Fate/Duel Order   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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第1電脳特異点-聖天秩序教国 ルーアン 「邪竜の聖女」
Turn:11 地獄が刻まれる場所


 詰めデュエルをクリアしたマスターに対し、ダ・ヴィンチは電脳特異点の解析結果を告げる。

 

「解析の結果、この正式な最初の電脳特異点はフランスを模している事が分かった。建物の作りを見ると、恐らくモデルは15世紀くらいのフランス西部だね」

 

 ヴォン、と管制室のモニターに電脳特異点の姿が映し出される。

 そこは特に何の変哲も無い、ただの市街地のように見えた。旗が立っているワケでも無く、城があるワケでも無く、ただ本当に普通の街並みだ。

 一つ目を引く所があるとすれば、他の建物より一回りも二回りも大きな教会がある事だろうか。

 

「と言う訳で、フランスに縁のあるサーヴァントを呼んだよ。彼女達ならここがどこだか――」

「これは……、ルーアン?」

「若干街並みが違うけど、間違いないわね」

「むー、私にルーアンの記憶は無いので分からないです、2人だけズルいです!」

「……早速判明したね」

 

 モニターを見て呟いたのは、オルレアンの聖女ことジャンヌ・ダルクだった。そして隣で頷いたり憤慨したりしているのは、その異なる姿として召喚されたジャンヌ・ダルク・オルタと、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィである。

 ダ・ヴィンチが呼んだのは、きっと彼女達3人の事だったのだろう。

 

「ルーアン? ルーアンって、あの?」

「はい、私が処刑された地です」

 

 1431年の5月30日。百年戦争で捕虜となったジャンヌ・ダルクはピエール・コーションらの手により罠に嵌められ、このルーアンの町で火刑に処された。

 キリスト教では『最後の審判』という時まで肉体が残っていなくてはならないとされ、火刑はこれ以上無い厳罰とされている。特にジャンヌの肉体は焼かれて灰になった後、再び火にかけられ、最後には川に撒いて捨てられたとされており、その魔女と見られた異端視具合は徹底されている。

 そしてジャンヌ・オルタが同意し、ジャンヌ・リリィが分からないと言うのも無理は無い。

 前者は『復讐者たれ』と火刑を始め、捕縛から死ぬまでに関する記憶を恨みとして強く持つよう産み落とされ、後者は『希望を知る子供たれ』として生まれ変わったのだから。

 

「しかし、ルーアン? ここに縁のある偉人はいるが、その人が関係しているのかな?」

 

 ダ・ヴィンチが首を傾げる。

 ルーアン出身の著名な人物と言えば、イングランド王のエドワード4世やルイ15世の愛人マリー=ルイーズ・オミュルフィ、小説家モーリス・ルブラン等がいる。

 だが彼らがサーヴァントになった姿が想像できない。それこそアンデルセンやシェイクスピアのように強引にサーヴァントにでもしなければ、彼らが戦うような事はまず無いだろう。

 なお、一応エドワード4世は百年戦争の経験者だが、派手な戦績は無い。

 

「兎に角、フランスが舞台なら話は早い。知名度の補正を上げるためにフランス縁のサーヴァントを中心に編成してくれ、マスター君」

「オーケー! マシュ、リストアップ始めるよ」

「了解です」

 

 こうしてフランス出身を中心とした選抜隊が結成され、最初の電脳特異点へと彼らは旅立っていく。

 第1電脳特異点、ルーアンへと。

 

 

  ☆

 

 

 肉体が電気へと分解されるような感じがする。

 電脳世界に意識だけ飛ばすと言うのは、そういう事なのだろうか。レイシフトは身体を霊子にして移動するが、こちらはその必要が無い。何だかんだ、あの移動方法には慣れていたんだなぁと苦笑せざるを得ない。

 

「……先輩、ルーアンに到着しました。現地時刻は1432年、5月23日という設定です」

「フォーウ!」

「ありがとう」

 

 周囲を見渡す。

 右に広がるのは雄大な草原。

 左にも同じ。

 そして後方には森があり、前方遠くには件の地方都市ルーアンが。

 

『あーあー、マイクテス、ダ・ヴィンチちゃんは可愛いZE!☆」

「聞こえているよ、ダ・ヴィンチちゃん」

『そら良かった。電脳特異点は存在証明が要らないとは言え、油断大敵だからね』

 

 さて、今回の舞台である電脳ルーアンについての情報をまとめよう。

 舞台は1432年初夏、フランスの西部にある都市。そこにある、ジャンヌを処刑したとされる場所の近くから半径20キロ程の円を描くように、この電脳特異点は形成されている。

 しかし、ただそれだけだった。

 ドラゴンがいるワケでも無く、マナも科学的に再現された空間なので存在しない。サーヴァントは恐らく電気を魔力に変換しなければ呼吸一つ満足にできないだろう。

 まるで『当時のルーアンで暮らしたい』という欲求を再現するが如き、セラピー用の仮想空間のようであった。

 

「それじゃ、点呼取りまーす」

「いーち」

「にー」

「さん」

 

 後ろではジャンヌが委員長の空気を発して、今回の旅路に同行してくれるサーヴァントの皆を整列させている。彼女の面倒見の良い性格のお蔭で、今回の仲間のサーヴァントはあっと言う間に集まった。

 聖女ジャンヌと派生した妹達(長女談)に加え生前から付き合いのあるキャスターとセイバーのジル・ド・レェ、フランス王妃のマリー・アントワネットや彼女の親衛隊とも呼べるデオン達、更にはシャルルマーニュ十二勇士アストルフォにブラダマンテ。

 このサイバー世界で知名度を得られるかは不明だが、無いよりマシな筈だ。

 更に後続隊として、カルデアではフランス出身のナポレオンやランスロットも待機している。

 

「マスター、先発隊全員集合しました」

「ありがとう」

 

 軽く頭を下げてジャンヌに感謝の意を示すマスター。

 実は正直に言うと、ジャンヌを先発隊に入れるべきかは最後まで悩んだ。

 ルーアンという彼女の今際の地である事もさる事ながら、数日前に搬送されたジークの件もあるからである。カルデア側のジークは、向こうから来たらしきジークの看病に付きっ切りである点も拍車をかけている。

 マスターはジャンヌが他方へ注意が向いている隙に、同行者の1人であるアストルフォに専用の礼装で電子念話を繋げた。

 

(……アストルフォ)

(なーにマスター?)

