組分け帽子
入学生の心を覗き、その者が心の底から求める性質を見出す
組分けは裁定ではなく、明示である
故に、組分けに誤りはない
望みの表す本質とは、他者に象られるものではないのだから
列車から降りると、そこは小さく、暗いプラットフォームだった。吹き抜ける風は湿り気を帯び、夏を終えたばかりとは思えない冷えた夜気が身体を舐める。ちょうどそれは、ビルゲンワースに続く禁域の森に似る。
上級生と思しき生徒らは談笑しながら列車を降りてくるが、新入生たちは降りるにももたつき、降りてからも寒さに震えながらあてどなくうろついている。憐れなことだ。
「マリア」
呼ぶ声に振り向くと、同胞達がいた。
「兄上、姉上」
「まずは灯りを」
兄、ディルクが指し示した先には古びたランタンが吊り下げられていた。ディルクお兄様は5つ上の異母兄。アデーラ女王を母に持つ。短く刈り込まれた黒髪は、茫とした月光に照らされている。
言われた通り、ランタンに近づき、使者と契約を交わす。狩人にしか見えない紫の光が灯った。
「こんなところ、全く使わないがな」
それもそうだろう。彼らは城内にある灯りを用いる。以前、同胞を見送った後、クリスマスまで会えないのかと少し寂しい想いをしたが、その日の内に白い丸薬を忘れたと帰って来た事があった。特急を用いないのだから、駅に寄る必要も無いのだ。
学生生活を送る上で、劇毒でさえたちまちに解毒出来る薬が必要になる事態は理解できない。
「これから小船に乗って移動する事になるわ。絶対に落ちない様にね」
「はい、姉上」
1つ上の異母姉、イングリットお姉様は柔和に微笑む。同じ女にしてみれば、ずるいとすら思える程の笑顔だった。お兄様はホグワーツの同級生達がみな不美人に見えると、自慢なのか嘆きなのかよく分からない事を言っている。
「イカに気をつけろ。魚人どもは校長が手懐けているが、イカは言葉の通じない畜生だ」
「ここは漁村でも悪夢の辺境ではないでしょう」
「ああ。あちらはピクニックに絶好だが、こちらで遊びたいと言い出したら、すぐに鎮静剤を飲ませるからな」
「ご冗談を」
「残念だけど、お兄様の言う通りよ」
普段より、ディルクお兄様は冗談の類を発する事がない。イングリットお姉様もまた、お兄様に同調している為、イカとやらは偽りなき脅威なのだろう。悪夢より恐ろしい学校が存在する方が余程悪夢的だ。
「ではマリア。また大広間で」
「本当に気を付けるのよ」
当惑している間に、二人は灯りに触れ、消えていった。
一年生も半巨人と思われる大男の周りに集まっている。ランタンを震わせる姿は、教会の大男と同じそれ。巨人の血が入っていないのであれば、とうに滅びたはずのトゥメル人の末裔か。
「イッチ年生! ついてこい!」
酷い訛りだ。
その声に従い、新入生たちがぞろぞろと動き出す。巨大なムカデにも思えるし、カルガモの親子にも思える。
群れは鬱蒼とした森の小径を往く。獣狩りの夜を幾度も超えた身にとって、霧立ち込める森でさえ僅かな月光があれば白昼も同じである。足元の石や木の根に躓き、滑る生徒たちの足取りはあまりにも遅く感じられた。
上から投げつけられる火炎瓶と、引き倒そうとする亡者どもを避けながら、油が撒かれた沼地を全力疾走する。それが出来なければ死あるのみで、そしてそれが出来てなお、先達の恐れるイカとは何であろうか。
入学式と言うが、この隊列についていくことが入学試験なのではないか。
他国の魔法界がどうであるかは知らないが、英国魔法界人口は極めて少ない。独自の文化を形成できたことすら奇蹟的な程に。それは、出生率が低いのではなく、ここで刈り取られているせいではないのか。落伍したものは死に、遺族には忘却術がかけられ、その児の存在は消し去られている。
ああ、素晴らしき協力者よ。同胞の助言は忘れまい。
「うおぉぉぉ!」
前方から悲鳴が響く。
遂に獣が現れたか。
悪夢の辺境に蠢く這い寄るものたち。それすら凌駕するイカとやら。吾が狩りを知るがいい。
懐に手を差し入れ、得物の柄を掴む。もう少しすれば、森が開ける。そこに地獄はあるのだろう。
そこには、湖があった。深淵の如き黒さを湛える湖。大量の水は、眠りを守る断絶であり、故に神秘の前触れである。
向こう岸には山が聳え立ち、そしてその頂上には城が見える。
森に囲まれた、湖の畔の崖にある学徒の家。
なんということだ。ホグワーツとは、ビルゲンワースそのものであった。
頭の中で、大きな鉄扉が啓く音がし、その隙間から人ならぬ声がする。
求める者よ、その先を目指したまえ
