強くあれ
生き残るために
であい
―――――それはすぐにやってきた。
飛び立ったアタシのポッドを追ってきたのはフリーザ軍じゃなかった。いや、正確にはフリーザ軍と言えるかもしれないけど、よりにもよって
クウラと言えば、フリーザより冷淡だっていうじゃないか。めんどくさいのに見つかったね。
ちからのある君臨者なんてのはだいたいが冷酷で傲慢だ。だからフリーザがポッドに気づいても、戦闘力2じゃ勝手にくたばるだろうって捨て置かれるんじゃないか、ってのが多少フリーザについて聞きかじりしたアタシとバーダックの見解だった。
でもこれはあくまでイメージでしかない経験則からの大博打だ。だから気まぐれに消される可能性だってある。もしもを考えてアタシのポッドをおとりにしてみりゃ、まさかお兄様が釣れるとはね。
ひとつめの星に着陸したアタシを追うように宇宙船が下りてきたときは、おとり役が無駄にならなかったかとため息が出たよ。しかも宇宙船にあったのはクウラ部隊ののマークだしね。
けど―――――想定内。フリーザ軍はサイヤ人の『飛ばし子』システムを知っている。だから乗っているのが戦闘力2なら、飛ばし子だと判断される確率はほぼ100%だろ?
実際クウラがよこした追手は武装した下級戦闘員だった。戦闘力8000超えのこっちに対して向こうは武装してもせいぜい400前後が5人。どう考えてもサイヤ人の戦闘員を相手させるための部隊じゃない。
まあでも、実際ポッドに乗ってたのはアタシで、そのアタシから見りゃ雑魚さ。
―――――ただ、乗ってたのが『
とりあえず連中の連絡手段は奪っとかないとね。
物陰に隠れて、遠距離からのエネルギー波で通信機のついた装着型スカウターを狙い打てば……はん、派手に狼狽えてみっともない。
ただ今ので統率をとれるようなのは居ないってのは分かった。通信機越しに指示を出してくれる奴が居なきゃまともな連携も取れない本物の雑魚だったわけか。
ゴキ、と手を鳴らす。こいつらは生きて帰さない。―――――けど、殺すのはアタシじゃない。
■
―――――悲鳴が響く。
追手の連中はアタシを見て完全に戦意を喪失した。別持ちだったスカウトスコープで戦闘力を測れるからね。アタシの数値を読み上げた時の連中の顔と言ったら!
増援を呼ぼうにも連絡手段はすでに壊され、どうすればいいかの指示ももらえない現状。
宇宙船内にある通信機はまだ手を付けてないけど、そもそも、そんな隙をアタシが許すわけがない。逃げ回る連中を捕まえるのに10秒もかからないさ。
そしてそのまま、ケダモノの巣に放り込む。
―――――この星の名前は『惑星 ゴレス』。広いが荒れ果てた土地に、生息しているのは非常に特異な『肉食獣』のみという気色悪い星。獣は凶暴すぎて趣味の悪い金持ちでもペットに欲しがるやつはいない。なんせ、どんな檻も鎖も食いちぎって飼い主をエサにしちまうようなバケモノばっかだからね。
究極の弱肉強食主義。『かばう』『見逃す』『助け合う』なんて考えはない、ケダモノの星。
あんまりにも使い道のない星だからフリーザ軍すら放置していたこの星が、今回は役に立った。
この星を選んだ目的はみっつ。ひとつは、惑星ベジータからさほど距離が離れてないから追手が来てもすぐに対処してとんずらこける。それから、こんな過酷な星に送られたなら死ぬだろう、と見逃されるんじゃないかって希望的観測。まあこいつは外しちまったけど。
まあいいさ。一番大事なのは、最後のひとつ。万が一追手が来た場合、『追手を始末したのが
悲鳴が響く。生きたままケダモノに貪り食われる痛みに絶叫を上げている。弱いくせに元気なもんだ。あれだけ食われてまだ叫ぶ気力が残ってるなんてね。種族柄かい?
―――――あん? 助けてくれ? はは、冷酷無比のクウラ軍がずいぶん可愛らしいこと言うね。いいからさっさとくたばりな。ちゃんと全滅したって確認できないとこっちも出発できないじゃないか。
「お」
やっとか。
■
―――――うれしい誤算だ。
追手が乗ってきたのはなかなか性能がいい宇宙船だった。こいつはツイてるね。通信機と
なにせ、こんなご立派なもんの持ち主さんは不幸なことにケダモノに喰われたらしいからね。捨て置くなんて宝の持ち腐れじゃないか。限りある物資は有効活用するべきだろ?
