Fate/Duel Order   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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推奨BGM:スピードデュエル

ウチの清姫ちゃんは切り込み隊長的な子です。一番最初に絆10になったエースです。


Turn:2 風を掴め

 電子の世界を抜けたそこは、どこか近未来的な街並みのフレーム世界の上空だった。

 実際にメガロポリスが存在しているワケでは無く、飽く迄それを模した空間なのだろうが、それでも圧巻される程の精密な都市であると一同は思った。

 

「来い、D・ボード!」

 

 マスターの掛け声に合わせ、虚空の彼方からスノーボードのような乗り物が飛来する。

 これがダ・ヴィンチちゃんが急造した、データ空間内を飛んで移動できるアイテム、D・ボードだ。立香のイメージカラーに合わせてあるのか、白を基調に黒いラインで模様が描かれていた。

 ボードにバランス良く着地すると、青年は様子を判断するため周囲を見回す。自分の周りには頼もしい仲間達が同じくボードに乗って、自分に従ってくれている。彼らがいる限り、自分は絶対に負けはしない。

 そう思った時だった。

 

 

――ビュゴォウッ!!

 

 

「うわっ!?」

「マスター!」

「先輩!」

 

 突如としてマスターの乗るボードが強風に浚われた。

 否、強風などという生易しいものでは無い。これは嵐だ。取り込むモノ全てを蹂躙し粉々にする破壊の風だ。竜巻だ。

 

「センパイ、右に舵を切って!」

「ぐっ!」

 

 BBの咄嗟の判断に無我夢中で従い、ボードを方向転換。辛うじて暴風域を脱出する事に成功した。

 

「ふぃ……。皆、大丈夫?」

 

 九死に一生を得た、とホッと一息を吐いて皆の無事を確認するも、10秒前までいた筈の仲間の姿がどこにも無い。

 右を向けば、無機質なコンクリートビルの壁。

 左を向けば、これまた無機質なコンクリートビルの壁。

 前には先程まで自分が巻き込まれていた大嵐。

 下は地面、上はデータで作られた天井らしきモノ。道は、後ろにあるのみ。

 

「……一本道に放り込まれたってワケか」

 

 これが敵の策略なら、思っていた以上に厄介だ。こちらの突入をこんなにも素早く察知し、脆弱なマスターだけを切り離すとは。

 カルデアと通信を試みるが、このデータの嵐によってジャミングされているのか、映像には砂嵐しか入らない。

 独りは寂しいんだよな、とポツリと呟くマスター。基本的に賑やかなカルデアに所属する彼にとって、孤独というのは猛毒だった。

 

「あら、独りではありませんよ」

「え?」

 

 溜息を吐きそうになった青年に耳に、聞きなれた幼げなボイスが届いた。

 振り返ると、そこには緑色のボードに乗った和服の少女がいた。戦闘時は最大限に狂化もとい強化された影響で銀髪に変わるが、今は竜の鱗を連想させるような淡い黄緑色の髪のバーサーカー。上品に閉じた扇子を片手に、にこにこと微笑んでいる。

 

「清姫! そうか、ストーキングスキルか!」

「はい、萌葱(葱の芽)色ではなく萌黄(鮮やかな黄緑)色の髪、清姫ちゃんです♪」

 

 愛し続けて1000年、紀州出身の竜娘がそこにいた。

 

「間一髪でした。嵐のスキマを縫ってこちらに飛び込んだのです。もし0.1秒でも判断が遅れていたら、あの竜巻に飲み込まれてズタズタにされていました。私、確かに竜ですが雨風を司る力なんてありませんのよ?」

 

 苦笑する清姫。

 よく見ると彼女のボードは嵐で傷付いており、頬にも強い風で乱れた髪が張り付いている。自分のために彼女は無茶をしてくれたのだろう、あの大竜巻の僅かなスキマに飛び込むとは、狂化のなせる業か。

 普段ならそのバーサーカーとしての有り方には恐怖を感じるが、今は有り難かった。

 

「皆は?」

「残念ながら、わたくしだけです。皆さんは安全な別のルートを探っている所かと」

「そうか」

 

 責めるべき事では無い。仮に強引に来られた所で、傷付いた状態では戦力にはならない。それなら多少時間がかかったとしても、安全に来て貰った方が良い。

 

「旦那様、いざ戦いとなれば私を存分にお使い下さい。私はますたぁの剣であり盾、伴侶であり用心棒、しからばあらゆる敵を焼き払いましょう。そのために、これを」

 

 シュイン、と清姫の手から光が放られる。それは過たずマスターの元へ向かい、ディスクのホルスターにあるエクストラデッキに収まった。

 

「札の戦いは常に1対1、わたくしがどれ程ますたぁを愛していようと恋焦がれていようと、これを覆す事はまかり通りません。この思いが憎しみに変わろうと悲しみに変わろうと、そして再び愛に昇華しようとも。

 故に、わたくしは、いえわたくし達はBBさんの提案で、その1対1の中で助力する方法を取る事を選びました」

「と言うと?」

「それは……、いえ説明より前に、後ろです」

 

 後ろを指差され、青年は振り返る。そこには一本道を直進して来る『クラッキング・ドラゴン』と、その頭に乗る敵の姿があった。

 

「お出ましってワケか」

「ええ、はい」

「……ただの勘だが、こいつが必要になるだろう」

 

 デュエルディスクを撫でながら、マスターは不敵に笑う。

 

「その時は助けてくれるって事で良いんだよな?」

「勿論です」

 

 力強く頷く清姫を見て、マスターは笑みを深めた。嘘を嫌う彼女の言葉、それは十二分に信ずるに値するものであった。

 その数秒後、目の前で『クラッキング・ドラゴン』が停止。頭の上に乗っている悪漢が見下すような視線を投げかける。

 

「貴様がカルデアのマスターだな?」

「そうだと言ったら?」

「好都合だ、貴様に用がある」

 

 シンプルな白のローブに、灰色を基調とした黄色のラインの入った仮面。特徴的なものは何も無く、精々が成人している男性であるという事くらいだ。

 

「カルデアの機材を内側から壊していたのに、俺が目的だと?」

「そうだ。雇い主の意向でな、貴様の肉体が必要なんだ」

「肉体?」

 

 妙な言い方をする、とマスターは訝しむ。

 命では無く、肉体?

 どういう意味かと考えていると、後ろで睨みを利かせていた清姫が何かに気付いたような声を上げた。

 

「ハッ、まさか!」

「何か分かったの?」

「あの男の雇い主、旦那様をわたくしから寝取るつもりなのでは!?」

「はい……?」

 

 百歩譲って清姫の『私から』宣言は流すとして、寝取るとはまた突飛でよろしくない予測である。

 

「だってそうでしょう、命では無く体は欲しいという事は『お前を昏倒させて性的に襲ってやるぜゲッヘッヘ』と言っているようなもの! 雇われたあの変な意匠の仮面の男もその意向に賛同して、お零れを狙っているに違いありませんわ!」

「何でや」

 

 何を言っているんだこの耳年増は。

 

「何でだよ! オレは男に興味なんてねぇよ!」

「嘘ですね!」

「違うわ!!」

「うわぁ、慌てるとか怪しくありませんか旦那様?」

「確かに。あの変なマスクヤロー、略して変態ヤローそういう趣味か。困ったな、俺はノーマルなんだが。将来的には綺麗な嫁さん貰って平和にのんびり暮らしたいのに」

「あ、良いですねそれ。小さくても庭付きの家で、庭に白い犬とか三毛猫とか飼うとなお良いかも知れません」

「それ採用。しかし参ったな、それなりにサーヴァントの皆には人気だとは思ってたけど、まさか見ず知らずの、しかも男にまでモテるとは」

「うーん、わたくし的に衆道はどちらかと言えばアリですが……」

「ぶっ殺すぞ貴様らぁ!!」

 