一部の学徒は、海、即ち大量の水に面する漁村に在りし、上位者ゴースを弄んだ。それは、先を求めた故の行いであったのだろう。そしてまた、自分も学徒としてホグワーツに連なる者となる。
ウィレームの開いたビルゲンワースよりもホグワーツの方が旧い。ならば、あの悍ましい研究欲を生んだビルゲンワースの源流は、ホグワーツに求めることが出来るのではないか。
己を規定しなくてはならない。学徒としてそこに在ろうと、自らに流れる血は、その血に宿る意思とは、狩人のものでなくてはならない。たとえ、甘き快楽がそこに在ろうと、それに身を委ねてはならない。心を冒す獣性に抗い、狩りを全うした父王の偉大さよ。
求めるは、人であらんとすること。その先とは、上位者を超克すること。人として上位者に伍することこそ、学祖ウィレームが到達した、進化の意味である。
「四人ずつボートに乗って!」
大男が岸辺に繋がれたボートを指した。漣に揺られる儚げなボート。
大男の号令でボートは動きだす。湖面に映る月を割り、船団が進みゆく。いつイカの触手が小舟に絡み、引きずり込もうとするのか。恐怖から、自然と息が荒くなる。同乗者がいれば、船酔いに苦しむそれに見えただろうが、吐き出すのが吐瀉物であれば良い。血か臓物であるかも分からないのだ。
近づく城に圧倒されたか、声を発する者はいない。水音だけが辺りを包む。
「頭、下げ!」
静寂を切り裂く、大男の声。見やれば、先頭集団が崖下に差し掛かっていた。身を屈め、頭上に蔓延る蔦を避ける。僅かであるが、動いた様に感じられた。
蔦が覆い隠した先には洞窟があり、しばらくした後に船着き場に着いた。飛び出す様に船を降り、大きく息を吐いた。地面に足がついていることの幸せを味わう。
同胞が列車で学校に向かわないのは、単に退屈な旅を避けたかったのではない。通学は死の恐怖と隣り合わせにあるのだ。
夢を見る狩人は聖杯の内で死ぬことはあれど、それは繰り返すことの出来る死である。故に、死を身近に感じ、死の感覚に麻痺する。
否である。
誰よりも死を恐れているのは、狩人である。死を恐れるが故、様々な装束を誂え、様々な武器を拵え、様々な戦術を練る。死を恐れないのは、狂人か獣である。痛みは耐え得るが、死は耐えられない。醜くとも、生に縋り付こうとするは、人たる証左。生き延びた後に、死の脅威を排除する。人は獣と違い、学び、考え、克服することが出来る。そうして強大な獣を学び、狩ってきたのだ。
入学式が終われば、直ぐに城内の灯りを探すと決めた。
船着き場を離れ、石の階段を登る。樫で出来た門扉が一同を迎え、大男は三度殴りつける様なノックをした。思い出すのは、ヤーナムの大橋の下に焚かれる、陰惨なキャンプファイヤー。その傍で何事かを呻きながら門扉を叩き続ける獣狩りの下男。どこもかしこも獣ばかりだ。
門が開かれ、現れたのは背の高い女性だった。口元は真一文字に結ばれており、新入生へ向ける表情とは思えない。アリアンナお姉様と父王がキスを交わしているのを見たアデーラ女王の方が、余程人間らしい表情と言える。
アリアンナ女王はヤーナムの民に自らをお姉様と呼ばせている。「女王と言う柄ではない」とは本人の言だが、その態度もまた、アデーラ女王を苛立たせる。生まれながらにして、聖女の血に伍する特別な血を持つアリアンナお姉様を、調整を経て聖女となったアデーラ女王が嫉むのは不可思議なことではない。
獣の病の元凶たる医療教会に属するアデーラがヤーナムの統治者となることに反感を持つ人間は多かったと聞く。尤も、娼婦であったアリアンナも、ただの少女フローラも同様であろう。元より人間性の暗いヤーナムであり、惨劇の直後とあっては誰が統治者となろうと容易には受け入れられまい。
「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」
「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう」
大男の名はハグリッドと言うらしい。マクゴナガル教授の物言いからするに、やはりハグリッドは下男であったか。
マクゴナガル教授が門を開けた。そこから覗く玄関は広く、ヤハグルに続く水盆教会を思わせる。掲げられた松明が石壁を照らしている。天井は遥か高く、ヤーナムであれば憐れな上位者の落とし子、アメンドーズが張り付いていそうだった。
マクゴナガル教授に連れられ、エントランスホールを進む。右手側からはざわめきが聞こえるが、そちらではなく、小部屋に案内された。普段は物置にでもなっているのだろうか、少し埃の臭いがする。
