アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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時間稼ぎの新シリーズで失礼します!


番外編102 もしもアイ転がこんなお話だったら

 

 

 

・もしも主人公がショタだったら 1

 

 

 

「ん……」

 

 懐かしい夢を見た。いや、流石に一年前を懐かしいと称するのは不適切だったかもしれない。それでもこの一年は()()()()()()()()()()()類を見ないほど激動の一年だったので、既に一年前のことが遥か昔のことのように思えてしまうのだ。

 

 俺の人生に今時のタイトルを付けるとすれば『表情が動かない謎の少年に転生したかと思ったら何故かトップアイドルになることが出来たんだけど、結局転生特典ってなんだったの?』といったところか。うーん、流行らなさそう。

 

 そんなわけで今世の俺こと『周藤良太郎』は、なんの因果か若干十歳という子どもの身でありながら無表情系トップアイドルとして、現在日本で大活躍中なのである。本当に何でこんなアイドルが流行ったのやら。

 

 さて、そんな俺が両親や兄に勧められてアイドルになったときの夢から目を覚ましたのだが。

 

 

 

 目の前には乳があった。

 

 視界の半分を埋め尽くすほど大きな乳……すなわち大乳があった。

 

 

 

 本当に凄い。天井が半分しか見えなかった。あとついでに鞄を枕にしてソファーで寝ていたはずなのに後頭部も柔らかい。どうやら誰かに膝枕されているようである。いや、誰かと言いつつなんとなく察してるんだけど。

 

「りんちゃん、来てたの?」

「あ、リョーくん起きたんだ」

 

 大乳の向こうから声が聞こえた。俺の予想通りの声だった。

 

 このまま身体を起こして大乳に顔から突撃したい欲求に駆られるもののグッと我慢する。そうして慎重に身体を捩りながら身体を起こし、ソファーに座ってしぱしぱする目を擦りながら「ありがとう」とお礼を言う。

 

「りんちゃんの膝枕、凄く寝心地良かった」

「いひひっ、またして欲しくなったらいつでも言ってね?」

 

 そんな嬉しいことを笑顔で言ってくれるりんちゃん。年上のお姉さんに対する感想としては間違っているのかもしれないが、今日も相変わらずとても可愛い。あと胸が凄くデカい。

 

 何故かやたらと俺のことを可愛がってくれているが、我ながらこんな無表情の男の何が良いのだろうかと思わないでもない。きっとこれが蓼食う虫も好き好きということなのだろう。

 

「それで、りんちゃんはどうしてここに?」

 

 ここはテレビ局の楽屋なので、知り合いが遊びに来てくれることは少なくなかった。しかしトップアイドルと称されるようになっても俺はまだまだ新人アイドルの身。来客、それもアイドルの先輩の訪問となれば兄貴が俺を起こすと思うのだけれど、何故かその兄貴の姿が何処にもいなかった。

 

「普通にリョーくんに会いに来ただけだよー? お兄さんからも『待ち人が来たみたいだし、ちょっと良太郎のこと頼みます』って言われちゃって。アタシ、もしかしてお兄さん公認だったりする!?」

 

 頬に手を当ててキャーキャー身を捩じらせるりんちゃんは可愛いなぁなんてことを考えつつ(はて?)と内心首を傾げる。

 

 確かに俺はひと眠りする直前に来客の予定を伝えている。伝えてはいるのだけれど。

 

 もしかして兄貴は『りんちゃんが来る』と聞き間違えたのかもしれない。実際は――。

 

 

 

「良太郎、遊びに来てあげたよ」

 

 ――俺は『凛姉ちゃんが来る』と言ったつもりだったのだけれど。

 

 

 

「「……………」」

 

 楽屋のドアを開けた状態の凛姉ちゃん。ソファーに座ったままのりんちゃん。

 

 何故か十秒ほどの沈黙が流れたのち、先に口火を切ったのは凛姉ちゃんだった。

 

「なんでアンタがここにいんのよ朝比奈ぁ」

「そっちこそ邪魔しないで欲しいんだけど渋谷ぁ」

 

「バチバチで草」

「え、えぇ……?」

「よくあの光景を見てそれだけの感想で済ませられるよね……」

「あ、卯月ちゃんと未央ちゃんもいらっしゃい」

 

