アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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トゥインクルが可愛すぎて日曜日の朝の目覚めがヤバい。


Lesson70 妨害、全力、そして決別 2

 

 

 

「………………」

 

 『アイドルJAM』当日。その日、りんは朝からずっと不機嫌そうだった。

 

「アンタいつまでそんな顔してるつもりよ」

 

「……りょーくんに会うまで」

 

 見るに見かねた様子の麗華がりんにそう声をかけると、りんはブスッとした表情のままそんな言葉を返すのだった。

 

「だって今日でりょーくんお仕事辞めちゃうんだよ!? 仕事の現場でもう会えなくなるんだよ!?」

 

「辞める訳じゃないでしょ。一旦止めるって言うだけで」

 

「辞めるんでしょ!?」

 

「止めるでしょ」

 

 色々と噛みあっているような、噛みあっていないような。

 

 というか、そろそろりんはリョウに対する好意を隠すこと自体しなくなってきたような気がする。

 

「全く、今からその良太郎の楽屋に行くんだからちょっとぐらい我慢しなさい」

 

「だって~」

 

 ため息交じりの麗華の言葉にも、りんは尚も愚痴を連ねる。

 

 

 

「そもそもアタシ達の出番って十二話ぶりなんだよ!? 番外編四つも挟んでるし! 外の時間だと大体四ヶ月だよヨンカゲツ!?」

 

「りん落ち着いて」

 

 

 

 番外編09でちょっとだけ出番があったという電波を頭の片隅で受信しつつ、色々と危ないヒートアップの仕方をするりんを宥めるのだった。

 

 

 

 

 

 

「……アンタらは一体何をしてるのよ」

 

 ガクガクと揺さぶってくる冬馬を宥めていると、楽屋の入口からそんなため息交じりの声が聞こえてきた。

 

 聞き覚えがあり今更確認するまでも無い声の主に対してそちらを見ずに挨拶をする。

 

「よー麗華。りんやともみも一緒か? 今日はよろしくなー」

 

「えぇ、よろしく」

 

「よろしく」

 

「りょーくん会いたかったー! 四ヶ月ぶりー!」

 

 唐突に表れた魔王エンジェルの三人に、流石に呆気に取られた冬馬が二、三歩後ろに下がった。そうして出来た間に割って入って来る形でりんが俺の手を握ってきてブンブンと腕を上下に振る。

 

「お、おう、久しぶりだな……四ヶ月?」

 

 何回か仕事で一緒になってるような気がするんだが。

 

「りんの妄言は聞き流すといいよ」

 

「お、おう、ともみ、そうする」

 

「りょーくんのその格好、やっぱり新鮮だねー!」

 

「そうか?」

 

 改めて自分の格好を見下ろす。

 

 今の俺の衣装はジュピターと同じデザインのものである。背格好が同じ冬馬の予備の衣装に手を加えて俺用にアレンジしたものだ。具体的には左袖が長袖なのに右袖が何故か無く、中はワイシャツ、首にはファー。……中二感が半端ないのだが、その旨をデザイナーに伝えると「覇王っぽくてそれがよい」みたいなことを言われた。

 

 いっその事突き抜けて中二感全開な新曲とか考えてみるのもいいかもしれない。……おや、何だろう、何処かでフラグが立つ音がしたような。

 

「765のお二人も久しぶり。今日はよろしくね」

 

「あ、はい! よろしくお願いします!」

 

「よろしくお願いします、魔王エンジェルさん」

 

 ワタワタと慌てていた春香ちゃんと冬馬を睨んでいた千早ちゃんも麗華たちに向かって頭を下げる。

 

「……で? アンタらは先輩アイドルに対して挨拶の一つも無いの?」

 

「ぐ……!」

 

「きょ、今日はよろしくお願いします、魔王エンジェルのお三方」

 

「よ、よろしくお願いします」

 

 麗華の凍えるような視線を浴びた冬馬が怯むが、北斗さんと翔太は怯みながらもなんとかそう挨拶をすることが出来た。……何となく予想してたけど、麗華のジュピターに対する風当たりが強いなぁ。

 

「……アンタたちが何を考えてるのか知らないけど、今日は良太郎が仕事休みの前の最後のライブ……何か変なことしたら――」

 

「っ!? 俺たちがそんなことするわけねーだろ!」

 

「……あ、そう」

 

 冬馬の叫ぶような否定の言葉をまるで聞き流すかのように、麗華は「それじゃあ良太郎、また後で」と言って楽屋を出ていき、それを追ってりんとともみも「打ち合わせの時にまたねー!」「765の二人もね」と言い残して出ていった。

