金のアルデオ
かつて殉教者ローゲリウスが率いた処刑隊の、奇妙な兜
輝きと熱望の名を持つ金色三角のそれは、処刑隊の象徴であり
穢れに対する不退転の覚悟、黄金の意思を見せつけるものである
殉教者ローゲリウスは言った
「善悪と賢愚は、何の関係もありません
だから我々だけは、ただ善くあるべきなのです」
「ハーマイオニー」
「マリア!」
血塗れである事を気にも留めず、ハーマイオニーは飛びついてきた。腕を差し出して制止する。
「汚れるだろう」
「そんな事……それと。本当にごめんなさい」
「何も貴公が謝る事はない。ダフネに心配をかけた事は償うべきだが。ああ、安心するんだ。ポッターは無事かどうかは知らんが生きている。校長が診ている」
「ずっと私、酷い事をしてきたわ。マリアにも、ダフネにも」
「後で聞かせてもらうさ。それより今は、熱いシャワーを浴びたい。後は洗濯だな。ここまで酷く血に汚れたのは久しぶりだ」
「今度、洗濯に使える魔法を調べておくわ」
「そんな危険な場所に連れて行くつもりはないぞ……いや、すまない。前言撤回だ。少しそこで待っていてくれ」
どの様な仕組みになっているのか分からないが、炎は消えていた。だが、気絶していただけのトロールは目覚めていた。扉の隙間から様子を窺うと、クィレルが担っていたのであろう制御は失われ、痛みに因って狂乱していた。頭蓋は割られ、目はその外傷によるものか、像を結んではいない様だ。舌は犬の様に垂れ下がり、膠で固めたかの様に唾液が粘ついていた。
人であれば死しているだろう有り様だったが、生命力故に生き長らえてしまっている。
袖に手を差し入れ、聖剣の柄を握る。月光の聖剣を模した聖剣。模倣とは、贋作である事を意味しない。神秘の力を持たぬ者は、美しい月光剣よりも、武器としての基本性能を高めた聖剣を恃む。
トロールは棍棒を振りかざし、床に叩きつけた。それはあのハロウィンの時よりも遥かに大きな衝撃だったが、遥かに単調な軌道だった。見えぬまま、痛みのままに振り回す攻撃に当たる道理がどこにあろうか。
背後に回り、腰を落とし、身体を捻る。
魔力を武器に流し込む。剣先が発光した瞬間、全体重を乗せて剣を振るう。
放たれた剣は皮を貫き、肉を裂き、脊骨を割る。
引き抜くと共に現れた大穴に手を差し入れ、心臓を掴み、潰す。
幾度となく繰り返した動作に意思は無く、そこに在るのはただ相手を殺すという意志の帰結。
これこそが、ヘルマンの言う意志に違わぬ手段であり、フリント先輩の言う集中。
「眠れ、安らかに」
呻き声をあげることすらなく、トロールは地に伏した。
「もういいぞ、ハーマイオニー」
「見てたわ……一撃。たった一撃で?」
トロールから発せられる悪臭に血の臭いも混じっているが、ハーマイオニーは鼻を抑える事もなく、ただ茫然とトロールの骸を眺めていた。
「恐ろしいか。悍ましいか。これが我等、狩人という生き物だ」
「いいえ。けれど、寂しさは感じるわ。こんなにも遠いんだって」
遠い。それは獣となったあの弱者も零した言葉。
「……そう言ってくれるな。私はただの変身術の劣等生だよ」
「まだそれ根に持ってるの?」
「向上心を無くした者は馬鹿だからな。飽くなき向上、それこそが人たる証左だよ。行こう。食欲が失せる」
遊技場に戻ると、粉砕された駒達は既に元通りになっており、跪いて道を開けていた。
「出迎えご苦労。貴公等の護り、我等が果たした。故に、貴公等の勝利である。勝鬨を上げよ!」
兵達が各々の武器を打ち、その音を背後に聞きながら、鍵の部屋に進んだ。
何のことはなく、鍵は悠然と飛び回り続けていた。羽を捥がれた正しい鍵は力尽きたのか、鍵穴に挿さったまま動いていなかった。
その次の蔦の部屋は来た時と同じ様に松明を掲げれば問題はないが、その後が問題となる。
「さて、箒の二人乗りに問題はない。が、犬をどうするか……」
ウィーズリーがここに居ないという事は無事に抜け出したのだろう。血の酒を投げつけていたのが効いたのか。
だが、この服に染みついた血は酒よりも更に濃厚な臭いを放つらしい。見上げれば、三頭が我先にと狭い穴に首を突っ込み、吠え立てている。
「眠らせたところで首は動かず、となれば、銃殺してから刻んでいくか?」
「絶対に嫌」
「だろうな。犬を見たら吐く程度の精神外傷を負わせるのは本意ではない。しかし、現実としてどうする。聖歌でも演りながら救い主を待つか? ウィーズリーが上手くやっていれば副校長がその内来るだろう。来なければ犬の餌になったということだな。糞になる前に胃から切り出してやらねばな」
「その必要はありません」
