アイドルの世界に転生したようです。   作:朝霞リョウマ

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リアルのテンション事情により内容短め&雰囲気暗め。

慌てておまけを三つほど追加して中和しました(出来たとは言っていない)


Lesson83 少しだけ変化した日常 4

 

 

 

「教えてエロい人!」

 

「ん? あぁ、チャオ。どうしたんだい良太郎君?」

 

 突然メイク室に入って来たにも関わらず大人な対応の北斗さん。これが恭也だったら「どうしたいきなり自問自答を初めて」とか言われていたな。北斗さんマジ大人。これが大人のミリキ(双海姉妹的表現)って奴か……。

 

 

 

「うーん、まぁ良太郎君の言い分も分かるよ。でもやっぱり良太郎君が悪いかなぁ」

 

 撮影スタジオに到達し、顔が赤いままの美嘉ちゃんと不機嫌とは言わないものの微妙にご機嫌斜めな恵美ちゃんまゆちゃんコンビと分かれた俺は、本日男性向け雑誌の撮影で一緒に仕事をする北斗さんがいるメイク室に突撃。先ほどの女の子たちの反応に関してお伺いを立てていたところである。

 

「分かってはいたけど、そこはかとない理不尽を感じる」

 

「恋愛の感情はまた別として、自身が好感を持つ人が他人を褒めるのはあまり気持ちの良いものじゃないからね」

 

 分かるような分からないような。

 

「でも可愛いってのは女の子もよく使う褒め言葉ですよね?」

 

「女の子が使う『可愛い』は一般的な意味とはまた別の意味の例外だから」

 

「真ちゃんのことを可愛いって褒めたら雪歩ちゃんにものすごい勢いで同意されたんですけど」

 

「あれは例外の更に例外」

 

 生っすかレボリューションの『菊地真改造計画』のコーナーで雪歩ちゃんの暴走っぷり(と真ちゃんの少女趣味っぷり)は全国の御茶の間に披露されちゃってるからなぁ。

 

 とまぁそんな感じの軽いご相談が終わり、着替えとメイクを終えて北斗さんと二人でお茶を飲みつつ適当な雑談。

 

「そういえば、良太郎君には好きな女の子とかいないのかい?」

 

 と思ったら結構ぶっこんできた。修学旅行の夜ばりのコイバナである。ついでに枕投げでもする? 宿が無駄に頑張って低反発枕っていうオチ?

 

「唐突ですね」

 

「いや、四月から事務所が同じになって一緒にいる時間が増えたけど、良太郎君のそういう色恋話を聞いたことが無いなぁと思ってね」

 

「結構自分の好みについては大々的に明言してるつもりですけど」

 

 正直これだけ堂々とおっぱい星人を明言しているアイドルは何処を探してもいないと思う。

 

「『好きな女の子』と『好み』はまた別物だよ。それで? 良太郎君は色々な女の子に好かれてるみたいだし、少しその気になればカップルになれそうな子ぐらいいるんじゃないかな?」

 

 いやいや、そんなプレイボーイな北斗さん基準で言われても。

 

「確かに結構色んな女の子からの好意は自覚してますけど、それが恋愛に発展するわけないですって。精々仲のいい女友達ぐらいですから」

 

「……ん?」

 

 先ほどまでニコニコと喋っていた北斗さんの反応が変わる。あー、この手の話題になると大体何故か「ふざけんじゃねぇコノヤロウ!」みたいな反応されるんだった。

 

 しかし北斗さんは「ふむ」と顎に手を当てながら思案顔になった。

 

「……魔王エンジェルの朝比奈りんちゃんとか、765プロの星井美希ちゃんも?」

 

「どうしてその二人の名前を上げたのかは分かりませんが、二人とも良い友達で可愛い後輩ですよ」

 

 そう答えると北斗さんは「なるほどね」と頷いた。

 

 

 

「何となくそんな気はしてたんだけど……良太郎君、君は他人からの『好意』を一定の度合いまでしか判別できていないんじゃないかな?」

 

 

 

「……へ?」

 

 と、言うと?

