アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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凛ちゃんや杏が346プロの所属が決まってしまった。

しかし逆に考えるんだ。

『それ以外のキャラだったら全員何処に所属させようが構わないさ』と考えるんだ。

※現在デレマスキャラの所属事務所を検討中。


Lesson61 人の噂も…… 2

 

 

 

「各局とも、思った以上に食いつきがいいじゃないか」

 

「流石は『銀色の王女』といったところですね」

 

「しかしまだ生ぬるい。重要なのは次の一手だ。次の一手があれば確実に――」

 

 

 

 ――チェックメイトだ。

 

 

 

「……時に黒井社長、囲碁のルール分かってます? そういう風に碁石を並べるゲームじゃないですけど」

 

「それぐらい知っているに決まっているだろう!?」

 

 

 

 ――そんな会話が、やはりあったとか無かったとか。

 

 

 

 

 

 

「……最近、皆に見張られているような気がするのですが」

 

「「「「ギクッ」」」」

 

 貴音さんの言葉に、撮影の帰りに一緒に歩いていた私、千早ちゃん、響、真美の四人は思わず身を強張らせてしまう。

 

 というのも、貴音さんが言うように『見張られている気がする』のではなく、私達が実際に『見張っている』からである。

 

 

 

 事の発端は、先日から続く貴音さんのエルダーレコードへの移籍疑惑。本人やプロデューサーさんは揃って真っ向から移籍を否定してくれているが、貴音さんの言動や行動が少々怪しすぎる。もちろん、同じ事務所の仲間である貴音さんを信じたい。しかし、それでも不安になってしまうのだ。

 

どれもこれも、お姫ちんが謎すぎるのがいけないんだよ! とは真美の言葉。

 

 確かに私達は貴音さんのプライベートを知らないし、本人も語ろうとしない。深く詮索するつもりはないものの、あまりにひた隠しにされすぎると嫌な考えに至ってしまうのは道理である。

 

 噂のように、貴音さんが本当にエルダーレコードに移籍してしまうのではないのかと。

 

 そこで真美が提案したのが『貴音さんがエルダーレコードの社員と接触しないように極力一人にさせない』という、つまり普段の貴音さんを見張ろうという案だった。

 

 見張るという言い方をすると不穏当な感じがするものの、その場にいた全員がそれに賛同してしまった。きっと、みんなそれだけ貴音さんが何処かに行ってしまわないかと不安だったのだろう。

 

 それからというものの、帰り道や仕事現場の移動、休憩中も出来るだけ誰かしらが貴音さんの傍にいるようにし続けた。一人にしなければ移籍の話は出来まいという浅はかな考えではあったものの、それ以来移籍に関する新しい噂を聞かなくなったのできっと効果はあったのだと思う。

 

 

 

 しかし四六時中付きまとっていれば誰でも不穏に思う。それが人一倍勘の良い貴音さんならば当然のことだった。

 

「き、気のせいですよ、気のせい」

 

 あははと苦笑いをしながら否定するが、貴音さんはやや懐疑的な視線である。

 

 そんな時、何処からともなくお囃子が聞こえてきた。

 

「あ! 縁日やってるみたいですよ! 寄っていきませんか?」

 

 ふと前方を見てみると近くの神社で縁日が行われているようで、赤い提灯が鳥居に飾り付けられていた。

 

 果たして今日が何の日で何の縁日なのかは分からなかったが、これ幸いとばかりに話題をそちらに向ける。

 

「おー! 縁日だー! いいじゃん、寄ってこうよー!」

 

「行こう貴音!」

 

「あ……」

 

 私の話題逸らしに乗ってくれた、というよりは素で縁日に興味を惹かれた真美と響に手を引かれていく貴音さん。

 

「千早ちゃんも」

 

「……えぇ、そうね」

 

 その三人の後姿を追いかけるように、私と千早ちゃんも縁日が行われている境内へと足を踏み入れた。

 

 

 

 私達は境内に並んだ屋台を色々と見て回っていた。

 

 縁日にしては人が疎らだったのは、私達にとっては幸いだった。おかげで(当然軽く変装はしているが)誰にも私達がアイドルだということに気付く人はおらず、おかげでゆっくりと縁日の屋台を回ることが出来た。

 

