アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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やっぱり二人目はこの子でしょう。


番外編101 もし○○と兄妹だったら 2

 

 

 

 それは、あり得るかもしれない可能性の話。

 

 

 

 その出来事のきっかけは些細な偶然だった。

 

「……あれ? ねーねー真美」

「ん? どったの亜美」

「あそこ歩いてるのって千早お姉ちゃんじゃない?」

「ほえ? ……ホントだ、千早お姉ちゃんだ」

「……おやおや~? 私の目には、男の人と一緒に歩いてるように見えますな~?」

「奇遇ですな亜美隊員、私の目にもそのように映っておりますな~」

「しかも腕なんか組んじゃって、とても仲良さげですな~」

「これは後で問い詰めるために、写真を撮影しておく必要がありそうですな~」

「って、あれれ?」

「ん? どったの亜美」

「え、いや、えっと……あれってさ」

「うん」

「良太郎さんじゃね?」

「……は???」

 

 

 

 

 

 

「如月千早はいるかぁぁぁ!?」

 

「うわビックリしたぁ!?」

「真美……?」

「ふわぁ……大声出さないでなの……」

 

 その日、事務所で千早ちゃんと次のイベントの打ち合わせをしていると、何故か勢いよく真美が飛び込んできた。よっぽどのことが無い限りは決して目を覚ますことが無い美希が思わず目を覚ますほどの騒々しさだった。

 

 鼻息荒くズンズンと近づいてくる真美。その視線は千早ちゃんに固定されており、先ほどの発言も合わせてどうやら怒っている様子である。

 

「ど、どうかしたの?」

「どうかしたもなにもなーい!」

 

 真美はスマホを取り出したかと思うと「これを見よ!」と千早ちゃんの鼻先に画面を突きつけた。千早ちゃんの隣に座る私もその画面をのぞき込むと、そこには男性と腕を組んで歩く千早ちゃんの姿が映っていて……。

 

「って、これ良太郎さん?」

 

 千早ちゃんと腕を組んで歩いている男性は、誰もが知るトップアイドルの周藤良太郎さん。最近とある縁で親しくなったものの……これは流石にちょっと親しすぎる距離感じゃないかなとは思ってしまった。

 

「これ昨日撮った写真! しゃくめーがあるなら、キッチリと聞かせてもらうよ! 千早お姉ちゃん!」

「こ、これは……その……」

 

 良太郎さんへの好意を隠していない真美に詰め寄られ、千早ちゃんがタジタジになっている。私も千早ちゃんと良太郎さんの関係性には大変興味があるのだけれど……。

 

「あふぅ」

 

 それ以上に、真美と同じかそれ以上に良太郎さんへ好意を寄せているはずの美希が無反応なことも気になってしまった。

 

「えっと……美希は気にならないの? 千早ちゃんが良太郎さんと一緒に歩いてたこと」

「うーん……あんまり」

 

 お気に入りのクッションを抱いたまま、美希は「あふぅ」とあくびをした。

 

「でも美希は良太郎さんのこと……」

「好きだよ? でも、りょーたろーさんと千早さんは絶対にそういう関係にはならないっていう確信があるの」

 

 でも千早ちゃんはこんなにも可愛いのだから良太郎さんだって……と思いつつ、少しだけ視線を下げる。

 

「……あ、そういう」

「ね?」

「春香、美希、歯ぁ食いしばって?」

 

 ゴメン千早ちゃん、グーパンチぐらいは覚悟していたけど水筒はちょっと。

 

「話を逸らすなー! 尋問中だぞー!」

 

 ウガーッと真美が両手を挙げながら雄たけびを上げた。こちらは美希と違って余裕が無さそうである。

 

「正直に答えて! 千早お姉ちゃんはりょーにぃのことが好きなの!?」

「そ、それは……!」

 

 本当に何の関係もなかったならば、普段の千早ちゃんは「好きとか嫌いとかそういう関係じゃないわよ」と苦笑して流していたところだろう。

 