ふんふん、速度はアタシのポッドの倍以上。設備も最新だし多少の娯楽機能もある…はっ、景気がいいもんだ。アタシらが獲ってきた星で随分贅沢してんじゃないか。サイヤ人用の宇宙船は必要最低限の機能しかつけてないくせにさ。
■
―――――数分で宇宙船の中を検めた。
宇宙船の機能はフリーザ軍のと変わらないみたいだ。クウラもフリーザ軍だしその部下が乗ってたんならそんなもんか。なら、
この宇宙船はふたつめの星に着いたら捨てちまおう。ひとり用ポッドならコンパクトな分余計な機能を付けるだけの余裕が無いから変に心配しなくていい。快適空間でも気が休まらないんなら意味ないしね。ましてや地球に向かってることがバレかねないのなら猶更さ。
連中の宇宙船には燃料も入ってた。これなら次の星まで十分持つだろう。短い間だけどシャワーとベッドを堪能しておこうか。
―――――ああ、そうだ。その前に宇宙船が着陸していた場所を吹き飛ばしとこうか。足跡だのなんだの、下手に痕跡を残したらそこから足が着いちまうかもしれないからね。地形を変えちまえば証拠もクソもないだろ。
宇宙船にはメンテナンス用の補修パーツがあった。こいつを『海』に放り投げれば、―――――よし、溶けた溶けた。この星に存在する水分は全て強酸性の劇物だからね。つくづく気味の悪い星だ。
でもこれで宇宙船や飛ばし子の痕跡は見つからなくても、強酸の海に落ちちまったってことにできる。ふふん、長年前線に立ってりゃこういった頭も回るようになんのさ。
オーケイ、忘れもんはないね。さっさと星を出るとするか。通信機を壊す前にコールが鳴ってたんだ。律儀に定期連絡をしてたみたいだし、さっさと出てかないと援軍が来るかもしれない。
■
―――――惑星ベジータは滅んだらしい。
■
「 悪党にふさわしい惨めな最後だよ 」
■
―――――5年かかった。
むしろ5年で済んだ、って言った方がいいね。かっぱらった宇宙船がふたつめの星にたどり着くのに、かかった時間はポッドの4分の1だった! いいもん拾ったよ。
それに隠ぺい工作が上手くいったのかあの後の追手もない。最高だ。運が向いてきてるって感じさ。結果として予定よりずいぶんと早くに地球にたどり着くことができた!
ポットが下りたのは人気のない荒野だった。外に出れば着陸の衝撃で土煙がうっとおしい。このポッドはデカい宇宙船と違って衝撃を殺せないのが難点だね。もはや墜落だよ。
正規の『ターミナル』にある着地点を使わないとデカい音は出るしデカいクレーターもできるもんだから、場所によっちゃあ野次馬に囲まれたり敵に囲まれたりするデメリットがある。
まあひとり用ポッドに乗る仕事なんて、だいたいが
明るい夜だった。ふと尻尾が落ち着かなく騒めいた感覚がして、悟る。なるほど、この星じゃあ今日は満月らしい。
気づいてよかったよ。大猿になるわけにはいかないからね。アタシは上級戦士じゃないから大猿になっちまうと理性を保てない。仕事で来たわけじゃないのに暴れるつもりはないし、万が一近くにカカロットが居た場合、うっかり殺しちまうかもしれない。
直視しないように空の明かりに背中を向けて、装着していたスカウターを起動すれば……おいおい、数えきれないくらいの生体反応だ。
「多いね。……ああそういや、カカロットのやつは命令をインプットされてないのか」
本来の飛ばし子は、飛ばされた惑星に済む生命体をせん滅しろ、って命令が頭の中にインプットされてるから、ターレスがそうだったように破壊活動を始めるものだ。
けどカカロットは最終的に『飛ばし子にならない』ことになったから、命令をインプットされていないんだろう。だからこの星はこんなにも生体反応が多い。……いや、戦闘力2のカカロットじゃ暴れたってたかが知れてたってだけかもね。
スカウターで地球上の戦闘力を割り出せば……ふうん、高くても100超えがいくつか、ってとこか。雑魚しかいない星だ。……けどそれは天敵になる存在が少ないってことだ。これでで多少カカロットの生存率が高くなった。
さて。これからカカロットを生きてる仮定して探すとしても、これだけ生体反応が多けりゃ骨の折れる作業になりそうだ。
カカロットにどれだけ潜在能力があるかは知らないけど、こんな雑魚の星じゃあ伸び代があろうとたいした成長の期待はできない。つまり、スカウターの示す
原住民の大半が戦闘力片手前後の星で、戦闘力が2のやつなんて腐るほどいるじゃないか。殲滅なら大して気にならない数だけど、探しもんをするには絶望的だ。
まったく、探し出すのは至難の業だろうね。なんか手掛かりがあれば分かりやすいんだけど。
「……あ、」
そういや今日は満月だ。なら、カカロットが大猿になってる可能性があるんじゃないか?