 真美が射的で小さなぬいぐるみを取ろうと躍起になったり、響が金魚掬いで全部の金魚を掬ってしまうのではないかという勢いで金魚を掬っていたり(終わった後全部名残惜しそうにリリースしていた)、貴音さんがちょっと不思議な狐のお面を購入したり、私と千早ちゃんで一つの綿あめを分け合ったり。

 

 しかしアイドルと気付かれない、ということにもやや弊害があったようで。

 

「君たち可愛いねー。もしかしてアイドルとか?」

 

「い、いえ、そういうわけじゃ……」

 

「アイドルがこんなところにいるわけねーっての」

 

「まぁ、そりゃそうだわな」

 

「どうどう? 俺たちと一緒に縁日回るってのは?」

 

 ……私達は今、大学生らしき三人の男性にナンパ(と思わしき行為)をされていた。ナンパと断言できないのは、私がこういう風に声をかけられたこと自体初めてだからである。

 

「ま、真美たちは、その……」

 

「いいじゃんいいじゃん、お兄さん奢っちゃうよ?」

 

 真美も流石にこのような状況に陥ったのは初めてなようで、普段の快活な雰囲気はどこへやら、貴音さんの背中に隠れてしまっている。

 

 というか、中学生である真美に対してナンパとは、流石に犯罪臭しかしなかった。まぁ私達と一緒にいたのだから、中学生だと気付かれていないだけだとは思うのだが。……本気で気付いていて声をかけたのならば110番も辞さない。

 

「ですから、私達は先ほどから遠慮すると申し上げているはずですが」

 

 そんな中、毅然とした態度で男性たちの誘いを断り続ける貴音さん。流石の貫録というか何と言うか、やっぱりこのメンバーの中では一番頼りになった。

 

 しかし、それでもなお諦めずに食い付いてくる男性たち。

 

「そんなこと言わずにさー」

 

「……ん? この子、最近どっかで見たことあるような……」

 

(っ!?)

 

 拙いことになったかもしれない。いくら普段の髪型を変えているとはいえ、貴音さんの綺麗な銀髪はそうそう誤魔化せるものじゃない。しかも貴音さんは連日の移籍疑惑報道で認知度が跳ね上がっている。よくよく考えてみれば、このメンバーの中で一番正体がバレやすそうなのは貴音さんだった。

 

 男性の一人が貴音さんの顔を見つつ思案する。貴音さんも少々拙いことになったと冷や汗を流している。

 

 何とかして誤魔化さないと。

 

「あ、あの――」

 

 

 

「ナンパという行為自体を否定するつもりはないが、拒まれているのを強引に誘うのはいただけないんじゃないか?」

 

 

 

「――え?」

 

 それは男性の声だった。

 

 背後から聞こえてきたその声に、全員がその声の発生源に視線を向ける。

 

「……うわ、ちょー美男美女カップル」

 

 真美が思わず呟いたその一言が、端的かつ的確な表現だった。

 

 そこにいたのは一組の男女。藤色の髪にそれとお揃いの着物を身に付けた美女に、そんな美女と腕を組む黒髪の男性――。

 

(……あれ?)

 

 その男性の姿に見覚えがあった。もしかして私達と同じ業界の人だろうか?

 

「あ? 何だよ美女連れたイケメンが何の用だよ人様のナンパ邪魔するなよマジ爆発しろ」

 

「おいコラ」

 

「……すまんな、こいつ重度のイケメン嫌いで誰にでも食って掛かるんだ」

 

 先ほどまで笑顔で私達に話しかけていた男性の一人が、突如憤怒の形相に変わり、そんな男性を他の二人がどーどーと治めていた。

 

 しかし機嫌が治まらない男性はそのまま「気分が悪い!」と言って立ち去ってしまい、他の二人も「悪かったね」と私達に向かって謝罪してから去っていった。

 

「……随分と物分りのいい連中で助かった」

 

「あら? 別に三対一でも問題なかったでしょ?」

 

「こんな縁日のど真ん中でやり合うつもりなんてないさ」

 

「あ、あの! 助けていただいてありがとうございました!」

 

 二人がそんなやり取りをしている間に割って入る形になってしまったが、お礼の言葉と共に頭を下げる。私が頭を下げるのに合わせて、他の四人も頭を下げた。

 

「む、いや、俺は声をかけただけで、結局何もしていない。あの連中の物分りが良かっただけだ」

 

「でも結果として私達は助かったわけですから――」

 

「それに」

 

 私の言葉を遮り、男性は首を横に振った。

 

