Fate/Duel Order   作:ノウレッジ@元にじファン勢遊戯王書き民

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長らく投稿をサボっていた事、お詫び申し上げます。

だって、だって! アトランティスは面白いし、設定練り直さないといけないし、紅ちゃんまた来るし新鯖ポコポコ来て育成も大変なんだもん!

あっ、あっ、やめて、石投げないで、医師も投げないで……。


Turn:22 斜陽

 電脳世界に再現された町、ルーアンはかなり狭い上に、目玉となる施設や産業は何も無い。

 いくつかの商店街と職人街、それと数件の教会がある以外は、基本的に住宅地となっている。職人の作る物も日用品が多く、教会では簡単な医療や算術を教える以外は、本当に何も無い。もしここが現実世界に実在していたら、数年で過疎化からのゴーストタウンになってしまう程に、だ。

 だが一方で税金のシステムはしっかりしており、決して安くない――否、かなり高い税金を住民は教会に納めていた。何に使うのかも知らないまま。

 一言でまとめるなら「何も無い町」と言えよう。リアルに存在するなら村興しが期待される。

 

「リアちゃーん、オイラにも注いでよー」

「はーい!」

 

「マリアちゃん、今晩どう?」

「あら、お上手なのね。でもごめんなさい、明日早くて……」

 

「アルト、もう1曲頼む。良いだろ? な? な?」

「良いとも。リクエストはあるかい?」

 

 そんなルーアンの数少ない娯楽施設、酒場では、新顔のウェイトレス2人と演奏家が場を賑わわせていた。

 リア、マリア、アルト。女2人に男1人の旅人だそうだ。

 酒場が開く前にフラッと現れ、店主をまるで魔法のように魅了して1日だけ試しに採用して貰ったらしい。

 これだけ聞くとキリシタンなら魔女ではないかと疑うかも知れないが、実際マリアとリアは美人だし口が達者で、アルトは音楽が上手い。要するに丸め込まれたのだろう、と酒場の客達は判断している。

 

「マリアちゃん、良いよなぁ。実に良い。ありゃ大人になったら巨乳になると見た」

「まるでフランス王家の白百合を体現したような子だ。美人ってのはああいう子を言うんだろうな」

「だがオイラはリアちゃん推しだ。見ろ、あの中性的とも取れる顔立ちと体格」

「リアちゃんかぁ、確かにどこか男っぽい感じがするな。本当に男だったりして」

「アルトの歌に魅了された僕が通ります。いやぁ凄いなアイツ」

「ゴッドリープと呼ばれたモーツァルトの演奏を聴いていた人も、こんな気分だったのかしら」

 

 そしてそれを差し置いても、3人は酒場の中であっと言う間に人気をさらっており、老若男女の全てを味方につけていた。この場で、あの3人を怪しいと疑う者は愚か、横柄な態度を取る者もいないだろう。

 ただ1人を除いて。

 

「おい、平民」

 

 唐突に、聖職者の恰好をした男が声をあげた。左腕にデュエルディスクを装着しているせいか、左側には誰も座っていない。

 彼の視線の先には空のジョッキを下げるマリアの姿があるので、彼女に向けて話しかけたつもりなのだろう。服装からして教会に勤める男である事は明白であり、顔が赤くなっている事からかなり酔っている事が察せられる。

 ちなみにキリスト教では、宗派等にもよるが、飲酒は特には禁じられていない。そもそも聖書やイエス・キリストの逸話にも、頻繁にワインの話が出る程だ。

 

「すみません、サラミとチーズの盛り合わせ1つ!」

「かしこまりました」

「マリアちゃん、さっきの赤いのもう1杯」

「はぁい♪」

「んぐっ、ぐびっ。おい、平民!」

 

 聞こえていなかったのかと判断したのか、司祭風の男は手元のジョッキを煽って空にすると、より大きな声をあげる。

 なお、ホールで忙しなく働いているスタッフ達は、自分の事を呼んでいるとは思っていない。当然だ、ウェイトレスにもカウンターのおばちゃんにも、店の奥にいるシェフにも店内の客にも『ヘイミン』という名前の者はいないのだから。

 それを無視されたと思ったのか、男は軽食の乗ったプレートを持って近くを通ろうとしたマリアの腕を掴み、自分の方へと引き寄せた。

 必然的にお盆は乗っていた食事ごと宙に放り出されるが、男にとっては知った事じゃない。己の目的の方が重要なのだ。

 