(世界の裏側でジークの『本体』が待ってるのって、やっぱり――)

(うん、ルーラーのジャンヌだよ)

 

 ジャンヌとジークの間に、どのような物語があったかはマスターにとっては定かでは無い。自分が知っているのは、ジークとジャンヌが聖杯大戦なるものの中で知り合った事と、そこにアストルフォやアタランテ達がいたという事だけである。

 マスターの個人的な見解として、カルデアのジャンヌはジークに対して罪悪感のような物を感じているように見えるし、ジークはジークでジャンヌに対して何か遠慮があるように思えていた。

 サーヴァントは召喚される度に記憶が記録になるからジークが待つジャンヌ本人では無いと言うが、だったら『カルデアのジャンヌ』と『カルデアのジーク』として恋愛を紡げば良い、と考えるのは無粋だろうか。

 出来ればマスターとして彼らには仲良くしていて欲しいのだが……。

 

「ジャンヌ、もう大丈夫なの? いつもみたいに笑っていないわよ?」

「大丈夫ですよマリー。私は平気です、平気なんです」

「おぉおおお、ジャンヌ、我が光! やはり先日来た栗毛の少年が気がかりなのですね! 確かにあの少年は中々に美形で――」

「長女式目潰し!」

「抉りこむように目玉引っ込みますー!?」

 

 或いは、ジークの本体が逃げ込んで来たという異常事態への不安を誤魔化すために、クエストに逃げ込んだのかも知れない。

 

「気温は15度、現在時刻は午後3時丁度。……まるでRPGの中にダイブしたような感覚ですね」

「気を付けてね、ダメージが現実に戻って来るのは俺の身体で証明済みだから」

『さて、取り敢えずルーアンに向かうのはどうだろう。ここの電脳特異点が何故生まれたのかのヒントがあると思うよ』

「じゃあそうしようか。方角は――」

 

 

――グァルル……

 

 

「先輩!」

「フォウフォー!」

 

 頭で考えるより早く、身体が動いた。

 マシュは盾を取り出し、マスターと何某かの間に立ち塞がる。

 その盾を一瞬で乗り越えて背後から唐突に飛び掛かって来た何かを、マスターは正面から掴んで受け止め、身体を大きく捻った。彼は魔術の「ま」の字も使えないが、この身体には鍛え上げた筋肉と体術があるのだ。電脳世界でもそれは変わらない。

 もし正面から受け止めて防げば腕が折れるかも知れないが、相手の勢いを利用して最低限のパワーから受け流せば……!

 

「どぉりゃぁっ!」

 

 ドズン、と金属のように重い音が周囲に響く。ギシリと腰にキツいダメージを受けるが、真正面から受けて吹っ飛ぶよりマシだっただろう。

 受け流すように放られた襲撃者は投げられた痛みを感じる事無くマスターに向き直ると、その鈍く光る牙を剥き出しに唸りを上げ始めた。

 

『Grrr!』

「こいつは、『古代の機械猟犬』か!」

「って事は……!」

 

 襲撃犯の正体が明らかになると同時に、ガサガサと森から無数の仮面を付けたフードと青装束の男達が出て来る。以前にカルデアのデータベースに襲撃を仕掛けた連中と同じ見た目という事は言うまでも無い。

 

「へへへ」

「来たぜカモが」

「ここでコイツらカードにすれば昇進確定よぉ」

 

「囲まれましたね……!」

「俺達が来るのを分かっていたって事か」

 

 幸い、この敵は皆で何度もシミュレーションをしている。敵の使うと仮想的に設定されたカードのパターンも理解している。

 

「皆、一気に蹴散らすよ!」

「イエス・マスター!」

 

 

  ☆

 

 

「ただいま蒸発中! 『騎英霊 アストルフォ』!」

「講演を楽しみたまえ、『術英霊 ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト』!」

「螺旋の光得て出でよ! 『槍英霊 ブラダマンテ』!」

「その首、切り落とす。『殺英霊 シャルル・アンリ・サンソン』!」

「報復の時は来た! 『讐英霊 ジャンヌ・ダルク・オルタナティブ』!」

「奏でよ、奏でよ! 『讐英霊 アントニオ・サリエリ』!」

 

「「「ぐわぁあああああああああ!!」」」

 

 結論から言えば、相手にならない程に弱かった。

 各々各個撃破に努めていたという点もあるだろうが、それを加味しても随分と貧弱である。

 

「……アクビが出るくらい弱っちいわね」

「僕らが強くなったんだよ! 特訓たっくさんしたからね! ……っていうのは無理かな」

 

 空をふと見る。

 こういう時、よく上空からワイバーンが襲って来たりしたのだが、そういう気配は無い。

 となると真打ちが控えているとは考えられないだろう。彼らは斥候より偵察部隊と判断するのが無難か。

 

「マシュ、ここにダイブしたのって何時だっけ?」

「現地時間の14時56分だった筈です」

「点呼を終えたのが15時だったよね?」

「はい。……つまり我々は、ここに来てたった5分足らずでエネミー、いえ敵兵とエンカウントしたという事ですね」

「早くない?」

「私もそう思います」

 

 レイシフトから出会い頭の戦闘なら覚えがある。だがそれは飽く迄も偶然だった。

 たまたま敵の近くにレイシフトした、たまたま敵意を持った人間のコロニーの前に出た。全てはそういうものばかり。

 しかし今回は明らかに背後から奇襲を受けた、つまり人為的な敵の戦略であった可能性が高いと言える。

 

「ダ・ヴィンチちゃん、俺達がここに来る事を予見されていた可能性は?」

『ゼロとは言えないよ。でも内通者でもいなければちょっと難しいかな』

「他に有り得る可能性は?」

『そうだね、君達はヴレインシステムを使ってダイブした。十中八九、それは敵の使っているシステムとは違うだろう。つまり今回から我々がクラッカーの立場になる』

「敵のファイアウォールに検知されたという事でしょうか?」

『可能性として高いのはそれだ。後は――、純粋に敵の哨戒に発見された、かな。お約束が来たよマスター君』

「え」

 

 こういう場合のお約束が何かと言えば、決まっている。新手の敵だ。

 サシュサシュと草を踏み分ける音が、リズムを刻んで聞こえて来る。このテンポは恐らく馬、それも一頭。

 全員が油断無く構えると、再び森の中、獣道を通って別の敵が出現する。

 

「やはりあの程度では相手にならんか」

 

 現れたのは銀色に輝く鎧。青黒い肌の馬ごと武装した偉丈夫だ。

 身の丈程もある巨大な戦斧を携え、赤く輝く目をギョロリとこちらに向けている。

 

「所詮はNPC、大したデュエルはできんな」

「NPC!? 今の奴らがか!?」

「そうだ。命持たぬ傀儡程度では止められないと進言したが……、やれやれ呼吸を乱す事すら出来んとはな」

 

 ハァ、と大男は兜の隙間から溜息を漏らす。

 

「だが我はツイている。こんな所で最優先除去対象を見つけられたのだからな」

「何?」

 

 鎧を着た大男が兜越しに視線を向けたのは、青スーツ仮面を薙ぎ倒したオルレアンの聖女だった。

 

「――、ジャンヌ!」

 

 マスターは走った。こいつの狙いはジャンヌか!

