バージョン:セリパ   作:雄良 景

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 自分の名前は知っていた。
 それでも、誰かに呼ばれたのは初めてだった。






かかわり

 

 ―――――ギネが出産した。

 

 生まれたのは男。名前はラディッツになるらしい。それにしても、分娩室前で落ち着きのなかったバーダックは見てて面白かった。まあアタシも気が気じゃなかったんだけどさ。

 サイヤ人の男が出産に立ち会うなんてそうそうないから、医療スタッフも動揺してたね。

 

 ちいさい赤ん坊を覗き見る。髪型はギネに似たのかな…にしてもデコが広い。ギネもバーダックもこんなデコしてたっけ。まあ、かわいいけどさ。

 生んだばかりのギネは流石に消耗してて、ちょっと顔色が悪かった。けど、生まれたラディッツを幸せそうな顔で抱いていた。アタシはそれを見ながら隣で突っ立ってるバーダックの尻を蹴る。さっさと抱いてこいっての。親のアンタが抱かないとアタシたちが触れないだろ。え、生まれてすぐは抱けない? なんだ、じゃあ出直そうか。

 

 医療スタッフはフリーザ軍所属の連中が多い。だからサイヤ人しては異例と言えるほど『普通』の出産シーンにも割とちゃんと対応してくれていた。でも、やっぱり珍しいんだろうね。小さい声で「イメージ変わるなあ」とか呟いてる連中居たしさ。

 こうやって同僚の出産見舞いに来るサイヤ人も珍しいのか。まあ、周りなんて気にしないけどさ。

 

 10日ほど過ぎてから、自宅に移ったギネに許しを貰ってラディッツを抱き上げてみる。サイヤ人の赤ん坊だからね、体ができるのが早いらしい。

 抱き上げてみた体は熱くて、フニャフニャしていた。ほんとにこんなんで体ができてるっての? 骨無いんじゃないのこれ。とりあえず、言われたとおりに首の下に腕を入れて横抱きにする。…難しいね。

 

 

「やわっこいね。潰しちまいそうだよ」

 

 

 即座にバーダックによってギネに返された。本気にするんじゃないよ。

 

 

 

 

 

 

 ―――――生まれた子供は上級戦士に分類されるらしい。

 

 測定の結果、戦闘力が450もあった。こいつはすごいね、まさかここまでとは。ギネは明るい顔をしてたし、バーダックも澄ましたツラしてたけどあれは喜んでる。間違いない。

 ギネからしてみれば、子供の戦闘力が高いのは『飛ばし子』にされることなく惑星ベジータに留まってくれるってことだから余計に嬉しいんだろう。まあ、その分戦いに出なくちゃいけないから心配そうにしてたけどね。

 

 安心しな、と声をかけた。アタシとバーダックで鍛えてやるさ。そんじょそこらの連中には負けないくらいにね、と続ければ、それはそれで不安かも、なんて言われた。言うようになったじゃないか。

 ラディッツはもう数日したら応急の育児ポッドに移されるらしい。普通ならさっさと入れられるんだけど、ギネの要望で日にちをずらしてもらっている。少しでも一緒に居たいんだろう。きっとそれが、他で言うところの『母性』ってやつなんだろ。

 

 ギネはもう回復してるけど、出産をすると体質が変わることがあるくらい、子供を産むってのは体に負担がかかるらしい。普通の女サイヤ人はさっさと戦いに出るけど、ギネはバーダックが大事をとって休ませているからあんまり家から出てないと言っていた。………なんていうか、バーダック、あんた……ほんと変わったね。なにがあったんだい? いや、聞くまでもないだろうけど。

 とりあえず、アタシは療養中のギネが退屈しないようにいろいろな話をした。バーダックもちょくちょく口を出してきて、ギネは嬉しそうに笑う。―――――ああ、やっぱりこんな時間も悪くない。

 

 

「そういや、戦闘力と言えば、話のネタがふたつあるよ」

「ほう。ひとつは?」

「ベジータ王に息子が生まれたらしい。戦闘力は既に1000を超えてるとか」

 

