Fate/Duel Order 作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民
「融合召喚ッ! これぞ我の真の力、その眼に焼き付け脳ごと焼け死ね魔女どもめ! レベル10、『
ATK:2200
地響きと共に燃え上がる髪を携え、敵の真のエースが姿を現す。全身を覆うフルプレートアーマーは銀から燃えるような赤地に変わっており、巨大で肉厚な斧はより鋭利かつ重厚な漆黒のハルバードに変わっていた。
乗っている馬の鎧は主とは対照的に黒く、その首は2つに増えている。口元からは白濁して泡立った唾液が垂れ、足元の草をジュウジュウと溶かしている。
「ここで3体融合……。でも攻撃力は2200、4000の『マスター・ダイヤ』の敵じゃないわ!」
「甘い甘い、甘いわぁ! 『メフィストフレイム』の効果発動! 特殊召喚に成功した時、相手の場の魔法・罠カードを全て破壊! 更にその枚数×600ポイント、攻撃力がアップする!!」
「な!?」
勢いよく振るわれる巨大な斧、そこから放たれる紅炎によって、マリーの伏せカードが焼き払われる。咄嗟にマリーはディスクのスイッチを押し、伏せられた内の片方を発動させた。
「トラップ発動、『ジェム・エンハンス』! フィールドの『ジェムナイト・クリスタ』をリリースし、墓地の『ブリリアント・ダイヤ』を特殊召喚するわ!」
ジェム・エンハンス
【通常罠】
自分フィールド上の「ジェムナイト」と名のついたモンスター1体をリリースし、自分の墓地の「ジェムナイト」と名のついたモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターを墓地から特殊召喚する。
「無駄な足掻きだ! 3枚破壊した事で、攻撃力1800ポイントアップ!」
地獄炎大将軍・メフィストフレイム ATK:2200→4000
ジェムナイトレディ・ブリリアント・ダイヤ ATK:3400
「攻撃力4000!」
「マリーさんの『マスター・ダイヤ』と並びました!」
フィールドに並び立つ2体のダイヤモンドの戦士に相対する、獄炎の悪魔。
状況はほぼ互角に見えるが……。
「ですが、攻撃力は『マスター・ダイヤ』と互角であり、『ブリリアント・ダイヤ』を破壊してもマリーは倒せません」
「寧ろ、論理的に考えると墓地に“ジェムナイト”が増えるので、論理的に考えて攻撃すれば次のターンでエースを失う事になりますね」
「攻撃表示で出したのは貫通を警戒しての事でしょうね。素材が素材だもの、警戒して当然だわ。仮に攻撃しなくとも、次のターンであのモンスターは倒される」
そう、並ぶだけじゃ駄目なのだ。
『マスター・ダイヤ』は墓地の仲間の数だけ強くなる。『ブリリアント・ダイヤ』を倒しては攻撃力が100上がり、均衡を崩す事になってしまう。
逆に『マスター・ダイヤ』を倒そうとしても待っているのは相撃ち。手札が無い状況では、次のターンで直接攻撃を受けて敗北するのみだ。
「そう思うか、愚かな魔女共よ。三姉妹揃って脳味噌は空っぽのようだなぁ?」
その筈なのに。
嫌味しか言わない鎧男は、ニヤリと笑った。
「バトルだ! 我が悪魔の炎で、『ブリリアント・ダイヤ』を攻撃! 消えろぉ!」
「っ!!」
巨大な、巨木と見紛う程の大斧が振るわれ、真っ二つにされる細身の女騎士。強烈な熱波と衝撃波が発生するが、マリーはそれを両腕を交差して防ぐ。
LP 850→250
元々守備的な能力が高いマリーだ、先程までの大ダメージに比べれば、この600程度のダメージは大した事は無い。
「墓地に“ジェムナイト”が増えた事で、『マスター・ダイヤ』の攻撃力が100アップするわ!」
ATK:4000→4100
倒れた屍から力を得て、金剛石の大騎士はより強くなる。
だが己を超えたと言うのに、敵の鎧男は『ブリリアント・ダイヤ』の亡骸を手にニヤリと嘲笑した。