 凛姉ちゃんの後ろからこそっとこちらへ入って来た彼女のユニットメンバー二人を歓迎する。

 

「あの二人、あれが始まると長いからとりあえずお茶でも淹れるね」

「りょつん、あれを止められるの多分君だけだと思うんだけど」

「女性のいざこざには絶対に首を突っ込むなって兄貴に言及されてて」

「女性関係のトラブルへの対応ばっちりですね……」

 

「いい加減人の弟にちょっかいかけるの止めなよ朝比奈ぁ」

「アンタこそそろそろ弟離れしなさいよ渋谷ぁ」

 

 多分同期のアイドル同士、息が合うんだろうなぁ。

 

 

 

 

 

 

・もしも主人公がショタだったら 2

 

 

 

「ピヨ子ぉぉぉ! タオルぅぅぅ! あとなんかあったかい飲み物ぉぉぉ!」

 

 

 

 それは事務所の外から聞こえてくる響の叫び声だった。若干涙声も混じっているような気がする。

 

 全く騒々しいったらありゃしないと溜息を吐きつつ小鳥さんに視線を向けると、彼女は困惑しつつもパタパタとロッカー室へと走っていった。

 

 やがてガンガンという階段を駆け上がる音に続いてバンッと勢いよく事務所のドアが開いた。

 

「律子! 助けて!」

「もっと静かにしなさい! 何!? 川にでも落ちたっていうの!?」

「うん!」

「……は?」

 

 大きく息を切らせて焦りの表情を浮かべる響。

 

 そしてそんな響の小脇に抱えられた一人のずぶ濡れの少年。

 

「……アンタなにやってんのぉ!?」

「説明は後ぉ!」

 

 

 

 響の説明と少年の補足をまとめると、河川敷を散歩していたところいぬ美が少年に飛びかかり、その拍子に少年ごと川に落っこちたとのこと。

 

「「本当にごめんなさい……!」」

 

 響と二人並んで少年に向かって頭を下げる。

 

「気にしないでください……っていうのは流石に無理でしょうけど、もう暖かい季節ですしこうしてシャワーもお貸ししてもらったので、俺からはこれ以上何も要求しません」

「熱くないですかー?」

「大丈夫でーす」

 

 ソファーに座る少年の濡れた髪を、当初何故か彼の顔を見て首を傾げていた小鳥さんにタオルで拭きながらドライヤーで乾かしてもらっている。

 

「ちなみにスマホとか財布とか、そういう貴重品は……?」

「全部鞄の中に入れてあって、咄嗟に放り投げたので無事です」

 

 ただコンクリートの上に落ちたので壊れていないかどうかの確認をしてもらう。

 

「えっと、スマホよし。財布よし。台本よし」

(台本……?)

 

 机の上に並べられた少年の荷物に、いけないと思いつつも視線が向いてしまった。そして私と同様に机の上を見ていた響がギョッと目を見開いた。

 

「……え、覆面ライダー!?」

「ちょ、響……!」

「あ、しまった」

 

 響が思わず口走ってしまったそれは、日曜日の朝に放送されている特撮ドラマのタイトルである。そんなドラマの台本が鞄の中から出てくるということは……。

 

「言いそびれてたんですけど、実は俺もアイドルでして」

「あ、アイドル?」

「そ、そんな無表情で……?」

 

 響が若干疑っているが、確かにこの事務所に着いてから少年は全く表情を動かさない。始めは緊張しているだけなのかとも思ったが、反応を見ている限りそういうわけではなさそうだった。

 

「……え? 無表情のアイドルって」

「あっ!? やっぱり!?」

 

 私の頭の中に何かが掠め、その答えが出る前に小鳥さんが叫んだ。

 

「もしかしなくても、今人気急上昇中のジュニアアイドル『周藤良太郎』君ぴよ!?」

 

 

 

 えええぇぇぇ!?!?!?

