止まった時間は動かない   作:DEKKAマン

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止まった時間は動かない

 アタシには5人の幼なじみがいた。

 モカとつぐみ、ひまりと巴とアイツ、いつまでも一緒、そう6人で約束した。

 

 ──だけどアイツは、もうこの世にいない

 

 

 

 最近風が冷たくなってきた。空が澄んでいて、高くて、綺麗。木に付く葉には稀に紅くなっていて、アタシ達に秋だということを知らせてくれる。

 

「今日の練習もよかったね」

「そうだね、いつも通り」

 

 練習が終わってスタジオを出る。夕焼けに照らされた外に踏み出そうとしたところに、後ろから自分の名前を呼ぶ大きな声がした。

 

「蘭ちゃーん!」

「何、香澄」

「今週末ポピパとAfterglowで一緒に練習しようよ」

「そういうのはひまりに聞いて」

「ひまりちゃん、どう!?」

 

 ひまりから助けを求める目を向けられる。普段こういうのはアタシが勝手に決めているけど、Afterglowのリーダーはひまりなんだからこういうのを決めるのはひまりの方がいい。それに今週末は……

 

「ごめんね香澄ちゃん、今週末は無理なの」

「どうして、お願い、一生のお願い!」

「香澄、つぐみが困ってる、それに今週末は予定があるから」

「そんなぁ」

「香澄ちゃん、今週末は駄目だけど来週なら大丈夫だよ」

「ほんと、皆に言ってくる!」

 

 スタジオの中に飛んでいく香澄。ほんと、どうしてあんなに元気なんだろう。

 

「そういえば、今週末……なんだよね」

 

 ひまりが言うと全員がなんだか暗くなった。それも仕方ない、今週末は、アイツの命日だから……

 

 

 アイツの墓の前に行ったら約束の時間より早いのにモカを除いた3人がいた。

 

「相変わらず早いね」

「まぁアタシとひまりはさっき来たばっかなんだけどな、つぐが一番乗りさ」

「……つぐみ、いつからいたの」

「わ、私も来たばっかりだよ」

 

 嘘だ、少しだけ眠そうにしてる。それに、アタシが聞いたら少しだけ言い淀んでたしてたし。まぁそれも仕方ないか、だってつぐみはアイツの事が、好きだったんだから。

 

「それにしてもモカは、そろそろ時間だろ?」

「もう少ししたら来る……よね」

「く、くるよ、絶対」

「来ないよ」

 

 モカは来ない、モカはアイツの墓参りに来たのは一度きり、それっきり一度も来ていない。誘おうとしていることを匂わせても絶対に来ようとしない。理由は聞けない、聞けるわけがない。

 

「そろそろ行こ、もう揃ったんだから」

「……そうだな」

 

 アタシ達は暗い雰囲気のままアイツの墓の前に行った。墓参りなんだから暗い雰囲気の方が当たり前なんだけど、つぐみもひまりも巴もみんな元気がない。それは、アタシも。

 アタシ達はつぐみに花と線香を渡される。墓参りの時に準備も何もかもつぐみがやっている。アタシ達も何か手伝おうと今まで何度か聞いたけど、つぐみは自分が全部やりたいと言って聞かない。花を添えて新聞紙につけた火を線香に移す。手で仰いで火を消すと線香を添えて拝む。

 

 

 アイツが死んだのは二年前、アタシ達がAfterglowを作って一ヶ月が経とうとしていた雷の鳴り響く日の事だ。

 死因は交通事故、両親との旅行帰りに飲酒運転の車に後ろから追突されたらしい。両親と二歳下の弟は軽症だったらしいが、後ろに乗っていたアイツは重症だったけど、それでも両親と弟の事を心配していたらしい、今思っても、相変わらずだ。

 アタシ達がそれを知ったのはその翌日。皆でその病院に駆け込んだけど、その時にはもう、アイツは死んでいた。つぐみもモカも、巴もひまりもアタシも泣いた、夕焼けに誓ったいつも通りは容易く壊されてしまった。