 がなり立てる侵入者。まぁいきなり性癖を貶められれば当然である。

 ちなみにカルデアのマスター、別にLGBTについて悪感情は持ってない。

 彼に尋ねても「同性が好きなの? ふーん、それで? それって何か悪い事?」という返事が返って来るだろう。

 清姫は清姫で衆道が普通だった時代の少女なので、特に忌避感は無かったりするのであった。

 

「さて、話を戻そう。お前が同性愛者かどうかって話なんて興味無い」

「貴様ァ!?」

「そう怒るな、話が進まない」

 

 どの口が言うか。

 

「アンタは俺の肉体が欲しいって言ったよな? つまり意識をデータ化させて飛ばしている今が絶好のチャンスの筈だ。が、わざわざ俺の目の前に来たって事はアンタは囮か、さもなくばこっちにいる俺にも何か用事があるんだろう?」

「如何にも、私は貴様の意識データも必要になると踏んでいる。出来る傭兵は言われずしても必要な物は集めておくものだ。故に、貴様をここで打ちのめして意識データを回収。肉体も貰うという算段だ。

 この――デュエルでな!」

 

 ジャキッ、とデュエルディスクを見せる悪漢。

 成程、とマスターは何となく敵の全貌の一部を察した。

 どういう理屈かは分からないが、彼らはカードで、デュエルモンスターズで、肉体を奪って利用するという意味不明な行動に意味を持たせているようである。

 ならば、それを拒否するのは愚の骨頂。もし断ればもっと直接的な手段に出るかも知れない。そうなる前に、こちらに希望がある段階で打ち倒す。それが最善だろう。

 

「良いだろう、受けて立つ」

「マスター、ご健闘を!」

「ああ」

 

 光になって消える清姫。

 それと同時にデータの風が吹き始め、川のような流れを形成した。誰に言われるでも無く、侵入者もマスターも、データの風に乗って川下りのように走り出す。

 

「さぁ、風に乗れ小僧! 貴様の最後の花を咲かすお膳立てだ!」

「最後かどうか、それはやってみなくちゃ分からないさ。行くぞ!」

 

 

 

「「スピードデュエル!」」

 

 

 

立香:LP 4000

敵:LP 4000

 

 

  ☆

 

 

『風に乗る決闘、“すぴーどでゅえる”……。話には聞いた事がありましたが、実物を見るのは初めてです』

「ん、そうか?」

 

 隣で霊体化した清姫が不安そうに呟く。まぁ誰しも新しいルールには不安を覚えるものだ。

 かく言うマスターもスピードデュエルを経験した事は無い。おおまかなルールを知っている程度である。

 

「マスターデュエルと違ってスピードデュエルは、モンスターと魔法・罠のゾーンの両端が無くなっていて狭くなっているんだ。初期手札は4枚、メインフェイズ2は無し」

『シンプルですね』

「その分、戦闘によるボードアドバンテージが非常に重要になってくる。ミラフォなんて受ければ敗北色濃厚さ」

 

 通常のデュエルに於いて、アドバンテージが5枚以上開いた状態でターンを渡すと敗北は免れないと言われる。特にメインフェイズ2の無いスピードデュエルではバトルフェイズでの損失を取り戻すには次のターンを待たなくてはならず、仮にガラ空きのフィールドで相手ターンを迎えれば確実に終わる。

 

「慎重に行くよ。皆とバラバラになった上に敵に討たれて入れ替わられた、なんてシャレにもならない」

『はい』

 

 

 

 

 

「先攻は私だ」

 

 侵入者と開始したスピードデュエル。

 悪漢はデータ形式のディスクの方式に従い、自分の目の前を撫でるように手札を表示させた。

 

「完璧な手札だ! 貴様には万に一つも勝ち目は無い!」

「御託は良い、かかって来い!」

「良かろう、私はスキル『スパム・ワーム』を発動!」

「いきなりスキルだと!?」

『スキル?』

 

 こてん、と小首を傾げる清姫に、マスターは手短に説明する。

 

「簡単に言えば、カード以外でプレイヤーが使う事が出来るルール上の補助システムだ。手札交換、モンスターのパワーアップ、ダメージの軽減……。基本的にデュエル中に1度きりだが、ごく一部には例外的に2度までだったり、効果が弱い代わりに回数制限が無いものもある」

『成程』

 

 さて、どんなスキルだ、と睨むマスターを前に、侵入者は悠々と手札を1枚選択した。

 

「手札を1枚捨てて、デッキ・手札・墓地から『ハック・ワーム』を可能な限り特殊召喚できる! 来い、3匹の『ハック・ワーム』!」

 

 

DEF:0

DEF:0

DEF:0

 

 

「いきなりモンスターが3体!」

「この『ハック・ワーム』は次のターンまで破壊されない。ただし、代わりに私はモンスターの特殊召喚ができなくなる」

 

 ギッギッ、と不気味な音を立てつつ相手の場に横並びになる灰色の機械虫。

 特殊召喚できないとなれば、とマスターは次の展開を読んだ。

 

「そして私は2体の『ハック・ワーム』をリリース! アドバンス召喚! 我が究極にして最強の龍! 『クラッキング・ドラゴン』!!」

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

 

 

ATK:3000

 

 

 やはりか、と青年は舌打ちしそうな顔で敵の新たなモンスターを臨む。

 鉄塊の虫から生まれた巨大なワーム状のドラゴン。どちらも機械族だが、成長体とも言えるこの姿は非常に厄介な存在である。

 

『旦那様、このモンスターは……!』

「ああ、まさか1ターン目からお出ましとは!」

 

 最初から攻撃力3000を手札消費2枚、これは中々プレッシャーのかかる状況であると言える。

 

「ふははははは、『クラッキング・ドラゴン』が存在する限り、私は無敵! 最強の戦士だ!」

 

 

 

スパム・ワーム(オリジナル)

【スキル】

このスキルはデュエル中1度しか発動できない。

(1):自分フィールドにカードが1枚もない時、手札を1枚捨てて発動する。

デッキ、手札、墓地から可能な限り「ハック・ワーム」を特殊召喚する。

次の自分のターンまで自分はモンスターを特殊召喚できず、自分フィールドの「ハック・ワーム」は破壊されない。

 

 

 

ハック・ワーム(効果モンスター)

星1

闇属性/機械族

ATK 400/DEF 0

(1):相手フィールドにモンスターが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。

 

 

 

「まだだ! 魔法カード『DDoS(ディー・ドス)アタック』発動! このカードの発動時、デッキから同名カードを任意の枚数だけ墓地に送り、自分の場の機械族モンスター1体のレベル×100のダメージを送った枚数分与える!」

「何!?」

 

 

 

DDoSアタック(アニメオリジナル)

【通常魔法】

(1):自分フィールドの機械族モンスター1体を対象として発動できる。

自分のデッキから「DDoSアタック」を任意の枚数選んで墓地へ送る。

この効果で墓地へ送った「DDoSアタック」の数×対象モンスターのレベル×100ダメージを相手に与える。

 

 

 

「デッキから2枚墓地に送り、『クラッキング・ドラゴン』のレベル8×100を2枚分、1600ダメージを喰らえ!」

「ぐぁああああああ!?」

『ますたぁ!?』

 

 DDoS――即ち複数のマシンから一斉に処理負荷をかけてサーバを停止させる攻撃の如く、放射状に広がるビームを乱打する。

 システムの内部と共に攻撃を受け、マスターのライフは大きく減らされた。

 

 

立香:LP 4000→2400

 

 

「私はこれでターンエンド」

 

 

 