「良太郎の後輩で、ウチのお客様だ。放っておくわけにはいかなかったからな」

 

 その言葉でようやく気が付いた。

 

 彼と直接話をしたことは無かったが、私は『二度』彼の姿を見たことがあったのだ。

 

 

 

「もしかして……翠屋の店員さんですか?」

「あぁ! この二人、りょーにぃの『熱情大陸』に出てた二人だ!」

 

 

 

 私の問いかけと、真美の言葉が重なった。

 

 

 

 

 

 

 道の真ん中で話していては他の人の迷惑になるということで、全員境内の隅に移動することにした。やや薄暗いが、すぐそこに屋台があるため全く人の気配が無いというわけではなく、しかし私達の会話を聞かれる心配が殆どなさそうな場所だった。

 

「えっと、つまり恭也さんは翠屋のマスターの息子さんで、良太郎さんの幼馴染ってことですか?」

 

「そうなるな」

 

「それで、そちらの方が良太郎さんの同級生の……」

 

「どうも、恭也の恋人(予定)の月村忍よ」

 

「こ、恋人ですか!?」

 

「いや、クラスメイトだ」

 

 そう言い切る恭也さんへ全員が白い眼を向ける。当の本人は何故そのような目で見られるのか本気で理解していない様子だった。

 

「……忍さんも大変ですね」

 

「分かってくれる? 本当に大変なのよ」

 

 そんなやり取りをしつつ、話題は良太郎さんのことに。

 

「以前の翠屋での一件のこともそうだが、良太郎は普段から君たちのことを話題にしていてな」

 

「学校でも、自分のお気に入りの娘たちなんだって自慢げに話してたわ」

 

「そ、そうなんですか……」

 

 恭也さんと忍さんの言葉に、自分の頬が緩むのを感じた。まさか普段の私生活の中でも自分たちのことをそのように評価してくれているとは思わなかった。このメンバーの中では特に良太郎さんにご執心の真美に至っては、それはもうご満悦である。

 

「だからこそ、君たちはもう少し慎重に動いてもらいたい」

 

「さっきのナンパ男たちに絡まれたのは不可抗力だったとしても、貴音ちゃんはあまり前に出すぎるべきではなかったわね」

 

 特にここ最近は話題で持ち切りなんだから、と忍さん。

 

「はい。ご忠告、痛み入ります」

 

「……よし、それじゃあ私達も一緒に回りましょうか」

 

「え?」

 

 ポンッと手を叩いた忍さんの唐突な申し出に、恭也さんを含め全員が呆気に取られる。

 

「忍、お前はいきなり何を……」

 

「またさっきみたいなつまらないナンパに引っかかっても大変でしょ? 男の子が一人いるだけでもだいぶ違うと思うわ」

 

 それに周藤君以外のアイドルとも少しお話してみたいし、と忍さんは笑った。

 

「……えっと」

 

「……君たちさえよければ、忍の我儘に付き合ってもらえないだろうか」

 

 寧ろデート中のお二人の邪魔になるのではないかとも思ったが、そもそも言い出したのは忍さん本人だった。

 

 結局、折角知り合うことが出来たのだからと、恭也さんと忍さんを含めた七人で縁日を回ることになった。

 

 

 




・「囲碁のルール分かってます?」
アニメ本編を見た視聴者ならば誰もが突っ込んだと思う。

・縁日
あの秋だか冬だかの微妙な時期にやるお祭りって何だったのだろか。普通に浴衣(着物?)着てた人も映ってたし……寒くなかったのだろうか。

・ナンパ三人組
特にモデルも何もいないガチモブ。ラブコメの主人公引き立て要員とも言う。

・真美は中学生
忘れがちですが、あの年下キャラのやよいよりさらに一つ下。一年前までランドセル背負ってたんだぜ……?

・恭也と忍
「またかいい加減にしろ」と言われそうですがもうこいつらは準レギュラーなので諦めていただきたい。



 Q 主人公は?

 A ほれ、そこに恭也がいるじゃろう?

 お祭りでナンパから女の子を救うのはイケメンのお仕事なので、我が小説一のイケメンに出張ってきてもらいました。良太郎? よくて二枚目半です。

 ということで主人公不在のお話。今回の貴音回では前回良太郎が傍観すると言ったので、良太郎の出番は本当に少なくなると思います。良太郎が存在することによる物語の変化をお楽しみいただければと思います。

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