■
―――――大猿になっているのなら、戦闘力は10倍になってるはずだ。
最低でも20以上の戦闘力を示す場所に行けば可能性がある。人口が多くても平均レベルの低いこの星は10を超すだけでもレア。しらみつぶしに探し回るよりは効率的だ。
満月を見てない可能性もあるけど…とりあえず。
「くたばってんじゃないよカカロット……!!」
まずは数少ない100前後のやつから探して、そこから戦闘力の高い順に回ることにした。
孤島に居たジジイ。ここは違った。黒髪を三つ編みにしてるジジイ。コイツも違うね。次だ。変なグラサンかけてるジジイ。違う。……というか、ジジイばっかじゃないか! どうなってんだいこの星は。
くそ、夜が明けちまうじゃないか。次の4人目と5人目はここから随分離れていた場所にまとまってたはずだ。スカウターを起動してもう一度所在地を……、………?
おかしい。スカウターが示したのは100超えがひとりと、そのそばにひとつ。10程度の戦闘力。
……そんなはずはない。最初確認したときには、100超えがふたり居たはずだ。たった2、3時間でなぜ戦闘力が10分の1になる? 別のやつと入れ替わったのか?
…いや、まさか。
すでに月は居なくなって、2時間くらい前に太陽が昇った。
そして2時間前は確かに100超えがふたり居たはずだ。
―――――10分の1になったんじゃなくて、まさか逆に、……
■
―――――晴れた空を飛ぶ。
目的地は遠い。途中、空を飛んで移動してりゃ同じように宇宙船に似た機械が空を飛んでるのを見かけた。あれはこの星の飛行船だろう。見つからないように高度を上げる。
コソコソするのは好きじゃないけど、カカロットを見つけるまで騒ぎを起こすべきじゃない。こんな星じゃ飛べるやつだってまともに居ないだろうからね。
( それにしても、ずいぶんと飛行船が多い。バーダックのやつ、地球は大した化学力を持たない星のはずじゃなかったのかい )
スカウターに従って飛んでいれば、やがて人里を離れ、深い山の中に差し掛かっていく。随分と遠いな。
この先にある生体反応は野生動物っぽいのがいくつかと、100超えがひとつと、10程度がひとつ。もうひとつの100超えは見つからない。
ああ―――――やっぱり。
「っ! 悪運の強さはバーダック譲りかい!」
スカウターが示す残距離がどんどんと減っていく。同時にその地点にボロ家があるのが見えた。家の前にジジイが立っている。ちょっと、100超えはまたジジイかい。これも種族柄なのか?
―――――それから、その隣にガキがひとり。
( 間違えようがない )
下級戦士の少ない顔のパターンの中でも、一番見慣れたツラ。尻尾もある。それから、殴り倒したこともある特徴的な髪型! ああ―――――間違いない。
( なあバーダック、あんた良い
勢いをつけて地上に降りた。勢いがよすぎてまた土煙がたったけど、大したことじゃない。
こっちを見てアホ面晒してるガキと、警戒して構えてるジジイ。構わない。たかだか100じゃ邪魔にもなりえない。―――――それよりガキだ。ああなんだいその顔! 本物の腑抜けの顔じゃないか。思わず笑いそうになっちまったよ。パーツを見りゃあバーダックと同じ顔ってのはよくわかる。その顔でそんな情けない顔作れるなんてアイツにも見せてやりたかったよ! なあバーダック、ギネ!!!
「カカロット!!」
ひと息で近づいて、その肩を掴んだ。やっと見つけた!
やるじゃないか戦闘力2が10まで育ったなんてね。この星に着いたのが2年前くらいだろう? 腑抜けの星でよく育ったもんだ。まだまだ弱いしターレスと比べりゃ成長は遅いけどアンタ成長が遅いタイプって話だったしね。それはこれからアタシが鍛えてやればいい。アンタだってバーダックのガキなんだから強くなるさってアンタ尻尾を腰に巻いてないのかというか尻尾はちゃんと鍛えてんだろうね。まったく仕方ない奴だそれも追々いや、まずよく生き延びたなってことを認めてやんないとね。ああもしかして隣のジジイに拾われたのか。腑抜けた面も大人しく暮らしてるっぽいのもまあ中身がギネに似たんなら腑に落ちる。にしても見れば見るほどバーダックによく似てるねこの面で中身がギネなんて面白くってしかたないよ久しぶりに見た顔だ同胞の顔ああそうだこんな顔だった! よしじゃあとりあえず
「だ、誰だおめえ……お、おら悟空だぞ」
は?
いつも