侵入者:LP 4000

手札:1枚

フィールド

EXモンスターゾーン無し

クラッキング・ドラゴン(ATK:3000)、ハック・ワーム(DEF:0)

魔法・罠無し

 

 

 

『大きいですね、あの黒いの……』

「デカいだけじゃない。奴はレベル8以下のモンスターとの戦闘で破壊されない効果を持っている。考えなしに突っ込んでも意味が無い」

 

 さてどう叩き潰してやるべきか、と考えた時、デュエルディスクの通信機能に着信が入った。

 

『あー、もしもしマスター君かい?』

「その声はダ・ヴィンチちゃん? ちょっと遅かったね」

 

 モニター機能はノイズばかりで安定していないが、その音声は十二分に届く。間違いなくカルデアの天才技師の二代目、ダ・ヴィンチちゃんの声だ。

 

『状況はどうなってる? こっちからじゃモニターできないんだ』

「丁度交戦中。よく分からないけどデュエルで戦ってるよ」

『なんと』

「で、だ。問題が1つ発生した」

 

 自分の初期手札4枚を改めて見る。

 右から順に緑色のカード、緑色のカード、緑色のカード、緑色のカード……。

 

「モンスターがいない、手札事故った」

『え゛。それ大丈夫なのかい?』

「正直言って大丈夫じゃない。このドローに全てを賭ける」

 

 最初のドローからして運任せとは、何ともついていない。

 おまけに手札の内の2枚は見知らぬカードだ。電子世界にダイブした際、デッキの中身が変わったとでも言うのだろうか。

 

「俺のターン……、ドロー!」

 

 引いたのは待望のモンスターカード。しかし初めて見る、もっと言えばOCGカードとして登録されてすらいないカードだ。

 正直言ってこんなカードは見た事も聞いた事も無い。どうやって紛れ込んだのか、どう使うのか、色々と時間が欲しい程である。

 

――だが、これを使うしか無い!

 

 マスターは手札に加わったカードを直接ディスクのブレードに配置する。召喚ゲートを通り、呼び出されたのは……。

 

 

「俺は手札から『黎明の手』を召喚!」

 

 

ATK:200

 

 

 なんと種火クエストでよく倒す、何だかよく分からない右腕型のモンスターであった。

 

 

  ☆

 

 

 黎明の手。

 それはサーヴァント達を成長させるアイテムをドロップする、シミュレーションシステム内のエネミーだ。

 カルデアで召喚されるサーヴァントは、その曖昧な召喚方式の弊害なのか召喚されてすぐは殆ど力が無い。シミュレーターの戦闘訓練と、そこで生まれる産物を収得する事で本来の力を徐々に取り戻して行く。嘗てバニヤンを製造した名も無いサムシングは、これを怠った事で惨敗したのである。

 

(まさか、それがモンスターとして現れるとはね)

 

 意外や意外だったが、この場では兎に角ありがたい。このカード1枚で上等な戦術を組み込める。

 

「召喚成功時、効果発動! デッキから、新たな『黎明の手』を手札に加える!」

「ならばこちらも『クラッキング・ドラゴン』の効果発動! 相手がモンスターを召喚・特殊召喚した時、そのレベル×200ポイント攻撃力を下げ、同じ数値分のダメージをお前に与える! “クラック・フォール”!」

「ッ!」

 

 

立香:LP 2400→2200

 

 

 

クラッキング・ドラゴン(効果モンスター)

星8

闇属性/機械族

ATK 3000/DEF 0

(1):このカードは、このカードのレベル以下のレベルを持つモンスターとの戦闘では破壊されない。

(2):このカードがモンスターゾーンに存在し、相手がモンスター1体のみを召喚・特殊召喚した時に発動できる。

そのモンスターの攻撃力はターン終了時までそのレベル×200ダウンし、ダウンした数値分だけ相手にダメージを与える。

 

 

 

 デッキから新たなカードを加えると同時、敵の放つ衝撃波がズシリと重い振動を全身に与える。

 1600も痛かったが、たった200ダメージでも中々に響く。一度に大き過ぎるダメージを受けるのは良くないと、少年は判断し、次のカードを切った。

 

「続けて手札から魔法カード『融合』を発動!」

「何、『融合』だと!?」

「融合するのは、フィールドと手札の2体の『黎明の手』! そして『黎明の手』はサーヴァントを呼び出す時、必要な召喚素材の種族・属性に自動で変化する!」

 

 

 

 

黎明の手(効果モンスター)(オリジナル)

星1

光属性/魔法使い族

ATK 200/DEF 200

このカード名の(1)の効果は1ターンに1度しか発動できない。

(1):このカードの召喚・特殊召喚に成功した時に発動する。デッキから「黎明の手」を1枚手札に加える。

(2):エクストラデッキから「サーヴァント」を特殊召喚する場合、このカードはその特殊召喚に必要な正規の召喚素材の種族・属性のモンスターとして扱う事ができる。

 

 

 

融合

【通常魔法】

(1):自分の手札・フィールドから、融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを墓地へ送り、その融合モンスター1体をEXデッキから融合召喚する。

 

 

 

「偉大なる英傑の歴史に光が灯る時、今ここに新たな伝説が生まれる! その契約は今ここに!」

 

 これは次善の策。最善はきっと耐え忍ぶ事。

 だが次のターンになって改善するとは思えない。自分のスキルも設定していない事を思い出したし、ここは出来るだけ早く片付けるのが得策だ。

 召喚の渦を通り抜け、光となった腕達は新たな姿を形作る。

 その姿は1人の少女。一般人の出でありながらも竜へと変化した鉄扇を持つ娘。竜巻の中にすら突っ込んでくれる、カルデアでも古株の英霊であり、マスターが特に強く信を置いている英霊の内の1人。

 

「融合召喚! 焼き払え、レベル7! 『狂英霊(バーサーカー・サーヴァント) 清姫』!!」

「一番槍、参ります!」

 

 

ATK:2100

 

 

 言うまでもない、エクストラデッキから飛び出して来てくれたのはバーサーカーの清姫だ。

 愛が重い良妻賢母、想えば一途の恋する乙女。フランスはオルレアンからの縁であり、一時退去の際に特に説得に苦労したサーヴァントの1人である。

 

「愚か者め! 『クラッキング・ドラゴン』の効果発動! “クラック・フォール”!」

『GAAAAAAAAA!』

「ぐぅっ!」

「きゃあっ!」

 

 清姫のレベルは7、よって1400のダメージをマスターとサーヴァントが共に受ける事になる。初期ライフ4000では、この数値はかなり痛い。

 

 

立香:LP 2200→800

清姫 ATK:2100→700

 

 

「どうだ、これで貴様のライフも残り僅か。下級モンスターすら呼べぬ有様よ!」

「何の、魔法カード『フォース』を発動! フィールドのモンスター1体の攻撃力の半分を、別のモンスターに譲渡する!

