSNSによって起こった小さな騒動と言っていい出来事だった。

 

『実は開演前の観客席に変装した俺がいたことに、果たして何人の人が気付けたかな?』

 

 その投稿に、一時期SNSが阿鼻叫喚していた。様々な人が『えっ!? まさかあのとき話しかけてきた人、良太郎君だった!?』『うわ絶対あの人だ声かけりゃよかった』『いやいやそんなわけ……』と大盛り上がり。後日発売されるブルーレイにそのときのことが収録されているらしいので、私を含めて様々な人が真相が明かされることを心待ちにしている。

 

 閑話休題。

 

「うちは現地におらんかったから分からんけど、普通『周藤良太郎』がおったら気付かんと?」

「それがこがたん、あの人の変装はマジで魔法か忍術みたいに気付けなくなるんだって」

「そうだね。慣れている私たちですら、気を抜くと見失いそうになるから」

 

 結華さんと同じようにアイドルにある以前からの知り合いである咲耶さんにもそんなことを言われるなんて、一体どんなに凄い変装だというのだろうか。

 

(そういえば、私も初めて会ったときの良太郎さんも変装してたっけ……)

 

 変装自体は赤い眼鏡をかけるだけのとてもシンプルなものだった。しかしあれだけ至近距離にいて会話をして目も合わせて、さらに「スドウリョウタロウです」と自己紹介されても尚『周藤良太郎』だとしっかりと認識することが出来なかったことを思い出した。

 

 そんな人が、全員の意識がステージ上のアイドルに向くライブ会場の観客席にいて、果たして気付ける人がいるのだろうか。きっと既に彼と知り合って変装姿を知っている私でも気付かないかもしれない。

 

「ちなみに見つけるコツみたいなのもあるんだけど」

「え、何それ」

「何かバカみたいなことをやってる集団がいたら、その中心にいる可能性が高いよ」

「それは本当にお忍びでライブに来ているアイドルの探し方なの!?」

 

 

 

 

 

 

「「チ~ッチチッチ 〇っぱーい! ぼいんぼい~ん!」」

 

 なんか周りから何してんだコイツらみたいな目で見られているが、これはイタリアで大人気の映画スターの代表曲の日本語訳なのである。しっかりと往来の邪魔にならないようにしているし、声の大きさも抑えている。何も恥ずべきことではない。

 

「いやぁ~! まさかアイドルの現場で不在が多かったリョーさん氏に久しぶりにお会いすることが出来るとは思わなかったでござるよ~!」

「色々とリアルが忙しくて。こちらこそ黒髭氏にお会い出来るとは思いませんでした」

 

 やたらとガタイが良い強面の髭面という初見では近寄り難い見た目をしているものの、ノリが良くて話も分かるオタク仲間との遭遇に若干テンションが上がっている俺なのであった。

 

 というわけで、今日は二次選考『W.I.N.Gフェス』の当日。

 

 先日みのりさんたちに宣言したように、今日の俺は審査委員長として観客席側からアイドルたちのステージを評価するお仕事である。アイドルのステージを見ながらお金も貰えるなんて素晴らしいお仕事だ。

 

「最近はみのり氏がアイドルオタクから本物のアイドルへとジョブチェンジしてしまったが故、このままリョーさん氏もアイドルなってしまうのではないかとちょっと冷や冷やしたものですぞ」

「いやぁ俺なんかがアイドルなんてなれませんよ。俺にとってアイドルとは観客席側から見守り応援するものですから」

「……まぁ、そういうことにしておきましょうかね」

 

 こんな海賊みたいな見た目をしている癖にやたらと鋭いので、なんとなくこの人には俺の正体がバレているような気がしてくる。それでも周りに吹聴するような性格ではないのでそれほど心配はしていない。

 

「それで今日お一人ならば、今回はこっちに合流するというのはいかがですかな? この後バーソロミューやおっきーと待ち合わせしてるでござるが」

「あぁいえ、実はこの後待ち合わせをしていまして」

 

 先日の通話で結華ちゃんから『会ってみたら?』と提案された、我らが集会の新メンバー候補の女性。俺自身興味があったので、結華ちゃん経由で連絡を取って本当に今日会うことになった。その待ち合わせまで時間があったので、こうして偶然遭遇した黒髭氏と談笑をしていたわけである。

 

「……また美少女ですかな?」

「またってどういう意味ですか」

「分かっておりますぞ~リョーさん氏と仲が良かった松田氏と三峰氏が共に美少女でさらにアイドルになってしまった故、その筋ではそれなりに噂になってますぞ~」

「なんてこった」

 

 いや確かに集会メンバーが全員アイドルになってしまったから、その噂を否定するのがなかなか難しい。

 

「ところで今挙げた人物の中にりあむちゃんの名前が無かったようですけど」

「拙者、夢見氏とは冷戦中故」

「何があったし」

 

 多分お互いがお互いの地雷を踏みまくったんだろうなぁ。この二人は特にお気持ちが強いタイプのオタクだから。

 

「あのデカパイバカピンクはどうでもよいでござる。拙者は今新たな美少女の気配が気になって仕方がないでござる」

「とは言ってもなぁ」

 

 実は結華ちゃんから特徴は聞いているものの、まだ写真とかそういう本人を特定するような情報は何も聞いていない。とりあえず結華ちゃんが『目ん玉飛び出るぐらい可愛い』という古典的な表現をするほどの美少女らしいのだが。

 

「どれほどの美少女だったか、また後日しっかりと聞かせてもらいますぞ!」

「そこで『是非拙者もお近づきに』って言わないところが黒髭氏の良いところですよね」

 

 強面髭面大男と別れ、俺も移動することにする。そろそろ約束の時間である。

 

「えっと確か、入場ゲート前広場のこの辺りらしいけど……」

 

 結華ちゃんからもたらされた情報はただ一つ。曰く『リョーさんが絶対にこの子だって思う子に声かけてみて。絶対にその子だから』らしい。なんというか随分と挑発的というか、よほど自分の感性に絶対の自信を持っているらしい。

 

 もしやりんを超えるほどの大乳をお持ちの子なのでは。なんて期待をしつつ周囲を見渡すこと僅か十秒。

 

「……なるほど」

 

 黒い帽子。黒いマスク。黒いアームカバーに黒い日傘。徹底的な日焼け対策をしつつ、ピンクを基調とした地雷系ファッションに身を包んだ少女がそこにいた。

 

 なるほど俺の負けだ結華ちゃん。

 

 俺もこの子なら、一目で『間違いない』って思うわ。

 

 




・「陽ぃめっちゃ強かぁ!?」
最近また寒暖差が激しくてぇ……。

・「「チ~ッチチッチ 〇っぱーい! ぼいんぼい~ん!」」
多分作品以上に有名になってしまったのではないかと思われる珍曲。

・黒髭
・バーソロミュー
・おっきー
FGOから参戦。多分この世界では全員普通の人。



 なんかアイマス外のキャラが喋ってた時間の方が長い気がするけど気にしない。

 次回! ついに! 本編合流!
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