それは、あり得るかもしれない可能性の話。
・もしも主人公がショタだったら 5
「こんにちわー」
「はい、いらっしゃーい……あら」
「千鶴ねーちゃんヤッホー」
「ヤッホーですわ、良太郎」
挨拶をしながら二階堂精肉店の入り口を潜ると、カウンターの向こうの千鶴ねーちゃんがヒラヒラと手を振りながら挨拶を返してくれた。
「今日は一人ですの?」
「うん、はじめてのおつかい。ドキドキする」
「初めてでも何でもないでしょうに……」
苦笑する千鶴ねーちゃんに頼まれているお使いの内容を伝える。
「というか貴方、未だに普通にお使いとかするんですのね」
「俺まだ十歳だよ? そりゃお使いぐらい頼まれるよ」
「いや年齢じゃなくて立場。今はもう人気アイドルなのでしょう?」
実家の精肉店の店番してる現役アイドルに言われたくない。
「それこそ立場が理由だよ。周藤家という絶対的なヒエラルキー最下層という立場がね」
「……これを聞くの何度目か忘れましたが、貴方本当に十歳ですわよね?」
「俺もこれを言うの何度目か忘れたけど、もしかして千鶴ねーちゃんよりも年上だったかもしれない」
そんないつものやり取りをしながらもテキパキとひき肉を量り売りしてくれる千鶴ねーちゃん。ちなみにお使いを頼んできたのは母さんではなく最近義姉になった早苗ねーちゃんである。
「はい、お待たせしましたわ」
「ツケといて」
「いいですわよ」
「……え?」
前世を含めて一度は言ってみたいランキング常連のセリフを口にしたところ、あっさりと受け入れられてしまって逆に困惑する。
「千鶴ねーちゃん、お嬢様がついに頭にまで進行して……」
「はっ倒しますわよ」
良かった正常な千鶴ねーちゃんだった。
「ツケる代わりに、サインを一枚書いて欲しいんですわ」
「サイン?」
「そう、今人気急上昇中のアイドル『周藤良太郎』のサイン。今の内にお店に飾っておこうかと思って」
「別にそれぐらいならいくらでも」
「……わたくしからお願いしておいてなんですが、ちょっと自分を安売りしすぎじゃありませんこと」
「どないせーっちゅーねん」
千鶴ねーちゃんが書けっていったんだろうに。
「別に俺は自分を安売りしてるつもりはないし、まして自分の価値を理解してないわけでもないよ」
「では何故?」
千鶴ねーちゃんは不思議そうに首を傾げるが、寧ろ俺としては何故気付かないのかが分からない。
「
「………………」
「それで? サイン色紙とかある? ……ん?」
なんか千鶴ねーちゃんがフリーズしたかと思ったら、無言のままカウンターから出てきた。色紙とか書くものをくれるのかと思ったがどうやら違うようで……お?
「なになにどうした千鶴ねーちゃ……むぎゅ」
無言のまま抱きしめられた。大乳に圧迫されて結構なお点前なのだけど……色紙は?