 斧を振るわれれば確実に胴が真っ二つにされるだろうが、そんな理屈は知った事じゃない。兎に角無謀でも身体を動かす。それがマスターという少年だった。

 

「先輩!」

「マスター!」

「姑息な!」

 

 そしてそれは、そのままサーヴァント達の行動を誘発する。

 マシュは素早く射線上に入り込み、マリーもガラスの盾を発生させてジャンヌとマスターの護衛に入り、キャスターのジルは素早く海魔の群れを出現させる。

 それこそが彼らの在り方。無茶ばかりする少年を守るため、死力を尽くす。

 ただし時に、それは罠への道筋になる事を、誰もが知っているとしてもだ。

 

「だから貴様らは幸運に助けられたと言うのだ!」

「きゃっ!?」

 

 振るわれた斧は、マリーのガラスによって簡単に弾かれた。恐らく力は入れてなかったのだろう。

 本命はその後。鎧男の腕から赤いレーザーが放たれると、クリスタルの盾をすり抜けてマリーの腕に絡みついたのだ。

 

「マリーさん!」「マリア!」

「大丈夫、毒とかじゃないみたい!」

 

 さながらそれは手錠のような物に見えた。

 レーザーの先端は彼女の手首に、もう片方の末端は鎧男の手首に、まるでブレスレットのように一体化してしまった。

 

「これは――」

「デュエルアンカーと言う。それは貴様らのデュエルディスクと腕に直結し、勝敗が決するまで外れぬ枷だ」

「ダ・ヴィンチちゃん!」

『彼の言っている事は本当だ。ガチで霊基に融合している、力尽くで外そうとするなら片腕無くす事になるよ』

「元より最初から偽りの聖女を討つつもりは無い。将を射んと欲せばまず馬から、邪悪な魔女を滅するには周囲の黒猫から消すのが定石よ」

「邪悪な魔女? それって話の流れからするとジャンヌの事かしら?」

「無論、他に誰がいる」

 

 はっ、と鎧男は鼻で嗤う。

 

「彼の女は国を徒に扇動し、神の名を身勝手に語った村娘。英霊になる事など烏滸がましい。よって、この場に召喚されている彼奴は処刑せねばならないのだ。貴様はその第一歩である」

「随分と勝手な事を言うのね」

「勝手なものか、正論だ」

 

 鎧男の口調は、何を当然の事を、と言わんばかりだった。

 兜でよく見えないが、馬上からマリーを物理的にも精神的にも見下している事はよく伝わって来る。

 

「その女の逸話は知っている筈だ。神の名を勝手に騙り、村娘の情婦でありながら処女を謳い、女でありながら男の装束をまとった挙句に犬と交わり、魔女の断罪を受けながら聖女として崇められた。これは神の寵愛を受ける国ではあってはならぬ。そのような邪悪な売女は四肢を引き裂き、石を投げられながら骨の髄まで焼き尽くされ、海の底に眠るが道理。世界に破滅を齎す魔女なぞ、1分1秒すら生かしておけぬ! 即、死ぬが良い、無辜の民を扇動し国を滅ぼす人非人めが!」

 

 その言葉を聞いたマリーは、ジル・ド・レェが憤慨するより早く、静かに左腕に装着されたデュエルディスクのスイッチを起動させた。それを見た鎧男も、斧をデュエルディスクに変形させて馬の背中に憑りつける。

 マリーの白百合を模った腕輪型のディスクに光が灯り、デュエル開始の準備が整った。

 

「マリーさん?」

「マスター、止めないで。ジャンヌは聖女である以前に、フランスに名を刻む私の大切な友達よ。その友達を――貶すために殺そうとする人は許さない」

 

 それは、博愛主義者である彼女にしてみれば非常に珍しい決意である。

 敵であろうと味方であろうと愛する心を忘れず、己を殺した国すら許す白百合の女が、だ。それがこうも敵意を露わにするというのは滅多にある事では無い。

 

「ジャンヌ・オルタとミスターTとのデュエルは私も見ていました。負けた方がカードになるのでしょう?」

「そうだ」

「では、私をカードにしてみなさい。ジャンヌをカードに出来るのは、私を倒した後です」

「ほざけ、国に捨てられ悪女に仕立てられた愚者の分際で! 王朝の行く末を見た愚劣な案山子の王妃よ、貴様と魔女は横に並べて晒してやろう。感謝せよ、正義と平和の礎になるのだ!」

 

 

「「デュエル!」」

 

 

マリー:LP 4000

鎧男:LP 4000

 

 

「先に行かせて頂くわ。私のターン」

「マリー!」「王妃!」

「デオン、サンソン、手を出さないで。これは友達を貶された私の戦いよ!」

 

 ブレスレット型のディスクを立ち上げ、目の前の空間をなぞる。

 そこに現れたカードの中の1枚、亀型のモンスターの描かれたカードを上から指で叩くように触れた。

 

「裏守備表示でモンスターをセット。これでターンを終了します」

 

 

 

マリー:LP 4000

手札:4枚

EXモンスターゾーン無し

裏守備モンスター1体

魔法・罠無し

 

 

 

「我のターン、ドロー! 手札から永続魔法『悪魔の逃げ水』を発動。1ターンに1度、手札から悪魔族モンスター1体を捨て、攻撃力がそれより100低い悪魔族モンスターを手札に加える」

 

 

 

悪魔の逃げ水(オリジナル)

【永続魔法】

(1):1ターンに1度、手札の悪魔族モンスター1体を捨てて発動できる。

デッキから捨てたモンスターより攻撃力が100低い悪魔族モンスターを手札に加える。

この効果を3回発動した時、このカードを墓地に送る。

 

 

 

「我は手札から『ヘルウェイ・パトロール』を捨てる。『トランス・デーモン』を手札に加え、召喚!」

『キヘェッ!』

「モンスターの効果発動。手札の悪魔族モンスター1体を捨てる事で、攻撃力が500アップ」

 

 

ATK:1500→2000

 

 

「バトル。身の程を知らぬカスの下僕を攻撃!」

 

 赤い目を滾らせた悪魔が、醜悪な臭いを放つ涎と共に紫の爪をマリーのモンスターに立てる事で、裏側のカードが表になる。しかし緑の甲羅にそれが突き立てられる事無く、硬質な音を立てて弾かれてしまった。