 

 バーダックとギネは揃って驚いた顔をした。あ、今気づいたけど、この二人表情の作り方が似てきたね。おもしろい。

 それは置いといて、驚くのは無理ない。生まれてすぐに戦闘力が1000なんて、異例中の異例だろうからね。バーダックとチームを組んだ初めのころのアタシで1200だった。

 とんでもない王子様だよ、と言えばバーダックも片眉を上げて同意してきた。

 

 

「もうひとつは?」

「ああ、アタシの話なんだけど、ちょっとおもしろい特訓をしてね」

 

 

 もう使う必要なくなったんだけど、と続けて、内容を話す。

 前のチームの連中にからまれていたころの話だ。スカウターを使ってまでチョッカイかけてくるのがうっとおしくって、「じゃあスカウターに見つからないようにしてみよう」なんて思いついた話。

 単純な話、スカウターで計測されないくらいに戦闘力を下げればいいのでは? ってなったのさ。弱くなるんじゃなくて、計測されないようにコントロールする、ってこと。

 

 

「ふぅううう…………よし、バーダック、測ってみな」

「あ、ああ………戦闘力2ぃ?」

 

 

 あ、バーダックの素っ頓狂な声に笑っちまって集中が途切れた。まだまだだねアタシも。

 とりあえず、やり方としては自分の生命エネルギーを体の奥の奥にしまい込むイメージ。それをひたすら練習した。けど、カウンターの数字をゼロにはできなかった。難しいねやっぱり………

 

 

「む、無駄なことしてるなお前」

「なにせ当時は、しょっちゅう治療中になるリーダー様のおかげで時間が有り余ってたからね」

「………不意打ちをするのに有効かもな。実践で使えるようにしてみたらどうだ? エネルギーコントロールがキモだってんなら、いいトレーニングになってエネルギー波の扱いも上達するかもしれん」

 

 

 話反らしてんじゃないよ。

 

 

 

 

 

 

 ―――――例のバーで飲んでいたら、バーダックが隣に座ってきた。

 

 

「嫁とガキほっぽって何してんだい」

「今日はいいんだよ」

 

 

 いつかしたような会話だ。思わず笑えば、バーダックも笑っていた。酒を頼んで、軽くグラスを合わせる。

 バーダックと飲むのは久しぶりだ。こいつは最近ギネとガキにつきっきりだったからね。仕事も一時的に落ち着かせて、あっても近場の星への物資補給くらいだった。まあ理由が理由だったからね。アタシたちチームの連中も文句ないさ。上はなんだかんだ言ってたけど、生まれたのが上級戦士だったから緩くしてくれてるらしい。

 

 

「そういやあセリパ。テメェ、随分と言動が甘ったるくなったんじゃねえか? ギネの病気がうつったか」

「アンタに言われたくないよ腑抜け。まあ、しいていうなら」

 

 

 勉強してるのさ、と言えばバーダックが訝しげな顔をする。馬鹿だね、アンタ。アタシがギネみたいに心から甘ったるいことできると思ってんのかい? これでも中身は生粋のサイヤ人だよ。まあ、ギネに甘くして、甘ったれがうつってないとは言えないけどさ。

 

 

「物資補給の時とかにね。異星人が集まるだろう?」

 

 

 そこにはギネみたいに甘ったるい連中がうじゃうじゃいる。むしろ、サイヤ人みたいなのの方が異質なんだろうね。だから、そいつらをよく観察したり話を聞いたりしたのさ。

 ギネの思考はほんとにサイヤ人らしくない。けど、他じゃ当たり前の、好かれるタイプなんだろう。だから少しでもその考えを理解できるようにしたかった。そこに当てはまる名前を知りたかった。

 コイビトだとか、フウフだとか、嫁ってやつもそうやって知った。

 

 

「アタシはギネみたいな考え方はできない」

 

 

 どうあがいても戦う者のアタシは、ギネみたいにはなれない。ギネの気持ちに共感してやることはできない。

 

 

「けど、分かってさえすれば何かはできる」

 

 

 バーダックはふうん、と気の抜けたような声を出した。腑抜けの声だね、情けない。……それにしても、

 

 

「まあ、アンタもそのクチだったみたいだけど」

「はあ?」

 

 

 ギョッとした顔ののち、睨まれる。おー怖い怖い。けど、アンタが態度に出したんだろう?