「無駄だ」
「え?」
「我自身の効果発動! ぬぅんっ!!」
見下すような笑みを浮かべた『メフィストフレイム』は、倒したダイヤの騎士の遺体から首だけを削ぎ取って胴体を地面に叩きつける。そして残った首を鷲掴みにすると、まるで親の仇のようにそれを握り潰した。
叩きつけた胴体は双頭の馬に命じて執拗に、何度も踏みつけさせる。キラキラと輝いていた鎧が蹄と泥でグチャグチャになり、見る影も無くなるまで、何度も、何度でも。
やがて『ブリリアント・ダイヤ』の面影が無くなったと見るや、大型のハルバートで塊となったそれを真っ二つにして焼き尽くした。
「ク、ククク! 無様な亡骸よな! 貴様らのような救える物が欠片も無い愚者共には相応しい末路よ! 死体も無く、死んだ事も悟られず、ただただ畜生に食われる事も無い! 愚か過ぎて嗤える結末よ、ククカカカカカハハハハハハハハハ!!」
「死者を弄ぶなんて、貴方正気なの!?」
「何を憤っている? 次は貴様だ、愚妃よ! 我が戦闘で相手にダメージを与えた時、相手の手札を全て確認! そしてその中から1枚を選択し、墓地の同じ種類のカード3枚と共に除外するのだ!」
「何ですって!?」
「不味い! マリアの手札は、さっきドローさせられた『ジェムナイト・サフィア』だ!」
「墓地からモンスターカードを3枚除外って事は――!」
マリーの手札は先程確認された『ジェムナイト・サフィア』。
そしてその効果により同種、つまりモンスターカードが3枚、『ジェムナイト・ジルコニア』、『ジェムナイト・クリスタ』、『ジェムナイト・ルマリン』が、手札の『ジェムナイト・サフィア』と共に除外される。
そしてこれはただの除外では無い。これが意味するのは――
「これで墓地のモンスターの数が減り、貴様のモンスターの攻撃力は300ダウン!」
「くっ!」
ATK:4100→3800
「更に豪華特典として、我が真なる姿は2度攻撃できる! 消えろ雑魚が! “ヘルズ・ステイク”!!」
「きゃあっ!!」
ゴウッ!と燃える一撃が決まった。
続く攻撃は顔面を掴んだ火刑。力を弱められた金剛石の騎士は顔を掴んだ鎧の手を外す事が出来ず、全身を紅蓮の焔で灰になるまで丹念に焼き尽くされ、原型を失う。
LP 250→50
地獄大将軍・メフィストフレイム(融合・効果モンスター)(オリジナル)
星10
闇属性/悪魔族
ATK 2200/DEF 2600
「地獄将軍・メフィスト」×3
(1):このカードは2回攻撃できる。
(2):このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、攻撃力が守備力を越えた分の倍の数値だけ戦闘ダメージを与える。
(3):このカードが融合召喚に成功した時に発動する。
相手の場に存在する魔法・罠カードを全て破壊し、破壊した枚数×600攻撃力がアップする。
(4):相手に戦闘ダメージを与えた時、相手の手札を全て確認する。
その後、その中から1枚を選び、相手の墓地に存在する同じ種類のカード3枚とそのカードを除外する。
「……っ!」
「ま、マリーさん!」「マリア!」「王妃!」
激しい炎に晒され、白百合の王妃は思わず膝を付く。辛うじてライフは残ったが霊基にダメージを負ったのか、呼吸は荒い。悲鳴を上げないのは、流石と言うべきだろうか。
「手札が無ければ、墓地のカードを除外する効果は使えん。だが墓地の『悪魔の囁き』の効果発動。デッキから1枚ドローする。良きカードだ、これを伏せよう」
悪魔の囁き(オリジナル)
【通常魔法】
このカード名の(1)、(2)の効果は1ターンに1度しか発動できない。
(1):除外されている悪魔族モンスター2体を選択して発動する。
そのカードを手札に加え、相手は1枚ドローしてお互いに確認する。
この効果で手札に加わったカードの効果はこのターン無効になる。