 しかし真美に詰め寄られた千早ちゃんは顔を真っ赤にして後退った。これは誰がどう見ても『そういうこと』なんだと確信せざるを得なかった。

 

「で、でもこれだけは信じて欲しいの! 三人が思っているような関係じゃないの!」

「じゃーどーゆー関係だってんだよー!?」

「そ、それは……」

 

 真っ赤な顔の千早ちゃんは両手で口元を覆い隠し、目は涙目になって泳ぎっぱなし。

 

「りょ、良太郎さんは……その、私の……」

 

 普段クールな千早ちゃんの滅茶苦茶可愛い姿を見れただけで満足していた私だったが。

 

 

 

「お兄ちゃんなの」

 

 

 

「「「お兄ちゃん!?」」」

 

 

 

 千早ちゃんの口から発せられた衝撃的な言葉に、自分でも信じられないぐらい大きな声が出た。

 

 

 

 

 

 

「え? うん、妹」

 

 テレビ局の楽屋で一人煎餅を齧りながら台本を読んでいると、いきなり真美ちゃんと美希ちゃんを筆頭に千早と春香ちゃんを含めた四人が突撃してきた。

 

 一体何事かと思ったら、どうやら俺と千早の関係を知って事実確認のためにわざわざ来たらしい。

 

「まぁ正確には実の妹じゃなくて従妹だけどな」

「い、従妹?」

「私の父親と良太郎さんの父親が兄弟なの」

「まさか今の今まで言ってなかったとは思わなかったぞ」

「言い出すタイミングが無くて……」

「じゃ、じゃあこの写真は……」

 

 真美ちゃんが見せてくれた写真には俺と腕を組んで歩く千早が映っていた。

 

「……ねぇ、真美、今気付いたんだけど」

「え?」

「ここ、千早ちゃんと反対側、見切れてるけど良太郎さんの隣にいるのって……」

「……もしかして、優君?」

 

 どうやら先日三人で買い物と食事に行ったときに目撃されていたようである。昔からよく()()で遊んでいる。

 

「だから良太郎さん、基本的に年下の女の子にはちゃん付けで呼ぶのに、千早ちゃんだけ最初から呼び捨てだったんだ……」

 

 春香ちゃん、なかなか良い着眼点である。

 

「ビックリしたんだぞ、昔馴染のりっちゃんに会いに765プロの事務所に行ったら千早がいたんだから」

 

 まさか歌手志望の千早がアイドル事務所に入るなんて思いもしなかった。ビックリしたと同時に教えてくれなかったことがちょっとだけ悲しかった。

 

「……歌うのは勿論好きだけど、それと同じぐらい良太郎さんみたいなアイドルにもなってみたかったから」

 

 嬉しいことを言ってくれる妹である。

 

 そう考えると千早が俺との関係性を他の子たちに公表しなかったのは、そういう色眼鏡で見られることを嫌がったのだろう。関係者に知られでもしたら、俺との関係ばかりが騒ぎ立てられてしまって歌を聞いてもらえなくなる可能性を危惧したのだろう。

 

「それはそうと、知られた以上普段通り『お兄ちゃん』って呼んでくれていいんだぞ?」

「へ~?」

「千早お姉ちゃんってば~?」

「普段は『お兄ちゃん』って呼んでるんだ~?」

「こうなるから知られたくなかったの!」

 

 そう叫びながら千早は真っ赤になった顔を両手で覆い隠した。

 

「千早さん、これからはミキのことも『美希お姉ちゃん』って呼んでいいの」

「なんで!?」

「千早お姉ちゃん! 真美も『真美お姉ちゃん』って呼んで!」

「理由どころか年上なのか年下なのかも分からない!」

 

 人の楽屋で随分と姦しいことである。

 

 折角だからお茶でも飲みながら千早の可愛い昔の話でもしてやるかと、俺は楽屋に備え付けられたポットでお茶の準備をするのだった。

 

 

 

 

 

 