 

「そうだね……例えば、他人からの自分に対する好意を一から十までの十段階で表すとするだろう? 良太郎君はその好意を五までしか判別出来ないんだよ」

 

「……つまり、五より上の好意を全部五と誤認していると?」

 

「そういうこと」

 

 いやいや、いくら何でもそれは……。

 

「ほ、ほら、肉親からの好意が一番高いってことはちゃんと分かってますよ?」

 

「肉親と他人は別物だよ。そこを同じ定義で話しちゃダメさ」

 

 そんなラブコメの鈍感ニキじゃあるまいし……と笑えないから言いたいところなのだが。

 

「………………」

 

 少しだけ。ほんの少しだけ、心当たりがあった。

 

 何度も自慢するようでアレだが俺はトップアイドルである。老若男女からキャーキャー言われまくっているトップアイドルである。容姿も母親と父親から中々いい血筋を貰って悪くないのは見た目そっくりの兄貴を見ていれば分かる。故に女の子からモテても何も不思議なことはない。当然告白されたこともある。

 

 しかし、彼女たちから感じられる好意がファンや友人から感じられる好意と同じぐらいにしか感じないのだ。

 

 ちなみに自分から相手に対する好意というものはしっかりと把握している。初恋云々の話がその証拠である。

 

「これを鈍感と言っていいのかどうかは分からないけど……少なくとも、良太郎君は自分に対する好意を完璧には把握していないんだと僕は思うな」

 

「………………」

 

 

 

 

 

 

「……なぁ、冬馬。愛って何かな?」

 

「……ぜい……ぜい……」

 

「そこはしっかりと『躊躇わないことさ』って答えてくれよ」

 

「……言いたいことは……それ、だけか……!?」

 

 ところ変わってここは高町家の敷地内にある武道場。

 

 雑誌の撮影を無事に終え、そのまま帰宅するという恵美ちゃんたちと分かれた俺はダンスレッスンへと向かう。ダンスレッスンと言いつつも実際には新しい振付の練習で、その確認と大まかな打ち合わせのみなのでそんなに時間もかからない。

 

 しかし小腹が空いたので翠屋で軽く腹ごしらえしようと考え、その途中で高町家に寄った次第である。

 

 寄った理由は高町ブートキャンプで扱かれている冬馬の様子を見るためだ。

 

 武道場に顔を覗かせると、案の定息も絶え絶えな冬馬が隅で大の字になって倒れていた。

 

「ん? 良太郎、仕事終わりか」

 

「おー恭也。この後のダンスレッスンの前に腹ごしらえでもしようかと思って翠屋に向かう途中にちょっと覗いてみたんだ。あ、前に仗助と億泰がお勧めしてたレストラン、今日の昼行ってみたけど良かったぞ。これお土産な、『パール・ジャム』っていう自家製ジャムらしい」

 

「む、ありがとう。今度忍と二人で行ってみることにする」

 

「絶対気に入るぜ。……んで、こいつの調子どうよ」

 

 木刀を床に突いて立っていた恭也にお土産を手渡しつつ、足元に転がる冬馬を指差す。普段は士郎さんが指導しているみたいだが、今士郎さんは翠屋の方に行っているため恭也が見ているらしい。

 

「体力と目はだいぶ育ってきたな。反射神経も悪くない。手合せも五秒持つようになった」

 

「おぉ、二秒増えたか」

 

 ちなみにこの五秒というのは恭也の手加減した打ち込みを凌いだ時間では無く、あくまでもボコボコにされて倒れるまでの時間である。御神の剣士の打ち込みを素人が五秒も無傷で凌げるわけないじゃないですか(白目)。ちなみに俺は八秒ぐらい。

 

「……父さんは、冬馬には剣術の才能が見えるからそちらの道に歩んでみてはどうだとも言っていた」

 

「……マジか」

 

 当然「御神の剣を教える」という意味ではなく世間一般的な意味での剣術という意味で言ったのだろうが、それでもあの士郎さんが太鼓判を押すとは相当だなこいつ。

 

「冬馬は『良太郎を倒すこと以外に俺の進む道は無い』と言っていたがな」

 

「……さいですか」

 

 何ともまぁぶれないなぁと思いながら頭を掻く。

 

(………………)

 

 ただ、少しだけ。

 

 

 

 ――残念ながら、良太郎君には剣の才能は無いよ。

 

 

 

 ほんの少しだけ、自分の父親同然の人物から認められた冬馬が、羨ましかった。

 

(北斗さんが言ってたのはこれのことか)

 

 悔しいから絶対に言わないけど。

 

 

 

 

 

 

「ふぅ」

 

 ダンスレッスンと言う名の振付確認も終わり、帰宅後の晩飯後の風呂上がりなう。髪の毛をタオルでガシガシと拭きながらリビングのソファーにどっかりと腰を下ろす。

 

 本日も何事も無く一日が終了ー! と普段は羽根を伸ばすところなのだが、今日は若干のロスタイム突入である。

 

(……嫉妬、好意、ねぇ)

 

 思いがけず二つも考えさせられる事柄が出来てしまった。

 

 他者を妬む、嫉妬。他者を好む、好意。

 

 今日の北斗さんとの会話で何となく感じたのだが、俺は他者からの自分に対する感情というものに疎いらしい。自分自身の感情は把握しているつもりなだけに、随分と奇妙に感じた。

 