(2):相手に悪魔族モンスターが直接攻撃以外で戦闘ダメージを与えたターン、墓地からこのカードを除外して発動する。
デッキから1枚ドローする。
鎧男が手札に加え、伏せたカードは『ヘイト・バスター』だった。
悪魔族モンスターが攻撃される時、両者のモンスターを破壊し、相手にダメージを与えるカード。マリーには見えていないが、これは実質戦闘を封じられてしまったも同然。効果ダメージは墓地の『ダメージ・コンバートデビル』が防いでしまう。
「く……っ!」
「マリア、大丈夫……じゃ無さそうだね。巻き返せるかい?」
「少し、難しいかも知れないわ……」
フィールドの状況は、マリーが完全劣勢。今彼女の場にカードは無く、手札もゼロ。ライフは風前の灯となっている。
対する敵、『地獄大将軍・メフィストフレイム』は何らかの耐性こそ持っていないが、伏せカードが1枚と墓地のバーンを防ぐカードが1枚。現状で扱えるカードの枚数の差は3枚だ。
「『ジェムナイト・フュージョン』を使えば、『ブリリアント・スパーク』をサルベージできるよ。でも……」
「『メフィストフレイム』には恐らく貫通能力があります、破壊がトリガーになる『ブリリアント・スパーク』では相性が……」
アストルフォの言葉にマシュが返す。
3体融合しただけあり、あのモンスターは強力だ。守勢を許さず、敵の手を崩す屈強な斧は、恐らくマリーに次のターンを許さないだろう。
「我はこれでターンエンド。さぁ、貴様のターンだ。さっさと何もせず、我にターンを回すが良い」
鎧男:LP 2300
手札:0枚
地獄大将軍・メフィストフレイム(ATK:4000)
メインモンスターゾーン:無し
伏せカード1枚(『ヘイト・バスター』)
状況は絶望的。
希望を託すとするなら、このターンのドロー1枚のみ。だが完成したこの盤面ではどうする事もできない。
「……ふぅ」
そしてそれは、マリーもまた理解しているだろう。
だがマリーは動揺を欠片も見せず、舞い上がった砂埃と煤を服から払い落としてデッキトップとして排出されたカードに指をかけた。
「全ては、このドローにかかっているようね」
「マリー……」
「この状況を逆転できるカードは――、私のデッキにはただ1枚のみ」
彼女の瞳に、一切の恐怖は無い。ただこの1回の引きに全てをかける価値があると知っている。そしてそれを成し遂げると覚悟を決めた眼差しがあるのみ。
口の端から零れる一滴の血すら、ピジョンブラッドのルビーのように美しい。
「マリー、もうやめましょう! これ以上は――」
「大丈夫、私を信じて、ジャンヌ」
「でもっ!」
「ジャンヌ、マリーさんの眼を見て」
「……!」
絶体絶命のこの状況で、しかしマリーの目には強い光があった。
その畏怖を全く抱いていないその眼差しに、ジャンヌは根拠の無い希望を感じ取り、逆に『メフィストフレイム』は思わずたじろぐ。
あれは追い詰められた獲物の目じゃない。これから反撃を始める英雄の目だ、と。
「何だ、その目は」
「行くわよ」
「今更その状態で何ができる」
「私の――」
「貴様のような金に汚い売女は大人しく負けていろ、カスが!!」
「タァーンッ!!」
手首を軽くスナップさせ、引いたカードを見る。
そこにあったのは、間違いなく彼女が待ち望んだ緑色のカードがあった。
「……ジャンヌ」
「はい」
「マスター」
「うん」
「行くわよ!」
「はい!」
「思いっきりブチかませ!」
そして望んだカードが来たなら、後は勝つのみ!
「マリーさん、俺の、俺達の力を!」
「ええ! 私は墓地の魔法カード『ジェムナイト・フュージョン』の効果発動! 『サフィア』を除外し、墓地のこのカードを手札に戻すわ!」
墓地から排出されるキーカードである融合の源。
勝つための準備を進めるべく、次の手をマリーは打つ。
「続けて墓地の『ブリリアント・スパーク』の効果! この『ジェムナイト・フュージョン』と墓地のこのカードを入れ替える!