 サイヤ人は淡白でも、『自分の女』という感覚・表現なら知ってる。けど、アンタ、アタシが『嫁と赤ん坊』って言っても普通に返事しただろう。赤ん坊はともかく、『嫁』はサイヤ人にはない発想だよ。馬鹿だね。

 

 バーダックは鋭い舌打ちをした。悪態ついたって忘れやしないよ。アンタがギネを大事にしてるって証拠をさ。せっかくだ、今度の仕事のときは一緒に話を聞きに行くかい?

 

 

「断る。一緒に歩いてテメェが俺の『女房』だと勘違いされるのは御免だ」

 

 

 へえ、そんなことがあるんだ。なるほど、男女で歩いてそんなこと聞きまわってたら勘違いされるんだね。それにしても、『ニョウボウ』……『女房』ねえ。知ってるよ、嫁のことだろ?

 はは、笑えるよ。今のアンタを過去のアンタに見せてやりたくなるね。

 

 

 

 

 

 

 蹴る。殴る。掴んで投げ飛ばす。

 殴りこんできた敵の腕を掴んで、もう片方の手で頭を爆発させる。ああ、返り血を被っちまったね。

 ふたりがかりで来た。片方の攻撃をそらしてもう片方にあてる。絶命。同胞を殺したことに動揺して動きの止まったそいつの首をへし折る。

 下を見る。非戦闘員が逃げ惑ってる。今回は捕虜は要らないって言ってたっけ。そして連中は水の上を移動してる。ああ、この星がほとんど水でよかった。仕事が楽だ。

 大量のエネルギー波を連打する。スカウターの数字はみるみる減ってって、とうとうゼロになった。

 

 

「よーし、終わり」

 

 

 一息ついて宇宙船を着陸させた場所に戻る。あんまり星を壊しすぎると価値が下がっちまうから気を使わなきゃいけないのがメンドクサイ。後片付けはフリーザ軍がやってくれるから、死体処理しなくていいけどさ、星を壊しすぎると上からお叱りがあるんだよね。うっとおしい。

ああ、ちょうどバーダックたちも戻ってきたようだね。バーダックの手には髪を掴まれた首が一つ。うわ、あんなもん持って帰ってきてどうすんだってんだい。

 

 

「うげ、おいバーダック。なんだよそれ」

 

 

 ギネの代わりに新しく入ったパンブーキンが嫌そうな声を出した。こいつもバーダックとトーマの知り合いだったらしくって、チームに馴染むのは早かった。気の良い奴だよ。

 

 

「うん? …ああ、持ってきちまった。忘れてたぜ」

 

 

 ポーンと投げられたそれに、バーダックのエネルギー波が当たる。首は跡形もなく消し飛んだ。にしても、バーダックの機嫌が良いね。そんなに強かったってのかい。聞けば、随分と粘ってきたらしい。羨ましいな、こっちは骨のない奴ばっかでさ。戦闘力が上がってから満足する戦いができてないよ。たまには獲物、こっちに回してくれてもいいんだけどね? 

 

 冗談だろ、と鼻で笑ってくるバーダックの尻を蹴る。殴られた。でも殴り返さない。1発と1発で終わり。

すっきりするくらい戦いがしたいなら、まあバーダックと全力で手合わせって方法もあるけどさ、それで1回丸1日メディカルマシーンに入る羽目になったちゃって。そのときはギネにめちゃくちゃ泣かれたから自重する。味方同士で殺し合わないどくれよ、って引っ付いてワンワン泣かれちまってさ。アタシもバーダックも、ギネに泣かれるのは弱いんだ。

 