声の方向を見やれば、光り輝く猫が宙を舞っていた。
「おお、我等が救い主。演目はHail holy Queenに致しましょうか」
「マリア、何それ」
「米国で公開中の映画の劇中歌です」
「修道院長は副校長と瓜二つでした」
「よく似た他人です。学期中になぜ内容を知っているのです。そんな事より、二人とも、怪我は有りませんね? ミスター・ポッターはどうしたのです?」
「はい先生。ハリーは校長先生がついてくださっています」
肋骨の数本が折れたが、既に治っている上、それを敢えて伝え、ハーマイオニーに心配をかけるつもりはない。
「どうなのです。ミス・ボーン」
「ええ。どうということはありませんでした。そう、驚く程に。一体なんだと仰るのです。破られる事が前提の護りに、なんの怪我を想定していたと」
まるで心配していたかの様に声をかける副校長には、爆発する様な怒りを覚える。
「副校長。私は貴公に怒っている。あのハロウィンの夜、貴公が見せた心配は真なるものだと思っている。故に、故にこそ、校内に賢者の石を備えるという校長の狂気を野放図にした貴公には、激烈な怒りを感じている。狂人は自らの善性を疑わない。だが、正気の者であれば、自らの行いを善と悪との天秤にかけ、選ぶはずだ。何故貴公はポッターという1人の為に、数多の者を犠牲にしたのです。社会に仇なす存在が付け狙うものを学び舎に持ち込み、学徒にそれを喧伝する? 正気ではない。まこと、正気とは思えない」
「ボーン、それは――」
「何故、と訊くならば、より残酷な疑問がある。何故貴公は、ハーマイオニーを見捨てたのですか。
分かっていたはずだ。ポッターらが幼稚な自尊心の為に、ハーマイオニーを貶していたことを。
分かっていたはずだ。そのポッターらに連れ添い、賢者の石を探っていたことを。
分かっていたはずだ。規則を重んじ、聡明な彼女であれば、すぐに寮監に伝えていたはずであることを。
分かっていたはずだ。ハーマイオニーは利用され、ポッターを助ける為に動かされた駒だということを。
これだけの事を無視し続け、ポッターに破られる為に作られた石の護りに、教え子が向かってから心配するとは、どういうことですか。石を護る気など、無かったのでしょう? チェスに勝てば道を開くだと? ならば何故、あの者達に心を与えた! 彼奴等は生み出された理由と反し、賊徒の傀儡とならねばならなかった事に惑い、恥じた。心とは、傷付くものだと知っていて、何故ハーマイオニーを見捨てた。何故駒に心を与えた。
……校長は狂っている。故に悪意なき邪悪に堕している。だが、貴公は違う。その理性に、何ら悖る事は無かったと仰るのですか」
「……理由は言えません。ですが、必要な事であると」
「成程。つまり、罪は無いと。自らの選択ではなく、穢された意思であったと。その言葉、努々お忘れなき様。
さて、どうやって帰ったものやら」
「そこで待っていなさい。管理人に縄を持って来させています」
「拾い上げるではなく縛り上げられそうですが」
副校長は医務室にも連絡を入れてくると言い、飛び去った。
暫くして、管理人は扉の前には来たものの、犬が暴れていて入れないと怒鳴り出した。呆れ果てて歌う気力も無かったため、蛇寮に声をかける様に怒鳴り返した。
それから少しして、再び副校長の守護霊がやってきた。
「まだ居たのですか。校長はもう執務室に戻られていますよ」
「は? ここを通らずに?」
「教職員がわざわざここを通るはずもないでしょう。ミスター・ウィーズリーの様に曲芸飛行が出来るというならともかく」
「管理人は犬が怖いと仰せなので先輩を呼ぶ様伝えました。管理人がそれを了承したのですから、夜間外出には当たりませんね?」
「そうですね。先程見かけたあなたの先輩も同じ事を確認していましたよ」
「ああ、ではそろそろですか」
遠くで大きな音がした。おそらく扉が開かれた音だろう。その直後、トランペットが高らかに響く。続き、ヴァイオリンが乗り、イングリットお姉様とジェラルドのコーラスが重ねられる。
「あ……これ」
「聖歌168。冥府からの生還を讃えるといったところか。さて、縄梯子も下りて来たところだ。上がろう。箒でもいいが、せっかく管理人が持ってきたんだ」
登りきって部屋を出ると、ドロテアが大爆笑した。
「生還おめでとう。それにしても汚いし臭い」
「なあドロテア、前に僕がそれを婉曲的に言ったときに君は僕の前歯を折ったぞ」
「女が女にそれを言っても傷にはならないけど、あなたは男でしょ」
「度し難い」
ドロテアの親愛なる罵倒に顔をしかめていると、管理人がより酷い顔でこちらを睨んでいた。