「きゃっ!?」

「平民、さっきから呼んでいるだろう、耳が聞こえんのか!」

「えーと、お客様? 平民って呼ばれても分かりませんわ、私にはマリアって名前が――」

「ンな事ァどうでも良いんだよ。このヌーブ大司教の言葉を無視するたぁ、死刑にされてぇんだな?」

「それは横暴ではなくて!」

「うっせぇな、平民風情が黙ってろよ! お前のお友達と店にいる他の下民連中も一緒に神の御許に送ってやろうか? あ゛? オレにはそれが出来るんだぞ、“オベリスク・フォース”を2個小隊ぐれぇ送れば、こんな店は一瞬で焼け野原になるんだからな!」

 

 唐突な男のキレ芸、もとい憤慨と暴論に、掴まれたウェイトレスは目を丸くした。

 この男は教会の大司教だと言っていた。

 聖職者の序列は宗派や土地等によって諸々変化するが、大司教となるとその上にはもう枢機卿と教皇しかいない。会社で例えるなら部長クラスだ。

 となれば、店にいる全員を抹殺するだけの権力はあるという発言は嘘ではないだろう。今この場で彼女が対応を誤れば、十数人の命が一夜にして失われる結末となる。

 人道や倫理感の無い者が権力を持つ、その厄介さは折り紙つきだ。

 

「テメェら、オレとこの女のどっちが悪い! 当然この女だよなぁ、あ゛!?」

「そ、そうだ! 悪いのはマリアちゃんだ!」

「大司教様のお声を無視した方が悪い!」

「可愛いからって許される事じゃないわ!」

「大司教様は何一つとっても悪くない!」

「1日だけとはいえこんな奴雇うんじゃなかった!」

 

 そしてそれに怯えたのか、それとも最初からそういう思考回路なのか、店にいる全員もそれに同調を始める。

 一瞬で趨勢を得た事に満足したのか、ヌーブと名乗った男は満足気にマリアを引き寄せた。

 

「分かれば良い。ふん、よーく見れば良い女じゃねぇか」

「っ」

「よし決めたぞ。お前、オレの妻になれ。第7夫人だ。今からオレの部屋に行こうぜ?」

「なっ」

「逆らったら、分かるよなぁ?」

 

 いやらしい笑みを浮かべ、マリアに迫るヌーブ。法律そのもののような男を止める術は、無い。

 だが、そんな男の手を止める者がいた。

 

「そこまでだ、それ以上は看過できない」

「ちょっと失礼、大きな演奏を始めよう」

 

 マリアの腕を掴むリアと、どこからか取り出したアンプをピアノに設置したアルトだ。

 

「何だ? 死にてぇのか?」

「死にたいのか、はこちらのセリフです。アルトは既に激しい旋律を奏でる準備をしている。ここで貴様を斬り殺しても、悲鳴は外に漏れない」

「ハッ、だったら店の連中に証言させりゃあ良い。テメェら! オレが斬られたらこいつがやったと言えよ、言わねえならどうなるか分かるよなぁ!」

 

 どこからか「ひっ」という短い悲鳴が漏れ出る。

 とんだクソ野郎だ、とアルトは毒づき――リアは左腕を突き出した。

 

「ならデュエルしませんか? 私に勝てたら、私も貴方に従いましょう。第8夫人にでも奴隷にでもすれば良い」

「正気か?」

 

 ヌーブの問いにリアは「無論です」と短く返した。

 この町では、デュエルディスクを装着している人は多くない。そして装備している大多数が教会の関係者だ。そして教会には金が集まり、この特異点を支配するキャスターの懐が潤う。

 必然、ディスクを持っている者は、権力によって強いカードを入手してデッキを組めるという事に繋がって行く。

 

 美女2人が自分のものになる。その未来にヌーブは舌なめずりをして。

 リアは――、昼間に仲間から聞いた情報が、全て真実である事を確信していた。

 ああ、偽名を使って潜入してみた甲斐があったと、内心で頷きながら。

 

 

  ☆

 

 

 満月のバーサーカーが現れた翌日、マスター達はキャンプ地で作戦会議を開いた。

 

「皆、早朝からありがとう。朝ご飯を食べながら聞いて。この会議の議題はズバリ、『ルーアンで何を探るか』だ」

「何を探るか、ですか?」

「うん、バーサーカーは町を調査しろって言っていたけど、何を調査すべきなのかは分からない。だから、手分けしてあらゆる情報を探ろうと思う」

 