「もう、お兄ちゃんったら、昔のことまでペラペラ話すんだから……」

「悪い悪い」

 

 ブスッとむくれる千早に「結局お兄ちゃん呼びになってるぞ」ということを指摘したらまた怒られるだろうから黙っておく。

 

 本日の仕事が終わり、たまたまタイミングが合ったので俺は助手席に千早を乗せて彼女を家まで送ることになった。何故か真美ちゃんと美希ちゃんも乗りたがったが、事務所でやることがあると春香ちゃんによって引き摺られていった。まさか春香ちゃんにあれほどまでのパワーがあるとは……。

 

「……ねぇ、お兄ちゃん」

「ん?」

「今日ね、怖い夢を見たの」

「おいおい一緒に寝たいとか子どもじゃないんだから」

「話を飛躍させるにしてもせめて内容を聞いてからにしてくれない!?」

 

 優と三人で川の字になって寝たこともあったなぁ……なんて昔のことに思いを馳せつつ、千早に話の続きを促す。

 

「どんな夢だ?」

「優が子どもの頃に事故に逢っていなくなるの」

「それは……確かに怖い夢だな」

「それだけじゃなくて、夢の中では何故かお兄ちゃんもいなくて、事故をきっかけにお父さんとお母さんも離婚してしまうの」

「……………」

「それでも私は必死に歌うの。歌手じゃなくてアイドルになって、そして春香たちと一緒にトップアイドルになる……そんな夢」

 

 それは、確かに想像するだけでも怖い夢だ。俺も千早や優がいない世界なんて考えたくもない。

 

「不思議な目覚めだったわ。お兄ちゃんみたいなアイドルになれたことは嬉しかった。でもそこにはお兄ちゃんも優もいない。嬉しいのに悲しい。悲しいのに嬉しい。泣けばいいのか喜べばいいのか分からなくて、ベッドの上で固まっちゃった」

「……なるほどね」

「? 何がなるほどなの?」

 

「今朝、優が『姉さんが変な顔で呆けてる』って写真を送ってきてな」

「優なにしてるの!? え、ウソ、撮られてたの!?」

 

 基本的には真面目ないい子ではあるんだけど、たまに覗かせる悪戯っ子な一面は間違いなく父方の血であると確信せざるを得なかった。

 

「真美ちゃんといい優といい、もうちょっとパパラッチ意識して気を引き締めた方がいいんじゃないか?」

「片方はお兄ちゃんも一緒になって撮られてるし、もう片方に至っては身内の犯行じゃない……!」

 

 今日の千早は顔を赤くしてばっかりだなぁと、ハンドルから片手を離して可愛らしい妹の頭を撫でる。

 

「安心しろ。夢は夢だ。俺はここにいる。家に帰れば優もいる」

「……うん」

「日本を代表する歌姫になった千早と一緒にステージに立つのが、今の俺の夢なんだから。まずはしっかりとアイドルを頑張れよ」

「分かってるわ、お兄ちゃん。日本一……いや」

 

 こちらを向いた千早の顔はまだ赤かったが、しかしその視線は強く真っ直ぐ俺に向けられていた。

 

 

 

「貴方の妹は、世界一の歌手になるんだから」

 

 

 




・周藤良太郎(兄)
如月姉弟と従兄弟だった世界線。
何かしらの因果が働いて三兄弟として仲良し。

・如月千早(妹)
優が生存しているため若干丸い世界線。
ちーちゃんは妹属性。異論は認めぬ。

・如月優(弟)
何かしらの因果が働いて生存している世界線。
公式設定がないので多分千早の三つ四つぐらい年下。

・「私の父親と良太郎さんの父親が兄弟なの」
当初は「良太郎父と千早母の間に良太郎が生まれ、離婚後~」っていう設定で考えてたけどこっちはこっちでややこしいので没。



 兄妹○○シリーズ第二弾はちーちゃん!

 大家族周藤さんち書いてた時にも思ったんだけど、妹してる千早が可愛いと思ったので書きました(満足)
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