「ああ、血の汚れなら私が掃除しておきますので、お帰りになって結構です。妹達の為にありがとうございました」
イングリットお姉様が杖を一振り、こそばゆい泡が全身を包んだ。床に垂れた雫はヘルマンが杖先から温風を出して消し飛ばしている。
「あら、グレンジャーさんも汚れているじゃない。こっちにいらっしゃい」
「……よろしければ、今度教えてください」
「そうね。まずはお菓子でも。副校長、グレンジャーさんを連れていきますが、よろしいですね? もう夜間外出はしてしまっているのですから、今更早いも遅いもないでしょう」
「構いませんが、ミス・グレンジャーは明日私の部屋に来る様に。ミス・ボーンはスネイプ先生に報告をしなさい」
「どちらのボーンですか?」
「一年生のボーンです。全く、何度同じやり取りをさせるのです」
副校長の猫は淡い光の粒となって消えた。
「さて、じゃあ地下牢……には入らない方がいいと思い、寮監から教室を借りた」
「ウチの談話室に獅子寮生ってあり得ないもんね」
「大鍋いっぱいにミルクココアを作ってあるわ。ダフネがかき混ぜてくれたけどちょっとしょっぱくなってるかも」
「言っておくが、グリーングラスはブチギレという言葉じゃ形容出来ない程ブチギレてるからな」
「捨てられた女」
「手負いの獣」
「「厄介だ」」
道すがら、ディルクお兄様とヘルマンは抜群の連携で煽ってきた。普段殴り合いの喧嘩をしている様で、年相応に騒ぐときはいつも連れ立っている。それを後方から見守るのがジェラルドだったが、来年は居ないのかと思うと寂しく思う。
「捨てるも何も、待つと言ったのはダフネです。それを信じ、こうして帰って来た。ダフネは私を笑顔で迎えてくれるでしょう」
「これはひどい」
「こう、淑やかさというか……」
「アンナリーゼ女王の慈愛を見習え」
救いを求めてお姉様に目を向けると、目を逸らされた。
「……そうだ、獣と言えば、クィレルがヴォルデモートを名乗る輩に憑依されていて、獣に変態しました」
「は?」
複数の声が重なった。
思い返してみれば、何があったかなど話していなかった。道理で先輩たちの出迎えが不出来な妹を揶揄う様なものだったわけだ。
教授陣の用意した遊技場で少し転んだ程度の感覚だったのだろう。この魔境での遊戯場という時点で何も思わない辺りが毒されているとも思うが。
「クィレルの頭のおかしいターバンは頭部に憑依していた頭のおかしい輩を隠すためのものであり、やはりあの部屋の最奥に在る賢者の石を狙っていた様です。結果、ポッターに傷付けられたクィレルではそれを達成できないと判断した仮称ヴォルデモートは逃亡、クィレルは獣に変態し、それを狩ってきたというわけです」
死の恐怖は感じたものの、終わってみれば所詮雑魚。ポッターを護りながらという条件さえなければ見極め、完封出来る相手だった。別段恐れるべき相手でもなかったが、説明すればするほど狩人達の目は鋭くなっていく。
「イングリット。お父様に連絡を。手すきの工房にも声をかけろ。魔法省に先を越される。死体を直ぐに回収させろ」
「はい」
「ヘルマンは俺と来い。ジェラルドは二人を警護して教室へ。ドロテアは先行、ダフネ嬢及び室内の消毒後、ジェラルド組を待て。ジェラルド組が入室したら、俺か寮監が来るまで死守しろ」
「はいっ」
「はっ。グレンジャー様、失礼します。マリア様は自力でお願いします」
「えっ……きゃあああああああっ!」
ジェラルドはハーマイオニーを横抱きにすると猛然と走り出し、階段の吹き抜けを飛び降りた。普段紳士然としている彼がそこまで焦るのだから余程の事なのだろう。同じく続いて、飛び降りる。
着地の衝撃を回転して殺すが、ジェラルドはハーマイオニーを抱えているためそうもいかない。聖歌の鐘を鳴らして回復させてやれば、直ぐに体勢を整え走り出した。
「マリア様ー! 早く早く! ダフネちゃんも部屋も問題無し!」
教室に入ると、狩人の遺骨を使って先行していたドロテアはガスマスクを着け、銃架にM2重機関銃を備え付けていた。ジェラルドの様に敬称が付いている辺り、ドロテアの緊張が感じられる。
「ドロテア……一体これは」
「あーごめんね、学内で獣化なんて考えなかったから、誰も説明してなかったもんね」
「いや、だから何を」
「学内で獣化する様な儀式があって、それを行える様な危険人物が居て、それに何ら対処されないって確信する程度には、校長を信用してるからね。それにヴォルデモート卿自身でなくても、その信奉者が未だ潜伏してる可能性があるよね。それが逃亡ついでの報復にマリア様の周囲の人間を殺害か拉致することは十分にあり得るでしょ」