 

「このカードは『ジェムタートル』よ」

 

 

DEF:2000

 

 

「このモンスターがリバースした時、デッキから『ジェムナイト・フュージョン』を手札に加えます」

「チッ、生意気な。ここは空気を読んで雑魚を伏せる所だろう」

「あら、先攻を取ったのに読める空気なんてあるのかしら?」

「実に生意気な」

 

 

 

トランス・デーモン(効果モンスター)

星4

闇属性/悪魔族

ATK 1500/DEF 500

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

手札から悪魔族モンスター1体を捨て、このカードの攻撃力をターン終了時まで500アップする。

(2):自分フィールドのこのカードが破壊され墓地へ送られた時、除外されている自分の闇属性モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを手札に加える。

 

 

 

ジェムタートル(効果モンスター)

星4

地属性/岩石族

ATK 0/DEF 2000

リバース:デッキから「ジェムナイト・フュージョン」1枚を手札に加える事ができる。

 

 

 

「カードを1枚伏せ、ターンエンドだ。『トランス・デーモン』の効果は切れる」

 

 

ATK:2000→1500

 

 

 

鎧男:LP 4000

手札:2枚

EXモンスターゾーン無し

トランス・デーモン(ATK:1500)

伏せカード1枚、悪魔の逃げ水(永続魔法)

 

 

 

「私のターン! 『ジェムレシス』を召喚!」

 

 

ATK:1700

 

 

 ドローしたカードをそのまま前に出し、再びデータへ変換する。

 場に出現したアルマジロ型のモンスターはマリーのディスクへエナジーを放ち、その効力を発揮した。

 

「このモンスターを召喚した時、デッキから“ジェムナイト”モンスター1体を手札に加える事ができる。デッキから『ジェムナイト・ラピス』を手札へ」

 

 

 

ジェムレシス(効果モンスター)

星4

地属性/岩石族

ATK 1700/DEF 500

(1):このカードが召喚に成功した時に発動できる。

デッキから「ジェムナイト」モンスター1体を手札に加える。

 

 

 

 このまま攻撃しても敵モンスターは倒せるが、それでは芸が無いしダメージも少ない。

 それに敵に増援が来るかも知れない。ここで手早く倒さなくては。

 

「現れて、キラキラと輝くサーキット! 召喚条件は“ジェム”モンスター2体! 『ジェムレシス』と『ジェムタートル』をセット!」

 

 両手を大きく広げ、空中に回路を展開する。

 場に従えた2体のモンスターは嵐の如きエネルギーの螺旋となり、下段両端のリンクマーカーに吸収された。

 

 

LM:右下・左下

 

 

「リンク召喚! 現れよ、『ジェムナイト・ファントムルーツ』!」

 

 

ATK:1450

 

 

 サーキットの召喚ゲートより飛来したのは、白亜の鎧をまとった青白く輝く天使。ダイヤの如き輝きを放ち、優雅にフィールドに降り立った。

 

「『ファントムルーツ』の効果発動。このカードをリンク召喚した事で、デッキから“ジェムナイト”カードである『ジェムナイト・ガネット』を手札に加える。

 そしてさっき手札に加えた『ジェムナイト・フュージョン』を発動! この効果により、手札の『ジェムナイト・ガネット』と『ジェムナイト・ラピス』を融合!」

 

 

 

ジェムナイト・フュージョン

【通常魔法】

(1):自分の手札・フィールドから、「ジェムナイト」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

(2):このカードが墓地に存在する場合、自分の墓地の「ジェムナイト」モンスター1体を除外して発動できる。

墓地のこのカードを手札に加える。

 

 

 

「玻璃の眼よ、碧き秘石に溶け込み、新たな光に生まれ変わって! 融合召喚!

 紺碧の光をここに! 『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』!」

 

 

ATK:2400

 

 

 続けてフィールドに現れる、美しい青色の女性。巫女服を彷彿とさせる装束をまとい、白亜の天使の斜め後ろにゆっくりと陣取った。

 

「まだまだ行きます。墓地の『ジェムナイト・フュージョン』の効果発動!『ジェムナイト・ラピス』を除外し、墓地のこのカードを手札に戻す!

 そして『ファントムルーツ』の効果発動! ライフを1000ポイント払い、墓地と除外されているモンスターを素材に“ジェムナイト”を融合召喚する! 除外されている『ジェムナイト・ラピス』と、墓地の岩石族『ジェムレシス』をデッキに戻し、融合!」

 

 

 

ジェムナイト・ファントムルーツ(リンク・効果モンスター)

リンク2

地属性/岩石族

ATK 1450

リンクマーカー:左下/右下

「ジェム」モンスター2体

このカード名の(1)(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードがリンク召喚に成功した場合に発動できる。

デッキから「ジェムナイト」カード1枚を手札に加える。

(2):1000LPを払って発動できる。

自分の墓地のカード及び除外されている自分のカードの中から、「ジェムナイト」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターをデッキに戻し、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターはこのターン直接攻撃できない。

 

 

 

「岩石に溶け込む碧き秘石が、幻惑の輝きを導く! 融合召喚! レベル8、『ジェムナイト・ジルコニア』!」

 

 

ATK:2900

マリー:LP 4000→3000

 

 

 更にマリーのフィールドに新たなモンスターが出現する。青い宝石巫女の逆側に、今度は銀色の巨人が地響きと共に陣形に加わった。

 これまでのスリムな2体とは異なり、ハンマーのような太い腕と胴体で、壁のような巨躯を持つ。それが白百合の王妃を庇うような位置に立ち、堂々とした風貌で敵の悪魔を睥睨している。モンスター効果こそ持たないが、パワーのある重量級モンスターである。

 

 

 

ジェムナイト・ジルコニア(融合モンスター)

星8

地属性/岩石族

ATK 2900/DEF 2500

「ジェムナイト」モンスター+岩石族モンスター

 

 

 

「ここで『ラピスラズリ』のモンスター効果発動! 1ターンに1度、デッキまたはEXデッキから“ジェムナイト”を1体墓地に送り、フィールドの特殊召喚されたモンスターの数×500のダメージを与える!」

「敵のフィールドにいるのは通常召喚されたモンスターが1体」

「だが王妃の場には特殊召喚されたモンスターが3体!」

「『ジェムナイト・パーズ』を墓地に送り、1500ポイントのダメージを受けて貰うわ!」

 

 デジタルディスクから融合モンスターが排出され、それが墓地へとエフェクトで消える。

 そこから伝わった光が『ラピスラズリ』の手の内で光の球に固められ、砲丸投げのように鎧男へと放たれた。

 