 

「……え、えっと私達も失礼しますね」

 

「良太郎さん、また後ほど」

 

「あぁ、また後で」

 

 春香ちゃんと千早ちゃんも楽屋を去り、楽屋の中には再び俺とジュピターを合わせた四人だけとなった。

 

「……まぁ、最近ちょっと気が立ってていつも以上に態度が悪かったけど、麗華は大体あんな感じだから気にするな」

 

 自分で言っておいて何だが、フォローになっていないような気がする。

 

「……別に気にしてなんかねーよ」

 

「麗華ちゃんの言葉はいつもキツイからねー」

 

「僕ちょっとあの人苦手……」

 

 冬馬はそう言いつつも苦い表情をし、北斗さんも翔太も苦笑い。

 

『………………』

 

 ……地味に無言が辛いな。

 

 ったく麗華の奴、ライブ前に面倒臭いことしてきやがって。

 

 

 

「……よし、それじゃあ気分転換に猥談でもするか」

 

「その発想は何処から来るんだよ!?」

 

 

 

「これはとある男の子が初めて彼女の部屋に上がった時に机の上に置いてあった『おに○んぼう』を見付けてしまったっていう話なんだが」

 

「猥談っていうほど猥談でもねぇし、そもそもオチから話始めるんじゃねぇよ!」

 

「冬馬、ツッコミを入れるべきところはそこじゃない!」

 

「『おに○んぼう』だけに?」

 

「上手くねぇからな!?」

 

「……『おに○んぼう』?」

 

 うぅむ、中学生の翔太には分からない内容だったか。

 

 まぁ兎にも角にも、とりあえず変な空気は払拭できたと思う。

 

 

 

 

 

 

「……ふん、随分と騒がしいな」

 

 その後女の子との初デートから理想の女の子像にまで発展した話は、聞こえてきたそんな言葉で中断させられることとなった。ホント、よく人が訪れる楽屋だこと。

 

 ……まぁ、この人がこの楽屋に来ることは何ら不自然なことじゃないんだけど。

 

「どうもおはようございます、黒井社長」

 

 961プロダクション社長、黒井(くろい)崇男(たかお)。……あれ、黒井社長のフルネームって初めてだよな?

 

「下らない与太話などしていないで、さっさと打ち合わせでもしたらどうだ?」

 

「いやいや、同じ楽屋になったんだからこれぐらい世間話の範疇ですよ」

 

 与太話であることに対しては否定しないけど。

 

「ああ、そう言えば『孤独こそが人を強くする』んでしたっけ? でしたら楽屋を別々にするべきでしたね。それだとアイドルでグループを組むこと自体アレってことになっちゃいますけど……そもそも、どうして俺とのコラボにもGOサインを出したんですかねぇ?」

 

「……貴様とのコラボが、一番利益が大きかっただけだ」

 

「これはこれは、黒井社長からお褒め頂けるとは大変光栄ですね」

 

「ちっ、本当に忌々しい小僧だ」

 

 そう言うことはもう少しトーンを落とすか、それか誰もいないところで言いましょうよ。

 

「……そう言えば、今日の仕事を最後にアイドルの活動を辞めるらしいな?」

 

「辞めませんよ。ほんのちょっとお仕事をお休みさせてもらうだけです」

 

 いやーマジ怖いわー。三ヶ月以上お仕事しないとか業界から干されそうで怖いわー。みんなの記憶から消えちゃいそうで超怖いわー。

 

「貴様とのコラボによってジュピターの名も大いに高めることが出来た。礼を言っておいてやる。……くく、最後のステージ、精々良いものにするといい」

 

 不敵な笑みを浮かべてそんなことを言い残して、黒井社長は楽屋を去っていった。

 

 というかホントこの楽屋人の出入りが激しいな。一体何回楽屋を去るっていう描写をしなきゃならんのか。

 

「お前たちの社長さんは相変わらず悪そうな顔してるな」

 

「……気を付けろ、良太郎」

 

「へ?」

 

 珍しくマジトーンの冬馬に呆気に取られてしまった。振り返ると、冬馬だけじゃなくて北斗さんや翔太まで真剣な顔で俺を見ていた。

 

「あのおっさんがお前にどうこう出来るとは思ってねーが……」

 

「良太郎君、確かトリに一人でも歌うよね?」

 

「クロちゃんが何かしてくるかも……」

 