「成程、そういう事か。すまない、すっかり浮かれていた」
「分かった? 反省は後で。じゃあダフネちゃんとグレンジャーちゃんを奥に。机倒して障壁作って。魔術障壁もとりあえず15層まで貼っといて。マリア様だとそれ以上は戦闘継続に支障出るでしょ。あ、当然弾丸は水銀弾じゃなくて通常弾に切り替えといてね。ジェラルド先輩はマスク作成して」
目を回している一般生徒2人の前に、大理石でできた机を突き立てる。大理石は軟らかく加工しやすい故に耐久性には難があるが、他に使い物になりそうなものはこれしかない。
「マリア、いったいどういう事? 名前を言ってはならぬかの帝王?」
「クィレルがその信奉者で、それにヴォルデモート卿とされる人物の思念体が憑依していた様だ。危険性評価があまりにも甘かった。すまないダフネ。独りにしてしまった。本当にすまない。今更だが、命を賭して護ろう」
「マリア様、命の優先順位は間違えちゃダメだよー。そんな状況になったら先輩に先に死んでもらうからね」
「マリア様のご友人とも身命を賭してお守りいたします。とにかくこれを」
「……ガスマスク?」
「ガス攻撃は密閉空間で有効性が高い。爆弾なら投げ込まれる前に撃ち落とすし、爆発術も魔術障壁で防ぐが、ガス自体は魔術でも防げない。泡頭なんて2人とも未だ使えないだろう。何事も起こらなかった、ならいい。起きてしまったでは出来る後悔もない。早く。それから耳を塞いで口を開けているんだ。爆轟で鼓膜が破れる」
ダフネの顔は蒼白となっている。貴族故にこういった恐怖は現実感があるのだろう。あるいは、既に体験済みであるのか。
そうして30分が経ち、扉が叩かれた。
「言え!」
ドロテアが声を張り上げた。
「夜分に君たちは何をしているのかね。出てきたまえ」
ねっとりとした声が呆れた様に返ってくるが、ドロテアは引き金から指を離さない。
当然の事だ。声と口調こそ寮監のものだが、薬を用いて寮監に変身しているか、魔術で変声している可能性もある。
「名乗れ!」
「……セブルス・スネイプだ。ドロテア・グリム、その不遜な態度でまた減点されたいのかね」
「では今日私が減点された得点を答えよ!」
「……0点だ。減点などしていない」
「いいでしょう。
……先輩、配置に。場合によってはあたしごと」
「カウントを」
ドロテアは扉に近づき、ハンドサインでカウントする。
1, 2, 3.
ドロテアが扉を開け放つと、そこにうずくまる寮監が居た。扉で鼻を打ったらしい。
「……私の知ってるスネイプ先生はこんな感じじゃないんだけどなぁ」
「ならば撃つか」
「何をしているのかねと訊いている」
顔を上げる前に治療を施したらしく、鼻が潰れているという事は無かった。迫る扉に驚きながらも、とっさに退いたのだろう。ドロテアもまた力に優れた狩人であり、その力が頭部に直撃していたら鼻血程度では済まないだろう。
「クィリナス・クィレルは死喰い人、あるいはそれと同思想を持つ犯罪者でした」
ジェラルドが説明を始める。
「これにマリア様が対応。無力化はしましたが、学内に他の工作員が存在する可能性を考慮しました」
ドロテアがそれを引き継いだ。扉をぶつけてしまったことに対し、さして気後れする様子もなく、袖口からは短剣の柄が見える。未だ警戒を解いていない。
「なお、当時我々はごく個人的な事情により、蛇寮区画でのパーティーを開いておりました」
「この許可者について寮監はご存知でしょうか」
「……吾輩だ」
「その申請者は」
「ヘルマン・ツァイス。その時の言葉は『寮監に責任を押し付けるつもりはありませんが教職員の怠慢と傲慢による非常に不合理な経緯によって我が後輩の友人が悲しんでいますのでその慰撫及び期末試験終了記念パーティーを行いますのでその許可を頂きたく。それと先程の試験は自己採点の結果94点でした。上位成績である事は間違いないでしょうから来年もよろしくお願いいたします。あとドロテア・グリムの評定は厳しくしてください。つけあがるので』」
「ありがとうございます。あたしの前に居る人物が間違いなくセブルス・スネイプ教授であることを確認しました。扉をぶつけたことは非常に不運な出来事ですが、お気持ちが晴れなければツァイス先輩の試験成績から引いてください」
「その誠意の見られない態度につき減点したいところであるが今は捨て置こう。いい加減にその滑稽な面を取り、野蛮な武器から手を離したまえシュミット」
「後輩の微笑ましい嫌がらせの応酬はそこまでとして、状況説明の続きを。
同胞を除けばマリア様にとって最も有効な人質となるのは、御学友のダフネ・グリーングラス様とハーマイオニー・グレンジャー様です」