もう1度『ジェムナイト・フュージョン』の効果発動! 墓地の『ガネット』を除外し、再び手札に戻します!」
緑のカードは赤のカードに。そしてまた緑のカードを手札に。
これで準備は整った。更にマリーはドローカードを選んで指で弾き、効果発動のスイッチを入れる。
「私は永続魔法『ジェム・マイニング』を発動! 除外された“ジェムナイト”を効果を無効にして特殊召喚するわ! 更に手札を2枚墓地に送り、除外されている“ジェムナイト”達をもう2体呼び戻す!」
手札に戻した『ジェムナイト・フュージョン』と『ブリリアント・スパーク』が再び墓地へと戻る。
そして入れ替わるように、除外されたモンスター達が次元の壁を越えて場に戻って来た。主であるマリーを守るように、その煌めきを万全に直した『ジェムナイト・ジルコニア』、『ジェムナイト・クリスタ』、『ジェムナイト・サフィア』が鎧男の前に立ち上がるのであった。
ATK:2900
ATK:2450
ATK:1900
「そんな雑魚共に何ができる!」
「まだよ、『ジェム・マイニング』の更なる効果! このカードを墓地に送り、“ジェムナイト”モンスター全てのレベルを、場の1体に合わせる! 3体のレベルを『ジェムナイト・ジルコニア』と同じ8にする!」
ジェム・マイニング(オリジナル)
【永続魔法】
このカード名の(1)、(2)の効果はそれぞれ1ターンに1度しか発動できない。
(1):このカードを発動した時の効果処理として、墓地に存在する、または除外されている「ジェムナイト」モンスター1体を特殊召喚する。
この時、手札を任意の枚数墓地に送る事で、その枚数だけ元々のレベルが異なる「ジェムナイト」モンスターを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効になり攻撃できない。
(2):このカードをフィールドから墓地に送り、自分フィールドの「ジェム」モンスター1体を対象として発動する。
このターン、自分フィールドの「ジェムナイト」モンスターは全て選択したモンスターと同じレベルになる。
このターン、自分はEXデッキからモンスターを1度しか特殊召喚できない。
☆7→8
☆4→8
「レベル8が3体!?」
「私はレベル8のモンスター3体で、オーバーレイ!」
準備万端、後は仕上げをご覧じろ。
光となりて銀河へ消えた3人の宝石騎士達。渦巻くエナジーはXの力を得て、万象を阻む力の壁すら突破する更なる強き存在へ覚醒を促す。
「運命に刻まれた輝きよ、愛しき光と共に踊り続け、時空を超えて再び煌めけ!」
☆8×☆8×☆8=★8
「エクシーズ召喚! ランク8、『
現れるのは新しい力を得たマリー・アントワネット。キラキラと輝くエフェクトを纏い、普段の赤や白とは異なる、濃い水色のドレスを身に着けている。その周囲に追従するオーバーレイ・ユニットの振りまく光の粉が、更なる美しい煌めきを演出していた。
ATK:2800
「自身召喚だと!?」
「ふふ、マスターが“Storm Access”で呼び出せば、私達は特別な覚醒を用いる事無く自分の化身を呼べるのよ?」
「ちっ!? だが攻撃力は所詮2800!」
「私自身のエクシーズ召喚に成功した時、デッキから永続魔法『
ATK:2800→3300
「ハンッ、たった500! ヘボすぎて足らぬにも程があるわ!」
「更に私自身がフィールドにいる時、この数値に1000ポイントが加わる!」
「ン何っ!?」
ATK:3300→4300
「マリーの攻撃力が、相手を上回った!」
「まだ! 更に私自身の効果発動! 1ターンに1度、自分のライフを1000回復させるか、相手モンスターの効果を無効にして攻撃力を1000下げる! これにより貴方自身、『メフィストフレイム』の攻撃力は合計2800ダウン!」
「ば、バカな!?」
ATK:4000→2200→1200
マリーの背後に出現した水晶宮殿の輝きが闇を照らし、悪しき力を削ぎ落とす。斧は罅割れ鎮火し、鎧は錆びつき、馬は瞳から光を失う。フランスの栄光を背負った女の前に、悪魔の力は完全に屈したのだ。