 あ。全員揃ってるってことは仕事はこれで終わりだよね? 取りこぼしは全員ないね、よし。じゃあさっさと帰ろうか。

 バーダックはギネとガキを養うためにもバンバン仕事しなくちゃいけないけど、しょっちゅう出ずっぱりなんてギネがかわいそうだからさ。仕事自体はさっさと終わるに限るのさ。

 

 

「にしてもセリパ。随分と返り血を浴びたな」

 

 

 アタシを見てバーダックがニヤッと笑う。あの顔は揶揄ってる顔だ。腹立つね。パンブーキンが「なんだ調子悪いのか?」なんて聞いてくるのをトーマが否定する。アイツにもバレてるってわけか。トテッポが小さく笑った。

 今までのアタシは基本エネルギー波での遠距離・中距離攻撃が主だった。近距離戦闘もするけどね、シメはエネルギー波を使う。その理由を、こいつらは気づいてたってわけだ。

 

 ふん、と顔をそらす。分かってんなら言うんじゃないようっとおしいね。バーダックが「甘ったれめ」と鼻で笑った。うるさいよ腑抜け。

 ああそうさ。アタシがそういう戦闘スタイルを貫いてたのはギネが居たからさ。戦闘を好まないあの子に必要以上に返り血なんて見せないように、わざわざ焼き殺してた。まあエネルギー波の鍛錬になるからこっちだって利益があったしね。

 

 理由を聞かされたパンブーキンまでがニヤッとした顔をしてきた。―――――帰る前に全員1発ずつブン殴っとこうかな。

 

 

 

 

 

 

 ―――――ギネが襲われかけた。

 

 相手は上級戦士の連中。酔っぱらった勢いでギネに手を出そうとしてきた。たまたま近くにいたアタシが気付いてぶっ飛ばしたけど、怒りすぎて手加減ができなかった。

 アイツら、なんて言ったと思う? 「下級戦士の男相手に上級戦士を産んだなら、上級戦士相手ならもっといい戦士を産めるだろ」―――――ああ、殺してやればよかった。

 

 殴って、殴って、殴って、殴って。ギネに止められたころには全員ピクリともしなくなっていた。アタシ自身も殴ってた方の腕は折れてるし他にも何発かもらったらしくて体が痛い。

 

 連中はすぐにメディカルマシーンに担ぎ込まれていった。アタシは別の仕事で別れてるバーダックが帰ってくるまでギネのそばを離れなかった。気持ちが高ぶりすぎて、男がギネのそば来ることに過剰反応しちまうんだ。トーマやトテッポ、パンブーキンですらギネに近づけさせられなかった。

 

 バーダックは仕事を切り上げて帰ってきた。その姿を見て、ようやく体の力が抜ける。―――――わかってるさ。普通のサイヤ人なら、ぶちのめしたあの上級戦士連中の言い分をおかしいとは思わないんだろう。アタシだって、相手がギネじゃなければ何とも思わなかった。

 

 ギネはダメだ。あの子は、そう言う考えを持てない子だ。今回だって、随分と怖い思いをしたんだろう。バーダックにしがみついて泣いてる。ああ、よかった。ようやく安心できたんだね。

 ギネ越しにバーダックと目が合う。きっとアタシが怪我をしっぱなしなのが気になってんだろ。別にアタシの趣味じゃないさ。ただ、上級戦士に手を出したってんでメディカルマシーンの使用禁止を言い渡されてね。まあ、それだけで済んだのは上級戦士の男3人が下級戦士の女1人に負けたってのに、それで処罰出してたらメンツが立たないってとこかな。どうでもいいけど。

 

 にしても、さすがに痛いね。ちょっと寝ることにするよ。ああ、バーダック、ギネは任せたよ。

 

 ―――――もし連中が仕返しに来たら、今度はぶっ殺してやろうと思っていたんだけど。意外にもその後連中がからんでくることも無く、というか顔も見なかった。

 そしてバーダックは自分の人脈を駆使して不在中のギネを守るようにしたらしい。アタシたちはチームを組んでるけど、だからって単独任務や別隊での任務が無いわけじゃない。バーダックは持ち前の戦闘力と面倒見の良さ、あとはギネからうつった、ちょっとの甘ったるさでよく慕われてるらしいから、そこからの人脈だろう。

