——— GSッター ———
@いまいずみん
>暑いわー
>夏暑いわー
@ばんきっき
>何で今日バイトを入れちゃったの私のばかー…
@普通の魔法使い
>こういう日は涼しいところで冷たいものに限るぜ
@ヴォルケイノ藤原
>あつー
@オータムな姉
>秋はどこ……ここ……?
@オータムな妹
>まだ初夏よおねえちゃん……
@すくすく
>きゅー!(店先で水浴びするすくすくの写真付き)
@モフモフソムリエAQN
>暑い時こそすくすくさんをモフりに行くべきですよね!
>あっ……でも今日……お店お休み……ガクッ
@鈴奈庵公式アカウント
>阿求ー、生きてるー?
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「きゅー」「きゅー!」「きゅーっ」
店先で打ち水を始めると、すくすくたちが自ら水を浴びようと走ってくる今日この頃。
いやー、今日から夏本番だね。昨日のうちにクーラーの準備をしておいて正解だった。やっぱり喫茶店は涼しくなきゃいけないよね。
ギンギラギンにさりげなく照らしてくる太陽と青空を、すくすくゆうかりんと一緒に育てた立派な向日葵が仰いでいる。これぞ夏って感じだ。
ちなみに今日の喫茶店は休業日であるが、別件でお客さんがやってくる予定がある。
「ごきげんよう店主さん。花の手入れも欠かしていないようね、殊勝な心がけだわ」
「おはようナナスケ! わぁ、すっごく大きなひまわり! 私よりも大きいわ!」
噂をすればなんとやらと思いながら、声のした方向を振り返る。
純白の日傘をさしてやってきたのは、黄色いバンダナと花柄の刺繍が入ったエプロンを身に着けた幽香さんと、おそろいのミニエプロンを着たメディちゃん。
おはようございますお二方、お暑い中ご足労頂きありがとうございます。
ささっ。涼しい店内へどうぞ。
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幽香さんはお客さんとして喫茶店に来ることも多いが、パンを売りに訪れてくれることもある。
なんでも最近パン作りにハマったようで、ベーカリーを始めたんだとか。自前の窯とかも家にあるらしい。とても本格的である。
「今日持ってきたのはバケットにクロワッサン、後は食パンね。どれも良い焼き加減に仕上がっているわ。そちらの小人さんにすくすく、一口いかが?」
『きゅー!』mgmg
「ふあぁぁ…! この食パン、ふわふわのモチモチ…!」
「こっちのクロワッサンは私も作るのを手伝ったのよ! 食べてみて!」
「『サクサクふわふわ美味』の表情!」
味も見ての通りだ。すくすくたちもすくなちゃんも幸せそうな顔でパンを頬張っている。あのこころちゃんでさえ、ほのかに口元がにやけている。風見ベーカリー恐るべし。
人里でも出店を出しているようだが、すぐに行列ができて売り切れてしまうほどの大人気っぷり。そんな風見ベーカリーとタイアップできるのは、ひとえに幽香さんの気まぐれのおかげだろう。
ってことで、今日もある分全部買わせてもらってもいいですかね?
「もちろんよ。そのつもりで持ってきたもの。お得意様だし、少し安くしておくわ」
「まいどありー!」
「きゅー!」
お金を払い、パンの入ったバスケットをそのまま受け取る。
買ったパンはそのままランチとしてお客さんに出しているわけではなく、サンドイッチにしたりフレンチトーストにしたり、ひと手間加えてから提供している。クロワッサンは我が家の朝食用だ。
そうだ。今日はこれから新メニュー試食会をしようと思ってるのですが、一緒に食べていきませんか? お代はもちろん頂きませんよ。
「あら、そういうことならご馳走になろうかしら。しっかり品定めしてあげる」
「ナナスケ、ゴチになるわ!」
「この時を待っていたぞナナスケ! お腹ペコペコの表情!」
そう、お休みなのにこころちゃんがいるのはそういうことなのだ。この食いしん坊さんめ。
よし、さっそく調理に取り掛かろう。
すくすく達よ。幽香さんたちへの対応をよろしくたのむぞ。
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調理と言っても、今回は大したことはしない。
食パンの耳を切り、たっぷりの生クリームとマスカットを挟むだけの、簡単なフルーツサンドだ。