如何に口汚く王女を罵ろうと、愛と国を想う気高き彼女の前には、言葉の刃はただの1つとて届かなかったのである。
愛すべき輝きは永遠に(オリジナル)
【永続魔法】
(1):自分フィールドのモンスターの攻撃力は500アップする。
(2):「マリー・アントワネット」モンスターがいる時、自分フィールドのモンスターの攻撃力・守備力は1000アップする。
(3):「マリー・アントワネット」モンスターが効果でフィールドを離れた時に発動できる。
このカードをデッキに戻し、自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を1000アップさせる。
「さぁ、行きますわよ? 覚悟はよろしくて?」
準備は整ったと言わんばかりにマリーは言い放ち、同時に指を鳴らす。
パチン、と乾いた音が響くと同時に、鎧男の全身はガラスの中に閉じ込められた。
「バトルよ! 私自身で『メフィストフレイム』を攻撃!」
美しい水晶に包まれ、身動きが封じられる敵将軍。そしてその『メフィストフレイム』に、ガラスの馬に乗ったマリーが一直線に突貫して行く。
攻撃力の差は3100、敵ライフは2300、これが決まれば彼女の勝利だ。
「甘い甘い甘いんだよ、ゴミが! 『ヘイト・バスター』をくれてやらぁ!!」
しかしそうは問屋が卸さない。鎧男はガラスに囚われていない腕を使って伏せカードの発動を確定させる。数日前にはジャンヌ・オルタも使った、悪魔族の地雷に用いる強力なトラップである。
「悪魔族モンスターが攻撃対象になった時、互いのバトルするモンスターを破壊し、貴様に攻撃モンスターの攻撃力分のダメージを与える! 2800のダメージでくたばれやぁ!!」
「――そうはさせないわ」
だがマリーは冷静にそれを対処する。そのために、罠が張られていると分かっているがために、わざわざ自分自身を呼び出したのだから。
「私自身の効果発動! オーバーレイ・ユニットを1つ使い、今から3度まで私は破壊されない!」
「何だとぉ!!?」
騎英霊 マリー・アントワネット:ORU 3→2
迫る悪意の波動を、星を砕いて得た輝きで防ぐ王妃。鎧男の憎悪の破壊は、彼女には届かず終わった。
これで同時に破壊できない事で、両者共に生き残った。悪魔の仕掛けた卑劣な罠は、輝く王妃の煌めきを砕く事ができず、戦闘はそのまま継続されるのである。
「な、何故だ! 何故、何の価値も無い魔女如きのために、貴様はそこまでできる!?」
「当然、それは私が、ジャンヌの友達だからよ!」
「ハァ!? ふざけた理由を――」
「これで終わりよ! さんざめく花のように、陽のように! “
「ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
そうして過たずガラスの馬の蹄は傲慢な口の悪い鎧男に突き刺さる。割れたガラスは鎧を微塵に引き裂き、突貫する馬の頭は露出した肉体を突き破る。
最後の最後まで王妃の尊厳に唾を吐き続けた悪魔は、哀れキラキラと美しいガラスにまみれ、粉砕されたのであった。
LP 2300→0
マリー:WIN
騎英霊 マリー・アントワネット(エクシーズ・効果モンスター)(オリジナル)
ランク8
光属性/戦士族
ATK 2800/DEF 3500
レベル8モンスター×3体以上
(1):このカードのX召喚に成功した時に発動できる。
デッキ・墓地から「愛すべき輝きは永遠に」を発動する。
(2):このカードのX素材を1つ取り除いて発動できる。
このカードは3回まで破壊されない。
(3):1ターンに1度、自分の魔法・罠ゾーンに「愛すべき輝きは永遠に」がある場合、以下の効果のどちらかを発動できる。
●自分のLPを1000回復し、ターン終了時まで効果ダメージを受けない。
●相手フィールドのモンスター1体を選び、その効果を無効にして攻撃力を1000下げる。
☆