 ロールパンを齧るマシュに、マスターは真剣な表情で頷く。

 

「しかしトナカイさん、2日しかないのに何か分かるのでしょうか?」

「リリィ、2日しかないってのはどういう根拠かな?」

「え、それはあのバーサーカーが……」

「じゃあ、ルーアンを探れって言ったのは?」

「それもバーサーカーで……」

「成程、そういう事」

 

 ジャンヌ・オルタが納得したように頷いた。

 

「行動の指針も、2日後が襲撃のチャンスって言ったのも同じ奴なら、2日しかない事はバーサーカーが1番分かってる筈。つまり逆説、2日あれば事足りるって事ね」

「そういう事。ってなワケで、手分けしてルーアンを探ろうと思う」

 

 捜索隊はカルデアから来たマスター一行のみで編成され、更に拠点には数名のサーヴァントを残していく。ランサー達は過去に処刑されかけたため、顔が割れている可能性があるからだ。

 拠点に残るのは同じく顔が割れたジャンヌ、同じ顔のジャンヌ・オルタ、ジャンヌ・リリィ、精神汚染を持つキャスターのジル・ド・レェ、そして通信機を持つマシュの5人。

 本当ならマシュを拠点に置きたくは無い。だが通信機はマスターか、マシュの礼装に内蔵されている分しかない以上、この分断はやむを得ない。

 

「チームAはアストルフォ、ブラダマンデ。チームBはマリー、アマデウス、デオン。チームCは俺とセイバーのジル、サリエリ。以上3チームで、明日の夕方4時までのシフトのローテを組む」

「マスター、僕は?」

「サンソンは気配遮断スキルで隠密。教会の周辺を重点的に調べて欲しい。――ただし教会はキャスターの陣地、深入りはしないでね」

「了解です」

 

 サンソンはアサシンだが、気配遮断のランクはDと低い。この程度だと余程鈍くなければサーヴァント相手には通じないため、深追いは禁物だ。

 可能ならカルデアからアサシンの増援が欲しいが、敵が易々とカルデアに侵入できる以上、不用意にカルデアの戦力を減らす事は避けたい。カルデアは自分達の本来の拠点であり帰るべき場所、守護の優先度はあっちの方が高い。

 また、カルデアと行き来できるアンカーポイントはキャンプ地から少々離れている。敵にこちらの動向を察知されるのは拙いだろう。

 

「んでさ、マスターは何を調べれば良いと思う?」

「全部」

「ぜ、全部?」

「そう、全部。人も、木々も、石も、思考も、食べ物も、水も、全部だよ」

 

 アストルフォの問いに応えるマスターの顔に、ふざけている雰囲気は無い。

 そこに何かがあると確信している表情だ。

 

「どんな小さいデータでも良い。キャスターが何をしようとしているのか、何を企んでいるのか、それを見つけよう。ここが最初の電脳特異点、いきなり躓かないよう頑張ろう!」

「「「おーっ!」」」

 

 

  ☆

 

 

 ルーアンに潜入したマスター達は、各地で色々と情報を集めて行った。

 例えば、東地区にあるレストランのパスタが美味しいとか(フランスなのにイタリア料理なのか、とか言ってはいけない。それと一応フランスにもパスタはある)。

 例えば、北地区は農村地区になっており、牧歌的な雰囲気が漂っているとか。

 川の配置、木の植え方、空き家の有無、風の流れ方に店で売っている品々。ありとあらゆるデータを取り揃えた。

 その中でも特に注意を引いたのが、マスター属するチームCの調査中の出来事である。

 

 ルーアン調査の1日目、北地区から西地区に移動した時である。

 日が傾き始め、そろそろ家々が夕飯の支度を始める頃。マスター達は街中の状態をレポートにまとめ、これからキャンプ地に帰還する所だった。

 

「マスター、あれを」

「あれは!」

 

 セイバーのジルが指差した先には、小さな台座に立って何やら演説している男がいた。カソックのような服装からして教会関係者だろうか。

 男の手にはデュエルモンスターズのカードがあり、イラストに該当する枠には人間と思しき画像がある。ここでまた“処刑”があったようだ。

 

「あいつらまた――!」

 