 俺は『クラッキング・ドラゴン』を選択し、その攻撃力の半分1500を清姫に与える!」

 

 

 

フォース

【通常魔法】

(1):フィールドの表側表示モンスター2体を対象として発動できる。

ターン終了時まで、対象のモンスター1体の攻撃力を半分にし、その数値分もう1体のモンスターの攻撃力をアップする。

 

 

 

クラッキング・ドラゴン ATK:3000→1500

清姫 ATK:700→2200

 

 

「それがどうした! 『クラッキング・ドラゴン』はバトルで破壊されない! それだけ高い代償を支払って700ダメージとは、とんだ雑魚だな!」

「慌てるな、まだバトルの前準備だ。清姫の効果発動! 清姫!!」

「はい、わたくし自身の効果を発動! 1ターンに1度、相手の場のモンスターの数×300のダメージを与え、同じ数値分だけ相手モンスターの攻撃力を下げます!」

「「“ストーキング・フレイム”!」」

 

 ゴウッ!と少女から吐き出される青白い炎。坊主一人を簡単に(蒸し)焼き殺せる炎は巨大な機械龍にも有効だったのか、その灰色の身を後ろにいるプレイヤーごと灼熱に燃やした。

 

「チィッ!」

 

 

侵入者 LP:4000→3400

クラッキング・ドラゴン ATK:1500→900

ハック・ワーム ATK:400→0

 

 

「これで攻撃力の差は更に600広がった! カードを伏せて、バトルだ! 清姫、『クラッキング・ドラゴン』に攻撃!」

「破壊は出来ずとも、だめぇじは受けて頂きます!」

「「“転身火生三昧”!!」」

 

 清姫の宝具名が紡がれると同時、少女の全身が青く輝く炎に包まれる。数分だけ低級の竜になれる渾身の一撃は、『クラッキング・ドラゴン』を砕く事は敵わずとも、苦悶の声をあげさせ大きく 弱らせた。

 

「ぐぬぉおおおおおおおおお!!」

 

 

侵入者:LP 3400→2100

 

 

「俺はこれでターンエンド。この瞬間、『フォース』と『クラッキング・ドラゴン』の効果は終了。攻撃力は元に戻る」

「しかし、わたくしの効果は永続的に続きます。600下がった攻撃力は戻りませんわ」

 

 

清姫 ATK:2200→2100

クラッキング・ドラゴン ATK:900→2400

 

 

 

立香:LP 800

手札:1枚

フィールド

清姫(ATK:2100)

メインモンスターゾーン無し

伏せカード1枚

 

 

 

「私のターン、ドロー!」

 

 防御札は伏せた。敵の手札は2枚、防げる筈だ。

 

「私は『サイバー・ヴァリー』を召喚」

 

 

ATK:0

 

 

「『サイバー・ヴァリー』の効果発動。このモンスターと『ハック・ワーム』を除外し、カードを2枚ドローする!」

 

 チッ、とマスターは舌打ちした。

 このターンで『ハック・ワーム』の破壊耐性は終了する。それを上手く処理され、オマケにドローに変換された。これで敵の手札は3枚、最悪負けるかも知れない。

 更には清姫の毎ターン発動するダメージ源もこれで半減、600のバーンとデバフが300に下がってしまった事になる。

 

 

 

サイバー・ヴァリー(効果モンスター)

星1

光属性/機械族

ATK 0/DEF 0

以下の効果から1つを選択して発動できる。

●このカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを除外して発動できる。

デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する。

●自分のメインフェイズ時に発動できる。

このカードと自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して除外し、その後デッキからカードを2枚ドローする。

●自分のメインフェイズ時に、自分の墓地のカード1枚を選択して発動できる。

このカードと手札1枚を除外し、その後選択したカードをデッキの一番上に戻す。

 

 

 

「ドロー! くく、これは素晴らしい。私の勝利はより盤石な物となった! 私はカードを1枚伏せ、手札から永続魔法『一族の結束』を発動!」

「げっ!?」

 

 光を放ち、フィールドに現れる侵入者の魔法カード。墓地のモンスターの元々の種族が統一されている場合、フィールドの同じ種族のモンスターを強化する効果がある。

 

「これで『クラッキング・ドラゴン』の攻撃力は800アップして2400から3200だ! 折角下げた攻撃力も無駄だったな!」

 

 

ATK:2400→3200

 

 

「不味いですよマスター! 攻撃力の差は1100、旦那様の残りライフは800、攻撃されれば……!」

「その通り、ここまでのようだな、カルデアのマスターよ!」

 

 マスターは残った自分の手札を見た。そこにあるのは通常魔法カードが1枚。当然、相手ターンなのに手札から発動できるなんて器用な効果は持っていない。

 

「この世界でのダメージは現実世界にフィードバックされる。ライフが尽きるような攻撃を受ければ、貴様もタダでは済まんだろう。まぁそのフィードバックさせる精神はここで木端微塵にして捕獲するのだがな、ハハハハハハハ!」

「くっ!」

「バトル! 喰らえ、その雑魚小娘ごと吹き飛ぶが良い! “トラフィック・ブラスト”!!」

 

 青白い閃光のような炎を吐く『クラッキング・ドラゴン』。自らの生む炎の眩しく輝く高熱を前に、思わず清姫は悲鳴のような声をあげた。

 

「ま、ますたぁ!!」

「リバースカード、オープン! 速攻魔法『マスターコードA-「緊急回避」』発動!」

 

 だがマスターは慌てない。予め伏せておいた防御札を開示すると、唯一の仲間である清姫を半透明のバリアで覆う。

 

「このターン、自分フィールドのモンスターは合計3回まで戦闘・効果では破壊されず、また俺が受けるダメージも半分にする!」

「ならば半分でもダメージを受けて貰う! 1100の半分、550をな!!」

 

 

立香 LP:800→250

 

 

「く、ぐぅうううううう!」

 

 バリアによって四散した炎に焼かれ、辛うじて大怪我は避けられた。だがライフは残り僅かとなり、心身を大きく消耗している。次の攻撃を耐える事はできないだろう。

 

 

 

マスターコードA-「緊急回避」(オリジナル)

【速攻魔法】

(1):自分フィールドのモンスターはこのターン、3回まで破壊されない。

またこのターン自分が受ける戦闘・効果ダメージは半分になる。

(2):墓地のこのカードを除外して発動する。デッキから同名以外の「マスターコードA」カードを1枚手札に加える。

この効果はこのカードが墓地に送られたターンには発動できない。

 

 

 

「はぁ……、はぁ……っ! まだ、まだぁ……!」

 

 息も絶え絶え、満身創痍と化した立香。それでも、その瞳はまだ強い光を失っておらず、決して諦めてなどいなかった。

 そんな彼の様子を見て、侵入者は不服そうに鼻を鳴らす。

 

「ふん、何だその目は。まさかまだ自分が勝てると思っているのか?」

「当たり、前だ……。俺はまだ負けてない!」

「生意気な! 貴様1人が諦めずに何ができる! 所詮お前なんぞサーヴァント無しじゃ何も出来んただの一般人だろうが、図に乗るな取るに足らん無価値な屑めが!!」

 

 それに対し、マスターはすぐには答えられなかった。

 彼自身、何か思い当たる節があったのだろう。だが数秒目を閉じて敵の言葉を受け止めると、やがてゆっくりと、しかし力強く言の葉を紡ぐ。

 

「……確かに、俺自身には何の力も無い。街中に放り出せば埋もれるような、何の変哲も無い一般人だ」

 

 だが、と言葉を続けた。

 

「それとこれと、何の関係があるんだ? 俺が一般人である事と、お前が攻撃している事、何の関係がある!」

 

 そう、マスターは確かにサーヴァント無しでは何もできない一般人だ。初歩的な魔術1つ、まともに使えない。

 しかしその事と侵入者がクラッキングをしている事に、何の因果も無い。彼の言葉はまるきり的外れな罵倒に他ならないのである。

 

「生意気な、たかが偶然で英雄になった小僧め」

「偶然で結構。英雄を目指した覚えは無い」

「なら次のターンでそんな屑モンスターごと貴様を消し飛ばし、真の強者の力を見せてやろう。ターン終了だ!」

 

 

 

侵入者:LP 2100

手札:1枚

フィールド

EXモンスターゾーン無し

クラッキング・ドラゴン(ATK:3200)

伏せカード1枚、一族の結束(永続魔法)

 

 

 

 ニヤ、と侵入者は呼吸を必死に整えているカルデアのマスターを見て、邪悪に笑う。

 

(貴様のライフは残り250、レベル2以上のモンスターを呼び出せばそこで終わる。貴様にできるのは裏守備でモンスターを伏せる事のみ。だが私の伏せたカードは『メテオ・レイン』、私のモンスター全てに貫通ダメージを与えるカード。これで守備は無意味だ!)