・もしも主人公がショタだったら 6
「えっと……こう」
「そうそう。次はこっちを押さえて……」
「指が攣りそうなんだけど」
「頑張れ」
「よう」
「楽しそうなことしてんじゃん」
テレビ局のベンチで隼人君にギターを教わっていると、夏樹ちゃんとジュリアちゃんに声をかけられた。
「あ、異所属ギターコンビだ」
「異種族みたいに言うなよ……」
「ははっ、相変わらず良太郎は面白いこと言うな」
呆れるジュリアちゃんと笑い飛ばす夏樹ちゃん。同じギタリストアイドルでもやはり性格は微妙に違う。それは今俺にギターを教えてくれている隼人君にも言えたことである。
「で? 改めて何やってんの?」
「まぁ多分ギターを教えてもらってるんだろうけど」
「ザッツライト」
「良太郎がいきなりギターを弾いてみたいって言うからさ」
今日たまたま番組収録がハイジョの五人と一緒になった縁で隼人君に頼んでみたところ快諾してくれたのである。
「でもやっぱり俺のギターじゃちょっと弾きづらいみたいでさ」
「みたいだな」
「キャラデザ的に無理があったか……」
「自分の体格のことをキャラデザって言うやつ初めて見た」
どうにも十歳の身体では無理があったようである。
「それにしても、どうしていきなりギターを?」
「そりゃカッコいいからだよ」
「……まぁギターがカッコいいことは認めるけど」
「あと女の子からの人気も増えそうだし」
「おいおい」
「………………」
ジュリアちゃんに半目で突っ込まれる一方、何故か隼人君が目線を逸らした。
「女の子に人気って言ってるけど、今のリョウはギターに頼らなくても十分人気だろ?」
「そうそう、今やアイドル『周藤良太郎』を知らない奴なんていないんだし」
「ギター弾けなくたって学校でモテるだろ」
「学校でモテても意味ないんだよ……」
三人揃って「現状何が不満だ?」みたいなことを言ってくるので、俺は精一杯指を伸ばしてポロロンと弦を弾く。
「学校の女の子はさ、ほら……おっぱい大きくないし」
ジュリアちゃんが俺の後頭部を引っ叩いてスパンといい音が鳴った。
「お前さぁ、普通小学生ってそういうこと正直に言わねぇだろ」
「そういうの言ってる奴はいたけど、少なくとも良太郎ぐらいオープンな奴を俺は知らないなぁ」
「ロックだな、良太郎!」
「夏樹、もしかして考えるのヤメテない?」
「リョーくん、話は聞いたよ」
「りんちゃんいきなりどうしたの?」
「さぁこい!」
「本当にどうしたの?」
後日。以前俺の控室に遊びに来てくれたお返しにりんちゃんの控室に遊びに行ったのだが、何故か部屋に入るなりりんちゃんが両腕を広げて腰を落として待ち構えていた。
「リョーくん、あたしもおっぱい大きいんだよ」
「存じておりますが……」
よく分からないけど、とりあえず流れ的に抱き付いてよさそうだったので流されることにする。わーい。
・もしも主人公がショタだったら 7
「~♪」
「随分とご機嫌だな良太郎」
「そりゃあもう、今日は月に一度のお楽しみの日なんだから」
兄貴に連れられてやって来たのは、喫茶『翠屋』。母さんの友人夫婦が経営しているお店で、俺はここのシュークリームとコーヒーが大好物なのである。
「本当は月に一度と言わず毎週通いたいぐらいなのに……」
「そういう贅沢は自分のお金でするんだな」
「俺のお金のはずなんだけどぉ!?」
小学生の身ゆえに俺の手元に入って来るお金は多くないとはいえ、元を辿れば俺がトップアイドルとして活動して稼いだお金のはずなのに釈然としない。いやまぁ小学生のうちから大金を持たせて金銭感覚がおかしくならないように兄貴や母さんたちが配慮してくれているのだろうが……幸か不幸かそういう常識を持ち合わせている状態で生まれてしまった俺にとっては少しだけもどかしい。
「それにこういうのは月に一度の楽しみにしておく方がいいんだよ」
「……言いたいことは分かるけどさ」
さてそんなやり取りをしつつ入店。
「いらっしゃいませー……あっ!」
チリンチリンとドアベルの音を鳴らしながら翠屋の入り口を潜った俺たちを出迎えてくれたのは
「いらっしゃい! 良太郎君! 幸太郎さん!」
「久しぶり、なのは」