 取り返そうと一歩踏み出すが、それより先にカソックの男は人間を封印したカードを懐に仕舞いこんでしまった。こうなると力尽くで奪うしかないが、そうなると確実に目立つ。2日後に敵本拠地に乗り込む計画を潰すようなマネは、少々躊躇してしまう。

 後でまとめて奪還しなくては。そうマスターが自分を強引に納得させた時だった。

 

「びぇえええええええんっ! びぇえええええええぁああああああああっ!!」

「!」

 

 唐突に子供の泣き声が響いたのである。

 声の主は、道端で転んでいる子供だった。年は4つか5つくらいだろうか。服装で女子と分かるが、まだ見てくれでは男女の区別も難しそうな幼子だ。

 どうやら転んで全身を強かに打ちつけてしまったらしく、起き上がる気配が無い。周囲に親の姿も無く、寄り添う大人も見当たらなかった。

 そんな子供を見たカソック姿の男は、幼女に早足で近寄ると、

 

「うるさい!」

「ぎゃんっ!?」

 

 思い切り踏みつけた。

 

「な――!?」

 

 マスターは信じられないものを見た。素早く近寄った事から、てっきり幼子を助けるために足を進めたのかと思ったのだが、事実は全くの真逆だったのである。

 唖然とするマスターに気付く筈も無く、男は近くに控えていた従者らしき男に声をかけた。

 

「ギャアギャアと煩いガキだ。おい、こいつは何だ?」

「ハッ、確か2週間前に、聖下のために枢機卿猊下が新しく召喚した薄汚い子供です。もっとも、聖下のお気に召さず早々に手放されたそうですが」

「国と親は?」

「資料によれば出身は蛮族の国イランで、母親は既にカードにしたと」

「ほーう? って事ァ……」

 

 いきなり踏み潰され痙攣する幼女に対し、男は今度は大きく足を振り被った。

 信じられない事に周囲にはそれを止めるどころか動揺の1つも、悲壮感の欠片すらも漂っていない。まるでそれが当然と、止める方がおかしいと言わんばかりに。

 

「久し振りにオレが!」

「がっ!?」

「好きにして良いって事だなぁ? ゲハハ、こういう蛮族のガキを蹴り潰してやるのも協会勤めの役割だ」

「全く以てその通りです」

 

 振り被った足は、当然幼い女の子に向かう。ここまでおよそ1秒足らず。聖職者でありながら身体はバッチリ鍛えているらしいが、そんな事はどうでも良い。

 数メートル吹き飛んだ少女を聖職者は再び捕まえ、今度は乱暴に髪を掴んで持ち上げる。

 

「おいガキ、喜べ。オレ自らがお前を御許へ送ってやる」

「ぁ、ぉ……」

「チッ、礼の一つも言えんのか野蛮人めが! これだから主の威光を知らぬ輩はカスなのだ!!」

「サリエリ!」

 

 これ以上は我慢ならない。この世のどこに、無抵抗な幼児に手を上げる神職がいるのだ。

 最初は呆気にとられ、次はあれがここの常識だと思って見逃したが、流石に3度目はもう無理だ、看過できない。

 

「了解した!」

 

 マスターは自分では何もできない、だが仲間に指示を出す事はできる。

 素早くサリエリに声をかけると、彼の指揮棒代わりの剣が素早く振るわれ、カソックを着た男に向けられる。最初から当てるつもりは無かったのだろう、鼻先から数センチ離れた場所を通っただけだが、驚いた男の手からは少女は地面に落とされた。

 

「大丈夫?」

「は、……ぁ……、……っ」

「喋らなくて良い、ゆっくり息を吸って、吐いて。もう1度――」

 

 落とされた少女は全身を強かに打っているが、どうやら命に別状は無いようだ。

 ホッと息を吐くマスターに、カソックの男は無言で今度は拳を振り被る。

 

「どけ小僧!」

「どかないよ」

 

 が、所詮はサーヴァントでなくただの人間の拳、難無く受け止められた。

 鍛えに鍛えた動体視力、英霊や魔獣には勝てなくても、ただの人間程度が相手ならば問題は無い。

 

「ダ・ヴィンチちゃん、周囲に人間ってどのくらいいる?」

『大半がNPCだね。NPCじゃないのは君と、その女の子、それから群衆の3割くらい。そして――君を殴ろうとした男達くらいさ』

「ありがとう」

 