 

 更に手札を見て、その笑みを深める。

 

(どうにかして『クラッキング・ドラゴン』を破壊しても無駄。私の残った手札は『オーバーロード・フュージョン』、最初のターンに捨てた『サイバー・ドラゴン』を使い、凶悪な融合召喚を可能にする。

 まさしく貴様には、万に一つも勝ち目は無いという事だ!)

 

 スキル発動時に捨てた『サイバー・ドラゴン』を素材に、闇属性機械族モンスターを融合召喚できる『オーバーロード・フュージョン』と来れば、何を召喚しようとしているかは自明の理。このターンにそれを出さなかったのは、召喚する予定のモンスターに、自分の場を一掃してしまうデメリットがあるからだ。それが無ければ――或いは伏せカードが破壊耐性を与えるカードだと知っていれば――このターンで紛れも無くマスターは敗北していただろう。

 無論、そんな駆け引きもまたデュエルの醍醐味であり、勝てなかったのは単なる運としか言えないのだが。

 

 

 

メテオ・レイン

【通常罠】

このターン自分のモンスターが守備表示モンスターを攻撃した時にその守備力を攻撃力が越えていれば、その数値だけ相手に戦闘ダメージを与える。

 

 

 

オーバーロード・フュージョン

【通常魔法】

(1):自分のフィールド・墓地から、機械族・闇属性の融合モンスターカードによって決められた融合素材モンスターを除外し、その融合モンスター1体を自分のEXデッキから融合召喚する。

 

 

 

「俺の……」

 

 ドロー前に手札をチラと見る。

 残ったカードは通常魔法『黎明回帰(れいめいかいき)』。墓地に眠る同名の“黎明”モンスターを2体蘇生させるカード。これでは状況を引っ繰り返す事はできない。

 この引きに己の全霊を賭け、青年は力いっぱいカードを捲った。

 

「ターン!」

 

 引いたカードは――

 

「『死者蘇生』……!」

 

 デュエルモンスターズを代表する1枚、特殊な十字架・アンクを模した万能蘇生カードだ。

 青年は冷静にディスクのボタンを押し、互いの墓地のカードをモニターで確認する。

 

(今、墓地にいるモンスターは……、5体。『黎明の手』と『ハック・ワーム』が2体ずつ、そして最初のターンに奴が墓地に送った『サイバー・ドラゴン』)

 

 この内、レベル5である『サイバー・ドラゴン』は復活した瞬間に『クラッキング・ドラゴン』の効果で1000ダメージが飛ぶため蘇生すれば負ける。となれば残った4体から選ぶしかない。幸いにもどのモンスターもレベル1、残りライフ250なら辛うじて生き残れる。

 

(だが、蘇生させてどうする?)

 

 エクストラデッキを確認する。

 空っぽだ。ここに来た時にデッキが変化したように、エクストラデッキも0枚に変化してしまった。

 守備を固めるのは手の一つだが、残りライフ50ではジリ貧にしかならない。貫通なり効果ダメージなりを喰らえばジ・エンド、続編は無い。

 相手の『ハック・ワーム』は自身を手札から特殊召喚する効果しかないため、蘇生させても旨味は少ない。なら復活させるのはサーチ効果が有効な『黎明の手』か。

 

(しかしサーチしても、その時点で俺のライフはたった50ポイント。守備固めには裏守備で出す以外無い。清姫も守備表示に変更しても、それ以上が打てない)

 

 このままでは、と顔を立香が顰めた時だった。

 

「旦那様、前です!」

「!」

 

 清姫の言葉に反応し、注意が前方を向く。

 ビルのオブジェクトを壊しながら現れたのは、マスターとサーヴァントの皆を分断した電子の竜巻であった。

 

「おっと……。ありがとう、清姫」

「ええ」

 

 素早くボードの舵を切り、進行方向から嵐を外す。

 取り敢えず守備を固めるか、と手札に手を伸ばそうとしたが。

 

 

 

 

 

「フォウ、フォウフォフォウ!」

 

 

 

 

 

「え」

 

 何やら聞き覚えのある声が耳に届いた。

 次いで、もぞもぞと背中のあたりに小動物が這い回るような感触が。感触はやがて背中から首の方へ向かい、右肩に正体を現す。

 

「フォウフォウ!」

「ふぉ、フォウ君!?」

 

 そこにはなんとマシュに懐く不思議な白い小動物、フォウの姿があった。

 リスのような猫のような小さな四足動物は、コフィンの中やら何やらに紛れ込んでよく旅に同行したが、今回もその類だろうか。

 

「もしかして、誰かのコフィンに紛れ込んだ?」

「フォウフォウ! フォウファ、フャーウ!」

 

 必死に何かメッセージを伝えようとしているのだが、彼は簡単な単語をいくつか話せるだけだ。基本的に『フォウフォウ』としか話さないためニュアンスを感じ取るくらいでしか会話はできない。

 が、その『簡単な単語とニュアンスで会話をする』以外に、ごく稀にだが例外が発生する。

 

「フォウフォウ! マーリンハナシガアルフォーウ!」

「え」

 

 明確な文章を叫ぶフォウ。

 するとディスクからノイズ音が響くと共に、耳障りの良い櫻井ボイスが聞こえて来た。

 

『あーあー、もしもしマスター君かな?』

「ま、マーリン!? マジでマーリン!?」

「マーリンさん!?」

『え、あのイケメン判定外のキャスターかい!?』

 

 マーリンお兄さんだよ~、と呑気な声。

 言うまでも無い。世界有数のキングメーカー、アーサー王伝説の立役者、グランドキャスターにして天性の女タラシ。夢魔とのハーフにして千里眼持ちと、兎にも角にも代名詞の多いブリテンの魔術師、マーリンである。

 フォウが単語を繋げて話題に上らせる、数少ない例外の正体だ。

 

『やあやあ、繋がって良かった。実はキャスパリーグを電波塔代わりの中継地点にして、そっちに言葉を飛ばしているんだ。いやー電子世界にテレパシーを送信した事は無かったけど、上手く行って良かった。これもひとえに私の技巧の高さと、普段の行いが良かったからかな』

「フォウフォッフォフォウ!(意訳:ンなワケあるか馬鹿ナイトメア!)」

『はっはっは、普段は言いたい事が分かるキャスパリーグの言葉も、通信越しだとサッパリだね!』

「アトデヤツザキニスルフォーウ!!」

「は、はは……」

 

 フォウとマーリンの間にはかなり強い確執があるようで、普段は大人しめのフォウも彼に対してはかなり辛辣であった。マスターは突っ込みこそしないが、いつか事情を聴いてみたいと思っていたりするのだが、それはそれ。今はデュエルの真剣勝負の真っ最中であるため脇に置いておこう。

 

「で、何なのさマーリン。取り込み中なんだが」

『ああ、単刀直入に言おう。マスター君、あの竜巻の中に突っ込むんだ!』

「何!?」

「はい!?」

『え!?』

 

 いきなり何を言い出すんだ、このイケボナイトメアは。サーヴァントすら弾く大嵐を前に、人間が突貫しろとは。

 それまでマーリンとの会話を見守るだけだった清姫とダ・ヴィンチも、流石に自害しろと言わんばかりの指示には異を唱えた。

 

『待つんだマーリン、そんな指示を看過するワケにはいかないよ』

「発言の意図によっては、貴方を――」

『そうじゃない。マスター君を勝たせるための唯一の手段があそこにあるんだ。……通信は長く続かない、急ぐんだ』

「……信じて良いんだな、マーリン?」

「ますたぁ!?」

 