「だがこの瞬間、墓地の『ダメージ・コンバートデビル』のモンスター効果発動! 効果ダメージを受ける時、墓地から除外して無効にし、1枚ドロー!」

「な!」

 

 

鎧男:LP 4000

 

 

 

ダメージ・コンバートデビル(効果モンスター)(オリジナル)

星5

闇属性/悪魔族

ATK 1900/DEF 0

(1):自分が効果ダメージを受ける時、墓地のこのカードを除外して発動する。

そのダメージを0にし、1枚ドローする。

悪魔族モンスターがフィールドにいない場合、ドローしたカードは除外される。

(2):フィールド上のこのカードが破壊された時に発動できる。

墓地の悪魔族モンスター1体を選択して手札に加える。

 

 

 

「防がれた!」

「『トランス・デーモン』で捨てたカード、この状況を読んでいたか。だが攻撃力の合計値は6750、倒しきれる」

「バトルよ! 『ジェムナイト・ジルコニア』で『トランス・デーモン』を攻撃!」

 

 柱のように太い腕で青白い悪魔が薙ぎ払われる。

 『ファントムルーツ』の効果で融合召喚された『ジルコニア』はこのターン直接攻撃できない。だがモンスター相手なら問題は無い。攻撃力の差は歴然、一発で木端微塵にされてしまった。

 

「チッ!」

 

 

鎧男:LP 4000→2600

 

 

「『トランス・デーモン』の効果により、破壊された事で除外されている『ダメージ・コンバートデビル』を手札に加える!」

「続けて『ファントムルーツ』でダイレクトアタック!」

「ぬうっ!」

 

 

鎧男:LP 2600→1150

 

 

「これで終わりです! 『ラピスラズリ』でダイレクトアタック!」

 

 場のモンスターを失い、大幅にライフを削られる鎧男。だが待っていましたとばかりに最後の一撃に対して伏せカードの発動スイッチを押した。

 

「そうはさせん! リバースカード発動、『カルマの足枷』! このターン中に特殊召喚されたモンスターとの戦闘で我はダメージを受けない!」

「何ですって!?」

「更にダメージを無効にした時、合計が相手モンスターの数値以下の攻撃力になるよう、闇属性モンスターをデッキから墓地に送る!」

 

 

 

カルマの足枷(オリジナル)

【通常罠】

(1):このターン中に特殊召喚されたモンスターの攻撃宣言時に発動できる。

その戦闘で発生する戦闘ダメージを無効にする。

その後、攻撃力の合計が相手フィールドのモンスターの攻撃力の合計以下になるよう、悪魔族モンスターをデッキから2枚まで墓地に送る事ができる。

(2):自分フィールドにモンスターが存在しない時、墓地のこのカードを除外して発動する。

攻撃力2000未満の闇属性モンスター1体を墓地から守備表示で特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。

 

 

 

【墓地へ送られたカード】

『トリック・デーモン』(ATK:1000)

『シャドール・ビースト』(ATK:2200)

 

 

 マズい、とマスターは顔を顰めた。

 送られたあのカードは、墓地に送られた瞬間に発動する優秀な効果を持ったモンスター達だ。

 

「この瞬間、墓地へ送られた2枚のモンスター効果発動! 『トリック・デーモン』の効果! デッキから“デーモン”カード、『戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン』を手札に加える!

 そして『シャドール・ビースト』の効果により、カードを1枚ドローする!」

 

 

 

トリック・デーモン(効果モンスター)

星3

闇属性/悪魔族

ATK 1000/DEF 0

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが効果で墓地へ送られた場合、または戦闘で破壊され墓地へ送られた場合に発動できる。

デッキから「トリック・デーモン」以外の「デーモン」カード1枚を手札に加える。

 

 

 

シャドール・ビースト(リバース・効果モンスター)

星5

闇属性/魔法使い族

ATK 2200//守1700

「シャドール・ビースト」の(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。

(1):このカードがリバースした場合に発動できる。

自分はデッキから2枚ドローする。

その後、手札を1枚捨てる。

(2):このカードが効果で墓地へ送られた場合に発動できる。

自分はデッキから1枚ドローする。

 

 

 

「さぁ、どうする愚王妃?」

「……私はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

 

 

 

マリー:LP 3000

手札:3枚+『ジェムナイト・フュージョン』

ジェムナイト・ファントムルーツ(ATK:1450)

ジェムナイトレディ・ラピスラズリ(ATK:2400・『ファントムルーツ』の左下にリンク)、ジェムナイト・ジルコニア(ATK:2900・『ファントムルーツ』の右下にリンク)

伏せカード1枚

 

 

 

「我のターン、ドロー! さぁ、国に捨てられ民に踏まれ、なお祖国のためと嘯く愚鈍には幕引きが必要だ!」

「テメェ……!」

 

 マスターは先程以上に顔を顰めた。

 この鎧男、黙って聞いていればマリーを貶めるような発言しかしていない。口を開けば愚王妃だの生意気だのと、耳にすれば不愉快な言葉ばかり。

 サーヴァントに対して親愛や友愛の情のようなものを感じている彼にしてみれば、文句の1つも言ってやりたいぐらいである。

 

「永続魔法『悪魔の逃げ水』の効果発動。手札から『ダメージ・コンバートデビル』を捨て、攻撃力1800の『地獄将軍・メフィスト』を手札に加える!

 そして我の場にモンスターがおらず、墓地に闇属性モンスターが5体以上いる事で、『ダーク・クリエイター』を特殊召喚!」

 

 地面に黒い魔法陣が開かれ、中から『ダメージ・コンバートデビル』『シャドール・ビースト』『トリック・デーモン』『トランス・デーモン』『ヘルウェイ・パトロール』のカードが半透明で浮き出た。

 5枚のカードは円陣を組んで地面に配置されると、魔法陣を生み出す。陣の中央に黒い雷が迸ると、そこに開いた夜のように黒い穴から暗黒の創生者が出現した。漆黒の巨神は闇の如き肉体で仁王立ちし、対面するマリーを見下している。

 

 

ATK:2300

 

 

「そして手札から『戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン』を召喚!」

「レベル8のモンスターをいきなり!?」

「『ジェネシス・デーモン』は攻撃力と守備力を半分にする事で、リリース無しで召喚できるのだ!」

 

 

ATK:3000→1500

 

 

「『戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン』の効果発動! 1ターンに1度、手札または墓地の“デーモン”カードを1枚除外し、場のカードを破壊する!