「あり、えぬ……」
崩れかける鎧のスキマから、断末魔の声が漏れる。
己の敗北を受け入れられない愚かな男の末路が、そこにあった。
「はぁ……っ、はぁ……っ、はぁ……っ!!」
「が、は……!」
燃え盛る地獄の炎も、宝石騎士達を薙ぎ払った極悪な斧も消え、既に元の姿に戻った鎧男。
相対するはフランスの運命に翻弄された王妃、マリー・アントワネット。アヴェンジャーの息子を持ちつつも、しかして恨みと折り合いをつけた女傑である。
息も絶え絶え、命辛々と言った様子ではあるが、それでも勝利である事に変わりは無い。鎧どころか肉も馬も武器も崩壊している男の、敗北だ。
「何故だ……、我が……貴様、ごときに……っ!」
「ふ、ふふ……、っ」
「マリー!」「マリア!」「マリー!」「王妃!」「マリーさん!」
今にも崩れ落ちそうなマリーを、一番近くにいた親友のジャンヌが駆け寄って支える。続いてサロン・ド・マリーと茶化されている面々が、最後にマスターが駆け寄り礼装の回復能力で治療を始める。
「どう、かしら? 私、ちゃんと、友情を守れた、かしら……?」
「充分です、マリー。貴女は私の最高の友達です!」
「それは、良かったわ……」
ボロボロの身体で力無く微笑むマリー。電子世界では礼装の回復が追い付かないのか、中々ドロドロになった王妃の身体は治癒しない。
「あり、えぬ……、これは、嘘だ……、夢だ……。もう1人、魔女……魔女を、もう1人……」
遺言か譫言か、そんな言葉を残しながら、肉体がチリに帰って行く『地獄将軍・メフィスト』。
そんな倒した敵が最後の抵抗をしないか、油断無く視線をくれてやっていたセイバーのジル・ド・レェとブラダマンテが奇妙な事に気付いた。
「これって……」
「カードですかな?」
ボロボロと崩れる鎧男こと『地獄将軍・メフィスト』。
その、人間で言えば心臓にあたる箇所に、掌に納まるサイズのカードが現れたのである。
「?」
思わずセイバーのジルがそれ手に取ってみると、その途端『地獄将軍・メフィスト』の崩壊は加速し、ものの数秒で砂山のような物に変わってしまった。
「なっ!?」
「これは!?」
だがそれ以上に2人は驚いた事がある。
ジルが手にしたその長方形の物質、何を隠そうそれは1枚のデュエルモンスターズのカードであった。
カードの名前は――『擬似霊核』。電脳キャメロットで満月のバーサーカーが披露した、サーヴァントとしての力を一時的に付与するシロモノだ。
そして、それは重なっていただけで、カードはもう2枚あった。
「こちら、は――」
「キャスターの私並に悪趣味な……!」
2枚目は市販されているカード、『地獄将軍・メフィスト』。つまり先程まで戦っていた相手だ。
これだけなら、擬似霊核とデュエルモンスターズのカードを合わせてより上位のNPCを作成していたと判断できるだろう。
しかし3枚目のカードが問題だった。
「ジル元帥、これって……」
「ええ、しかしマスターには内密に。歴史の残滓にして戦いの世に生きた我らなら兎も角、平和な今の世に生きるマスターには――」
「ごめん、もう見た」
「「っ!?」」
ギョッとした顔で振り返る2人の視界には、確かにカルデアのマスターの姿が。マリーの治療を終えて来たのだろう、奥の方では王妃が草陰で横になっていた。
背後に接近する者に気付かぬとは耄碌したかと悔やむが、もう遅い。マスターはその琥珀色の瞳に全てを納めてしまっている。
「――人間か、あの鎧男の材料は」
「……ええ、その通りです」
観念したのか、ブラダマンテは素直にマスターの言葉を肯定した。
3枚目のカード、それは会社員風の男性が映っている物であった。国籍は恐らく日本か、そうでなければ中国あたりだろう。
と言っても写真を利用しているのでは無さそうだ。会社員風の男性はまるでカードがガラスの壁のように、出してくれと訴えているような悲痛な表情とポージングをしている。
ここに先日奇襲を仕掛けてきたグラサンウニ頭の事を加味すれば、答えは1つしかない。
このカードには、本当に誰かが閉じ込められているのだ。