部屋に集められたのは、百名に満たない。英国唯一の魔法学校であるにも関わらず、同じ年の子どもは百名以下。非魔法族の科学技術は一部において魔法技術を上回っており、次代を継ぐ人間もおらず、魔法族は黄昏の時代を迎えている。否、自分たちの代は、ヴォルデモート絶頂期にある。その時分に子を成すことは憚られたのだろう。ヴォルデモート没落後の代は人口爆発と言わんばかりの出生率である。次の代はこの部屋に集められることはないだろう。
「ホグワーツ入学おめでとう」
マクゴナガル教授が口を開く。その表情は歓迎というものとはかけ離れていた。
やはり、登校までが入学試験であったのだ。入学許可証とは、入学の権利を知らせるだけの通知であり、登校して初めて入学となる。あの森で隊列から落伍し、彷徨の果てに命を失った者。湖で異形に引きずり込まれ、溺死した者。長い歴史の中で、それらは珍しいものではないのだろう。
世紀の犯罪者ヴォルデモートもまた、この学び舎で過ごしたのだ。ホグワーツは修羅の国である。
「新入生の歓迎会が間もなく始まりますが、大広間の席につく前に、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。寮の組分けはとても大事な儀式です。ホグワーツにいる間、寮生が学校での皆さんの家族の様なものです。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。
寮は4つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれ輝かしい歴史があって、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんの良い行いは、自分の属する寮の得点となりますし、反対に規則に違反したときは寮の減点になります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。どの寮に入るにしても、皆さん一人一人が寮にとって誇りとなる様望みます」
スリザリンという名をマクゴナガル教授が口にした時、近くにいた赤毛で長身の男子生徒が小さく噴き出し、金髪でオールバックの男子生徒がその男子生徒を睨みつけていた。
その後、身だしなみを整える様にと言われ、慌てた様子で鼻を擦る赤毛を見て、金髪は鼻で嘲笑った。
準備の為、マクゴナガル教授が小部屋を出ていくと、途端に部屋は騒がしくなった。多くの者はどの様に組分けが行われるか、自分がどの寮に組分けられるかを不安そうに話していた。
しかし、これは異常である。自分の様に全く関心がなかった人間を除けば、家族に聞いているだろう。それでいて、この有り様は考えられない。落ち着いて見回してみると、彷徨う子羊の群れから離れている者がいた。まるで犬の交尾を眺めるがごとく、周囲を睥睨している者。まるで子どもの砂場遊びを眺めるがごとく、微笑む者。
教えを乞うなら当然後者である。
「すまないが、組分けについて説明してくれないかな」
「えぇ、構わないわ」
腰まで届きそうな長い金髪の女生徒に話しかける。快く笑顔を返してくれた。
「組分けは、帽子を被るだけ。組分け帽子っていう魔法の道具があって、それが被った人の適性や望みを見抜いて、入寮先を宣言するの」
「……それだけ?」
「そう」
「他人の事を言えたものじゃないが、何故それだけの事を皆知らないんだ? 非魔法族生まればかりというわけでもないだろうに」
「多分、こういうわくわくとか、そわそわ感を味わって欲しいっていう、心遣いなのかな。私の家は、『取り乱すことが無いように』なんて言われて、種明かしされちゃったけど。多分、ドラコ、壁際にいる男子のことね、彼もそんな感じじゃないかな」
犬の交尾を見やる者、ドラコは腕を組み、壁にもたれかかっていた。その泰然とした様は良家に生まれたのであろうと推測させるに十分だった。彼の脇には大柄な男子生徒が2人控えている。2人は双子か。
ドラコの目には、心底くだらないという言葉がありありと浮かんでいた。
双子も同様かと思ったが、彼らの表情には知性を感じられない。知性を感じない大柄な双子と言えば、聖堂街の円形墓地から続く階段を下りた先にいる、獣狩りの下男の二人組を思い出した。獣化した住人達は体毛と牙が伸びている。獣狩りに出たはずの群衆が獣になっているとは悪趣味だが、他方、下男は身体が肥大した程度であり、尋常な人間の外形からは然程離れておらず、表情も分かる。それ故に、その表情から知性の欠落を窺い知ることが出来た。付き従うだけの下男には、およそ意思たるものは感じられない。