「潜入工作員の危険性について把握した後、マリア様と同行していたグレンジャーを回収し、パーティー会場たるこの空き教室でグリーングラスを保護。安全確認が出来るまで同教室にて待機していた、という状況です」
「グリーングラスの状態について報告を」
「身体的外傷はなく、記憶の連続性も確認済み。本人確認もしています。服従の可能性については入室時の状態から考慮外です」
「入室時の状態とは?」
「それは申し上げられません」
「ところで、仮に闇の帝王が全力を尽くしているとして、グリムが成り代わられている可能性を考慮しないのかね。普段はボーンに敬称を用いないだろう」
「……やっべ。バレては仕方ないですね。死んでもらいましょう」
ヘルマンのくだりで緊張がゆるみ、敵対者を演じる余裕まで出て来たのだろう。どこから取り出したのか、寮監は教鞭でドロテアの頭を叩いた。
「有事の備えが無い学生にしてはよくやったものだ」
「それを言うなら先生、駄目ですよちゃんと開心術かけないと」
「それはボーンとグリーングラスが嫌がるだろう。吾輩とて、優秀な生徒には目をかけているつもりだが」
「それを仰るならなぜあの時何もしてくれなかったのです」
「……校長の開心術を見破る学生がいる等、考えられずに放心していた」
「嘘くさ」
「グリム、本当に減点されたいのかね」
「今更減点されたところでウチが独走ですよ。ジェラルド先輩は栄光の7冠です。ほら誇って誇って。先生は祝って祝って」
「おめでとう」
「嘘くさ」
「……5点減点。それで、このバカ騒ぎはいつまで続くのかね。ここまで酷い教室の修繕はフィルチ管理人には出来ないと思うのだが」
床に聳え立つ大理石の机を見たら発狂するだろう。部屋の中央に在る食品を載せた机は無事だが、障壁となった机は見るも無残だ。
「そりゃああたしたちが直しますよ。ダーティボムが使われたわけでもありませんし」
建物が倒壊しているならばともかく、内装が傷ついている程度であれば工房の職人に依頼するまでもない。複雑な魔術機構の搭載された呪具でもなく、ただの机と椅子である。物理的損傷であれば杖の一振りで直すことは造作もない。
「ならばよろしい。教室の鍵は明朝に返したまえ。では諸君」
「先生も食べていきます?」
寮監が無視して部屋を出ていった後、同胞たちが帰ってきた。
「間違いなく獣だったし、死亡も確認した。本当の意味での初の獣狩りだな」
「お父様は口には出していなかったけれど大層ご立腹よ。フローラ女王が悲しまれたから」
「うわぁ……ヤーナムに帰りたくないなぁ」
「こんなテロリストが一年間も居た場所に安穏と居られるのか? 僕は嫌だ」
「だって赤ちゃんに殺されて、マリアにまた殺されてる人のシンパより王様の方が怖いでしょ。別にあたしたちが悪いことしたわけじゃないから王様もただ不機嫌なだけ。だからそれをあたしたちはどうにもできないしー」
「獣の死体はどうなりました」
「工房が回収したぞ。そうそう、犬は『お座り』と言ったら普通に部屋の隅でうずくまった。番犬どころか本当にただの畜生ではないか」
「アレはディルク先輩の圧でしょう。尾が垂れ下がっていましたし。
……さて、茶番はここまでだグレンジャー。明かしてもらおうか」
狩人達の雰囲気はジェットコースターの様に乱高下している。ダフネを見やると、もう諦めたとばかりに無表情で大鍋からココアを掬っていた。
「ヘルマン、年下の女の子に大人気ないわよ」
ドロテアが牽制するが、ヘルマンの双眸は鋭く光るままだった。
「つまり、年上の男には何をしても良いと。君が事あるごとに僕にあれこれと言ってくるのはそういう事か。甘えるのもいいが、甘えさせても良いと思うくらいには年下の女性らしくしてくれ。
ハーマイオニー・ジーン・グレンジャー。僕は未だ君をあれこれと批評するつもりはない。音に聞く獅子寮の才媛、あのスネイプ教授でさえ認める知性。それが何故、ここまで愚かしい騒動の中に居たのか。それが明かされない限り、君の夜は明けない。元を絶たなければ、悪夢は何度も巡り続けるぞ」
ダフネと共に、気になってはいたが踏み込めなかった友人の心。何故あのハロウィンの夜から、馬鹿2人と連れ立って過ごす様になったのか。幾度も危険から離れる様に忠告したにも関わらず、何故依然として関わり続けたのか。
ハーマイオニーはしばらく目を瞑った後、口を開いた。
「私は、元の世界でも成績優秀な生徒でした。歯科医……歯を専門とする癒者の様なものですが、その下に生まれ、規律正しい優等生でした。ただ一つ、友人が居ないという点を除けば。私は優秀でしたが、これと言って特別な才能もなく、ただ知識を学ぶ、それについて特別に興味のある人間です。ですから、私と同じ授業を受けていて私よりも成績の劣る生徒は、ただ単純に知らないか知る努力をしていないだけの事、そう思っていました。