「ミスターTって奴のデュエルディスクには、俺の“Storm Access”に似たシステムが組み込まれているって話だったよね」
「マスター、それは……」
「うん、良いんだ、分かってる」
カルデアのマスターのスキルは、召喚のためのゲートをカードに転写するもの。言わばポータブルで召喚を可能にするものである。
ミスターTのはその逆だ。マスターが召喚なら、彼は封印。呼び出す物と封じる物。
その封じられた魂がどうなるかは分からなかったが、これで敵が擬似霊核を作成した意味と一緒に理解できた。
「こういう事か、成程な……」
ギリ、と青年は歯噛みする。
酷い事をすると吐き捨てるのは簡単だ。しかしそれでは現状は何も解決しない。心の中に渦巻くマイナスの感情を押し込むと、素早く礼装の通信システムを起動した。
「ダ・ヴィンチちゃん」
『はいよ』
「これ、解析できる?」
『どれだい?』
「これ」
『OK、ディスクのスキャナーを起動させて。そう、そのボタン。
これは、ふむふむ……。ちょっとそれ、デュエルディスクに差し込んでくれるかい?』
「こう?」
展開したディスクに飲み込まれる3枚のカード。ディスクに電子の模様が走り、モニターによく分からない機械言語による解析結果が表示され始める。
カリカリとデータが処理される音が暫く響く事およそ1分、ダ・ヴィンチの難しそうな声が通信から届いた。
『うーん、凄いなこれは。1人の技術者として素直に称賛するよ』
「この人、カードから解放できそう?」
『カルデアで専用の装置を作れば可能だね。でもその閉じ込めたカードを解析するのに始まり、演算や逆封印の計算その他諸々……、作るのに10日はかかるだろう。そしてこの手の技術はイタチゴッコになりやすいんだ。敵もバージョンアップを繰り返すだろうから、完成しても精度はあまり期待しないでおくれ』
「そっか……」
一応は作ってくれるらしいが、つまりこの電脳特異点の中では元に戻せないという事だろう。
『それとね、私は君に謝罪しなくちゃいけない』
「え?」
『マスター君、私は正直言って敵の技術力を見下していた。どんなサーヴァントにも劣る擬似霊核なんて粗悪品を作るんだから、どうせ大した事無いだろう、ってね』
「違うの?」
『ああ、ハズレもハズレ、大外れだ。あれは多分、全力を投下していなかったからだよ。ワザとか本命じゃないからかまでは分からないけどね』
天才曰く、敵の本命の技術はこの、人間を封印したカードの方らしい。
『マスター君は、これがどんな物か分かる?』
「――推測だけど、人間と英霊代わりのモンスターカードで作成した擬似サーヴァント、って所?」
『その通りさ。エーテルの代わりに別のエネルギーを用いた擬似サーヴァントもどきだ』
通常、サーヴァントの身体は霊核という心臓に相当する重要な器官と、霊基という肉体に相当する肉体で構成され、そこに更に普通の人間同様に五臓六腑や脳、骨や筋肉がある。
これらを構築しているのが人間ならタンパク質やカルシウム、サーヴァントならエーテルという魔法的な物質、というのが大まかな差異だ。この電脳世界では
『一方で、この敵……、いや敵なのか? NPCと言うべきかな? 兎に角、戦った『地獄将軍・メフィスト』の肉体はエーテル代わりの霊子じゃない。純粋なデータの仮想体なんだ』
「つ、つまり?」
『分からないかい? 擬似霊核でサーヴァントもどきにするなら、エーテルなり霊子なりで身体を作らないとサーヴァントとして成立しない。でもこれは違う、データマテリアルとデュエルエナジーとい
う特殊なリソースで構成している。これは現実世界には無いものだ。そしてこの2つを用いて構成した肉体は、
「……この電脳世界でしか活動できないって事?」
『その通り。さて、それでは何故違うのか。答えは簡単、エーテルで構成するより安上がりだからだ』
「安、上がりぃ?」
思わずマスターは素っ頓狂な声を上げた。
この期に及んで理由が安上がりとは、節約したいなら擬似霊核の製作費を抑えた方が良いのではと思ってしまう。