「そうか、となれば、兄妹たちのいる寮にと願えば、それでよいということだな」
「家族が先輩なのね。組分けのこと、教えてもらえばよかったじゃない」
「訊く前に別れてしまったからね」
「一緒に来なかったの?」
「ああ。かわいい子には旅をさせろというやつらしい」
「なら、訊いても教えてくれなかったかもね。ご兄弟はどの寮なの?」
「スリザリンだと聞いている」
興味がなかったので、そこが多くの純血主義者の入る寮であり、ヴォルデモートを輩出した過去があるという程度にしか知識がない。尤も、ヴォルデモートを輩出したということでいうなれば、ホグワーツ自体がそうであり、英国魔法界がそうである。
「なら、私と貴女は同じ寮になるかも」
「貴女はスリザリン志望者か?」
「私個人の志望というなら、落ち着いて勉強出来そうなレイブンクローだけど、両親は私がスリザリンに入って欲しいって思っているわ。直接私にそう言ったことはないけれど、祖父母も、曾祖父母もそうだったから」
「良家の娘と言うのも大変だな」
「あら、家柄を自慢なんてしていないつもりだけど。それとも、何か気に障った?」
「いや。素直な感想だ。私はマリア・アイリーン・ボーン。同じ寮であろうと、別の寮であろうと、よろしく」
「ダフネ・グリーングラスよ。よろしくね」
脈々と続く純血の一族が存在する。聖血の一族。グリーングラス家もまた聖血を冠する一族だ。純血主義に積極的に賛同するつもりはないが、純血主義は特権意識の塊と断じることもない。
魔法使いの創成期、魔法使いはまず間違いなく、特権階級にあっただろう。魔法族と非魔法族との間で交配が可能であるのだから、祖は同じ猿である。他の猿に出来ないことが出来る猿、それは当然、支配者であることを意味する。支配者は富を集中させ、あるいは容姿に優れた者を伴侶に選ぶ。その子は富と優れた容姿を引き継いだ者であり、その子もまた、自分と同程度の階級の者を伴侶に選ぶだろう。そうして一族としての格が生まれ、特権階級になったのだと容易に推測できる。
つまり、純血の一族を尊ぶのは、その血に連なる富と力への憧憬であり、純粋な純血主義とはそれを保存し、発展させるという思想なのだ。そういった背景があるのだと考えれば、反純血主義が如何に嫉妬という感情によって為されるものであるかが分かる。
合理的に考えて、金も品格もない不細工と連れ添う特権階級がいるはずもない。そういうものは、安いピカレスクだけで十分だ。卑屈な悪夢のヤーナムにはそういった物語が溢れていた。異邦の官憲、ヴァルトールもまた、住民たちの悪趣味によって獣を喰らうこととなったのだ。
ダフネと話していると、壁から亡霊達が現れた。トゥメルの聖杯では見慣れた光景であるので、さして驚くことでもなかったが、ダフネは顔を蒼白にしていた。彼女は亡霊が蔓延る様な場所に立ち入ることなどないであろうし、家にそれらが寄り付けば、たちまちに排除されるだろう。
戻ってきたマクゴナガル教授は、戦慄している新入生たちに別段配慮することもなく、大広間に連れていく。亡霊達が新入生を驚かすのは毎年恒例の様だ。
大広間はエントランスよりもさらに神秘的で、荘厳だった。医療教会の大聖堂を思わせる。足を踏み入れた瞬間、またも頭の中でざわめきが聞こえた。
何千もの蝋燭が宙に浮かび、寮ごとの4つの長机を照らしている。使者の灯りが広間の隅にあった。
聖歌隊は上位者と共に空にある宇宙に思索を巡らせたが、この広間の天井にも夜空が広がっていた。ビルゲンワースの蔵書にあった『ホグワーツの歴史』には、星空を投影する魔法がかけられているということだった。
マクゴナガル教授は広間の奥、教職員の机の前に新入生を並べた後、中央にスツールを置いた。その上には、古く、色褪せ、汚い帽子が置かれていた。あれを被ることになるのかと思うと、頭がかゆくなりそうだ。ホグワーツ創立から在り続けた帽子。そこに集った者たちの手垢と汗が染みついているのだ。あれが生き物であれば、狩りの暁には莫大な遺志を得ることが出来るだろう。
見つめていると、突如帽子の裂け目が口の様に開き、歌い出した。
私は綺麗じゃないけれど
人は見かけによらぬもの
私を凌ぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽子は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
私はホグワーツ組分け帽子