 さて、とマスターは立ち上がり左手を突き出した。腕の動きに連動してディスクが起動し、ライフカウンターに4000の数字が表示される。

 

「どうしてもどいて欲しいなら――俺を倒してからにしろ」

「道理の分からぬ小僧め、覚悟しろ! このヤラレヤック司祭が誅してくれる!」

 

 

「「デュエル!」」

 

 

ヤラレヤック:LP 4000

マスター:LP 4000

 

 

「先攻はオレだ! 手札から、攻撃力を半分にして『可変機獣 ガンナードラゴン』を召喚!」

 

 

ATK:2800→1400

 

 

 初手として場に出る鉄製の竜。元祖妥協召喚モンスターだが、レベル7の闇属性機械族である。なら――奴らの仲間と考えれば、次に出るカードの予測はつく。

 

「そして『トランスターン』を発動、自分のモンスターをリリースし、レベルが1つ上で同種族・属性のモンスターをデッキから特殊召喚する! オレは『ガンナードラゴン』をリリース!」

 

 

 

可変機獣 ガンナードラゴン(効果モンスター)

星7

闇属性/機械族

ATK 2800/DEF 2000

(1):このカードはリリースなしで通常召喚できる。

(2):このカードの(1)の方法で通常召喚したこのカードの元々の攻撃力・守備力は半分になる。

 

 

 

トランスターン

【通常魔法】

このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。

(1):自分フィールドの表側表示モンスター1体を墓地へ送って発動できる。

墓地のそのモンスターと種族・属性が同じでレベルが1つ高いモンスター1体をデッキから特殊召喚する。

 

 

 

「現れろ、悪を葬る正義の機械龍! 『クラッキング・ドラゴン』!」

『GAAAAAAAAAAAAAA!』

 

 

ATK:3000

 

 

「やっぱりそう来たか」

「そして永続魔法『悪夢の拷問部屋』と魔法カード『DDoSアタック』発動! まずは『DDoSアタック』の効果でデッキから同じ名前のカードを2枚墓地に送り、合計1600ダメージを与える!」

「っ!」

「そして『悪夢の拷問部屋』の効果発動! 相手が効果ダメージを受ける度に300の追加ダメージを与えるのだ!」

「ぐぅっ!」

 

 

マスター:LP 4000→2400→2100

 

 

「まだだ、『埋葬呪文の宝札』を発動。墓地の『DDoSアタック』3枚を除外し、2枚ドロー。そして魔法カード『死者蘇生』! 蘇れ、『ガンナードラゴン』!」

『GAOOOOOOOOOOO!』

 

 

ATK:2800

 

 

 一気に並ぶ2体のモンスター。攻撃力は最上級、しかも片方は破壊耐性持ちだ。

 更にライフは一気に半分。単純に見れば、状況は良くない。

 

「カードを1枚伏せ、永続魔法『機甲部隊の最前線(マシンナーズ・フロントライン)』を発動。これでターンエンドだ」

 

 

 

ヤラレヤック:LP 4000

手札:0枚

EXモンスターゾーン無し

クラッキング・ドラゴン(ATK:3000)、可変機獣 ガンナードラゴン(ATK:2800)

伏せカード1枚、 機甲部隊の最前線(永続魔法)

 

 

 

「俺のターン!」

「永続罠『サイバー・サモン・ブラスター』! 機械族モンスターが特殊召喚される度に300ダメージを与える!」

 

 成程バーンを添えた機械族か、とマスターは頷いた。

 『機甲部隊の最前線』で戦線を守り、戦闘破壊を企めば『クラッキング・ドラゴン』のバーンが飛んでくる。

 もたもたしていれば、『サイバー・サモン・ブラスター』と『悪夢の拷問部屋』で焼き殺されるし、闇属性で固めてあるなら蘇生手段は豊富だろう。

 強力な闇属性モンスターの採用や、『ジャック・ワイバーン』での蘇生も視野に入っているだろうし、闇属性モンスターは強力なモンスターやサポートカードが多いため、実に理に叶っているデッキだと言えた。『鋼鉄の襲撃者(ヘビーメタル・レイダース)』も投入されているだろうか。

 

 

 

サイバー・サモン・ブラスター

【永続罠】

機械族モンスターが特殊召喚される度に、相手ライフに300ポイントダメージを与える。

 

 

 

悪夢の拷問部屋

【永続魔法】

相手ライフに戦闘ダメージ以外のダメージを与える度に、相手ライフに300ポイントダメージを与える。

「悪夢の拷問部屋」の効果では、このカードの効果は適用されない。

 