ある日、ホグワーツから手紙が届きました。私はそこに記された、魔術という常識では学べない知識に強く惹かれ、入学を決めました。両親の反対もありましたが、科学世界の勉強も続け、魔法界の勉強もするという約束で、入学が許可されました。それが出来るという自信はありましたし、実績もありました。不安だったのは、私が未だ何一つ、魔法界について知らなかったこと。それはつまり、私が劣るという事です。教科書を揃えて予習をし、参考図書で魔法界の常識を学ぼうとしました。それらの準備は十分だと思いました。明らかに情報不足のキングス・クロス駅のプラットフォームへの入り方も推理して列車に乗る事が出来ましたし、車内で会う魔法族の新入生たちよりも私の方が優秀に思えました。
ところが、マリアさんは違いました。今まで読んだどの書籍にも、狩人という人達の情報はありませんでした。学業には興味が無いという言葉も、今まで聞いてきた様な愚者の言い訳ではなく、将来狩人になるにあたっては必要ない知識だと、明確な目標があって切り捨てる、この価値観には触れたことがありませんでした。
私には智慧だけではなく無知を恐れる勇気があると言い、組分け帽子は私を獅子寮に選びました。獅子寮の雰囲気はご存じかと思いますが、やはり私には友人が出来ませんでした。口を開けばクィディッチばかり、授業の予習復習には何の興味もない。そんな子供達に私が抱く感情は軽蔑しかありません。
私の価値は成績優秀である事。ですから、学業に興味が無いと言っていながら、私よりも優秀だったマリアさんには苛立ちを覚えましたし、ですが聞けば教えてくれる、その関係に高揚を感じていました。いがみ合っている獅子寮と蛇寮ですが、それでも対等に接してくれるダフネさんと友人となりました。こんなことになっても未だ、友人と言って良いのか分かりませんが。ダフネさんもまた、純血の子女として日々努力を重ねる人でした。マリアさんとは未だ壁がある様に感じていましたから、二人でこっそりとマリアさんの子供っぽいところや、マリアさんの変身術を揶揄ったりしていました。
そうして、ハロウィンの日になりました。ウィーズリー君の態度や陰口には苛立ちを感じる事さえ面倒になっていましたのでどうでも良かったのですが、副校長から贈り物があると言われたとき、私は私の全てを否定される様な衝撃を受けました。私は褒めてもらう為でも、贔屓してもらう為でもなく、ただ私がそう在るべきだから努力をしています。その努力をしてなお、マリアさんやダフネさんに劣っている科目があるから、焦ったのです。ですから、その私の在り方を、あんな成績不良者達と同じ価値観で計られている事に愕然としました。
私は私が子供であることを痛感しました。自己を確立した大人であれば、きっと他人の尺度に揺るがされることは無かったでしょう。ですが子供の私は、惨めに泣き喚くことしか出来ず、マリアさんに慰められ、ダフネさんにその痛みを理解してもらえました。この時、私は彼女たちと友人で在りたいと、心の底から思いました。そうして、泣くのを止めるとそこにはトロールが居ました。頭の中の情報はそれがトロールだと言いますが、心はそれを私の死だと叫びました。自分の喉が悲鳴を上げているのに、それを他人事の様に眺めている自分が居ました。こうして、何も出来ないまま饐えた臭いに塗れた肉片になるのだろうと。
ところが、扉から轟音がして、そこに居るはずもないマリアさんが居ました。マリアさんは泣きそうな顔なのに、目はいつか見た宇宙の写真の様な光を灯していて、酷く怒っていました。そして、瞬く間にそのトロールを、私の死を狩りとったのです。その後は皆さんも知る通り、教師達が来ました。
その後、私は副校長と共に校長室に呼ばれ、言われました。トロールに襲われたことは、学校の責任ではあるけれど、私の責任でもあると。私が他人に心を開き、獅子寮の生徒達と仲が良かったとすれば、生徒達と離れ、独りで居たことは無かったと。智慧を求めるその姿勢は評価するが、人との繋がりによって得られるものを知らないと。だからそれを学べと。マリアさんやダフネさんとの関係を大切に思うのであれば、その2人を傷付けた自身の孤独を克服する様にと。