私は彼らの上をいく
君の頭に隠れたものを
組分け帽子はお見通し
被れば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
勇気あるものが住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう
スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
被ってごらん 恐れずに
興奮せずに お任せを
君を私の手に委ね
だって私は考える帽子
歌が終わると、広間は万雷の拍手で包まれた。反響し、重なり合い、生き物の様にうねる。
帽子は4つの寮にお辞儀をした後、静かになった。
ディルクお兄様、イングリットお姉様よりも遥か年上に兄と姉がいる。彼らもまた、スリザリンであったという。ボーン家がスリザリンに組分けられる理由が分かった。どんな手段を使ってもという性質はまさに狩人の在り方であり、工房の在り方であり、医療教会の在り方であり、カインハーストの在り方であり、ヤーナムである。
手段に善悪は存在しない。目的に沿うか否かが善悪である。恐ろしいことだが、仮に漁村の惨劇によって、確かに脳の中に瞳を見出していたのであれば、それは偉業の為の僅かな犠牲として認識されただろう。あるいは、栄光の礎として、犠牲とすら思わないのではないか。
「ABC順に名前を呼びますので、呼ばれた者は帽子を被って椅子に座り、組分けを受けてください。アボット・ハンナ」
金髪のおさげの子が慌てて一団から抜け出た。最初の一人になるとは思っていなかったのだろう、ひどく緊張している。恐る恐る帽子を被り、椅子に腰かけた。
「ハッフルパフ!」
数秒の沈黙の後、帽子の宣言があった。黄色のネクタイを付けた生徒たちのテーブルから歓声と拍手が轟いた。
「ボーン・マリア・アイリーン」
Bで始まる姓であるから、早い方だろうと考えていたが、二番目だとは思わなかった。緑のネクタイの生徒たちに視線を向けると、ディルクお兄様が珍しく微笑みを湛え、イングリットお姉様が友人に何事かを囁いていた。
帽子をつまみ上げ、なるべく浅く被り、椅子に座る。スツールは汚れていないのは僅かな救いだった。
「また君らかね。全く、不老は構わんが、いい加減子作りを止めろと父に伝えるといい」
夫婦が仲睦まじいのは良いことだろう? 人の家庭に口を挟まないでもらえないか。
「それで、一応聞こうか、どこの寮が良い。恐るべき敵に立ち向かう勇気を求め、力を求め努力を重ね、真実を求め研鑽し、その果てに夜明けを待つヤーナムの狩人よ」
スリザリン。
「次の子は入学許可証ではなく、スリザリン入寮許可証を送る様、校長に進言しよう」
それがいい。次の子を作る様、父に伝えておこう
「スリザリン!」
拍手を受けながらスリザリンのテーブルに向かうと、お兄様とお姉様がハグで迎えてくれた。
「お前たち、俺の妹に手を出したら殺す」
「貴方たち、私の妹に手を出したら切り落とすわ」
恥ずかしいのはハグではなく、物騒な言葉で威嚇する兄姉たちだった。
魔法省の国際協力部ってもう凄まじいハードワークだと思いますよ。
ホグワーツ校内じゃ教職員も一体となってスリザリンは暗黒面扱いしてますけど、他国からしてみればヴォルデモートを輩出した英国は魔法界の暗黒面ですよ。
そんな大英帝国の威信を護る為には、当然有能な人材が必要であるわけで、クラウチ氏は適任といえるでしょう。今の闇の陣営に対抗する闇祓い連中なんぞより、よっぽど要職です。
ところが、彼は左遷という形で外務を任されたわけですから、出世コースではない。
しかも、その息子がお辞儀勢でしたから、どんな事をしても「素晴らしい仕事ぶりだ。息子を仕事に捧げただけのことはあるな」とか言われるわけですね。流石ブリカス。
自らの欲求の為に意図的に欠缺のある立法をしたマグル狂いよりよっぽど世のため人の為になってると思います。だからこそ、血を裏切った者の家族を裏切った三男は心酔していたんじゃないですかね。
半沢直樹インストールしたクラウチ氏とか誰か書いてくれないかな。
クラウチ氏の権力志向も、家名を高め、それを子に継がせる為と思えば愛の一種ですし、お辞儀勢への苛烈な攻撃も子等の時代に闇をもたらさない様にしたかったとも取れます。
愛に全てを。愛じゃよ。
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2022/09/23修正
イングリットお姉様の年齢をマリアの2つ上から1つ上に。