 我は『トリック・デーモン』を除外し、その伏せカードを破壊する!」

「きゃっ!」

 

 君臨する超巨大な悪魔の雷により、マリーの伏せた『ブリリアント・スパーク』が焼き払われる。

 強力なダメージを与えられる罠カードだが、先に割られてしまっては意味が無い。もっとも相手の墓地に『ダメージ・コンバートデビル』がいては、このカードの意味は薄いだろうが。

 

「更に墓地の『ヘルウェイ・パトロール』の効果発動! このカードを除外し、手札から攻撃力2000以下の悪魔族モンスターを特殊召喚する! 出でよ、我自身(・・・)! 『地獄将軍・メフィスト』!」

 

 

ATK:1800

 

 

「先輩、あれって!」

「ああ、同じだ! まさか……!」

 

 次いで召喚される、鉄鎧をつけた馬に乗る悪魔。こちらも馬同様に鉄鎧を纏っており、身の丈程もある巨大な斧を武器として右手に所持している。

 そう、まるで今デュエルをしている敵の鎧男と同じように。

 

「装備魔法『悪魔の斧』を発動し、我に装備。1ターンに1度、仲間の悪魔族を贄とし、その攻撃力の半分を装備モンスターに与える! しかも装備モンスターは自身より低い攻撃力のモンスター効果を受けなくなる! 『ジェネシス・デーモン』よ、砕ける定めならば我にその血肉を捧げよ!」

 

 

 

悪魔の斧(オリジナル)

【装備魔法】

悪魔族モンスターのみ装備可能。

(1):装備モンスターは、自身以下の攻撃力を持つモンスターの効果を受けず、直接攻撃できない。

(2):1ターンに1度、自分フィールドの悪魔族モンスターをリリースして発動できる。

リリースしたモンスターの元々の攻撃力の半分の数値を装備モンスターの攻撃力に加える。

 

 

ATK:1800→3300

 

 

「そして『ダーク・クリエイター』の効果発動。墓地の『シャドール・ビースト』を除外し、贄とした『ジェネシス・デーモン』を復帰させる! 舞い戻り、我が指示に従え!」

『グォオオオオオオッ!』

 

 

ATK:3000

 

 

 禍々しい斧に一度は吸い込まれた巨大な悪魔が、再びフィールドに戻る。

 上手い、と皆は舌を巻いた。

 これで妥協召喚による自壊は消滅し、しかも1度墓地を経由した事で再びフィールドのカードを破壊する効果が使える事になる。

 

「再び効果発動! 『トランス・デーモン』を除外し、その無駄にデカいのには消えて貰う! 砕けろ!」

「『ジルコニア』!」

 

 今度は『ジェムナイト・ジルコニア』が悪魔の雷に焼かれる。『ブリリアント・スパーク』が残っていれば引導火力になったのだが、これでは無理だろう。

 

「状況を逆転されたな。不味い状況だけど大丈夫ですか、マリーさん」

「取り敢えずって所かしら……」

 

 神妙に腕輪型のディスクを構え直し、マリーは敵を見据える。

 今、彼女のライフは3000。敵の攻撃力の総計は8600、こちらは3850ポイント。その差は4850となっており、耐え切れない。『悪魔の斧』にはダイレクトアタックを封じる効果があるが、この状況では前のターンのジルコニア同様に、モンスターを攻撃すれば良いだけだ。

 

「さぁ行くぞ、バトル! 我は『メフィスト』で『ジェムナイトレディ・ラピスラズリ』を攻撃! 消えろ、“ヘルアックス”!!」

「くっ!」

 

 

LP 3000→2400

 

 

「ダメージを与えた事で我自身の効果が発動。貴様の手札を1枚、ランダムに捨てて貰おう」

 

 青い宝石巫女が巨大な斧によって正中線で両断され、その余波で手札のカードが1枚吹き飛ぶ。吹き飛んだカード、『ジェムナイト・オブシディア』は地面に開いた紫の魔法陣へと吸い込まれ、彼女の墓地にカードが1枚増えた。

 

「でもこの瞬間、墓地へ送られた事で『ジェムナイト・オブシディア』の効果発動! 墓地からレベル4以下の通常モンスターを特殊召喚するわ、戻って来て『ジェムナイト・ガネット』!」

 

 

DEF:0

 

 

 だが展開された魔法陣が閉じるより早く、その中より紅蓮の宝石魔人が現れる。運悪く壁を作るカードが選ばれた事に、鎧男は舌打ちした。

 

「運の良い奴め。なら続けて『ダーク・クリエイター』でその雑魚を攻撃! “クリエイト・ダークサンダー”!」

「ありがとう、『ガネット』!」

「そして『ジェネシス・デーモン』で『ファントムルーツ』を攻撃! 失せろ雑魚め!」

「きゃあっ!!」

 

 

LP 2400→850

 

 

 続く黒雷の2連撃で場のモンスターは全て消え去る。これでマリーの場はガラ空き、状況はかなり悪く、敗北色が濃厚となってしまっている。

 しかも墓地に効果ダメージを防ぐモンスターまでいる。手札はまだ十分あるが、ボードアドを考えると非常に厳しい。

 

「我はカードを1枚伏せ、ターンエンドだ」

 

 

 

鎧男:LP 1150

手札:1枚

EXモンスターゾーン無し

ダーク・クリエイター(ATK:2300)、戦慄の凶皇-ジェネシス・デーモン(ATK:3000)、地獄将軍・メフィスト(ATK:3300)

伏せカード1枚、悪魔の呼び水(永続魔法)、悪魔の斧(装備魔法・『地獄将軍・メフィスト』に装備)

 

 

 

「私のターン、ドロー! 自分の場にカードが無く、相手の場にカードが2枚以上ある時、罠カードの『ジェム・カッティング』は手札から発動できる!」

「何、手札からトラップだと!?」

「手札の“ジェムナイト”を墓地に送り、2枚ドローする! 手札の『ジェムナイト・ルマリン』を墓地に送り、ドロー!」

 

 

 

ジェム・カッティング(オリジナル)

【通常罠】

自分フィールドにカードが存在せず、相手フィールドにカードが2枚以上存在する場合、このカードは手札から発動できる。

(1):自分の墓地に「ジェム」カードがある時に発動できる。

手札から「ジェムナイト」モンスター1体を捨て、2枚ドローする。

このターン、自分は「ジェム」モンスター以外をEXデッキから特殊召喚できない。

(2):このカードが相手によって墓地に送られた場合に発動できる。

このカードを自分の場にセットする。

この効果でセットしたこのカードはセットしたターンでも発動でき、フィールドを離れた時ゲームから除外される。

 

 

 

 手札を交換し、ドローしたカードに頷くマリー。

 このカードさえ前のターンに残っていればライフを守れたため、鎧男の「運の良い奴」というのは割と的外れだったりする。しかもこのカードはランダムの結果墓地に行ってもセットできるため、狙われた所でどうという事も無い。