 そいつらからしてみればバーダックがギネを大事にしてるのは周知の事実で、だから今回の件も快く引き受けてくれたらしい。バーダックが任務に出てる間はできるだけ交代で、ギネにばれないように様子見しといてくれるんだとさ。

 へえ。ねえバーダック。案外『甘ったれ』も役に立つじゃないか。

 

 

 

 

 

 ―――――4つになったラディッツに会った

 

 クソ生意気にもアタシの顔を見て嫌そうにしたクソガキを捕まえる。バタバタ暴れてうるさいね。軽く殴れば静かに……おいおい、泣いてんのかいアンタ。

 

 

「く、くそ~~っ、なんで親父といいアンタといい、すぐ殴るんだよぉ!」

 

 

 ベショベショと泣くラディッツにため息が出る。この泣き虫はギネに似たのかね。にしても男のくせに情けない。そんなんだからしょっちゅうバーダックにぶっ飛ばされるんだよ。

 まあ、コイツもコイツで文句は言ってもバーダックを慕ってるみたいだし、親子関係は悪くないみたいだけどさ。

 泣きべそかいてるラディッツをそのまま訓練場に引っ張ってく。はいはい、鍛錬の相手してやるから泣きやみな。……は? アタシは手加減下手だからイヤ? 贅沢言ってんじゃないよクソガキ。それでもサイヤ人か。

 

 ラディッツは、俺は上級戦士なのに、と愚痴る。……これは最近のラディッツの口癖だってギネから聞いたね。まあ、気持ちはわかるさ。下級戦士であるはずの父親はへたな上級戦士より強くて、特異な母は強くないけど浮くくらい優しくて、そして自分は同年代の上級戦士の中で1番弱い(これは聞きかじりだけど)。複雑な環境と立場に心が追い付かなくて、生まれながらの戦闘力の高さだけが心の依り代になってるんだろう。

 

 

「いいかいラディッツ。よく聞きな」

 

 

 別に優しくしてやるつもりはないけど、これだけは言っておかなくちゃいけない。

 

 

「上級戦士だって言ってもね、実際の戦闘力が弱けりゃハナシになんないんだよ。立場だけの口だけ男になんざなるんじゃない。誇るものが欲しいんなら強くなりな」

 

 

 ラディッツはむっつりと黙る。分かってないわけじゃないんだろう。頭は悪くない奴だからね。

 今の戦闘力は、と聞けば、1000と答えられる。4つにしては破格だ。……ああ、でもラディッツは同年代に生まれながら1000の王子がいるんだっけ。生まれも戦闘力も完璧な奴がそばに居りゃあ、卑屈にもなるかもね。それにしたって甘ったれの腑抜けすぎると思うけど。

 アンタはまだまだ伸びしろがあるよ、と言ってやれば明るい顔をした。簡単な奴だね。まあ、強くなりたいと思うことは悪くない。それじゃあ期待に応えて思いっきりしごいてやろうとするか。

 

 おいラディッツ、逃げるんじゃないよ!

 

 

 

 

 

 

 ―――――今私は、単独任務に出ていた。

 

 ついたのは辺境の星。グレードで言えば中の下ってとこかな。先住民が少ないから侵略しやすいけど、別にそこまで価値があるわけじゃない。

 スカウターを起動する。島全体の生命反応は片手ほどで、ひとつだけ100を超えた戦闘力がある。ああ、コイツか。

 

 

「う、おまえ、……だれだっ!」

「へえ、言葉を話せるのか。知能が高いね」

 

 

 そこに居たのは色黒のガキ。独特な髪型に、見たことあるような顔に、揺れる尻尾。―――――10年前にこの星へ『飛ばし子』としてやってきたサイヤ人のガキだ。

 

 

「よおガキ。アンタがターレスかい?」

 

 

 そう言えば、ガキは呆然とした顔をした。

 

 

 

 

 

 