 自分の嫉妬と好意には気付くのに、他者の嫉妬と好意には気付けない。

 

 まるで。

 

 

 

 ――この表情のように、自分の何かが欠落しているような……。

 

 

 

(……やめやめ)

 

 俺はシリアスなんてガラじゃないって。どうせ思わせぶりな形だけの伏線だろ? 人生なんてそんなもんなんだから。

 

 そもそも悪意にはちゃんと気付けているんだから、俺の気のせいだ。

 

 

 

 

 

 

 少々イレギュラーなこともあったけど、これが俺の『少しだけ変化した』日常。

 

 今までフリーでやって来た時にはなかった事務所の仲間との日々を満喫しながら、周藤良太郎はまた次の日の朝を迎える。

 

 

 

 

 

 

おまけ『とある事務員の嘆き』

 

 

 

「………………」

 

「………………」

 

「……えぇ、いいんです。元々今日、良太郎君は事務所に来る予定じゃなかったんですから」

 

「……えっと、美優? い、一応私も……」

 

「いいです……えぇ、いいんですよ……」

 

「……の、呑みにでも行く?」

 

 

 

 この後、美女二人で滅茶苦茶酒を飲んだ。

 

 

 

 

 

 

おまけ『とある夜のとある姉妹の会話』

 

 

 

「お姉ちゃん、今日は随分とご機嫌だねー?」

 

「え? そ、そう?」

 

「うん、撮影から帰ってきてからずっとニコニコしてるー。何かあったの?」

 

「……ふっふっふー、確かにすっごーいことがあったんだけどー、どーしよっかなー? 言っちゃおうかなー?」

 

「え、何々ー!?」

 

「……やっぱり秘密ー!」

 

「えー!? 気になる気になるー!」

 

「えへへー、アンタもアイドルになったら教えてあげるよー!」

 

「むー! やる! アタシもやる! アタシもアイドルやるー!」

 

 

 

 この後、騒ぎ過ぎて滅茶苦茶怒られた。

 

 

 

 

 

 

おまけ『こひのかほり?』

 

 

 

「恭ちゃん、冬馬さんお疲れ~。タオルと飲み物持ってきたよ~」

 

「む、すまんな美由希」

 

「あ、ありがとう」

 

「ってあれ? 恭ちゃんそれ何?」

 

「これか? 良太郎が持ってきてくれたお土産だ」

 

「えー!? 良太郎さんいたの!? あーもーまたニアミスしたー!」

 

「別にいつでも会えるだろ」

 

「いつでも会えないから言ってんの! はぁ……あ、冬馬さん、今日も夕飯食べていきますよね?」

 

「え? あ、あぁ……」

 

「絶対にお前は手を出すなよ。大人しく母さんたちが帰って来るまで待て」

 

「分かってますよーだ! 恭ちゃんのバカ!」

 

「………………」

 

「……よし冬馬立て。もう一本行くぞ」

 

「はぁ!? 今終わったばっかり……!」

 

「何かイラッと来た」

 

 

 

 この後、滅茶苦茶ボコボコにされた。

 

 

 




・生っすかレボリューション
いつかネタにと思っているのですが所属が違うからどうやって絡ませたらいいのか分からな(ry
めぐまゆコンビが安定してから123全員で突撃っていうのもいいかも。

・低反発枕っていうオチ?
病んでないヤンデレ。正直お家問題が解決したら終わるものだとばかり思っていた。
流れるように終わった修学旅行編ぇ。

・愛って何かな?
・『躊躇わないことさ』
若さは振り向かないこと。

・『パール・ジャム』
感想を参考にさせていただいた。別に食べても歯が抜けたり内臓が飛び出たりしない。

・「良太郎君は自分に対する好意を完璧に把握していない」
・自分の何かが欠落しているような……。
No comment

・おまけ『とある事務員の嘆き』
小鳥さんかと思った? 残念! 美優さんでした!
(ぶっちゃけ忘れてた)

・おまけ『とある夜のとある姉妹の会話』
(別に妹早期登場フラグでは)ないです。

・おまけ『こひのかほり?』
※Lesson69での良太郎の発言を思い出してみよう。



 リアルのテンションが低い時に書いたため内容が若干アレになってしまいましたが、ストーリーは概ね予定通りです(震え声)

 新章入って早々ですが、次回は番外編で気分転換しようと思います。恋仲○○シリーズか外伝嘘予告のどちらかになると思います。



『どうでもいい小話』



   \助けて、ラブライブ!/
 『ラブライブ!サンシャイン!!』



 グループ名が『Aqours(アクア)』に決定しましたね。

 始まってすらいませんが、ダイヤちゃんとヨハネちゃんで推しメン迷っています。

 (相変らずアイマスの話題が無いアイマス二次作者の屑)

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