『安上がりを莫迦にしちゃいけないよ。軍隊や私兵団を持つって事は、相応の費用がかかるって事だ。それが少なくて済むのは決して小さくない』
「ま、まぁそうだけど……」
『考えてみたまえ。この兵士はサーヴァント1人と拮抗し得るだけの力を持つのに、その材料はコモンカードと人間1人、そして十数万円。1人の人間を兵士として使役するよりずっと安上がりだぜ?』
「む……」
ダ・ヴィンチの言う事は正しい。
もしこの『地獄将軍・メフィスト』が、人間のコスプレした姿だったとしよう。まず人件費がかかる。主として給料や食費、被服費だ。生身で戦うワケにもいかないので武器――今回の場合はデュエルディスクとデッキだ――を調達する必要もある。保険等も必要になるか。
ここにプラスして兵士として戦うためのノウハウの講義や、講師の人件費、寝泊まりするための宿代や寝具代が加わり、もし兵士が昇格でもしようものなら更に給与やボーナスが嵩むのだ。
言うまでも無いが、10万円や20万円なんて軽く消し飛ぶ。
だが、この擬似サーヴァントもどきならどうだろう。
まず肉体は電気で作られ、データ上の世界でのみ生きている。このため衣食住に必要な費用は大きく、ゼロに近しい数値まで減少するだろう。更にディスクを肉体の一部にして自身を召喚し、デッキは自身をモチーフにしているため、武器の調達も不要だ。
精神面もデータをインストールする等で対処すれば戦技講師を手配する必要も無い。これは『メフィスト』と戦う前に襲って来たNPCを見れば明らかである。1と0の集合体でも戦えるのだ、そこにサーヴァントとしての特性を与えればどうなるか、言うまでも無い。
しかも肉体の状況をデータとして管理できると考えると、肉体の不調や交戦状況、はたまた裏切り等も監視している可能性すらある。敵はどうやら、予想より戦力もバックアップも充実していると考えられるだろう。
「……あれ?」
ここで1つ、マスターには疑問点が浮かび上がった。
「ダ・ヴィンチちゃん、『地獄将軍・メフィスト』が見た目で、擬似霊核がサーヴァントもどきとしての肉体を作っている。これは合ってる?」
『合ってるよ、多分ね』
「じゃあ……、これは何? どうして人間を閉じ込めたカードも一緒に入ってたの? 擬似サーヴァントでもないのに?」
マスターは怪訝な顔で、人間の閉じ込められたカードを手に取る。
彼の疑問は当然の産物だ。
擬似サーヴァントは基本、人間の肉体にサーヴァントの能力を組み合わせ、別の存在を生み出すという技法によるもの。言い換えるなら、必ずそこには『人間+英霊』という組み合わせが必要になる。これは先日出会った満月のバーサーカーや、精神性が元の人間のものをそのまま引き継いだ諸葛孔明とて例外では無い。
だが、ダ・ヴィンチの解析が正しければ、今回の敵にはそれは不要な筈である。
「英霊を憑依させるワケじゃないから依り代は要らない。肉体はデータマテリアルとデュエルエナジーっていうエネルギーで賄っている。肉体のコアは擬似霊核。見た目はデュエルモンスターズのカードのイラスト。じゃあ人間を封じ込めたカードは? これは一体何に使っているんだろう?」
『うん、私もそれが気になっていたんだ。君の言う通り、理論上この敵には人間の肉体なんて要らない。精神面だって、NPCだという“アンティーク・ギア”使い達を見ればデータで作った仮の人格で十二分なんだ。でも使っているとなると、何か意味があるんだろう』
「どんな?」
『さて、推測もつかないね。今の状況じゃ何を言っても妄想の範囲内さ』
肩を竦める稀代の天才。
丁度そのタイミングでマリーが休息の終了を申し出たため、マスターは通信を一旦終了するのであった。
To be continued
エーテル:普通の聖杯戦争でサーヴァントを形作るエネルギー
霊子:EXTRAシリーズの電脳世界(霊子虚構世界)で、エーテルの代わりにサーヴァントを構成するエネルギー
超絶大雑把にこう考えてくだちい