 残っていた先住民を始末して、任務完了の通信を入れる。ガキは黙ってアタシを見てた。

 この星の連中を殺したのはアンタかと聞けば、無言でうなずく。なるほど、インプットされてた命令に不具合はないみたいだね。

 ガキを連れて宇宙船に乗る。どこに行く、と聞かれたのでアンタの故郷に帰んのさ、と言ってやれば微妙な顔をする。おおかた『故郷』と言われてもしっくりこない、って感じだろ。

 

 それでもガキは黙ってついてきた。帰り道の宇宙船では、ある程普度のことを教えてやった。種族のこと。これから帰る星のこと。『飛ばし子』のシステム。アタシは回収に来たこと。

 

 

「だいたいは生き残れなくて死んじまうんだけどね。環境が良かったとはいえアンタみたいに生き残って且つ侵略してるガキなんて珍しいよ」

 

 

 そう言えば、黙ってうつむいた。……まさか照れてんのかい? 野生児みたいになってると思ったけど、案外情緒が育ってんだね。サイヤ人らしくはないけどさ。不思議なこった。まさか野生で育った方がまともな感性持って育つなんて。

 

 

「セリパ……おれ、ベジータ、帰ったら、どうする?」

「さあ? そういや、回収した飛ばし子がどうなるのかなんて気にしたことなかったね」

 

 

 まあ、戦士として使われるとは思うけど。まず帰ってくること自体が珍しいからあんまり話聞かないからな…。

 ターレスは表情を変えずにアタシをじっと見る。手だけがアタシの戦闘服を掴んでた。―――――ふうん、まあこのガキも伸びしろありそうだし、いっぱしの戦士になるように鍛えてやるのもいいかもね。

 

 

「アンタ、アタシんとこ来るかい?」

 

 

 ―――――この時のアタシは知る由もない。いくら下級戦士は顔のパターンが少ないとはいえ、あまりにもバーダックにそっくりなガキを連れ帰って引き取ったアタシに、「実はバーダックとできてた」だの「バーダックのガキが欲しくて引き取った」だのというくだらない噂話をたてられる事になることを。

 

 もちろん全員メディカルマシーン送りにしてやったよ。救いはギネは誤解しないでいてくれたことだね。ギネまで誤解してたら、連中ぬるいこと言わずにブッ殺してたよ。

 

 

 







「クソッ、あの女……! アイツのせいでいい笑いモンになったじゃねえか」
「し、しかしアイツ、本当に下級戦士か? それにしては、つ、強すぎる」
「間違いねぇさ。見たことがあったからな。強いっつったって、今回の回復で俺らもパワーアップした。3人がかりで押さえつけりゃ抵抗なんざ出来ねえさ。」
「ああ。『借りを返して』やる……」



「―――――へえ、誰にだ?」



「!!? だ、誰だテメェ!!」


「おい、誰だ、だってよ」
「あ? 誰でもいいだろ。俺らみたいな下級戦士のツラと名前なんざ、興味ねえだろ?」
「へっ、こいつらかよ」
「………間違いない」


「何ごちゃごちゃ言ってんだテメェら!」
「お、おい待て、あの真ん中のやつ、噂の下級戦士じゃねえか? 戦闘力が10000超えてるって話の、」
「な、」
「そ、そういやあ、俺らをぶん殴ってきたあの女、その下級戦士と同じチームに居た気が……」



「おしゃべりはもういいだろ?」

「うちの女房と仲間がずいぶんと世話になったらしいからよ」

「―――――『借りを返しに』来たんだが」





「あっ、どこ行ってたんだいこんな時間に」
「野暮用さ……アイツは?」
「さっき起きて、ご飯食べたらまた寝たよ。怪我はもいいみたい」
「タフな奴だ」
「……襲ってきた連中、もし仕返しに来たらどうしよう」
「…心配することじゃあねえさ。次は俺たちもいるしな」
「そっか……あれ、腕のとこに汚れがついてるよ。黒っぽいの…」

「ああ……どっかで付けちまったのか。ついでだ、風呂に入ってくる。―――――『臭い』も落としたいしな」


「そういえば、なんか鉄臭かったような……怪我でもしたのかな? 救急箱、救急箱」


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