 キッ、と嵐を見つめる青年。

 マーリンは基本、煙に巻くような事は言っても嘘は言わない。適当な事を言って騙すような事もしない。全ては彼自身の愉悦、生きるために頑張る人々のためだ。彼らの努力を砕くような事は絶対にしない。それだけは、どれだけ周囲が彼を悪く言っても、マスターは信頼していた。

 

『勿論、信じてくれたまえ。君のスキルを使うためにも、あのデータストームは必要なんだ』

「スキルが?」

『そう。君の最大の武器は、これまでの長い旅路で培って来た豊富な縁だ。それは君のスキルにも反映されている』

「……そのためには、あの中に行けば良い。そうなんだな?」

『ああ。データストームの中には高密度の無色のエネルギーがある。そこに君の魔力を、電子世界であっても注げば、それは君に味方をする電脳世界のマナに染まるサークルになる! それはつまり――』

「サーヴァントの召喚を、この世界で再現できるって事か!」

 

 擬似的だけどね、と付け足すマーリン。

 普段、サーヴァントの召喚をマシュの盾や英霊のデータが蓄積されたトランク等に頼っていた身としては、これは初めて独力で行う召喚行為に他ならない。緊張で、掻くはずの無い手汗を感じるような錯覚すら覚える中、Dボードに並走して飛んでいた清姫が不安そうに声をかける。

 

「旦那様、危険です。あれは確実に旦那様の、いえ人間の扱えるシロモノではありません。自殺行為です!」

「確かに、そうだ。でも清姫、もう他に方法が無いんだ」

 

 マーリンの千里眼は“現在の世界の全てを一枚の絵のように認識する”という、文字通り『千里先まで見通す眼』だ。その彼が「勝つための唯一の手段」と言ったという事は、敵の手の内を見て理解し、即ち次のターンに敗北が決まってしまうという事。博打を打つなら、もうここしか残っていない証拠に他ならないのだ。

 勿論、それを説かれて理解できない清姫では無い。それでも恋する乙女として、或いは主に従う従者として、どうしても賛同できない。

 

「し、しかし!」

「清姫」

 

 そしてそんな事が分からない程、マスターと彼女の付き合いは浅くないのである。

 

「確かにマーリンの性格は悪い。勝手に夢の中に入ったり女の子にイタズラしたり、アヴァロンの塔に幽閉されたのだって手癖の悪さが原因だって言うじゃないか」

「それと他のキャスターの方を貶したり、柳のように適当な事を言って煙に巻いたりもしますね」

『君達、本人が聞いてる事を分かってるかな?』

「ザマフォウ!」

「だからマーリンが信用ならないってのは分かる」

 

 だったら。

 

「俺を信じろ、清姫。マーリンじゃない、あの中に策を授かって突撃する、俺を信じろ! 清姫が信じる俺を、今ここにいる俺を信じてくれ!」

「ますたぁ……!」

「出来るよね? 清姫は信じる事が、凄い得意だもんな」

「……はい! この清姫、誰かを信じる事に関しては一日の長がありますので! ええ、旦那様の事を信じます!」

「ありがとう」

 

 力強く頷く清姫に、マスターは謝辞を述べた。

 清姫は強く思う。思い人を信じて待ち続けたように、今度は彼を信じて嵐の中に見送ろうと。

 大丈夫、マスターはいつだって窮地を切り抜け、生き残ってきた猛者なのだから。

 今だけはブレ幅の強い狂化EXに感謝したい気分であった。このスキルのお蔭で、正気だったら発狂していただろう彼の無茶振りだって、信じて待つ事ができる。

 

「清姫、フォウ君を。一緒に行ったら飛ばされてしまう」

「はい」

「マーリンハナシガアルフォーウ!」

『はっはっは、キャスパリーグ。もう通信は繋がっているよ』

「ハナシガアルフォーウ!!」

『……あれ、それってもしかして“後でツラ貸せ”的な意味合いだったり――』

「行って来る!!」

 

 嵐の外から、竜娘は固唾を呑んで主人の生還を待った。

 

 

  ☆

 

 

『自分で言うのもアレだけど、よく私の話に食いついたね』

「他に方法が無いんでしょ? だったらもう多少怪しくても罠だと分かっていても、こうするしかないよ」

 

 データストームに向かいながら、マスターとマーリンは会話を続ける。データストームのノイズが強く、既にカルデアと通信は繋がらない状況だ。

 対戦相手である侵入者は律儀にこちらの行動を待っているのか、それとも嵐に突撃する青年を見て嗤っているのか。生憎、ここからでは見えない。

 そして確認するつもりも無い。暴風に向かう腹を括るのに、精一杯だ。

 

『現状、君が勝つにはこれ以外方法が無い。データストームのエネルギーと君の縁をリンクさせるんだ』

「リンクさせる?」

『データストームが強力な程、より強力な仲間を呼べる。これだけ強ければ、このデュエルに勝てるだけのサーヴァントを引き寄せられるだろう。

 今こそ君のスキル“Storm Access(ストームアクセス)”を使うんだ!』

「ストーム、アクセス……!」

『スキル“Storm Access”は、ライフが1000以下でエクストラデッキが15枚未満の時、データストームを召喚サークルにしてランダムに新たなサーヴァントへアクセス出来るんだ!』

 

 目を閉じて右手に意識を集中すると、ボウ、と右手を中心に全身に電子回路のような光が宿る。彼の魔術回路に流れる生命の魔力、オドがスキルに発動に応じて発光しているのだ。

 無論、この回路が彼の魔術回路では無い。だがそこに流れる縁と魔力は本物である。

 

 

 

Storm Access(オリジナル改変)

【スキル】

このスキルはデュエル中に1度だけ発動できる。

(1):自分のLPが1000以下でEXデッキが15枚未満の時に発動できる。

データストームをサーヴァントの召喚サークル扱いとして、新たな「英霊」カードをEXデッキに1枚加える。

 

 

 

 お膳立ては整った。後は、勇気を出して手を伸ばせば良い。

 

「すぅ……、はぁっ!」

 

 一呼吸置き、嵐の中に突っ込む。その途端、右も左も分からない暴風に全身をもみくちゃにされた。

 切り刻まれる、殴り続けられる、そんな痛みが全身のあちこちから訴えかけられるように脳に届き出し、悲鳴をあげそうになるのを歯を食い縛って耐える。

 

「う、おぉおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

『風を掴め、藤丸立香!!』

 

 だがそれに構わず、魔力を纏った右手を伸ばす。風の内壁に触れた瞬間、指が削られたかと思う程の痛みが走る。

 立香は思わず引っ込めそうになる右手を左手で抑え、必死に魔力を纏った腕で嵐の中の何かを掴もうと足掻いていた。

 

「ぐ、ぅ、がぁ……っ!」

 

 耐える、耐える、必死に耐える。痛みも苦しみも、弱音も泣き言も。

 泣きそうになる程の痛みを精神力で抑え込み、睨むような形相で吐き捨てた。

 

『耐えろ、耐えるんだマスター君!』

「ぐ、ああ! 俺には、このデュエルに負けられない理由が3つあるんだ!」

 

 嵐に全身が切り刻まれる。今すぐ抜け出したいと思ってしまう。それを上回る使命感と怒りで、右腕の魔力の保持を続行する。

 何故なら、負けられない理由が、彼の中にあったからだ。

 

「1つ、カルデアの平和を守るため!」

 

 きっと今頃、データストームに取り込まれた彼の安否を、技術班の皆が必死に探している事だろう。数年に渡って支え続けてくれた彼らを侵入者から守るため、この肉体を奪わせないため、勝ちを逃すワケにはいかない。

 

「2つ、奴の雇い主を知るため!」

 

 侵入者は傭兵だった。つまり奴を叩きのめしても全ての解決には繋がらない、根っこを抑えなければ次の攻撃がまた来るだけだ。

 そして。

 

「3つ! それは――」

 

――所詮お前なんぞサーヴァント無しじゃ何も出来んただの一般人だろうが

――図に乗るな取るに足らん無価値な屑めが!!

