ブライトはアムロの部屋のドアを勢いよく開けた。真面目な彼が持ち場を離れてきたのはそうとう腹がたったのだろう。
「アムロ、貴様なぜ自分の任務を果たそうとしないんだ?」
「ブライトさんはなんで戦ってるんです?」
「今はそんな哲学など語っている暇はない。立てよ、おい」
そっぽを向いて離すアムロを掴むも、それでもブライトの目を見ようとはしなかった。
「やめてくださいよ。そんなにガンダムを動かしたいんなら、あなた自身がやればいいんですよ」
「なに? できればやっている。貴様に言われるまでもなくな」
「僕だってできるからやってるんじゃないですよ」
思わず手が出てアムロを殴る。アムロは頬を押さえ、目を見開いてた。
無意識の行動だったため、ブライトも呆然となる。
「な、殴ったね」
「殴ってなぜ悪いか? 貴様はいい、そうしてわめいていれば気分も晴れるんだからな」
「ぼ、僕がそんなに安っぽい人間ですか?」
ブライトはもう一度殴るが、今度は意識してのことだった。
こうでもしないとアムロは変わらない。
「二度もぶった。親父にもぶたれたことないのに」
「それが甘ったれなんだ。殴られもせずに一人前になった奴がどこにいるものか」
「もうやらないからな。誰が二度とガンダムなんかに乗ってやるものか…」
「アムロ、いいかげんにしなさいよ。しっかりしてよ。情けないこと言わないで、アムロ。あっ」
敵の攻撃で艦が揺れる。
体勢を立て直したブライトは背を向け、ドアに手をかけた。
「俺はブリッジに行く。アムロ、今のままだったら貴様は虫ケラだ。それだけの才能があれば貴様はシャアを越えられる奴だと思っていた。残念だよ」
「シャア? ブライトさん、ブライトさん」
ブライトを追いかけるもフラウが詰め寄る。
「アムロ、ガンダムに操縦方法の手引書ってあるんでしょ?」
「えっ?」
「あたしガンダムに乗るわ。自分のやったことに自信を持てない人なんて嫌いよ。今日までホワイトベースを守ってきたのは俺だって言えないアムロなんて男じゃない。あたし」
無茶な事だ。MSを操縦するのは自動車や飛行機とは違っていた。人間の複雑な動作を機械が行うのはかなりのテクニックがいる。
「フラウ・ボゥ、ガンダムの操縦は君には無理だよ」
「アムロ」
「くやしいけど、僕は男なんだな」
奮起したアムロは砲火の中へ出る。
不利な状況は変わらないが、ジャンプ力とロケットノズルを駆使してガンダムは空中戦を開始した。敵は混乱し、ガルマはドップが被弾したことで後退する。
攻撃が弱まり、ヤンは指示を出す。
「よし、ガンキャノン、ガンタンクはガンダムの着地の瞬間を狙い撃ちされないように援護! ミライ、コース変更、回頭して山間部へ! アッテンボロー少尉、進路上の敵を蹴散らせ!」
艦首が海から山へ向き、同方向へ砲撃が開始された。
海へ脱出するというジャブローからの命令を無視するヤンをリード中尉は止めようと口を挟む。
「待て、ヤン中尉、それでは命令が……」
「今の状況で突破は不可能です。山を盾にし、離脱するのが最善です」
他に代案がないため、リード中尉は口を閉じる。
敵が撤退を始めた事もあり、ホワイトベースは逃走に成功した。
戦闘配置がとかれると、ヤンは自室にアムロとブライトを呼び出した。
アムロは命令拒否、ブライトはアムロへの暴行が理由で、罰則を与える。
ユリアンの淹れた紅茶を一口飲み、ヤンが口を開く。
「ブライト少尉。ガンダムのパイロットとはいえ、民間人の少年への暴行は許される事ではない」
「覚悟の上です」
「そうか。ではアムロ、命令拒否は君だけじゃなく、我々全員の命に関わる。最悪の場合、私はこうして紅茶を飲んでいないのかもしれない」
「で、でも……」
「君には命令に従う義務があるんだ」
アムロはわかっていなかった。ガンダムを乗るということは命令に従わなければならないということに。
気まぐれで命令を拒否されていたのでは、死につながる。
「納得しろとはいわないが、今回のようなことはやめてくれ。それだけでいい」
「わかりました」
納得はしてないが理解したようだった。ヤンは説教はこの程度にし、二人に処分を言い渡す。
「よし、では二人とも、整備の手伝いを命じる。アムロ、君はガンダムを徹底的に整備だ」
これは罰則というよりはアムロにとっては習慣だった。機械いじりが好きな彼はガンダムを普段から見ている。
でも、だからこそヤンはこの処罰にしたのだった。
U.C.79年9月24日。一年戦争終結まであと99日。
宇宙世紀の歴史がまた1ページ。
原作からの変更点
・アムロとブライトへの罰則
アニメでは有耶無耶になってたので、入れてみました。
現在で体罰は問題になるので、ブライトも。