そして、唐突にポッター君の話を始めました。彼は幼い頃に自身の力ではない偉業によって名声を得てしまったと。そして、周囲は彼自身を見ずに彼の幻影を崇めていると。彼自身とその幻影との間に彼は苦しんでいると。その彼の為に、冒険を学内に用意したと。彼らは私に対して大きな負い目を感じているから、その冒険を通して親交を深めよと。それが友人で在るマリアさんやダフネさんの為でもあると。
それからの私は、彼らにとって優秀な生き字引となりました。彼らが私に対して親愛の情を持っているかどうかは分かりません。無知による結果とはいえ、結果的に殺しかけた人間に対し、何の臆面もなく接することが出来る人間がいるとは思えません。そしてその無知こそ、私が最も厭うものです。
私の知らない事も多く在り、マリアさんやダフネさんに頼る事も多く有りました。その度に、彼らに関わるのは止めた方がいいと忠告してくれましたが、いえ、私自身そう思う部分は大いに有りましたが、今世紀最も偉大な魔術師の言葉に、私は盲目となっていたのでしょう。厳格で知られる副校長が私財を投じて特定個人に箒を贈り、規則を捻じ曲げて競技選手とすることも、ハリー・ポッターという少年を、学校を挙げて英雄にするための布石なのだろうと。竜の孵化、その隠匿といった明らかな犯罪行為についても、これは冒険の一環だと。学校の用意した冒険なのだからと、自分に言い聞かせていました。
冷静に考えてみれば、おかしいことだったのです。ですが、マリアさんやダフネさんと友人で在るという言葉は、私にとって、何よりも甘い毒でした。
そして、森番から冒険の手がかりを得させるためだけに禁制品を用意する等、最早これは学校の管理する冒険ではないと考えた時点で、恥知らずにも、友人ではなく、狩人としてのマリアさんに助けを求めたのです。
そうして、マリアさんはそれを汲んだ上で私を助けてくれました。ダフネさんはそれを汲んだ上で私達を止めてくれました。私には獣が何かは分かりません。ですが、マリアさんは血に塗れ、服が切り裂かれているのに、事も無げに帰ってきて、あまつさえ私がその返り血で汚れる事などを心配してくれました。
告白します。私は、私の愚かさによって、あなた達を陥れる事となりました。赦してくださいとは言えません。本当に、ごめんなさい」
言い切った後、ハーマイオニーは慟哭した。
ダフネは、静かに嗚咽を漏らしている。
ハーマイオニーの口から出づる「マリアさん」「ダフネさん」と、よそよそしく呼ぶその声が、哀しかった。
「なるほど。確かに貴女は愚かで、憐れだ」
「ちょっとヘルマン!」
「憐れだと言っている。それに、高潔だ」
ジェラルドはハーマイオニーに黙って近づくと、肩に手を置いた。
「貴女の愚かさへの恐れ。それは、貴女が正しくない事を恐れているからです。善く在ろうとするだけでは、それが徒花となる事もあるでしょう。私の師であったアルフレートという狩人も、その蒙昧な善性によって最期を迎える未来がありました。ですが、その無知ではなく、蒙が啓かれたことで、私が今ここに居るのです。
貴方が正しく善く在ろうとするその意志、それは私達の言葉に於いて、黄金と言います」
「多くを知っているからこそ、知らぬものへの恐れは大きくなる。そしてなお、無知への恐れを抱き続け、友の為に、友を捨てる覚悟で脅威に立ち向かう。その退かぬ黄金の意志。マリア、いい友を得たな」
「ダフネもね、自分も行けば良かったってずっと泣きながら、それでも待ってたのよ。グレンジャーさんがずっと何かに苦しんでいたのに、それに触れられなかった、それを聞き出せなかったって、とっても悲しんでいたの」
「イングリット、それ言っちゃあダメじゃないの?」
「だって、言ってあげないとダフネはずっと抱えたままじゃない。
マリア。2人への言葉は?」
急に水を向けられても困る。自分でもこの感情にどういう名をつければ良いのか分かっていない。ただ、涙が頬を伝っているだけだ。
「……まずは、ダフネ。待たせた。ただいま。貴女はずっと優しかったから、それに甘えていた。2人で一緒に居たから、きっと分かってくれるだろうと、分かってくれているから傷付けていないだろうと、甘えてしまった。ごめんなさい。
ハーマイオニー。少しだが、私は怒っている。あのクソッタレのガキ共の流した噂のせいで、私は緋色の淑女やら血塗れ女帝だなんて言われたこともある。そんな人間に、私のためだからクソガキと付き合っているなんて理由が分かるはずがないだろう。陥れられたも何も、ハーマイオニーは何もしていない。私が怒っているのはその事だけだ。全力で怒るとすれば、あの狂人だ」
ドロテアに背を押され、ハーマイオニーに近づく。ダフネもそうだったのだろう、つんのめって前に出た。それから、3人で抱擁を交わし、自分の声なのか、誰のものとも分からぬ泣き声が、重なり合った。