 アイツのお母さんには貴女達みたいな子がいてあの子も幸せだった、と泣きながら言われた。ずっと、ずーっと、泣き続けて、その日で一生分くらい泣いた。それでも止まらなくて、その次の日には学校が行けなかった。

 だけどそれでもまだいい方で、つぐみは一週間丸々学校に来なくて、モカなんか、自分も死のうとしていた。アタシ達が気づいて、止めてなかったらきっと……

 始めて墓参りに行ったのは49日後。Afterglowはもう崩壊気味で、練習は一回しかなかったし、その練習もアイツがいなかったから滅茶苦茶だった。

 モカとアタシとアイツの三人でギターをしていたのに、アイツがいなくなったら皆の音が合わなかった。アタシ達はアイツに頼りきりだった、支えられっぱなしだった。音楽も、日常でも。

 あの時は墓参りの方法もわからなかったからお父さんに教わりながらだった。もう一生分出し尽くした涙もどんどん溢れて、みんなもそうだった。

 墓参りの帰りにアイツの両親に会った、母親には本当にありがとうと泣きながら感謝の言葉と、伝えなければいけない事があると言われた。

 

「あの子の死ぬ前の言葉、貴女達についてだったの」

 

 アイツは死ぬ前にアタシ達にお願いをしていたらしい。喋っちゃ駄目と言っても、言わなかったらもし死んだら後悔しきれない、と言って聞かなかったらしい。

 

 アタシには『自分がいなくてもいつも通りな』

 ひまりには『リーダーとして、自分がいなくてもAfterglowを続けてくれ』

 つぐみには『みんなを支えてくれ』

 巴には『自分の代わり頼られて大変かもしれないけどよろしく』

 とアタシ達にお願いしていたらしい。アタシ達は泣いた、また泣いた。本当にアイツはいなくなってしまったんだと、アイツの願いを何も叶えられてないと。

 だけどアイツはモカにだけはお願い(呪い)をかけた。

『もし死んでも、記憶にいる限り俺は死んでない、だからずっと忘れないで欲しい』と。

 アタシ達には何の事だかあんまりわからなかったけど、モカには伝わったらしい。アイツは漫画が好きで、アイツに付き添う形でモカも一緒に漫画を読んでいた。その中のセリフであったらしい。

 それからはAfterglowではアイツがいなくなった分を埋めるかのようにみんな今までと比べ物にならないくらい頑張った。特にモカはアイツと同じギターだったから余計に。アタシも頑張ったけど蘭はボーカルもあるんだから、ギターはモカちゃんに任せなさ~い、と言われた。

 巴はアタシ達の新たな頼り先となってくれた。相談とかは全部巴が聞いてくれて、元からあった姉御肌は更に強くなった。

 ひまりは変な号令だったり色々してくれて、アタシ達は受け流しているけど本当に感謝している。

 つぐみはアタシ達の事をずっと支えてくれてる。ただ何か手伝える事はないか、と手伝う事を自分から探しに行ってる、たまにやりすぎだと思うくらいには。

 アタシ達はあの時から変わっている、成長している。いつも通りに。

 

「蘭~、大丈夫か?」

「あ、ごめん」

「どうかしたの、蘭ちゃん」

「いや、昔の事を思い出してただけ」

 

 墓参りの帰り道、巴に言われ意識を戻す。巴曰く墓参り後からずっとボーッとしてたらしい。つぐみにも心配されてしまった。

 

「ねぇねぇ、このあと何処か食べにいかない?」

「アタシは商店街の集まりがあるから無理だな」

「私も今日は家の手伝いがあるから……」

「アタシもパス」

「そんなぁ……」

 

 アタシ達のいつも通りにはずっと変わらずアイツがいる。アタシ達の変化にはアイツがいる、アタシ達の成長にはアイツがいる。

 

 アタシ達の時間は進んでいるように思えて、止まったまま動いていない。

 




続く?(続かない)
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