笑顔のなのはが小さなツインテールをピョコピョコと揺らしながら近寄って来る。
「今日はお手伝いの日だったんだな」
「うん、今日はたまたま……にゃはは、偶然だね」
「あぁ、月に一度の翠屋の日になのはとまで会えるなんてラッキーだった」
「えへへ」
翠屋のシンプルな店員の姿をした幼馴染はとても可愛らしく、照れたような笑みも相まって相当なキュートさ加減であった。多分カード枠はピンク色。
「あら、良太郎君いらっしゃい」
「いらっしゃい。いつものかい?」
「こんにちわー! いつものお願いしまーす!」
カウンターの向こうからなのはの両親……この店のマスターとパティシエの士郎さんと桃子さんにも挨拶をする。今日も美味しいコーヒーとシュークリームをよろしくお願いします。
「なのは、少し早いけど休憩していいぞ」
「いいの!?」
「えぇ、なのはもシュークリーム食べる?」
「食べる! 良太郎君!」
「あぁ、一緒に食べよう。この前言ってた新しい友だちの話聞かせてくれよ」
「うん! フェイトちゃんって言う子なんだけど……あっ! エプロン外して来るね!」
慌ただしくパタパタと去っていくなのはの後ろ姿を「俺の幼馴染可愛いなぁ」とホッコリした気持ちで見送るのだった。
「……放せ美由希」
「絶対ダメ。大人げない」
・もしも主人公がショタだったら 8
「え!? りょーたろーくん来てるの!?」
「えぇ、さっき春香と千早と一緒に……」
「こーしちゃいられないの!」
「やっほー! りょーたろーくん! ミキに会いに来てくれて嬉しいの!」
「………………」
「あ、美希ちゃん、お邪魔してまーす」
「って千早さんは何してるの!?」
美希ちゃんが(大きな胸を揺らしながら)元気に飛び込んできたかと思ったら、突然大きく目を見開いて大声を上げた。
でもまぁ無理もないとは思う。何せ今の俺は何故かソファーに座る千早ちゃんの膝に座って後ろから抱きしめられている状況なのだから。
「ちょっと千早さん! そーゆーのはミキの役目だと思うんだけど!?」
「………………」
「無視!? いくら千早さんとはいえ、これ以上の狼藉は……!」
「ま、まーまー美希、ちょっとだけ落ち着いて、ね?」
美希ちゃんが荒ぶるが千早ちゃんは全く動じないどころか無反応。それ故美希ちゃんが更にヒートアップするがそれに春香ちゃんが待ったをかけた。
「落ち着けるわけないの! 説明をよーきゅーするの!」
「……実はね」
春香ちゃんが美希ちゃんを部屋の隅に連れて行った。どうやら春香ちゃんは千早ちゃんがこうなってしまった理由を知っているらしい。
確かに知り合いである俺が『信号無視して突っ込んで来た車に轢かれそうになった』のを見てしまってショックを受けているのは分かるが、少々過剰じゃないかと思わないでもない。
「大丈夫だよ、千早ちゃん。俺は何処にもいかないから」
「……本当?」
あ、反応してくれた。
「まぁしいて言うならトイレぐらいは行かせてほしいけど、とりあえず信号を渡るときは青でも車が来ないことを確認して渡るようにするよ」
精神はともかく今は小学生の身。そういうことにはこれまで以上に気を付けなければ。
「……うん、そうよね。私も、ちょっとは成長しなくちゃ」
「うん?」
千早ちゃんの胸は成長して……あ、今そういう場面じゃない?
何はともあれようやく顔を上げてくれた千早ちゃんは……少し目に涙を浮かべながらも、とても素敵な笑顔を浮かべていた。
「……まぁ、そーゆーことなら、少しぐらい千早さんに貸してあげてもいいの」
「ふふ、ありがとうね、美希」
「……いやなにしれっと良太郎君の所有権を主張してるのよ」
とりあえず春香ちゃんと美希ちゃんと、いつの間にか加わっていた律子さんのお話は終わったのかな?
・「お嬢様がついに頭にまで進行して……」
実はお嬢様バズに影響を受けて新作を書いてたり……。
・「キャラデザ的に無理があったか……」
ギターが無理だった峰田君。
・幼馴染なのは
これはメインヒロインの風格……。
・千早ちゃん@曇り模様
765プロ保護者枠入り確定枠。
新章までのつなぎとして主人公にショタになってもらいました。ありがとうおねショタ。
次からは今度こそ新章です。シャニマス二期編です。