 

「俺を無力だと言う発言を、撤回させるため!」

 

 大人げないかも知れないが、彼は侵入者のあの発言に心底強い怒りを覚えていた。

 マスターは確かに、何の力も無い一般人だ。武術を初めとした戦闘の心得、地図の見方や本格的なサバイバル技術といったスキルは多い。だが戦闘は基本、サーヴァントに任せっぱなしである。一流の魔術師のように自衛の手段も、サーヴァントと渡り合う力も無い。

 それでも、あの発言は許せなかった。

 サーヴァント無しでは何も出来ない、それは真実だ。

 だが“取るに足らない無価値な屑”という発言は許せない。それはつまり、今彼に協力してくれているサーヴァント全員が『屑に協力するような見る目も無い奴』という意味だから。自分はどれだけ侮辱してくれても良い。だがあの発言だけは、断じて許せない。

 意地とプライドと、これまでに積み上げた全ての時間を乗せて、マスターは叫んだ。

 

「あぁあああああああああああああああああああああああっ!」

『今だ!』

「“Storm Access”!!」

 

 右手に宿る、確かな感覚。光り輝く長方形の新たな力。

 眩いエナジーの本流が右腕にまとわれた時、暴風すら切り裂く一閃の輝きが放たれた。

 

――ああ、信じていたよ

 

 そんな呟きを、風の中に溶かしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風を掴み、再びフィールドにマスターが現れた。

 データストームによって無数の傷を受けながらも、未だその瞳には強く凛々しい輝きが宿っている。

 

「ほーう、データストームの嵐の中に突っ込んだと思えば、派手な再会になったなぁ?」

「ああ、待たせたな」

 

 ディスクのデータを確認する。まさしくそこには、先程の新たな力がエクストラデッキに加わっていた。

 

「ますたぁ!」

「ただいま清姫! 心配かけたね!」

「いいえ、貴方様なら必ずやり遂げると信じていました!」

『もしもし聞こえるかい、マスター君。通信が今回復したよ、その様子だと乗り越えたようだね』

「ああ。皆、信じてくれてありがとう」

 

 流石は男の帰りを信じて待った女。誰かを待つ事に関して、清姫の右に出る者はいない。

 だがデュエル再開の前に、1つだけ清姫に謝らなければならない事があった。

 

「ごめん、清姫。勝利の方程式は揃った。だけど――」

「……わたくしを素材にする必要があるのですね?」

「うん。心配かけたり盾になって貰ったりで本当に悪いとは思ってる」

「いいえ、いいえ。デュエルは勝負ごと、ここで我が身可愛さに旦那様の戦法を潰してしまっては、我が愛が偽りであると言っているようなもの。ましてやわたくしはサーヴァント、マスターのために献身する事くらい当然です。サクッと我が身を使って勝っちゃって下さいまし!」

「……ありがとう」

 

 準備は整った。後は、勝つだけだ!

 

「まずは清姫の効果発動! “ストーキング・フレイム”!」

「キシャアアアアアッ!」

 

 

ATK:3200→2900

侵入者:LP 2100→1800

 

 

「ハッ、効かんな! 所詮は雑魚英霊の炎よ!」

 

 鼻で青い炎を嘲笑う敵を無視し、更にマスターはマジックカードを切った。

 

「更に俺は魔法カード『黎明回帰』を発動! 自分の墓地から同名の“黎明”と名の付くモンスターを2体復活させる! 守備表示で蘇れ、2体の『黎明の手』!」

 

 

DEF:200

DEF:200

 

 

 召喚ゲートをくぐり蘇る魔神の腕。それを見た侵入者は見下し、鼻で嗤う。

 

「愚か者め、『クラッキング・ドラゴン』の効果を理解していないようだな! お前の召喚したモンスターはレベル1が2体、つまり200ダメージを2回受ける事になる! お前のライフ250はこれで消し飛ぶ! 死ね、“クラック・フォール”!」

 

 侵入者は青年の命を刈り取るべく、指示を下した。強風でマスターを消し飛ばし、生意気な一般人の命を刈り取るために。

 

「それはどうかな?」

 

 だが、その指示が実行される事は、無い。

 悪漢に従う機械龍は、何もせずただただ主の横を並走し続けるのみ。

 

「バカな!? 何故発動しない!?」

「どうした、お前こそ『クラッキング・ドラゴン』の効果を正しく理解していないんじゃないか?

 そいつの効果は“フィールドにモンスター1体が召喚された時”にのみ発動する。だが俺は今、2体同時に特殊召喚したんだ、よって『クラッキング・ドラゴン』の効果は発動しない!」

 

 計算そのものは、正しい。だが彼は正しく効果の理屈を認識していなかった。たったそれだけの話である。

 通常、モンスターが複数同時に場に出る事は無い。故に2体同時の召喚には反応しない、というケースを経験するのは初めてなのだろう。

 

 

 

黎明回帰(オリジナル)

【通常魔法】

このカード名のカードはデュエル中に1度しか発動できない。

(1):自分の墓地に存在する同名の「黎明」モンスター2体を対象に発動する。

その2体を自分フィールドに守備表示で特殊召喚する。

 

 

 

「復活させた『黎明の手』の効果発動。デッキから同名モンスターを手札に加える。3体目の『黎明の手』をサーチし、これを通常召喚!」

「そちらには有効だ、“クラック・フォール”!」

「っ!」

 

 

ATK:200→0

LP 250→50

 

 

「これで貴様のライフは風前の灯! 次のターンで仕留めてくれるわ!」

「お前に次のターンは無い」

「何?」

「何故ならそれは、俺が切り札を今から呼ぶからだ!」

 

 エクストラデッキを開封し、新たに加わったカードを確認する。

 そこに映っているのは、紛れも無く彼のエース。

 

「現れろ!」

 

 そしてそれを呼び出すべく、大きく手を振りかざし、

 

 

 

 

 

「未来を守るサーキット!!」

 

 

 

 

 

 空中に紫電を描いた。

 数学的な回路と共に生まれたフラッシュは空を駆け、中空に8方向を向くマーカーを持つリンクの回路を生み出す。

 

「な、それは!?」

「アローヘッド確認! 召喚条件は光属性を含む、効果モンスター2体以上! 俺は『黎明の手』3体と清姫をリンクマーカーに、セット!!」

「旦那様、ご武運を!」

 

 赤い光に変わったしもべ達が回路に宿り、マーカーに光が灯った。その位置は、左右と斜め下の左右の4ヶ所。

 

「サーキットコンバイン!」

 

 

――光よ宿れ、その健気な瞳に

――無窮に誇る堅固なる守り、今この刹那にあれ

――時よ証明せよ、その誇り高き城の輝きは永劫であると!

 

 

 

 

 

 

 

「リンク召喚! 現れよ、リンク4! 『盾英霊(シールダー・サーヴァント) マシュ・キリエライト』!!」

「お待たせしました、先輩。マシュ・キリエライト、出撃します!」

 

 

 

 

 

 

 

 輝く4つのマーカーを備えてサーキットから現れたのは、マスターが最も信頼する最強の盾。自慢の後輩、マシュ・キリエライトであった。

 

 

ATK:2300

 

 

  ☆

 

 

「遅くなってすみません、マスター。……あれ、デュエル中ですか?」

「うん、マシュを俺のモンスターとして呼ばせて貰ったよ」

「成程、BBさんが仰っていた手法ですね! 自分でカードに変化する、という方法だったと聞いていましたが、まさか先輩の手で身体を弄られるとは思いませんでした!」

「微妙に誤解を招く言い方っ!」

 

 彼女曰く、Dボードに乗ってマスターと合流できないか周囲を捜索していた所、いきなり正体不明の引力に引き寄せられてここに来たのだとか。

 新たな仲間の召喚を見て、侵入者は鼻を鳴らした。

 

「フン、リンク召喚した所で、そんな雑魚に我が最強の『クラッキング・ドラゴン』が倒せるものか。図に乗るな小童共、貴様らは所詮無力な存在に過ぎん。偶然と英霊の力で生き残ったのを己の力と過信しているだけだ」

「そいつはどうかな? お前の発言、片っ端から撤回させてやる!