 

「更に手札から永続魔法『ブリリアント・フュージョン』を発動! デッキの『ジェムナイト・サフィア』、『ジェムナイト・ガネット』、『ジェムナイト・エメラル』を墓地に送り、攻撃力と守備力を0にして融合召喚する!」

「チィッ、今度はデッキのモンスターで融合召喚とは、インチキ効果を使いやがって!」

「堅牢なる蒼き意志よ、紅の真実よ、幸運を呼ぶ緑の輝きよ! 今一つになり、新たな光に生まれ変われ!」

 

 美しい青が、輝かしい赤が、調和を保つ緑が神秘の渦に呑まれ、新しい姿へと生まれ変わる。

 それは偉大なる宝石の王者の片割れ。よりシャープなサーベルの如き美の頂点として君臨する、ジェムナイトの王妃とも呼ぶべき者であった。

 

「融合召喚! 咲き誇れ、輝きの淑女! 『ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ』!!」

 

 

ATK:3400→0

 

 

 細身の剣を抜き、威風堂々と君臨する輝ける金剛石の女戦士。攻撃力こそ無くなってしまったが、それを感じさせない程の風格を感じさせる。

 

「『ブリリアント・フュージョン』の効果で融合召喚したモンスターは、手札の魔法カードを使う事で力を取り戻す事ができるわ」

「ハッ、それでも攻撃力3400が1体のみ。次のターンでどうとでも出来るわっ!」

「ならこれでどう? 『ブリリアント・ダイヤ』の効果発動! 自分フィールドの“ジェムナイト”を墓地に送り、エクストラデッキから新たな仲間を呼び出す! “グラインド・フュージョン”!」

「はぁ!?」

 

 

 

ブリリアント・フュージョン

【永続魔法】

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):このカードの発動時に、自分のデッキから「ジェムナイト」融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体を、攻撃力・守備力を0にしてEXデッキから融合召喚する。

このカードがフィールドから離れた時にそのモンスターは破壊される。

(2):1ターンに1度、手札の魔法カード1枚を捨てて発動できる。

このカードの効果で特殊召喚したモンスターの攻撃力・守備力は相手ターン終了時まで元々の数値分アップする。

 

 

 

ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ(融合・効果モンスター)

星10

地属性/岩石族

ATK 3400/DEF 2000

「ジェムナイト」モンスター×3

このカードは上記カードを融合素材にした融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。

自分は「ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ」を1ターンに1度しか特殊召喚できない。

(1):1ターンに1度、自分メインフェイズに発動できる。

自分フィールドの表側表示の「ジェムナイト」モンスター1体を選んで墓地へ送り、エクストラデッキから「ジェムナイト」融合モンスター1体を召喚条件を無視して特殊召喚する。

 

 

 

「『ブリリアント・ダイヤ』、生まれ変わって! 行きますわよ、『ジェムナイトマスター・ダイヤ』!」

『トォアッ!』

 

 自らが出現した渦に再び飲まれた輝きの淑女は、その身を武装したダイヤの騎士に生まれ変わらせる。肉厚な剛剣に宝石を煌めかせる王者の振る舞いは、敵の陣地にいる悪魔達と対面しても全く遜色が無く存在感を放っていた。

 なお『ブリリアント・フュージョン』は対象モンスターがいなくなったが、特に意味も無くフィールドに残っている。

 

「『マスター・ダイヤ』の攻撃力は、自分の墓地の“ジェムナイト”1体につき、100アップ!」

 

 

【マリーの墓地の“ジェムナイト”モンスター】

ジェムナイト・ガネット

ジェムナイト・ガネット

ジェムナイト・パーズ

ジェムナイト・ジルコニア

ジェムナイト・ラピスラズリ

ジェムナイト・オブシディア

ジェムナイト・ファントムルーツ

ジェムナイト・ルマリン

ジェムナイト・サフィア

ジェムナイト・エメラル

ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ

 

 

ATK:2900→4000

 

 

「攻撃力4000だとぉ!?」

「更に『ジェムナイト・アレキサンド』を召喚!」

 

 

ATK:1800

 

 

「リリースして効果発動! デッキから通常モンスターである『ジェムナイト・クリスタ』を特殊召喚します!」

 

 白く乳白色に輝く戦士から、水晶の輝きを持つ大柄な勇士へと姿が変わる。

 煌めく白亜の輝きが闇を照らし、悪魔達を兜の奥から睨み付けた。

 数の上では互角だが、これで盤面の状況はターンプレイヤーであるマリーへと傾いた形になる。

 

「墓地の『パーズ』を除外し、『マスター・ダイヤ』の効果発動! エンドフェイズまで『マスター・ダイヤ』は『パーズ』の名前と効果を得る! これにより2回攻撃できる! 更にバトルで相手モンスターを破壊した時、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを与える!」

「攻撃力4000の2回攻撃だと!? ふざけるな!!」

 

 

 

ジェムナイト・アレキサンド(効果モンスター)

星4

地属性/岩石族

ATK 1800/DEF 1200

(1):このカードをリリースして発動できる。

デッキから「ジェムナイト」通常モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 

ジェムナイトマスター・ダイヤ(融合・効果モンスター)

星9

地属性/岩石族

ATK 2900/DEF 2500

「ジェムナイト」モンスター×3

このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。

(1):このカードの攻撃力は、自分の墓地の「ジェム」モンスターの数×100アップする。

(2):1ターンに1度、自分の墓地のレベル7以下の「ジェムナイト」融合モンスター1体を除外して発動できる。

エンドフェイズまで、このカードは除外したモンスターと同名カードとして扱い、同じ効果を得る。

 

 

 

ジェムナイト・パーズ(融合・効果モンスター)

星6

地属性/雷族

ATK 1800/DEF 1800

「ジェムナイト・ルマリン」+「ジェムナイト」モンスター

このカードは上記カードを融合素材にした融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。

(1):このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃できる。

(2):このカードが戦闘でモンスターを破壊し墓地へ送った場合に発動する。

そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

 

 

 

「バトル! 『マスター・ダイヤ』で『ジェネシス・デーモン』を攻撃!」

「ぐぅっ!」

 

 

LP 1150→150

 

 

 斬!