 ……そういうことね。

 

「ステージで歌ってる時に仕掛けてくるなんて、黒井社長も中々律儀な性格してるね」

 

「っ! 良太郎!」

 

「心配するな」

 

 普段の生活をしているところに嫌がらせとか、差し入れに何か仕込まれているとかだったら問題があったかもしれんが……いや、流石にこれは無いか。

 

 

 

「一度ステージの上に立って観客の前に出ちまえば『俺は無敵』なんだよ」

 

 

 

 でもまぁ、ちょっとだけ予防線を張っておこうかな。

 

 

 

 

 

 

「あ」

 

「お、良太郎どうした?」

 

 楽屋の外に立っていたら別件で少し遅れていた兄貴がやって来た。

 

「何処かに電話してたのか?」

 

「まぁちょっとね」

 

 通話を終えたスマフォの画面を暗転させて衣装のポケットに仕舞う。

 

「……そういえば、さっきPA(音響)さんに挨拶へ行った時に黒井社長とすれ違った」

 

 おっと、既に向こうも仕込み済みだったか。さてさて、誰に対しての仕込みをしたのやら。

 

「大丈夫なのか?」

 

「俺に関して言えば問題ないよ」

 

 俺に対する嫌がらせであるのであれば何も問題じゃない。もし765のみんなに対するものだったら……いや、きっとそれでも今の765のみんなだったら大丈夫だろう。

 

 それに、黒井社長が何か仕掛けてくるとしたら十中八九俺に対してだろう。

 

 ならば問題は何も無い。

 

「それよか兄貴、例の件はどうなってんの?」

 

「上々だ。さっき先方とも話を付けてきた」

 

 オーケーオーケー。全部順調だ。

 

「……これから忙しくなるぞ」

 

「忙しくなるのは兄貴一人でしょ」

 

 俺は今日を境に受験生モードですよ。……あれ? 結局忙しいことには変わりないのか?

 

「それに兄貴言ってたじゃん。ほら、末永く忙しいままでいてくれって」

 

「言ったけど……言ったけど!」

 

 大事なことなので(ry。

 

「はぁ、まあいい。彼らには、お前の方から話すんだぞ」

 

「勿論。もともとそのつもりだったからな」

 

「そうか」

 

 

 

 他の人のところに挨拶に行ってくるという兄貴と別れ、俺は再び楽屋の中に戻る。

 

「……お前たち兄弟は随分と主語がねぇ会話をするんだな」

 

 椅子に座ってブリックパックのジュースにストローを刺していると、冬馬がそんなことを言ってきた。

 

「ん? 何だ冬馬、盗み聞きか?」

 

「テントの前であんな普通の音量で話されてりゃ嫌でも聞こえるっつーの」

 

 ま、そりゃそうか。

 

「そりゃあ主語も抜けるさ。前々から話してたことなんだから」

 

「……何かあんのか?」

 

「まだ秘密ー」

 

「なんだそりゃ」

 

 

 

 そう。『まだ』秘密だ。

 

 

 




・「大体四ヶ月だよヨンカゲツ!?」
間違えが無ければ最後の出番はLesson58。
……つまり今年に入って魔王エンジェルの出番が一切無かったと言うことに。

・今の俺の衣装はジュピターと同じデザインのものである。
別に普段の良太郎の衣装を考えたことが無かったわけではない、いいね?

・何処かでフラグが立つ音がしたような。
タイムリーにやみのまフラグを立てておく。

・『おに○んぼう』
以前もネタに使わせていただいた某狩りゲームの某有名実況者の、実況動画内で語られた『実話』。
(・◇・)←この人
『おに○んぼう』が何か分からない人はお父さんお母さんに聞いてみるといいよ!

・黒井崇男
今回のお話で可哀想なことになる人。


 多分初となる良太郎と黒井社長の会話。果たしてテラコヤス感は出せているのか。

 ただ散々フルボッコとか言いつつも、そんなに酷いことにはならないと思う。



『デレマス八話を視聴して思った三つのこと』

黒白(こくびゃく)の翼を持ちし堕天使の可憐なる姿に、我の心は打ち震えている。
(蘭子ちゃんが可愛くて大変満足です)

・言の葉の規律乱れし女神たちを統べし者に、精霊たちが騒めいている。
(敬語を使わない武内Pに凄い違和感を感じる)

・よもや幼き女神までもが失われし神々の言の葉を会得しているとは……。
(まさかみりあちゃんが熊本弁を習得しているとは……)
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