 墓地の『緊急回避』を除外し、効果発動! デッキから『マスターコードA-「瞬間強化」』を手札に加え、これを発動! このターン、マシュの攻撃力を1000アップさせる!」

 

 

ATK:2300→3300

 

 

『良いぞ、マスター君! 攻撃力が敵のモンスターを上回った!』

『そのままやっちゃえ!』

「フォウフォーウ!」

「リンクモンスターである私にレベルは存在しません! よって『クラッキング・ドラゴン』の効果は発動せず、攻撃力は下がりません!」

「チッ、だがダメージはたった400だけだ! 貴様が次のターンに敗北する事に変わりは無い!」

「慌てるな、まだ仕込みは終わっていない。マジック発動、『死者蘇生』! 墓地の清姫を、マシュのリンク先に特殊召喚する!」

「清姫ちゃん、復活です!」

 

 

 

マスターコードA-「瞬間強化」(オリジナル)

【通常魔法】

(1):自分フィールドのモンスター1体を対象に発動できる。

攻撃力をターン終了時まで1000アップする。

更に墓地または除外されている同名カード1枚につき、この数値は500アップする。

(2):墓地のこのカードを除外して発動する。

デッキから同名以外の「マスターコードA」カードを1枚手札に加える。

この効果はこのカードが墓地に送られたターンには発動できない。

 

 

 

死者蘇生

【通常魔法】

(1):自分または相手の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを自分フィールドに特殊召喚する。

 

 

 

 下面に空いたゲートから、再び姿を現す清姫。

 が、盤面の状況が変化していないのを見て、顔を引き攣らせた。

 

「ま、ますたぁ? ここで七つ星のわたくしを復活させるのは悪手なのでは?」

「その通り! 残りライフ50で1400のダメージを掻い潜れるものか! 今度こそ終わりだ、“クラック・フォール”!!」

 

 再び機械龍から放たれる強烈な旋風。再び大ダメージを与えてマスターのライフを抉り切る強烈な一撃だが――

 

「マシュ!」

「はい! 私自身の効果発動です!」

 

 無論、そんな事を理解せずに清姫を蘇生させたワケでは無い。

 青年の前方に盾持ちの少女が回り込むと、その大盾を風除けに衝撃波を全て防いでみせた。強風に煽られた清姫こそ数メートルの後退を余儀なくされたが、マスターは依然として無事だ。

 

「何ぃ!?」

「戦闘ダメージと効果ダメージを1ターンにつき、それぞれ1度ずつ無効にします! 清姫さんの攻撃力は下がりますが……」

 

 

ATK:2100→700

LP 50

 

 

「俺へのダメージはゼロってワケだ! サンキュー、マシュ!」

「こ、この死に損ないめがぁ!」

「生憎、しぶとさには定評があるのさ! 清姫の効果発動! “ストーキング・フレイム”!」

「冥府より再び、青い炎をお届けです! フシャアァアアアッ!!」

「ぐぉおおおおっ!!」

 

 

ATK:2900→2600

LP 1800→1500

 

 

 清姫の“ストーキング・フレイム”には、同名カードによるターン内の回数縛りが存在しない。1度墓地を経由して復帰した事で、その効果は再び発動できるようになったのだ。

 

「ぐ、我が『クラッキング・ドラゴン』の攻撃力が……っ! だが攻撃力の差は700、全ての攻撃を通したとしても、私のライフは100残る!!」

「残らない! マシュの更なる効果! リンク先にいるモンスターの攻撃力と守備力は500アップする!」

「今、私のリンク先には清姫さんがいます!」

「よってわたくしの攻撃力は――」

 

 

ATK:700→1200

 

 

「何だとぉ!?」

「覚悟しろ、ラストバトルだ! マシュ、『クラッキング・ドラゴン』を攻撃だ!!」

「行きます、ハァアアアアアアアアアアアアアアア!」

 

 何もない空中を足場にマシュは大きく飛び上がる。太陽を背に繰り出すのは必殺の、大上段からのシールドアタック。レベルを持たないが故に適用されない破壊耐性に、堅牢無敵の鋼の鉄槌が下り行く。

 

「「ホーリーラウンド・バッシュ!!」」

 

 円卓のテーブルを盾とした神聖なる一撃が炸裂する。決して砕けぬ盾による頭蓋への攻撃は、重力という何者も逃れられぬ法則から威力を借り受け、圧倒的な破壊力を得る。それを喰らった黒鉄の龍は、頭部から尾の先まで万遍無くヒビが入り、大爆発を起こした。

 

『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!』

「ぐぉおおおおおおおおおおおおっ!」

 

 

LP 1500→800

 

 

 無数の部品と鉄屑に姿を変えた『クラッキング・ドラゴン』。辺りに破片を撒き散らす中、暴風に煽られる悪漢の前に、清姫がぬっと姿を現した。

 

「御機嫌よう侵入者さん」

「ひっ!?」

「……わたくしを雑魚呼ばわりしたのは許しましょう。実際、大して強い英霊でもありません。それは事実です。

 しかし旦那様への罵倒暴言に暴行の数々、例えお天道様が許してもわたくしは許しません! 雑魚と侮った女の手で――」

「清姫のダイレクトアタックでトドメだぁ!」

「往生なさい!!」

「「“転身火生三昧”!!」」

 

 吹き上がる青白い炎。竜を模り自らを変化させるそれは、一切の不義理を許さぬ恋する乙女の灼熱の思い。敵の一切合財を灰燼に帰すそれは、侵入者の全身を包み込み、逃す事の無い炎の檻として焼き払った。

 

「ぐぎゃぁああああああああああああああああああ!?」

 

 

LP 800→0

 

 

「お前に、デュエリストを名乗る資格は無い!」

 

 

 

立香:WIN

 

 

 

狂英霊 清姫(融合・効果モンスター)(オリジナル)

星7

炎属性/ドラゴン族

ATK 2100/DEF 200

炎属性+炎属性以外のドラゴン族モンスター

(1):1ターンに1度、相手モンスターの数×300ポイントのダメージを相手に与え、その数値だけ相手モンスター全ての攻撃力をダウンさせる。

(2):このカードがフィールドに表側表示で存在する限り、元々の数値より半分以上攻撃力が低いモンスターの効果は無効となり、攻撃できない。

 

 

 

盾英霊 マシュ・キリエライト(リンク・効果モンスター)(オリジナル)

リンク4

光属性/戦士族

ATK 2300

リンクマーカー:右/斜め右下/斜め左下/左

光属性を含む効果モンスター2体以上

このカード名のモンスターは自分フィールドに1体しか存在できない

(1):1ターンに1度ずつ、コントローラーが受ける戦闘ダメージと効果ダメージは無効となる。

(2):このカードのリンク先に存在するモンスターの攻撃力と守備力は500アップする。

(3):このカードがフィールドに存在する限り、自分フィールドのカードは1ターンに1度だけ、相手によって破壊されない。

 

 

 

To be continued

 




つまりは原作リスペクト回(パクリとも言う)

2019/2/23 18:09ミスがあったため修正しました。
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