 9つの宝石がはめられた長剣が巨大な悪魔を袈裟切りにし、爆発四散させる。その爆発の勢いは止まる事無く主たる鎧男に降り注いだ。

 

「ナメるなよ売女が! トラップ発動、『カルマの転輪』! 悪魔族モンスターが破壊された時、そのモンスターを除外し、その攻撃力だけライフを回復する!」

 

 

LP 150→3150

 

 

「ダメージが発生しない!?」

「しまった、墓地にいないから攻撃力を参照できないんだ!」

「その通り! よって我へのダメージ3000は無い!」

 

 

 

カルマの転輪(オリジナル)

【通常罠】

(1):フィールドの悪魔族モンスターが破壊された時に発動できる。

破壊されたモンスターを墓地から除外し、その攻撃力の数値分だけLPを回復する。

(2):悪魔族モンスターが効果で破壊された時、墓地のこのカードを除外して発動する。

破壊されたモンスターを墓地から除外し、その攻撃力の半分だけLPを回復する。

 

 

 

 降り注いだ爆煙は、しかし唐突に消える。

 破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える効果は、そのモンスターが墓地にあって効果を発揮する。いなければ数値を参照できず、バーン効果は不発に終わってしまうのだ。

 

「ではもう1度攻撃するまで! 『マスター・ダイヤ』で貴方自身を攻撃! “マスター・スラッシュ”!」

「ぬぅっ! だが墓地の『ダメージ・コンバートデビル』を除外して効果発動! 効果ダメージを0にし、ドロー!」

 

 再び悪魔を切り裂く『マスター・ダイヤ』。今度も手傷を負わせる事こそできたものの、肝心要の攻撃力分のダメージは再び防がれてしまう。

 なお悪魔族モンスターが場からいなくなってしまったため、ドローした2枚目の『地獄将軍・メフィスト』は除外されてしまった。

 

 

LP 3150→2450

 

 

「攻撃はまだ終わらなくってよ! 『クリスタ』で『ダーク・クリエイター』を攻撃!」

「ぬあっ!」

 

 

LP 2450→2300

 

 

 更に水晶騎士の攻撃により、黒い創世神を粉砕する。

 これで敵の場は壊滅。一方でマリーのフィールドには2体の強力なモンスターがいる。そしてライフは劣っているものの差は1500程度、情勢は掌握できただろう。

 

「私は墓地の『ブリリアント・スパーク』の効果発動。手札の“ジェムナイト”カードと、このカードを交換する。『ジェムナイト・フュージョン』を墓地へ送ります」

 

 

 

ブリリアント・スパーク

【通常罠】

「ブリリアント・スパーク」は1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分フィールドの「ジェムナイト」モンスターが相手モンスターの攻撃または相手の効果で破壊された場合、破壊されたそのモンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。

(2):このカードが墓地に存在する場合、手札の「ジェムナイト」カード1枚を墓地へ送って発動できる。

このカードを手札に加える。

 

 

 

 更にこれで、バックに2枚の伏せカードが加わる。手札こそ使い切ってしまったが、これで盤面は万全に整える事が出来た。

 彼女のライフは1000を切っているが盤面は優勢だ、決着は近い。

 

「そしてカードを2枚伏せて、ターンエンド。『マスター・ダイヤ』の効果終了、得ていた『パーズ』の効果は消えるわ」

 

 

 

マリー:LP 850

手札:0枚

ジェムナイトマスター・ダイヤ(ATK:4000)

ジェムナイト・クリスタ(ATK:2450)

伏せカード2枚、ブリリアント・フュージョン(永続魔法・対象不在)

 

 

 

「マリーさん、このまま行けば勝てますよね、先輩」

「このターンさえ凌げれば、確実にね」

「我のターン、ドロー! 『闇の誘惑』を発動、デッキから2枚ドローし、闇属性モンスター『デーモン・ソルジャー』を除外!」

 

 勢いよくデータのカードを鎧男が引く。

 しかし敵の手札は2枚、如何に上位者のデュエリストでもこの状況から手札2枚で全て覆すのは容易では無い。

 だが。

 

「く、クク……。貴様の負けだ、傲岸なペテン王妃! 貴様の首飾り同様、木端微塵にしてくれるわ! ハーハハハハハハハハハ!!」

「!」

 

 鎧男は声高く大笑いし、嘗てマリーに着せられた冤罪を引き合いに出した。

 

「魔法カード『悪魔の囁き』を発動。除外されている悪魔族モンスターを2体まで手札に加え、相手に1枚ドローさせて互いに確認する。そしてこの効果で手札に加わったカードの効果はこのターン無効になる! 我は除外されている『ダメージ・コンバートデビル』と我自身を回収するぞ!」

「こちらはドロー! ドローしたのは『ジェムナイト・サフィア』!」

「そして永続魔法『悪魔の逃げ水』の効果により、手札の『ダメージ・コンバートデビル』を捨て、デッキから攻撃力1800の我自身を手札に加える! そして3度効果を使った事で、このカードは自壊!」

 

 墓地ポケットへと消える悪魔族と、デッキから手札に加わる別の悪魔族。これでデュエル中に敵は『地獄将軍・メフィスト』を3枚ともプレイした事になる。

 同時に自壊条件が整い、永続魔法が砕け散った。

 

「更に墓地の『カルマの足枷』の効果発動! 自分の場にモンスターがいない事で、墓地の我自身が復活!」

 

 

DEF:1700

 

 

 そしてフィールドに舞い戻る敵自身。これで敵の手札に2枚、場に1体の同名モンスターが揃ったが……。

 いずれも、マリーのモンスターを倒すには遠く及ばない。

 

「しかし効果は無効化されているし、攻撃力は低い。王妃の陣営は突破できない」

「オマケに守備表示だよ、その場凌ぎじゃないか」

「そう思うか、愚鈍な裏切り者の竜騎士に白痴にして痴呆の屑騎士。我の真の切り札を見せてやろう!」

 

 逐一この男は誰かを貶さなければ息が出来ないのか。誰もがそう鎧男を睨む中、彼は唯一明かされていない手札を切って開示した。

 

「魔法カード『融合』! 場と手札の3体の我自身を融合する!」

「何ですって!?」

「絶対なる悪魔の将軍達よ! 今その真の力を解放し敵を殲滅せよ!」

 

 神秘の渦に溶け込む敵自身の化身。それは決してモンスターカードとして具現化したソリッドヴィジョンだけの話では無く、敵である鎧男そのものもまた大いなるエネルギーの奔流をまとって姿を変えて行っていた。

 鎧はより禍々しく、斧はより命を刈り取るのに最適な形に。

 その一瞬で首を刎ねられるであろう凶悪な刃の前に、マリーは背中の冷や汗を首筋への熱を感じた。

 

「融合召喚ッ! これぞ我の真の力、その眼に焼き付け脳ごと焼け死ね魔女どもめ! レベル10、『地獄大将軍(ヘルジェネラルロード)・メフィストフレイム』!!」

 

 

To be continued

 




拙者、一昔前の使い勝手の悪そうなカードを勝手に強くするの大好き侍
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