簡単とはいえ侮るなかれ。これがとても美味しいのだ。断面図はSNS映えするし、喫茶店とメニューとしては文句の付け所のない一品に仕上がっている……と俺は思っている。
しかしエビデンスは大事だからね。
みんなにも食べてもらい、感想をもらおう。
「きゅー?」
「あー……面倒な奴がいるタイミングで来ちまったな」
「本当よ。まさかアンタがいるとは思ってなかったわ幽香」
「あらまぁ辛辣ね。昔は一緒に異変を解決するほど仲良しだったじゃない」
「そんな記憶は一切ないぜ」
「あんたが一番和を乱してたでしょーが」
料理を持って戻ってくると、何やら人が増えている。
霊夢さんに魔理沙さんじゃないですか。
本日は休業日ですよ。
「そう言うなってナナスケ。今日は涼しいところで冷たいものが食べたい気分なんだ。安心しろ、金は払う」
「きゅー」
「私はツケの支払いと、針妙丸の顔を見に来たのよ。迷惑かけてない?」
「もー霊夢! 私を子供扱いしないでよー!」
「きゅー!」
すくなちゃんがすくすく白沢の上でびょんぴょん跳び跳ねる。うーん、子どもだ。
そして各々方の事情は理解した。まぁ、たまには賑やかな休日も悪くないだろう。ばんきさんがいないのだけは残念だけど、バイトなら仕方ない。
ではお二人も食べて感想をくださいな。
マスカットのフルーツサンドです。パンの耳で塩ラスクも作ってみたので、こちらもどうぞ。
「もぐ……へぇ、辛口のコメントを考えていたのだけれど、存外悪くないじゃない」
「爽やかな甘さでとってもおいしいわ!」
「『まいうー』の表情」
「クリームがあんまり甘くない分、フルーツの甘さが引き立ってるのね。今度の宴会に持ってきてもらおうかしら」
「パン耳ラスクも良い感じに塩味が効いてて美味いな。これは止まらん」サクサク
「きゅー」サクサク
よっし。みんなからの感想も重畳だ。唯一何も語らなかったすくなちゃんは、目を輝かせながらハムスターのようにフルーツサンドを頬張っている。ちょっと大きかったかな。
ともあれ、これならメニューに載せても問題なさそうだね。塩ラスクも魔理沙さんとすくすくの食べっぷりを見る限り、採用の価値ありだ。
……むっ。よく見たらそのすくすく、初めてみる子だ。
「きゅー」
紺色を基調にした帽子に、先端が三日月の形をした杖を持つ緑色のすくすく。
魔法使いっぽいけれど、魔理沙さんの同業者かな?
「うおおおっ! 魅魔様! すくすく魅魔様だ! 久しぶりだぜ魅魔様ー!」
「まぁ、見ない間に随分と可愛くなったじゃない魅魔。撫でてあげましょうか?」
「ダメだ幽香! お前に魅魔様はモフらせない! しばらくはわたしの魅魔様だ! ほら! こっちのフルーツサンドも美味しいぜ魅魔様!」
「きゅー」
おおう。魔理沙さんが年相応の少女の如くはしゃいでおられる。
その割にすくすくはマイペースそうだけれど。
しかし、みまさまとはいったいどちら様で?
「魅魔は魔理沙のお師匠さんよ。今は魔界にいるんだっけ?」
「多分な! 音信不通がデフォな人だけど、きっと元気にしてるぜ! なっ魅魔様!」
「きゅー?」
すくすくみまさま「そうなの?」って言ってるけど……。
いやまぁ、魔理沙さんがそう言うならそうなのかもしれない。
「私も魅魔とは随分顔を合わせてないわね。久しぶりに
「ゆうかもそのみまって人を知ってるの?」
「ええ。霊夢がまだ亀に乗って空を飛んでいた頃、4人で仲良く異変解決をしたわ」
「だからそんな記憶はないぜ」
「アンタらは自分勝手に暴れてただけでしょーが……ってあれ? 私のフルーツサンドがなくなってる!? そこに食べかけ置いておいたのに!」
「あら、あれ霊夢のだったの。もういらないのかと思ってあげちゃったわ」
「ちょ!? 幽香ァ!!」
お祓い棒片手に幽香さんに詰め寄る霊夢さん。仲良しなのは良いことですが、弾幕ごっこは外でやってくださいねー。
しかし、幻想郷の亀は空を飛ぶのか。
知らなんだ。
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「……ふーん。なかなか美味しいじゃないか。しかしまぁ、相変わらず賑やかな奴らだったね」
「きゅー?」
「おや、見つかっちまったか。まぁ見なかったことにしておくれよ、亀のすくすく」
「きゅー!」
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