「うん、美味しい。演奏にお菓子作りとジェラルド先輩ってホント何でも器用にこなすよね。ヘルマンも見習って」
「あのさぁ、君、この光景眺めながらクッキーをつまむのか?」
「綺麗なものを見ながら食べるともっと美味しくなるもの」
「まぁダフネ嬢が一番か」
「どこ見て言ってるんですか先輩」
「どこだと思う」
「顔、胸」
「ヘルマン、ホンット、サイテー」
「どうして僕なんだよ。それに、包み隠さずありのままの自分でいる事、それが今回の教訓だと思うんだけどね」
「なら全裸で期末パーティーに出るのか」
「そうやって言葉の表層だけをなぞる事の愚かさ。先輩にはグレンジャーの涙が見えないんですか」
「貴公、期末パーティーに出られるのか? ジェラルドが血走った目で貴公を見ているぞ」
「ジェラルド先輩だって拳を真っ赤にして期末パーティーに出たくはないでしょう」
「車輪がいいのかヘルマン」
「……とにかく、そろそろ泣き止んでくれないか。グレンジャー、明日は副校長のところに行かなければならないんだろう。泣き腫らした目で送り出せば僕らが君を虐めたとでも思われかねない」
その言葉に、ハーマイオニーがしゃくりあげながら顔を上げた。
「まず、校長の言葉は、呪いだ。別に術式化されたものじゃない。君の心を暴き、君の心に沁み込ませた、言葉という毒だ。それは分かっているね。だから、校長と話すときは、目を合わせない事だ。寮監も否定しなかった通り、校長は自覚的なのか無自覚なのか知らないが、開心術を使っている。だが、いかに開心術の名手としても、無言かつ無杖で心を閉じている相手に完全な開心術は不可能のはずだ。今すぐに閉心術なんて習得出来るはずもないが、視線を合わせない、腕を組む、口を隠すといった心を鎖す者の無意識の動作は、意識的に行えば確かに心そのものに作用する。
それと、赦しは要らないとしてもだ、それで君の心が晴れることはないだろう」
「はい」
「だから、もしかしたらだ。もしかしたら、校長は年度内にさらに凶行に至るかもしれない。その時に君を口実とする。君にとってとても残酷な言葉となるかもしれないが、それを以って君の贖いと成るだろう」
「ヘルマン、何を」
「いや、外れていて欲しい予想がある。それはあまりにも残虐な行為だから、いくらあの校長でもそれはないだろうと期待する自分が居る。だから、正直なところグレンジャーの贖罪の機会なんてないと思いたい」
「だから何を」
「もしこれが外れていたとしたら、それはそれを思いつく僕があの校長より残虐である事の証明になる。だから、その時が来るまで黙っていたい。僕は未だ、ただの捻くれた聖歌隊で在りたい。言っておくと、それは年度内に起きるだろうし、その時に必要となるのは神秘に優れるディルク先輩とイングリットだ」
「私達?」
「……分からんが、何もないことを祈ろう。
さて、泣いて疲れたろう。甘味を摂って、それから眠るといい。歯科医の娘とて、夜食が嫌いなわけでもあるまい」
これが原作に於いて一番理解に苦しみ、そして天啓にも似て、だが到底理解などできぬハーマイオニーが友人となった理屈でした。
ハリー君達は明らかに知性が無いわけですから、その彼らが冒険の果ての栄光なんて手にする事は難しい。故に、校長はハロウィン事件を利用することを考え付いたのではないかと。最初から最後まで計画通りであれば、女子生徒一人がトロールに殺害されかねない事態は流石に避けるでしょうから、あれ自体は本当に計画外だったのだろうと思います。
理性的なハーマイオニーがいかなその時点で自らの命を救ったのがハリー・ロンペアであったとしても、そもそもがその原因は彼らの陰口であり、その性向自体が大して変わっていない事に気づくはずです。ならば、その後も距離を置かなかったのは、体制側から友人が少ないのは悪であるとされたのではないかと思います。
彼女自身はマウント取るとかどうでも良くて、自身の価値を追求する人間でしたから(であれば、お前こんなのも解けないのかよ的な喧嘩を売ったでしょうが、少なくともハロウィン時点ではただ単に教師へのアピしかしていない様に思えます)、その評価者たる校長ないし副校長からお前ボッチなの駄目よと言われたらそれを改善しようとするのが彼女でしょう。
その後、孵化事件とか禁域の廊下とかで実際に友人となったのでしょう。
まあ、ウチの子は聖母ダフネが取り込んで居るのでそうはなりませんが。
あと、籠城の描写の稚拙さは見逃してください。
退路確保もないのかよとか、スタグレの対処はとか、喫水線より下層だから上階抑えられたら詰みでしょとか。