 

 

機甲部隊の最前線

【永続魔法】

機械族モンスターが戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、そのモンスターより攻撃力の低い、同じ属性の機械族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する事ができる。

この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 

 

 

ジャック・ワイバーン(効果モンスター)

星4

闇属性/機械族

ATK 1800/DEF 0

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):自分フィールドの機械族モンスター1体とこのカードを除外し、自分の墓地の闇属性モンスター1体を対象として発動できる。

そのモンスターを特殊召喚する。

 

 

 

鋼鉄の襲撃者

【フィールド魔法】

(1):このカードがフィールドゾーンに存在する限り、自分の機械族・闇属性モンスターは、それぞれ1ターンに1度だけ戦闘では破壊されず、その戦闘で自分が戦闘ダメージを受けた場合、その数値分だけ攻撃力がアップする。

(2):1ターンに1度、自分フィールドの元々の種族・属性が機械族・闇属性のモンスターが、戦闘または自身の効果でフィールドのカードを破壊した場合に発動できる。

手札から機械族・闇属性モンスター1体を特殊召喚する。

 

 

 

 幼子を足蹴にするという外道でありながら、デッキ構築の技術は本物であるヤラレヤック。そんな彼を見て、マスターは疑問を1つ投げかけた。

 

「司祭さん、一個だけ聞かせてくれ。何で小さな子を蹴った?」

「何?」

「泣いてる小さな女の子を、どうして蹴ったのさ?」

「ハッ、下らん事を聞くな! そんなもの、オレが不愉快に思ったからに決まっているだろう!」

「……それだけ?」

 

 唖然とせざるを得ない。“不愉快に思ったから”というだけで、この男は子供に暴力を振るったと言うのか。

 

「汝、隣人を愛せよ。遠い遠い東の国までこの言葉は伝わっているよ。愛を重んじるキリスト教にしては、その考え方は野蛮なんじゃない?」

「では問おう。貴様、羽虫を愛するのか? 耳元で鬱陶しく煩い、何の利益にもならない虫ケラを愛せよと? 東洋のサル風情が、知った口を利くな!

 そもそもコイツは蛮族だ、我らが主を信じぬクソ袋だ! そんな奴を殺して何が悪い! 責め立てる貴様の方が間違っているのだ!」

 

 周囲から「そうだそうだ!」と声が上がる。解析では7割がNPCらしいが、残る3割の実際の人間も同調しているように見える。

 何にせよ、過激な発想だ。宗教と弾圧は切り離せない歴史だが、それをこの21世紀にやるとは随分と性根が歪んでいるらしい。

 ――或いは、まだ弾圧が常であった頃の何某なのだろうか。

 

「何年も前に、異教であろうと幸福が得られないワケじゃないって発表があった筈だけど?」

「そんな発表間違っておるわ! そも、オレ達がクソ市民を愛する必要なぞ無い! 奴らはオレ達のために泥にまみれて働き、オレ達の生活を支える! それで良いのだ!」

「……可哀想な発想だよ」

 

 マスターは短く吐き捨てると、手札からカードを1枚ディスクに差し込んだ。

 

「俺は儀式魔法『サーヴァント・リチューアライズ』を発動! 場か手札から、儀式召喚の素材に必要なレベル以上になるようモンスターをリリースし、サーヴァントを儀式召喚する!

 俺は手札のレベル7、『亡龍の戦慄-デストルドー』をリリース!」

 

 

 

亡龍の戦慄-デストルドー(チューナー・効果モンスター)

星7

闇属性/ドラゴン族

ATK 1000/DEF 3000

このカード名の効果は1ターンに1度しか使用できない。

(1):このカードが手札・墓地に存在する場合、LPを半分払い、自分フィールドのレベル6以下のモンスター1体を対象として発動できる。

このカードを特殊召喚する。

この効果で特殊召喚したこのカードは、レベルが対象のモンスターのレベル分だけ下がり、フィールドから離れた場合に持ち主のデッキの一番下に戻る。

 

 

 

 足元に魔法陣が広がり、赤い髑髏のような竜が中央に浮かぶ。

 『デストルドー』は7つの星に分解されると魔法陣の外円上に青白い炎となり、陣の内へと力を注いだ。

 

