お久しぶりです。
「………私、ずっと我慢してました」
静かに、しかし力強く。
阿求さんは俯きながら、そう呟いた。
その日は朝から雨だった。豪雨と言っても過言ではないほどの雨風の中なのに、阿求さんは傘を差さずに喫茶店を訪れた。
「ずっと苦しかったんです……。貴方が、他の人と一緒にいると思うと……キュッて、胸の奥を締め付けられるような……そんな痛みが、止まらなかった……」
阿求さんが一歩、また一歩近づいてくる事に、髪や着物から雨水が滴る。
普段とは180度違う雰囲気を纏う阿求さんを目の前に動揺し、心配の言葉すら喉から出てくることはなかった。
「でも……でも! 私……もう限界なんです! こんなことダメだって……頭ではわかってます! けどっ……!」
溜まっていた苦しみを全て吐き出すように。
阿求さんは顔を上げて、真っすぐ、見つめる。
「お願いです……今日だけ、今この瞬間だけ……私を、貴方の一番にしてください……」
そう言って、阿求さんは震える身体で抱き着いた。
「すくすくさんッ………!!」
すくすく大ナマズに。
「きゅぅー……」
びしょ濡れ阿求さんに抱き着かれ、何とも言えない表情をするすくすく大ナマズ。
うむ。
いつもの阿求さんでした。
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「ご迷惑おかけしましたナナスケさん……私ったら、嬉しさのあまり飛び出してきてしまいました」
「きゅー」ゴー
すくすく咲夜にドライヤーで髪を乾かしてもらっている阿求さん。びっくりしましたよ、ホントに。
事情を聴いたところ、阿求さんがああなってしまったのは、『モフモフソムリエ』への最終試験が禁モフだったからとか。
『最後の試験は一日禁モフ。一度離れてこそ、モフモフの真価を理解できるのです。これを乗り越えれば貴女も私たち「モフモフソムリエ」の一員よ』
阿求さんにとって生き地獄のような最終試験を乗り越えた結果が冒頭である。いやー……阿求さんは本当にすくすくが好きなんだなー……。
そして無事(?)、禁モフを乗り越え『モフモフソムリエ』に合格し、うちにやってきてくれたのだ。めでたいことに違いはない。今日のお代はいりませんので、じゃんじゃん好きなもの頼んでくださいな。
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「あの……阿求は、ここにいますか……?」
阿求さん来店からしばらくして、今度は鈴の髪飾りをつけた女の子が来店。いらっしゃい小鈴ちゃん。なんだか疲れた顔してますね。
阿求さんならあちらの席で美味しそうにスイーツを食べながらすくすくのフルコースをモフモフしてますよ?
「はぁ……モフモフぅ………あれ小鈴。私に何か用?」
「『何か用?』じゃないわよもう! いきなり走って出て行って! 身体壊すよ!?」
「すくすくさんがいる限り、私は不滅です。ねー?」
「きゅー」
「……どうしてこうなっちゃったんだろう……」
すくすくにデレッデレの阿求さんを見て、さらに顔色を悪くする小鈴ちゃん。気持ちはわからないでもない。俺だって、阿求さんが一年でここまで変わると思ってなかったもの。すくすくは人生を変えるね。
とりあえず小鈴ちゃんも座ったら? 体調が悪そうに見えるし、さっきから足元がとてもふらついている。髪もボサボサだし、よく見たら目の隈も酷い。大丈夫?
「大丈夫じゃないんですよ! 禁モフだかなんだか知らないけど! 阿求ったら昨日いきなり
「ごめん小鈴。ああでもしないと理性を保てそうになかったから。そんな疲れ切った小鈴におすすめなのは、マミゾウさんのすくすく。疲労も吹き飛ぶモフモフ感よ!」
「きゅー!」
「………かわいいけども、モフモフだけども……ちょっと仮眠させて……」
「きゅー」
そう言い残して机に伏し、夢の中に旅立った小鈴ちゃん。その頭の上にはすくすくドレミ―がちょこんと乗っていた。
うん。いい夢見させてあげてね。
毛布も持ってきてあげよう。
不定期にはなりますが、鬼形獣も出たのでマイペースに書いていこうと思います。新すくをお楽しみにください。