 

 

 

 今の弱小アイドル事務所の私たちでは逆立ちしても勝てそうにないビッグネームに、私と響を含め、何事かと聞き耳を立てていた事務所のアイドル全員が叫び声をあげるのだった。

 

 

 

 

 

 

・もしも主人公がショタだったら 3

 

 

 

「――とまぁ、そんな感じで俺と765プロの交流が始まったんだよね」

「響ちゃん……」

「ちゃ、ちゃんと謝ったし本当に悪かったって思ってるんだぞ!?」

 

 一年前の話をしたところ、風花ちゃんが響ちゃんに冷たい視線を送り、響ちゃんが慌てて首をブンブンと横に振った。

 

「俺もちゃんと許してるから、風花ちゃんも抑えて」

「良太郎君……」

「心配してくれてありがとう」

「っ、うん!」

 

 ところで何故俺は風花ちゃんの膝の上に座らされているのだろうか。我が家のリトルマミーの血をバッチリと受け継いでしまい早くも背が伸び悩んでいるものの、これでも十一歳の男の子である。風花ちゃんの素晴らしい大乳が背中にグニグニと当たっていて気が気でない。

 

(風花ちゃん、良太郎君の大ファンだとは公言してたけど……)

(まさか直接会ってあぁなるとは思わなかったわ……)

 

 このみちゃんと莉緒ちゃんは一体何をコソコソ話しているのだろう。

 

「そして今更なんだけど俺はいつまでここにいればいいの?」

「え、私のお膝の上、嫌だった?」

「そっちじゃなくて」

 

 何故だろう、風花ちゃんから凛姉ちゃんやりんちゃんと同じ雰囲気を感じる。

 

「一応俺、一般客としてシアター公演を観に来たつもりだったんだけど」

 

 まさかチケットを捥ぎってもらったところで拉致されるとは思わなかった。

 

「それに関しては、実は私たちも疑問だったのよ」

「疑問に思っていたにも関わらずこんなに放置されてたの?」

 

 じゃあそんなところで不思議なものを見るような目で見てないで助けて欲しい。いや風花ちゃんの大乳が背中に押し付けられている現状に不満があるわけじゃないんだけど。

 

「それで風花ちゃん、どうして良太郎君を連れ込んできたの?」

 

 そうしてこのみちゃんから問いかけられた疑問に対し、風花ちゃんは可愛らしくコテンと首を傾げた。

 

 

 

「こんな小さい子が一人で劇場に来たんだから、保護してあげるのは当然じゃない?」

 

 

 

「良太郎君逃げて!」

「ここは自分たちが抑えるんだぞ!」

「あぁ、そんなご無体な……待って良太郎君! お姉ちゃんを置いて行かないで!」

 

 相変わらず765プロは愉快なアイドルが大勢いるんだなぁって思った。

 

 

 

 

 

 

・もしも主人公がショタだったら 4

 

 

 

「……っていうことがあってさ」

「へぇ~……やっぱり良太郎君って、沢山のアイドルさんと仲良しなんだね!」

 

 そんなことを話しながら一緒に登校する果穂をチラリと横目で見る。

 

 ……いくら果穂が他の女子よりも高身長だからと言って、流石に頭一つ分違うのは男子としてちょっと思うところが無いとは言わない。

 

「……………」

「ん? なぁに?」

「いや、果穂は背が高くて羨ましいなって」

「そ、そうかな……」

「あぁ、手足が長くてステージ映えしそうだ。可愛いし、果穂がアイドルになったらさぞや人気が出るんだろうなって」

「……………」

 

 突然果穂が足を止めた。俺も立ち止まって振り返る。

 

「……あ、あたしって、可愛い?」

「ん? めちゃくちゃ可愛い」

 

「……そ、そっか」

 

 

 

(見まして! あの男子、小学生なのに臆面なく同級生に可愛いって言ってるわよ!?)

(あぁ~遠巻きに見ている他の男子生徒のなんとも言えない表情も合わせて白飯三杯ガツガツですわ~!)

 

 

 




・周藤良太郎(10)
もし良太郎が子どもで、他のアイドルが原作通りの年齢と同期関係だったらというIF。
そうです作者の趣味です!(おねショタ)

・『表情が動かない謎の少年に転生したかと思ったら何故かトップアイドルになることが出来たんだけど、結局転生特典ってなんだったの?』
うーんこれは良くて黄色バー。

・天井が半分しか見えなかった。
りんのサイズ感ならばもうちょっと見えないかもしれない。

・「バチバチで草」
恋愛感情察知能力がリセットされているためこんな反応。



 前書きでも言いましたが本編の時間稼ぎのため、脊髄反射的に短編を書いたらおねショタに辿り着きました。

 もうちょっと擦れそうだから多分続きます。

 次回こそは本編!
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