「汝の7つの星は、闇より復讐を謳う者へと受け継がれた。灰色の魂の元、契約は結ばれる!」

 

 

Ritual:☆7

 

 

「儀式召喚! 行くよ、『讐英霊 アントニオ・サリエリ』!」

『良かろう!』

 

 

ATK:2000

 

 

 闇の力は新たな復讐者を呼び出す。このチームに組み込まれていた灰色の男(グレイマン)が、装いを新たに場に君臨した。

 

「フン、さっきの男を呼び出したか、奇怪な。だが無駄だ、『クラッキング・ドラゴン』の効果発動! 召喚されたモンスターのレベル×200、“クラック・フォール”で攻撃力を下げ、お前にダメージを与える!」

「っ!」

 

 

ATK:2000→600

マスター:LP 2100→700

 

 

「更に『悪夢の拷問部屋』の効果で、追加ダメージを与える!」

「ぐぁっ!」

 

 

マスター:LP 700→400

 

 

 再び大きくライフを失うマスター。だがこの程度は軽傷だと服の埃を払い、ディスクを構え直す。

 

「どうだ? これで次に100以上のダメージを受ければ、『悪夢の拷問部屋』の効果で貴様のライフは尽きる。そしてオレの場には『サイバー・サモン・ブラスター』と『機甲部隊の最前線』がある。最早勝ち目など無かろう!」

「……それはどうかな?」

「何?」

 

 中々の戦術だが、その戦術は穴だらけだ。もっとも、わざわざ指摘してやる義理は無いが。

 そして既に勝敗は決している。

 

「俺は『サリエリ』の効果を発動! 1ターンに2回まで、自分フィールドにレベル7の楽団員トークンを特殊召喚する!」

「愚か者め! レベル7のモンスターを召喚すれば、1400のダメージを受ける事を忘れたのか!」

「それは無理だね」

 

 

楽団員トークン ATK:0

 

 

「こ、攻撃力、ゼロ!?」

「『クラッキング・ドラゴン』の効果はモンスターの攻撃力を下げ、その数値分ダメージを与える。下がる攻撃力が無いんじゃあ仕方ないよね?」

 

 全身から風を起こして威圧する機械龍だが、白衣の小人はうんともすんとも言わない。

 

「更に魔法カード『ミニマム・ガッツ』を発動! 俺のモンスターをリリースし、相手モンスターの攻撃力を0にする。そのモンスターが破壊された時、相手にその元々の攻撃力分のダメージを与える!」

「だが、『クラッキング・ドラゴン』は、このカード以下のレベルのモンスターには……」

「そっちならどうかな?」

 

 す、とマスターが指差したのは――『ガンナードラゴン』。何の耐性も無い、レベル7のモンスターだ。

 

「更に、『サリエリ』は1ターンに1度、場のモンスター1体にモンスター同士の戦闘ダメージを倍にする効果を与える。攻撃力は600、倍になれば1200、当然ながらサリエリを選んで発動する」

「なっ」

「意味、分かるよね?」

 

 

 

讐英霊 アントニオ・サリエリ(儀式・効果モンスター)(オリジナル)

星7

闇属性/魔法使い族

ATK 2000/DEF 2000

「サーヴァント・リチューアライズ」により降臨。

このカード名の(1)の効果は、1ターンに1度しか発動できない。

(1):自分フィールドのモンスター1体を選択して発動できる。

このターン、そのモンスターが相手モンスターと戦闘を行う場合、相手に与える戦闘ダメージは倍になる。

(2):自分フィールドに「楽団員トークン」(魔法使い族・闇・星7・攻/守0)を特殊召喚する。

この効果は1ターンに2度まで発動できる。

 

 

 

ミニマム・ガッツ

【通常魔法】

自分フィールド上のモンスター1体をリリースし、相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動できる。

選択したモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで0になる。

このターン、選択したモンスターが戦闘によって破壊され相手の墓地へ送られた時、そのモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 

 

 

「バトル、『サリエリ』で『ガンナードラゴン』を攻撃! これで、サヨナラだ!」

「は、ハハハハハーッ!」

「ひっ、う、ぎゃぁあああああああああああああああああああ!!」

 

 狂ったように大笑いをし、灰色の男の剣がキャタピラ付きのドラゴンを両断し、爆発を生み出した。倍に膨らんだダメージがヤラレヤックを襲い、ライフを削る。

 

 

ヤラレヤック:LP 4000→2800

 

 

「ま、『機甲部隊の最前線』の効果! デッキから攻撃力2800以下の闇属性・機械族モンスターを特殊召喚する!」

「『ミニマム・ガッツ』の効果! 破壊されたモンスターの攻撃力、2800のダメージを与える!」

 

 爆発は終わらない。強烈な閃光と熱風を持ったそれは、余ったライフをジャストで抉り、ディスクのブザーを鳴らすには充分な威力を持っていた。

 敗北の断末魔すら掻き消す程の大音量の轟音を響き渡らせ、其れはデュエルに終止符を打つ。のであった。

 

 

ヤラレヤック:LP 2800→0

 

 

「ぐへおぉあああああああっ!?」

「や、ヤラレヤック様がやられた!」

「ヤラレヤック様が敗北した!?」

「くそぉ、ヤラレヤック様を破るとは只者じゃないぞ!」

「ヤラレヤック様が土をつけられた!?」

「テメェら言い方変えて負け負け言ってんじゃねぇ! 煙が晴れたらアイツをガキごと袋叩きにしろぉ!」

「お嬢ちゃん、こっち」

「きゃっ!」

 

 なお、その煙幕に乗じる事でお蔭で女の子を連れ出せたのだから、このヤラレヤックという男は非常に優秀だったと言える。

 

 

  ☆

 

 

「バトル! 私は『フルール・ド・シュヴァリエ』と『ダーク・シムルグ』で、『ジャック・ワイバーン』と『人造人間サイコ・ショッカー』を攻撃!」

「もずぁああああああああああああああああっ!?」

 

 

ヌーブ:LP 1000→0

 

 

 派手に吹き飛ぶ大司教。自慢のモンスター達も、火力の難を突かれて吹き飛ばされ、鉄屑と化した。

 吹っ飛んだ時に頭でも打ったのか、倒れたままヌーブは目を回している。それを見たリアは無言でヌーブを掴み、そのまま店の裏口から放り出した。そして店内に戻り、一礼する。

 

「皆さん、ご迷惑をおかけしました。お詫びにこちらから一杯ずつ奢らせて頂きます」

「大丈夫、大司教はお酒に酔って何故か裏口に行き、そこで倒れた。夢と現実の区別がつかない程に酩酊していた、そういう事にしておけば良い」

「今夜はお酌を頑張るわ、もっともーっと楽しい夜にしましょう!」

 

 微笑む2人の女性と1人の男に毒気を抜かれたのか、或いは今ここで逆らっても勝てないと分かったのか、聴衆は素直に酒を注がれていく。

 もしかするとそれは、ウェイトレスとピアニストの腕だったのかも知れない。

 リアこと――、名うてのスパイ、デオン。

 マリアこと――、輝かしい王妃、マリー。

 アルトこと――、音楽神に愛された者、アマデウス。

 そんなヒトの心に訴えかけるプロ達が束になっては、ただのNPCとPCの混成では抗えるワケも無く、あっと言う間に彼らは酔っ払い共を味方に引き入れ、元の騒がしい酒場を取り戻して行くのであった。

 

「いやあリアちゃん強い強い! でも大丈夫かねぇ」

「平気ですよ。あっちだって『酒場の小娘に負けて気絶してました』なんて言えませんって」

「そうそう、今は勝負を酒肴に飲みましょう?」

「それもそうかー」

「おーいアルト、何か良い感じの曲を弾いてくれよー! 折角リアちゃんが勝ったんだからよー」

「良いとも。では“きらきら星”を。それとも“オレの尻を舐めろ”が良いかな?」

「おいキサマ!?」

「もっと良い奴あるだろー!」

 

 はははははは!と快活な笑い声が響き、その日の酒場は過去最高の売上を得たと言う。

 

 

  ☆

 

 

――留守番ありがと、デオン

――これから例の酒場に出勤?

 

――ああ、日雇いで

――ところでマスターは、この特異点にどんな印象を抱いたかな?

 

――ただの所感だけど良いかな、デオン?

――この特異点……、何て言うか

 

――言い辛いのかい?

 

――うん、ちょっと汚い言葉になるから

 

――いや、君程の人間すら、汚い言葉で表現せざるを得ないなら仕方ないよ

――それに、率直な感想も欲しいのは確かだしね

 

――分かった

――俺の抱いた感想、それは……

 

 

 

――猿真似だよ

 

 

To be continued

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